相続税の節税効果絶大の「小規模宅地等の特例」
適用を受けるために注意したい3つのこと

相続税の節税効果絶大の「小規模宅地等の特例」  適用を受けるために注意したい3つのこと
公開日:
2020/01/09
 
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相続税の支払いがネックになって、長年亡くなった親と住み続けてきた実家を、手放さなくてはならなくなった――。そんな「悲劇」を生まないために設けられたのが、相続税の「小規模宅地等の特例」です。要件を満たせば、課税のベースとなる不動産の評価額を80%減額できますから、これが使えるか使えないかでは、支払う税金は大違い。いざというとき「しまった!」とならないように、気をつけるべき点を再確認しておきましょう。

「節税の手段」としては使いにくくなった

2015年に、相続税の基礎控除額(※1)が引き下げられてから、東京などの大都市圏に持ち家があれば、その課税対象になる確率がグンと高まりました。地価が高いため、自宅の評価額だけで、非課税のラインを超えてしまうからです。このように、相続の際に税金が気になる自宅などの不動産ですが、その評価額を大きく下げることのできる「小規模宅地等の特例」があります。

 

小規模宅地等の特例とは、亡くなった親が所有していた居住用ないし事業用(賃貸アパートなど)の宅地を相続する場合に、その一定の面積まで(=小規模宅地等)については、相続税を減額します――という制度です。居住用宅地については、その評価額を80%、今回は詳しく述べませんが、事業用宅地は50%~80%も下げられますから、減税効果は絶大。この特例を使うことで、相続税が非課税になることも珍しくはありません。

 

ただし、当然ながらクリアすべき要件があって、居住用宅地については、次の3つのパターンに当てはまる場合に認められることになっています。

 

  • ①夫婦のどちらかが亡くなって、その配偶者が相続する場合
  • ②被相続人(亡くなった人)と同居していた親族、例えば長男が相続する場合
  • ③同居はしていないけれど、定められた要件を満たす親族が相続する場合

 

①、②については、ごく自然でしょう。問題は、③の「被相続人と同居していなかった人」が相続するケースです。その要件は、まず「相続開始前、3年以内に自分や自分の配偶者の所有する家屋に住んだことがない」こと。要するに、「親が亡くなる前に、3年を超えて賃貸アパートなどに居住していた子ども」といった親族でなくてはなりません。たとえ妻名義であっても、持ち家に住んでいる人が相続する場合には、この特例は適用されないのです。ここで特例の適用が想定されているのは、「今は同居していないけれども、親が死んだらその家に住む親族」。通称「家なき子」です。

 

さらに2018年度の税制改革で、その「家なき子」の要件が厳格化されました。それまでは適用OKだった、

 

  • 自宅を親族に売り、その親族に家賃を支払って住む(形のうえでは賃貸暮らし)
  • 同様に、自宅を自分の会社に売る
  • 親の住む家を孫に遺贈(※2)してもらう

 

といったことが、18年4月以降はNGになったのです。

 

説明したように、納税者にとって、小規模宅地等の特例はメリット大。そのため、単なる節税対策としての「裏技」が広がったことに、税務当局がストップをかけたわけです。結果的に、③に関しては、純粋な「家なき子」以外は小規模宅地等の特例の利用が困難になりました。

 

なお、宅地の場合には、特例の適用される限度面積は330㎡まで。これを超える部分は、通常の評価額で算定されます。

 

※1相続税の基礎控除額
課税のボーダーラインとなる遺産総額。現在は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、遺産総額がこれ以下なら相続税はかからない。

 

※2遺贈
遺言によって、遺言者の財産の全部または一部を贈与すること。

要件を満たしても、気をつけたいことがある

注意したいのは、以上の「居住要件」を満たしていても、小規模宅地等の特例が受けられない場合がありうることです。

◆「生前贈与」していたら適用外

2500万円まで贈与税がかからない「相続時精算課税」という制度があります。贈与時に一括で税金を申告、納付するやり方で、贈与した親が亡くなったときには、その贈与財産を含めて相続税を計算し、その相続税とすでに支払った贈与税との差額を納付する、または還付を受けるのです。

 

贈与財産は「贈与時の価額」で評価されますから、自宅の地価が右肩上がりのような場合には、この制度を使ってそれを子どもに贈与しておけば、相続財産が大きく膨らむのを防ぐことができるでしょう。ただし、自宅を生前贈与されていた場合には、たとえ同居していた子どもであっても、相続時にこの特例を使うことはできません。

◆「遺産分割協議が整う」ことが条件

相続では、相続人が「遺産分割協議」で財産の分け方を決めて、「遺産分割協議書」を作成します。それがないと、基本的に不動産の名義変更などはできません。相続人の間で遺産の分け方が決まらない状態のことを、「未分割」と言います。もし、相続税の申告期限まで遺産が未分割だったら、民法が定める法定相続分に沿って相続税を申告し、納付する必要があります。

 

こうした未分割での申告の場合、やはり小規模宅地等の特例を使うことができません。この特例を使って相続財産が圧縮できれば、相続人全員にメリットが生まれるわけですが、それも「揉めない相続」が前提だ、ということになります。

 

ちなみに、申告期限から3年以内に遺産分割協議が成立すれば、特例を適用するかたちで「払い過ぎ」の税金は返してもらえます。ただ、いったんこじれた相続は、親族同士だからなおさら、修復が難しいのも事実。テクニックの前に、「争続」にならない準備が大事になります。

◆「申告」しないと適用されません

遺産が基礎控除の範囲内で相続税が発生しない場合、税の申告も基本的に必要ありません。ただし、小規模宅地等の特例を使うのならば、結果的に相続税ゼロになる場合でも、申告が必要ですから、注意しましょう。

 

申告しないでいても、申告期限までに遺産分割が行われ、不動産の名義変更を終えていれば大丈夫。気づいたときに「期限後申告」すれば、特例が適用されます。しかし、名義変更などをせずに放置するのは危険です。そのまま申告期限から3年が過ぎて、税務調査(※3)が入ったら、「未分割」を指摘され、小規模宅地等の特例適用外の相続税+延滞税の支払いを命じられる公算大、と考えてください。

 

親が残したのは、自宅とわずかな貯金だけ。自宅の評価額をラフに計算してみたら、特例を使えば、楽勝で相続税はかからないことが分かった……。それで安心していると、数年後に思わぬ出費を余儀なくされるかもしれません。

 

※3税務調査
国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。

まとめ

節税の“切り札”とも言える、小規模宅地等の特例。でも、確実に適用を受けるためには、気をつけるべきことがあります。不明な点があれば、専門の税理士に相談することをお勧めします。

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