建設業の倒産が12年ぶりに2,000件を超えた——下請け・外注先の連鎖倒産から会社を守る3つの対策

東京商工リサーチの調査によると、2025年(1月~12月)の建設業の倒産は2,014件(前年比4.6%増)となり、2013年以来、実に12年ぶりに2,000件を超えました。帝国データバンクの集計でも2,021件(前年比6.9%増)と4年連続の増加で、過去10年で最多の水準です。
さらに注目すべきは、倒産という形を取らずに事業をたたむ「休廃業・解散」の多さです。2025年の建設業の休廃業・解散は1万283件と、初めて1万件の大台を超えました。これは全産業の中で最も多く、全体の15.3%を建設業が占めています。つまり、倒産と休廃業・解散を合わせると、1年間でおよそ1万2,000社を超える建設業者が市場から姿を消した計算になります。
倒産した企業の負債規模を見ると、5,000万円未満が57.7%と過半数を占めており、経営体力の乏しい中小零細事業者にしわ寄せが集中している構図が浮かび上がります。地域別では「中部」が前年比17.8%増、「中国」が同18.8%増と、地方圏での増加が目立ちました。
「うちは建設業ではないから関係ない」と考えるのは早計です。自社の社屋や店舗の改修を頼んでいる工務店、取引先の下請け業者、外注している協力会社——建設業と何らかの接点を持つ中小企業は少なくありません。取引先の突然の倒産は、売掛金の回収不能や工期の遅延という形で、自社の資金繰りに直接跳ね返ってきます。
なぜ今、建設業の倒産が急増しているのか
倒産急増の背景には、複数のコスト要因が同時に押し寄せている構造があります。
第一に、人件費の急騰です。建設業界では職人の高齢化と若手の入職減少により人手不足が深刻化しており、人材をつなぎ留めるための賃上げや、外注費の上昇が経営を圧迫しています。実際、人手不足を要因とする建設業の倒産は前年比14.1%増の113件にのぼりました。
第二に、建材価格の高止まりです。木材や鋼材、セメントなどの資材価格は数年前の急騰後も高い水準が続いており、物価高を要因とする建設業の倒産は240件と高水準で推移しています。
第三に、こうしたコスト上昇分を請負単価に転嫁しきれていないことです。建設業は受注から完成・入金までの期間が長く、契約時の見積もりから資材や人件費が上振れしても、追加分を発注者に請求しにくい商慣行が残っています。コストだけが先に上がり、売上が追いつかない「逆ざや」に陥る事業者が後を絶ちません。
加えて見逃せないのが、経営者の高齢化です。「経営者の病気・死亡」を原因とする建設業の倒産は78件と、2000年以降で最多を記録しました。後継者が見つからないまま経営者が倒れ、そのまま事業継続を断念するケースが増えているのです。冒頭で触れた休廃業・解散1万件超という数字も、この高齢化問題と地続きにあります。
「職別工事業」が総合工事業を上回った——どういう意味か
今回の統計で特徴的なのは、業種別の内訳です。とび工事や解体工事、塗装工事などを手がける「職別工事業」の倒産件数が、ゼネコンや工務店など元請けにあたる「総合工事業」を上回りました。中でも「とび工事業」「はつり・解体工事業」は過去最多を更新し、「塗装工事業」「防水工事業」「機械器具設置工事業」もリーマン・ショック期を上回る件数となっています。
これが意味するのは、倒産の波が下請け・専門工事の層に集中しているということです。職別工事業は元請けから仕事を受ける立場が多く、価格交渉力が弱いため、コスト上昇分の転嫁が最も難しい位置にいます。人件費や資材費の負担を押し付けられる形で、体力の限界を迎えているのです。
元請けの立場にある会社にとって、これは「発注先がある日突然いなくなる」リスクが現実味を帯びていることを意味します。職人を抱える協力会社が倒産すれば、進行中の工事は止まり、代替業者の確保には時間もコストもかかります。下請け側の倒産は、元請けや発注企業にとって決して他人事ではありません。
中小企業が今すぐ取るべき3つの経営防衛策
では、取引先の倒産リスクから自社を守るために、何をすべきでしょうか。実務的な対策を3つに整理します。
1つ目は、与信管理の強化です。下請け・外注先を含む取引先の財務状況や支払い能力を、年に1回ではなく定期的に確認する習慣をつけましょう。決算書の入手が難しい場合でも、支払いの遅れ、職人の急な退職、現場の進捗の乱れといった「予兆」に気を配ることはできます。売掛金や前払金が焦げ付いた場合の影響額をあらかじめ把握し、金額が大きい取引には手形サイトの短縮や現金払い条件への見直しを検討することも有効です。信用調査会社のレポートを活用すれば、数万円のコストで大口取引先のリスクを把握できます。
2つ目は、価格転嫁への冷静な対応です。下請けや外注先から「単価を上げてほしい」と打診されたとき、目先のコストを優先して拒否し続けるのは危険です。無理を強いた結果、相手が倒産してしまえば、工期の遅れや代替先探しでかえって高くつきます。値上げ要請を受けたら、根拠となるコスト内訳を確認したうえで、双方が納得できる着地点を探る姿勢が長期的には自社を守ります。逆に、自社が元請けや発注者に対してコスト上昇分の転嫁を求める立場であれば、労務費や資材費の上昇を示す客観的なデータを添えて交渉することで、合意を得やすくなります。
3つ目は、外注・協力会社の分散です。特定の外注先に発注を集中させていると、その1社が倒産した瞬間に事業が止まります。主要な工種ごとに複数の協力会社と関係を築き、いざというときに代替を頼めるバックアップ体制を平時から整えておきましょう。新規の協力会社を探すには時間がかかるため、「メインの外注先が明日いなくなったらどうするか」を想定した備えは、余裕のある今のうちにしておくべきです。
まとめ
2025年の建設業倒産は12年ぶりに2,000件を超え、休廃業・解散も初めて1万件を突破しました。人件費の急騰、建材価格の高止まり、価格転嫁の遅れ、経営者の高齢化という複合的な要因により、特に下請け層の専門工事業者に倒産が集中しています。
この状況は、建設業者本人だけでなく、建設業と取引のあるすべての中小企業にとって無関係ではありません。与信管理の強化、価格転嫁への柔軟な対応、外注先の分散という3つの備えを、問題が表面化する前に進めておくことが、連鎖倒産から会社を守る最も確実な方法です。自社だけで判断が難しい場合は、資金繰りや取引先リスクに詳しい税理士などの専門家に相談することも検討してください。
中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。
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