プルデンシャル生命に業務停止命令、解約したら税金は?ドル建て保険は円安だけで課税も、税理士の見解は

[取材/文責]マネーイズム編集部
プロゴ税理士事務所代表 好川 寛(税理士)

金融庁は10月9日、プルデンシャル生命保険とグループのジブラルタ生命保険に、保険業法に基づく一部業務停止命令を出しました。

10月13日から2027年1月31日まで、両社の営業社員による新規の保険販売が停止されます。営業社員らによる顧客からの金銭詐取が背景で、10月8日に公表された調査報告書では、顧客794人から計約61億7,000万円の被害申告があったとされています。生命保険会社への業務停止命令は、2019年のかんぽ生命保険以来です。

既存契約の保険金の支払いなどは続きますが、同社は4月の会見で、解約の申し出が増えていることを認めています。不信感から解約や他社への乗り換えを考えた場合、税金はかかるのか。同社が販売してきた米ドル建ての保険では何に気をつけるべきか。税理士に聞きました。

解約返戻金に税金がかかるのは、原則、払った保険料を50万円超上回ったときです

保険料を負担した本人が解約返戻金を一括で受け取る場合、所得税・住民税の対象になります。ただし、受け取った金額すべてに税金がかかるわけではありません。「解約返戻金-払込保険料の総額-特別控除50万円」で計算した一時所得を、さらに2分の1にした金額がほかの所得に合算されます。

たとえば払込保険料の総額が800万円、解約返戻金が900万円なら、(900万円-800万円-50万円)×1/2=25万円が課税対象です。一方、加入から年数が浅い契約は解約返戻金が払込保険料を下回ることが多く、その場合は税金はかかりません。なお、一時払養老保険など一定の契約を5年以内に解約した場合は、利益に対して20.315%が源泉徴収され、課税が完結する別の扱いになります。

ドル建て保険は、ドルで増えていなくても円安分に課税されます

注意したいのは米ドル建てなど外貨建ての保険です。税金の計算は円で行い、払込保険料は払い込んだ時点の為替レート、解約返戻金は解約した時点の為替レートで円に換算します。そのため、ドルで見れば払った額と同じだけしか戻ってこなくても、加入時より円安になっていれば、円換算の差額が利益として課税対象になります。

たとえば1ドル=110円前後のときに払い込んだ保険料の累計が7万ドル(770万円)、解約返戻金も同じ7万ドルで、解約時に1ドル=155円だったとします。返戻金は円換算で1,085万円となり、(1,085万円-770万円-50万円)×1/2=132万5,000円がほかの所得に上乗せされます。もともとの課税所得が500万円の人なら、所得税(復興特別所得税を含む)が約27万円、住民税が約13万円増え、ドルでは1セントも増えていないのに税負担は約40万円重くなる計算です。実際の円換算額は、保険会社から届く書類で確認してください。

反対に、円高で円換算の返戻金が払込保険料を下回っても、その損失を給与などの所得から差し引くことはできません。差し引けるのは、同じ年に別の保険の解約などで生じた一時所得の利益だけです。

一般的な会社員は、利益が90万円を超えると確定申告が必要です

年末調整を受けている会社員(給与収入2,000万円以下)は、ほかに副収入がなければ、一時所得を2分の1にした金額が20万円を超えたときに確定申告が必要です。解約返戻金と払込保険料の差額でいえば、90万円を超えると申告の対象になります。所得税の申告が不要な場合でも、住民税の申告は必要になることがあります。

特別控除の50万円は契約ごとではなく、1年間の一時所得全体で1回だけです。同じ年に複数の保険を解約すると利益と損失が合算されるため、どの年に解約するかで税負担が変わることがあります。また、国民健康保険に加入している人は、翌年度の保険料が上がる可能性があります。

解約すれば保障は戻りません。乗り換えるなら順番に注意

今回の処分で止まるのは新規の販売で、既存契約の保険金や給付金の支払いは続きます。会社が破綻したわけではなく、不信感だけを理由に急いで解約する必要はありません。解約すれば保障はその時点でなくなり、同じ保障に入り直そうとしても、年齢が上がった分だけ保険料は高くなり、健康状態によっては加入を断られることもあります。

乗り換える場合は、新しい保険の審査が通り、保障が始まったことを確認してから旧契約を解約してください。先に解約すると、保障のない期間が生じるおそれがあります。保険料の支払いを止めたいなら、保障額を減らして契約を残す払済保険への変更も選択肢です。現金を受け取らないため通常その時点では課税されませんが、特約がなくなるなど保障内容が変わるため、事前に確認してください。ドル建て保険は解約時の為替で手取りも税額も変わるため、手続きの前に円換算の返戻金と税額を試算しておくと判断しやすくなります。

まとめ

保険の解約返戻金に税金がかかるのは、払込保険料を50万円超上回る利益が出たときで、一般的な会社員はほかに副収入がなければ、利益が90万円を超えると確定申告が必要です。ただしドル建て保険は、ドルで増えていなくても円安分が利益とみなされ、課税されることがあります。既存契約の保障は続くため、解約を考えるときは保障の必要性と、円換算の返戻金・税負担を確かめたうえで判断してください。

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プロゴ税理士事務所代表 好川 寛(税理士)

東京国税局で15年にわたり、税務調査・審理・国税不服審判所の業務に従事。非居住者課税の相談実務に精通する。大手YouTuberエージェンシーでの実務経験から、フリーランス・インフルエンサー特有の税務にも明るい。その後、IT企業でのプロダクトマネジメントを経て神奈川県川崎市で独立。現在はクリエイターやスタートアップの税務支援を中心に活動し、税務メディアの記事監修も多数手がける。国税の現場で培った課税庁側の視点を活かした解説を得意とする。

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