円安で対象急増?「国外財産調書」の6月末期限迫る!未提出のペナルティを解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

国外財産調書とは、海外に一定額以上の財産を持つ人に提出が義務付けられている調書です。海外への投資が一般的になっていることや、円安が進行していることから対象者は年々増加しています。未提出者にはペナルティがあるため、海外に財産を持つ人は定期的に自身の財産合計額をチェックしましょう。

この記事では、国外財産調書について対象者や対象となる財産の判定方法、未提出の際のペナルティなどについて紹介します。

1. 国外財産調書とは?制度の概要と今年の提出期限

海外に多くの財産を持つ人は、国外財産調書の提出が必要です。ここでは、制度の概要と2026年の提出期限などについて紹介します。まずは自分が対象となっているかをチェックしましょう。

令和7年分の提出期限は2026年6月30日 今年も締め切りが迫っている

海外に一定以上の財産を保有している人には国外財産調書の提出が義務付けられています。日本円に換算して5,000万円を超える財産を海外に保有している人は、対象となる可能性があります。

以下に国外財産調書を提出すべき人の条件をまとめました。国外で土地や建物、現金、有価証券などを保有している方は確認しておきましょう。

【条件】

・日本の居住者である(非永住者を除く)
・不動産や金融資産などをあわせて、日本円で5,000万円を超える財産を国外で保有している(2025年12月31日時点)

【令和7年分の国外財産調書の提出期限・提出先】

2026年6月30日までに住所地を管轄する税務署へ提出(e-TAXも利用可)

【記載内容】

・保有財産の区分や種類
・財産の所在地(国名など)

対象者であるにもかかわらず、期限までに国外財産調書を提出していない場合は、罰則が科されることもあります。提出期限が近づいているため、対象となる方は早めの対応が必要です。

提出件数14,544件・総財産額8.2兆円 過去最高を更新し続ける提出状況

国税庁によると令和6年分(提出期限:2025年6月30日)として提出された国外財産調書の数は過去最高となる14,544件でした。前年度(令和5年分)と比べると提出件数は約9.8%増えており、総財産額は約8.2兆円(前年比26.3%増)に上っています。

「国税庁レポート2025」によると平成29年度以来、国外財産調書の提出件数・総財産額は毎年過去最高を更新し続けている状況です。特に令和6年分の場合は、株式相場の上昇や円安が提出件数の大幅増の理由だと考えられています。

制度が導入された背景 タックスヘイブンを利用した課税逃れへの対策として2014年に施行

国外財産調書の提出が義務付けられたのは2014年です。財産を海外に移すことで日本での課税を逃れることを封じるために導入されました。世界にはいわゆるタックスヘイブン(租税回避地)といわれる、法人税や所得税など各種の税が非課税、または非常に低い税率の国や地域があります。

かつては国税庁が海外の資産を把握するのが難しかったため、日本国内の財産をタックスヘイブンへ移転することで本来払うべき税から逃れようとする人がいました。国外財産調書は海外に保有する財産を申告させることで、税の公平性を保つことが目的です。

2. 誰が対象?5,000万円の判定で見落としやすいポイント

国外財産調書の提出義務が生じるかどうかの大きなポイントが「国外財産の合計額が日本円で5,000万円を超えるか」です。ここでは、調書の作成に際して必要な国外財産の評価方法などについて紹介します。

「12月31日時点で国外財産の合計が5,000万円超の居住者」が提出義務者 非永住者は除外

国外財産調書の提出義務があるのは「12月31日時点で国外財産の合計が5,000万円超の居住者」です。そもそも居住者とは日本国内に住所がある、または1年以上継続して滞在している個人を指します。

ただし、非永住者は除外するとされているため、居住者であっても日本国籍を持たず、かつ過去10年のうち日本に住んでいた期間が5年以下の人は対象ではありません。たとえば来日してから5年未満の外国人は、国外に5,000万円超の財産があっても申告は不要です。

また、財産の価値については有価証券などが時価、そのほかの財産は見積価額で評価するのが一般的です。たとえば土地や不動産の場合、固定資産税に相当する税の課税評価額などを見積時価として使用できます。

なお、外貨建ての財産であっても国外財産調書には日本円で価額を記入します。日本円へ換算する際に使用するレートは、提出する人の取引金融機関が公表している12月31日(休業日の場合は前営業日)のTTB(対顧客直物電信買相場)です。

借入金があっても控除できない 1億円の海外不動産にローンがあっても1億円で判定する

国外財産調書に記載する財産の価値からは借入金を控除できません。1億円の海外不動産を購入するのに全額キャッシュで支払った人も、フルローンを組んだ人も同様に財産額は1億円と判定されます。

一方、財産債務調書では借入金の残高を記載する欄があります。提出期限が同じ6月30日であり、内容も似ている書類であるため間違えないよう注意が必要です。

財産の「国外」判定は種類によってルールが異なる 海外口座・海外不動産・海外法人への出資の考え方

財産が「国外」にあるかどうかを判定するポイントは「財産の所在地」ですが、詳しくいうと財産の種類によってルールが異なります。たとえば現金や有価証券の場合は、預けている金融機関の営業所や事業所の所在地が国外かどうかがポイントです。

具体的には以下のとおりです。

・国内の金融機関の国内の支店で開設した口座にある外貨預金→国内の資産のため、国外財産調書の対象外
・海外の証券会社で管理している有価証券→国外資産のため、申告義務あり

一方、不動産の場合は購入経緯などに関係なく、所在地で判断します。
・日本の不動産会社を通じて購入したハワイの別荘→国外資産のため、申告義務あり

海外法人への出資は、出資先の法人の本店所在地が国外にあれば国外財産調書への記載が必要です。
・マレーシアに本店を置く法人に出資した→国外資産のため、申告義務あり

3. 仮想通貨・海外不動産はどう扱う?判断を誤りやすい財産の記載ルール

国外財産調書に記載が必要な国外財産は、預金や有価証券などの金融資産だけではありません。ここでは、仮想通貨や海外不動産など、国外財産となるか判断を誤りやすい財産に関する記載ルールを紹介します。

仮想通貨は海外取引所に置いていても「国外財産」にならない 国外財産調書の対象外だが財産債務調書には要記載

仮想通貨については所有者の居住地で判断するため、海外取引所で保管していても「国外財産」として取り扱わないのがルールです。そのため、国外財産総額の計算に入れる必要もありません。ただし、財産債務調書の提出要件を満たす人は、国内の資産として仮想通貨記載・申告が必要です。

海外不動産は購入経路を問わず「国外財産」 評価額は時価または見積価額で円換算する

すでに解説した通り、海外不動産は購入経路を問わず所在地で判定するため、原則として「国外財産」となります。評価額は見積価額を円換算するのが一般的です。

以下は見積価額として利用できるものの例です。

・固定資産税に相当する税の課税標準額
・取得価額に価格変動率を乗じた価額
・譲渡価額(ただし、国外財産調書を提出する年の1月1日から提出期限までに譲渡した場合に限る)

専門家による鑑定を受ければ時価による評価も使用できます。

国外財産調書と財産債務調書は別物 5,000万円超でも両方の提出義務が同時に発生するケースがある

国外財産調書と同じく6月30日が提出期限の書類に、財産債務調書があります。財産債務調書は高額な資産を持つ人に適正に課税するための書類で、申告義務がある対象者は以下の条件を満たす人です。

・退職所得を除く所得金額の合計額が2,000万円を超える
・12月31日時点における財産の合計額が3億円以上、または合計1億円以上の国外転出特例対象財産を保有している
・(令和5年分以後)所得金額の多寡にかかわらず財産が合計で10億円以上ある

上記3点に該当する人は保有している財産の種類や数量、価額、債務の金額などを所定の様式に記入し、所得税の納税地を管轄する税務署へ提出する必要があります。

・12月31日時点で国内外あわせて3億円以上の財産があり、そのうち国外財産の合計額が5,000万円を超える人
・12月31日時点で1億円以上の国外財産がある人

上記に当てはまる人は、国外財産調書と財産債務調書の両方を提出する義務があります。提出漏れにはペナルティがあるため、注意が必要です。

4. 未提出・記載漏れのリスクと期限前に確認すべきこと

ここでは、国外財産調書を提出しなかったり不備があったりしたときのリスクなどについて紹介します。国外財産調書を期限までに提出しなかったり、記載すべき項目が漏れていたりすると処罰の対象となるおそれがあります。まずは12月31日時点での財産合計額をチェックし、提出義務があれば期限内に調書を出せるよう計画的に準備を進めることが大切です。

未提出は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 2019年には刑事告発の実例も

正当な理由なく国外財産調書を期限までに提出しなかった場合、国外送金等調書法第10条により、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されるおそれがあります。必ず期限までに提出しましょう。2019年には故意に国外財産調書を提出しなかった法人経営者の男性が刑事告発された事例があります。

特に財産の内容が変化していなくても、円相場や株式・不動産相場などの変動により「日本円で5,000万円超」の条件を満たして提出義務が発生することがあります。毎年12月31日時点で日本円換算した財産合計額を確認することが大切です。

記載漏れは加算税5%加重 逆に適正提出で申告漏れが出ても5%軽減される

国外財産調書を提出したものの、記載漏れがあった場合は加重措置として加算税が5%加重されるペナルティがあります。提出前に税理士などの専門家に相談し、記載漏れのないよう注意しましょう。

なお、期限内に調書を提出することで申告漏れに対する軽減措置が受けられることもあります。記載された国外財産に関して所得税や相続税の申告漏れがあった場合、本来課せられる過少申告加算税または無申告加算税を5%軽減する措置です。

CRS(共通報告基準)で海外口座情報は国税庁に自動通知されている 「バレない」は通用しない時代

かつては海外の情報を入手するのが難しかったため、海外に保有する財産を申告しなくても国税庁に「バレない」時代がありました。しかし、現代ではCRS(共通報告基準)が整備されたことにより、世界の100以上の国と地域の間で非居住者が持つ金融機関の口座情報などを交換することが可能になっています。

したがって国外財産調書を出さなければ海外の財産が「バレない」という考えは危険です。提出義務のある方は必ず期限内に提出しましょう。

まとめ

国外財産調書の提出件数は毎年増加しています。相場の上昇や円安により新たに提出義務が生じることもあるため、海外に財産を持つ人は毎年自身の国外財産合計額をチェックしましょう。

現代はCRSにより国税庁が海外口座情報を把握しやすくなっているため、申告しなくてもバレないと考えるのは危険です。未提出や記載漏れにはペナルティが課せられることもあります。国外財産調書の提出義務がある方は税理士などの専門家に早めに相談し、期限内に提出しましょう。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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