倒産件数が6カ月ぶりに減少したのに、物価高倒産が月100件近い高水準のままなのはなぜ?

帝国データバンクが2026年6月8日に公表した「全国企業倒産集計 2026年5月報」によると、5月の全国倒産件数は771件(前年同月比7.7%減)となり、6カ月ぶりに前年を下回りました。
一見「倒産が減った」と受け取れるこのニュース。しかし、数字の内訳を見ると、中小企業の経営者にとって安心できない状況が浮かび上がります。特に気になるのが、「物価高倒産」が97件と100件近い高水準で推移しているという事実です。なぜ倒産全体が減ったのに、物価高倒産だけが増え続けているのでしょうか。
5月の倒産件数771件——ただし「累計では前年超え」が続いている
5月の単月倒産件数は771件で、前年同月(835件)から64件減少しました。業種別にみても主要7業種すべてで前年を下回り、件数の面では「落ち着き」が見られます。
しかし注目すべきは累計の数字です。2026年1〜5月の累計倒産件数は4307件と、前年同期(4134件)を173件・4.2%上回っています。5月だけが特別に「良かった」だけであり、倒産が減少トレンドに転じたわけではありません。
また、負債総額は1112億4800万円(前年同月比19.1%増)と3カ月連続で前年を上回りました。東証スタンダード上場の㈱トーシンホールディングス(負債162億円)が会社更生法を申請するなど、規模の大きい倒産が増えているのも気になる点です。
「物価高倒産」が97件——前年同月比40.6%増で6カ月連続上回る
今回のレポートで特に注目されるのが「物価高倒産」の件数です。5月は97件と、前年同月(69件)から40.6%増加。前月(108件)に続き、100件近い高水準が続いています。
業種別にみると、製造業が22件で最多、建設業が20件で続きました。要因別では「原材料価格の高騰」が49件で最多、「エネルギーコスト」20件、「人件費」19件の順となっています。
倒産全体が前年比で減っているにもかかわらず、物価高倒産だけが増え続けている背景には、コスト上昇分を価格に転嫁できない中小企業の構造的な苦しさがあります。特に建設業や製造業では「材料価格を中心に物価上昇の高止まりを予想しているため、厳しい状況が続く」(同報告書より)という声が現場から寄せられています。
「ゼロゼロ融資後倒産」は減っているが、夏場からの急増を懸念
一方、コロナ禍の無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)を受けた後に倒産した件数は46件と、3カ月連続で前年を下回りました。人手不足倒産(28件)や後継者難倒産(44件)も、それぞれ前年を下回っています。
ただし、同レポートは今後の見通しについて次のように警告しています。中東情勢を背景とした原材料・エネルギー価格の高騰が続く中で、「大手企業と中小企業では今後、さらに格差が拡大する可能性がある」とし、引き続き倒産は増加傾向を辿るものとみています。
特に懸念されるのが、ナフサ由来の素材を多く使う建設業・製造業への影響です。塗装・防水工事では1〜5月の倒産が80件と高水準で推移しており、今後の資材価格動向によっては2000年以降で最多を更新する可能性があるとされています。
中小企業経営者が今から備えるべきこと
今回のデータは、「倒産全体が減った」という表面の数字だけを見ると、実態を誤解するリスクがあります。累計件数は前年超えが続き、物価高倒産は高止まりしており、夏場以降も楽観できる状況ではありません。
特に以下のような状況にある中小企業は、早めの対策が必要です。
・原材料やエネルギーコストの上昇が続いており、価格転嫁が進んでいない
・ゼロゼロ融資の返済が続いており、資金繰りに余裕がない
・建設・製造業など、ナフサ関連資材の影響を受けやすい業種に属している
資金繰りの見直し、銀行との関係強化、コスト管理の徹底など、今のうちに経営の体力を確認しておくことが重要です。不安がある場合は、税理士や中小企業診断士などの専門家に相談することをおすすめします。
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