税務署と話し合えば、「分割」「猶予」の道もある
~どうしたらいいのか? 税金の滞納・その2~

税務署と話し合えば、「分割」「猶予」の道もある  ~どうしたらいいのか? 税金の滞納・その2~

2019/4/8

 
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事業で利益が出ているのに、税金を納めていない。その場合に税務署は、督促→財産の調査・捜索→差押え→公売という手順で、「滞納処分」を執行します。“身から出た錆”とはいえ、一気に税金の滞納分の支払いを迫られたり資産を差押えられたりした結果、事業や生活に支障をきたしたら、困ってしまいます。ピンチを脱する方法はあるのでしょうか? 今回も、林聰先生(林会計事務所)に聞きました。

滞納した税金は一括納付が基本だが

税金の滞納分を納めたくても、そのための資金が足りない。そんな状況も、たまってしまった税の申告をためらわせる原因になっているのではないでしょうか。
そうかもしれません。でも、税務署はいつか必ずやってきます。前回もお話ししたように、「傷」は浅いほうがいい。滞納があったら、すぐにその解消に向けた行動を起こすべきなのです。
 税務署も鬼ではありません。それに、納税者を事業の継続が危ぶまれるほど追い詰めてしまったら、取れる税金も取れなくなってしまうでしょう。むろん滞納者に対して甘くはないですが、「聞く耳」は持っていると考えてください。
滞納している方が相談に来たら、先生はまずどのような手を打たれるのでしょう?
無申告がある場合、とりあえず税額を計算して申告します。税金は、期限までに一括納付が原則ですから、延滞した場合も同様です。とはいえ、やはり積もり積もった税金を一度に払うだけの力がない場合もあるでしょう。そんなときには、税務署と分割納付などの交渉を行っていくことになります。
分割には応じてもらえるのですね?
もちろん、二つ返事で「はい、いいですよ」というわけにはいきません。会社の今後の収支予測を立て、毎月どのくらい支払えるのかという納税計画を示して、税務署に納得してもらう必要があるのです。そういう姿勢や裏付けもなしに、「払えばいいんだろう」というような対応をしていると、税務署もあまりいい印象は持ってくれないと思います。

延滞税が免除されることもある

そのように滞納分の一括納付を待ってもらうことを、「換価の猶予」「納税の猶予」といって、それぞれ要件が定められているんですよ。
 「換価の猶予」から説明すると、まず「納付すべき国税を一時に納付することにより、その事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること」(国税徴収法)です。
そういう可能性があれば、猶予に応じてもらえる可能性がある。滞納したら、問答無用で何でもかんでも持っていかれるわけではないということは、ちゃんと法律に明記されているわけですね。
そうです。そのほか、納付すべき国税の納期限から6ヵ月以内に換価の猶予の申請書が提出されていること、原則として他の国税の滞納がないこと、同じく滞納額に相当する担保があること――などが定められています。
 「滞納者が納税について誠実な意志を有すると認められること」と、わざわざ記されていることにも注目する必要があるでしょう。国税局に行くと、時々滞納整理の部署のブースで、机を叩きながら署員に文句を言っている方を見かけることがあります。その度に「ああ、損なのになあ」と、感じるんですよ(笑)。
先ほど先生のおっしゃった「姿勢」の問題が意外に大事なんだということは、しっかり理解しておく必要がありそうです。
一方災害や病気、あるいは事業の休廃止などによって一括納付が困難になった場合、一定の期間が経過した後に納付すべき税額が決定した場合、要するに修正申告などによって大きな税額が発生した場合に適用されるのが「納税の猶予」です。
 こうした「猶予」のメリットは、実は納税を待ってもらえるだけではありません。「換価の猶予」では、前回説明した延滞税の一部、「納税の猶予」ではその全部か一部が、免除になる可能性があるのです。
延滞税は、決してバカにはなりません。
そう。滞納をそのままにしていて、ちゃんと猶予が受けられなかったら、それも重くのしかかってくるということを認識すべきでしょう。
ちなみに、一度財産を差押えられてしまったら、もう元には戻らないのでしょうか?
そこも交渉です。やはり事業や生活に影響が出るような場合には、説得力のある納税計画を基に、差押えの解除を求めていくんですよ。例えば、法人税、消費税、源泉所得税(※)の滞納がある場合に、「とりあえず源泉所得税を払います」といった話をして、一部の差押えを解除してもらう話し合いをしたりもします。
 差押え換えといって、事業活動に影響する差押えを解除してもらい、別の財産を「差し出す」ようなやり方もあるんですよ。もちろん、税務署が認めてくれたらという話ですけど。
仮に財産の差押えがあっても、公売されてしまう前なら、打てる手はあるということですね。

※源泉所得税
企業が従業員や報酬を受け取る人から源泉徴収し、本人に代わって納める所得税。

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