「二重課税」の疑惑あり!? あるべき課税を考える
~「競馬と税金」の真実・その3~

「二重課税」の疑惑あり!? あるべき課税を考える  ~「競馬と税金」の真実・その3~

2019/4/4

 
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競馬に勝って得た利益は、確定申告の対象。しかも、外れ馬券の購入金額は、経費には認められない。世間一般には馬券で儲けたお金に対して税金払って当たり前という考えが通りやすそうですが、こうした扱いに不満を覚える競馬ファンは、少なくないようです。一部には、「払戻金に所得税をかけるのは、国による『二重課税』ではないのか」という指摘も。「その問題も含めて、『競馬と税金』については、そろそろ整理すべき時ではないでしょうか」と田邉達也先生(田邉達也税理士事務所)は話します。

収益の10%は、自動的に国庫に

ところで、JRAの馬券購入者への払戻率はどのくらいか、ご存知ですか?
レースの賞金などに充てるため、主催者であるJRA自身の取り分などもあるわけですよね。さあ、どれくらいなのでしょう?
およそ75%なんですよ。残りの25%のうち、約15%がおっしゃるようにJRAの取り分、そして10%は国庫に入っているのです。馬券を買った人間は、当たろうが外そうが関係なく、その時点で購入金額の10%を納税しているのと同じこと。
なるほど。そういうことになりますね。
さらに言えば、10%というのは第一国庫納付金といわれる部分で、賞金などを支払った後に余剰金があれば、第二国庫納付金として、そのぶんも「徴収」される仕組みになっているのです。ちなみに、2017年度には前者が約2760億円、後者が300億円でした。
合わせて3000億円ですか。けっこうな金額です。
それにもかかわらず、当たって払戻金をもらったら、そのぶんを税務申告せよというのは、税金の二重取り=「二重課税」ではないのか、と言う人もいます。私自身は、「これは二重課税だ」と声高に主張する立場にはありませんけれど、そういう矛盾というか不透明さを抱えたままで、前回まで説明したように国税が「一時所得」に固執したりするのは、ちょっと理屈に合わない感じがするのは確かですね。
 そもそも、「馬券の払戻金は一時所得」と定めたのは、基本的に課税庁内の基準である「通達」であって、国民が従わなくてはならない「法律」ではありません。もちろん、通常の業務においてはトラブルが生じないよう最大限通達を尊重して仕事をしているわけですが、そのレベルの規定1つで競馬を楽しむ人たちをいつまでも縛るということ自体、いかがなものでしょう。
先生は、どのようにすべきだとお考えですか?
個人的な見解であることをお断りしてお話すれば、そろそろ主催者であるJRAなどが提起して、「競馬と税金」についてすっきり整理すべきだと感じるんですよ。品のない表現で申し訳ありませんが、これだけネット投票などが盛んになっている現状では「胴元に自分のデータ売られるんじゃないか?」とビクビクしながら馬券を買う羽目になる。
 例えば、宝くじもサッカーくじも非課税です。そのぶん、購入者への払戻率は低くなっているのですが。
最初から国や自治体の取り分が大きいから、当選したからといって課税はしないということですね。
そうです。競馬や競輪などについても、同じように「利益があっても申告は必要ない」収益配分に作り替えるというのは、1つのアイデアではないでしょうか。
 国の取り分が増えたら、当然、払戻金は減ります。大きく「うまみ」が減ったら、客離れが起こるでしょう。それは、国にとってもうれしいことではありません。ですから、「国の取り分をどこまで増やすか」と、「払戻金のダウンを競馬ファンがどこまで許せるのか」を天秤にかけた検討があってもいいのでは、と思うのです。Win5(指定の5レースの1着をすべて当てるもの)やLOTO的なものの控除率を高くして組み合わせるとか。
好きだからこそ、今後を考える。まさに先生の競馬愛を感じます。
まさか学生時代に競馬サークルに入っていたことが仕事に役立つ日が来るとは思ってもみなかったのですが(笑)、おかげさまで馬主さんや調教師さんの申告も何件か請け負っています。だからといいますか、競馬を見るのはある意味仕事です。やっぱり、お客様の馬は活躍してほしいですから。
馬主の方の申告をお手伝いなさっているんですよね。馬券を買うより儲かりそうな感じがしますけど、実際にはどうなのですか?
それは、私の口からはなんとも。ノーコメントにさせてください(笑)。

田邉達也(税理士)プロフィール

田邉達也税理士事務所 所長
平成12年に税理士試験合格後、会計事務所、不動産会社勤務を経て開業。不動産分野に強く、相続税額の試算や不動産投資のキャッシュフロー作成も得意としている。常にお客さまの利益を考え、フットワーク良く、温かみのある事務所でありたいと奮闘中。学生時代から競馬には精通している。
URL:http://tanabetax.ec-net.jp/

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