今年2月、中央競馬のWIN5(5レースの1着をすべて的中させる)で、4億7000万円超という史上最高額の配当金が発生し、注目を集めました。宝くじとは違い、こうした競馬や競輪などのギャンブルの配当金は、所得税の課税対象になっています。ただ、納税をめぐっては、税務署との間でトラブルになることも。そもそも、当てたら必ず申告しなければならないの? 今回は、「競馬と税金」について、田邉達也先生(田邉達也税理士事務所)に聞きました。
知っていますか? 払戻金に課税の仕組み
~「競馬と税金」の真実・その1~
2019/4/2
「一時所得」か「雑所得」か
先生は、学生時代に競馬サークルに所属なさっていたそうですね。
はい。最近は自分で馬券を買うことはほとんどないのですが、たまにサークルのOB会に出ると、「税理士なのだから、税金に関して競馬ファンが不当な扱いを受けているのをなんとかしろ」と言われたりもします(笑)。
今日はそのあたりのことを中心に、うかがっていきたいと思います。まず、レースの予想を的中させて払い戻しを得た場合の税金について、1から教えていただけますか?
わかりました。あくまで、現在の税務当局の方針である、ということを前提に説明しましょう。競馬や競輪などで得た払戻金は、所得税の「一時所得」に分類されています。
一時所得というのは、サラリーマンの「給与所得」や、各種事業による「事業所得」、資産の譲渡に基づく「譲渡所得」といった、典型的な8種類に該当せず、なおかつ「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外」などの基準に該当するものを言います。
「ギャンブルの税金」については、今の「営利を目的とする……」という基準が、とても重要な意味を持つんですよ。これに該当すれば、一時所得ではない、すなわち「雑所得」の扱いになり、いわゆる必要経費の考え方が変わってくるからです。
一時所得というのは、サラリーマンの「給与所得」や、各種事業による「事業所得」、資産の譲渡に基づく「譲渡所得」といった、典型的な8種類に該当せず、なおかつ「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外」などの基準に該当するものを言います。
「ギャンブルの税金」については、今の「営利を目的とする……」という基準が、とても重要な意味を持つんですよ。これに該当すれば、一時所得ではない、すなわち「雑所得」の扱いになり、いわゆる必要経費の考え方が変わってくるからです。
なるほど。落とせる「経費」が違ってくるわけですね。
そうです。一時所得とされれば、申告の際に収入額から差し引けるのは、「その収入を生じた行為をするため、(略)直接要した金額」(所得税法)のみ。現状で具体的には、当たり馬券の購入金額だけです。一方、「営利を目的とする継続的行為」による雑所得と認められれば、そのためにかかった費用、すなわち外れ馬券に投じた金額も、差し引くことができるとされています。
確定申告をしないサラリーマンは「90万円の儲け」が申告の目安
「自分にとって、ギャンブルは趣味ではなく、生活の糧だ」という人もいるでしょう。
「こっちは一時所得、これは雑所得」という状況を生んではまずいので、税務当局は「一時所得の例示」という通達で、統一基準を設けました。「懸賞や福引の賞金品」や「生命保険の一時金や損害保険の満期払戻金」などとともに、「競馬の馬券や競輪の車券の払戻金等」は一時所得である、と明記されたのです。
実際には、外れ馬券を「経費」計上することはできないんですね。では、一時所得による申告は、どのように行うのでしょう?
払戻金の年間の受取額から、年間投票額、今述べたように当たり馬券の購入金額を引き、さらに特別控除額50万円をマイナスします。その残額の1/2を給与所得など他の総合課税の所得と合算し、確定申告を行います。
一般のサラリーマンの場合、給与所得や退職所得以外の所得が20万円以下であれば確定申告はしなくていいことになっていますから、「(x-50)×1/2=20万円」で、x=90万円。払戻金から当たり馬券の購入金額を差し引いた残りが90万円以下であれば申告は不要ですが、これを超えたら必要だということになります。ただし、医療費控除、ふるさと納税による還付などで、自ら確定申告書を提出する場合には、一時所得の金額が20万円以下であっても申告をする必要があります。
一般のサラリーマンの場合、給与所得や退職所得以外の所得が20万円以下であれば確定申告はしなくていいことになっていますから、「(x-50)×1/2=20万円」で、x=90万円。払戻金から当たり馬券の購入金額を差し引いた残りが90万円以下であれば申告は不要ですが、これを超えたら必要だということになります。ただし、医療費控除、ふるさと納税による還付などで、自ら確定申告書を提出する場合には、一時所得の金額が20万円以下であっても申告をする必要があります。
当たり馬券しか差し引けないとなると、対象になる人はかなりいるでしょうね。ただ、そもそも競馬を当てて税務申告したという人の話を、あまり聞きません。
税理士としては言葉を選ばなくてはなりませんけど、窓口で現金で払い戻しを受け取るような取引を税務署が捕捉するのは、かなり難しいですよね。ただし、今はネットでの馬券購入や配当金の振り込みといった仕組みも普及していますから、そのあたりの事情も変わってきているのかもしれません。
ところで、この間、外れ馬券の購入費を経費として認める最高裁判決が立て続けに出され、反響を呼びました。どうしてそういう判断になったのか? これにより「競馬の払戻金は一時所得」という原則が崩されたのか? そのあたりについては、次回お話ししようと思います。
ところで、この間、外れ馬券の購入費を経費として認める最高裁判決が立て続けに出され、反響を呼びました。どうしてそういう判断になったのか? これにより「競馬の払戻金は一時所得」という原則が崩されたのか? そのあたりについては、次回お話ししようと思います。
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田邉達也(税理士)プロフィール
田邉達也税理士事務所 所長
平成12年に税理士試験合格後、会計事務所、不動産会社勤務を経て開業。不動産分野に強く、相続税額の試算や不動産投資のキャッシュフロー作成も得意としている。常にお客さまの利益を考え、フットワーク良く、温かみのある事務所でありたいと奮闘中。学生時代から競馬には精通している。
URL:http://tanabetax.ec-net.jp/
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