増える「おひとりさま」
相続はどうする? どうなる?

増える「おひとりさま」  相続はどうする? どうなる?

2019/5/15

 
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高齢化が進むに従って、独り暮らしの高齢者、いわゆる「おひとりさま」が増えています。中には、ただ1人で暮らしているというだけではなく、子どもも兄弟もいない「天涯孤独」のケースも。高齢者に限らず、相続人のいない人が亡くなった場合、その財産はどうなるのでしょうか? 今回は、令和の時代にもさらに増加が予想されるそんな相続について、佐藤徹先生(佐藤徹税理士事務所)にお話しいただきます。

「おひとりさま」の相続には、遺言書が不可欠

これも「時代」だと思うのですが、この前法定相続人がまったくいない高齢女性の相続をやりました。

【相続人の範囲と順位】

【相続人判定チャート】

どんな相続だったのですか?
司法書士さんからの紹介だったのですが、財産は自宅やアパートなどの不動産を中心に、1億円程度ありました。彼女は遺言書を残していて、遠い親戚4人と親しかった知人の計5人で、それらを平等に分けてほしい、という内容だったんですよ。不動産については、売却して現金化するように指示されていました。
その相続税の申告を頼まれたわけですね。
相続税は、亡くなってからかかる税金ですが、亡くなる前に、ご相談をいただけるといいですよね。細かなことですが、個人の思いをより確実に叶えるのであれば、不動産を生前に現金化する方が、遺産分割をスムーズに行うことができ、いいと思います。ただし、不動産の売却金額にもよりますが、通常は、売却価額よりも相続税の評価額の方が低くなるので、生前に売却せずに、相続が発生した後に売却した方が、相続税は低くなります。
 やはり、それなりに遺産のあるちょっと複雑な相続の場合には、税金やお金に詳しくて、相続の経験を積んだ税理士のサポートを受けるのが、安全・確実だと思います。宣伝のようで恐縮ですが(笑)。ともあれ、この事例では特に問題が起きることもなく、相続税の申告を終えることができました。
しっかりした遺言書がありましたから。
遺言書があれば、相続人以外の人に遺産を譲ることができます。そもそも相続人がいない「おひとりさま」にとっては、「絶対に書いておくべきもの」ということになるでしょう。
 付け加えれば、遺言書は、やはり「公正証書遺言書」(※)がベストです。自筆の遺言書は、財産目録についてはパソコンでの作成が認められるなど、さらに書きやすくはなりました。でも、リスクも大きいんですよ。
紛失や偽造の危険性がある、日付などを入れ忘れたら効力を失ってしまう……。
加えて、「自分ひとりで書く」ことのリスクがあるのです。自分では明確に意思を伝えたつもりなのだけれど、読み手からすると、「じゃあ、具体的にどう分けたらいい?」というのがイマイチはっきりしない、といったことが往々にして起こる。私自身も、「お気持ちは伝わってくるのだけど……」という自筆の遺言書に、何回か出会ったことがあります。そういう遺言書は、相続を余計に複雑にしかねません。
公証人が書いてくれる公正証書遺言書であれば、そういうリスクは防ぐことができますね。
※遺言書の種類
遺言書には、自分で書く「自筆証書遺言書」、公証役場の公証人が作成し保管する「公正証書遺言書」、自ら書いて封をして公証役場に持参する「秘密証書遺言書」などがある。

もし、遺言書を書かずに亡くなったら

ただ、「独居老人」が急増しているというニュースを目にすると、これから先、身寄りのない人が遺言書を残さずに亡くなるケースも増えるような気がします。そのような場合、財産はどうなるのでしょう?
そのときには、まず「相続財産法人」をつくることになります。相続財産を「法人化」するんですね。法人といっても、法人格があるわけではありません。
ややこしいですね(笑)。
まあ、すぐれて概念的な存在だと理解してください。財産が放置されたままでは話が進まないので、とりあえず管理しようということなんですね。宙ぶらりんでは、不動産の登記もできませんから。
誰が管理するのですか?
利害関係人、例えば故人に債権を持っている人や、あるいは検察の申し立てによって家庭裁判所が選任する「相続財産管理人」です。この人が法人を管理し、財産の精算を進めていくことになるんですね。
 具体的には、本当に相続人はいないか捜索するとともに、債権者がいれば通知を行い、必要に応じて支払いを実行します。さらに、特別縁故者からの申し立てがあれば、内容に応じて財産の分与を行ったりもします。「特別縁故者」というのは、内縁の夫や妻とか、故人を看病してきた人だとか、法定相続人がいない場合に、遺産を受け取る権利が発生した人のことを言うんですよ。認められるためには、家庭裁判への申し立てが必要で、民法に定められた要件をクリアする必要があります。
それでも分ける相手が見つからなかったり、遺産が「余ったり」した場合は?
そのときは、国庫に入ることになります。築いた財産をどうするのかというのは、ある意味人生最後の決断ですから、やっぱり遺言書を残してその意思を示してもらいたいと思いますよね。

佐藤徹(税理士)プロフィール

佐藤徹税理士事務所 所長
日本有数規模の税理士法人にて相続申告では300件、事業承継では50人を超える相談に対応。仕事の質を維持しながらも手ごろな価格で対応する税理士を目指して、2016年に独立開業。金融機関やハウスメーカーからセミナー・研修等の依頼を通算100回以上受ける人気講師でもある。
URL:http://www.10000-consultation-office.com/

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