弁護士にも、離婚問題や相続などの案件に取り組む“マチ弁”もいれば、労働争議に強い人、あるいは企業法務のエキスパートなど、いろんな専門家がいます。税理士も同じで、相続に詳しい先生もいれば、そうでない人もいる。その選択を間違えると、思わぬ不利益を被る可能性を否定できないのが、現実のようです。久野豊美先生は、不動産を例に語ります。
例えば、不動産が絡む相続だったら、
不動産に強い税理士に頼む。それが鉄則
2015/1/28
みんなが不動産に強いわけではない
例えば、父親の土地の上に、息子が会社を設立したとします。事実上、親の土地を「タダで借りる」わけですが、この場合、土地の贈与が行われたと認定される可能性があります。そうならないために、普通は税務署に「土地の無償返還の届出書」を提出するよう、アドバイスします。簡単に言えば、「将来、土地は親に無償でお返しします」というもので、これをすれば、贈与税が課せられることはないのです。
ところが、この届けをしていないケースが、結構あるんですね。会社なのだから、当然、顧問税理士がいます。なのに届け出ない理由は、その税理士が不動産関係に疎くて、「届出書」の存在を知らないから、としか考えられません。
出し忘れたら、アウト?
相続において、不動産のウェートが高い場合、その分野に強い税理士に頼むべきなのは、言うまでもないでしょう。自分のことを言うのは大変気が引けますが、私は宅建(宅地建物取引主任者)の資格を持っています。不動産を勉強しないと、取れない資格です。これを持つ税理士は多くいますから、そうした点も基準に人を選ぶのも、一つの方法でしょう。 ところで、今の例。相続時まで届けを出し忘れていたら、土地は100%評価になってしまうのでしょうか? 必ずしもそうはならない、と私は考えています。
私のところにいらした相談者が、まさにそのパターンでしたが、私は、相続税の申告と同時にこの無償返還の届けをするよう、アドバイスしました。法には、この届けは「遅滞なく」提出するように、と書かれています。相続発生後でも、認められる可能性があるからです。税理士の指南ひとつで、無税と認められるかもしれないし、大幅な課税を余儀なくされるかもしれない――。その「怖さ」をご理解いただくために、今回はあえて私自身が経験した、こんな例を挙げさせていただきました。もちろん、「税理士選び」が大事なのは、不動産に、あるいは相続に限った話ではありません。
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