メリットとリスクを比較しよう
~本当は怖い「事業承継税制」・その3~
メリットとリスクを比較しよう  ~本当は怖い「事業承継税制」・その3~

2019/2/20

 
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安定経営に不可欠な自社株を、“贈与税・相続税ゼロ”で後継者に渡すことができる事業承継税制の特例措置ですが、適用されたからといって、手放しで喜んでばかりはいられない現実がありました。では、この制度を「使うべきか・やめておくべきか」の判断基準は、どのあたりにあるのでしょうか? 引き続き、エスペランサ税理士法人の藤本周二先生にうかがいます。

「そんな話、聞いてないよ」

事業承継税制の特例措置に関する「2つのリスク」についてお話しいただきましたが、実際に事業承継を考えている経営者の意識は、どんな感じなのでしょう?
事業承継をテーマにしたセミナーで、リスクの話をします。すると、大半の方が「本当ですか?」と驚かれるんです。「顧問税理士の先生は、そんなことは言ってなかった」と。中には、「税理士に相談して、すでに使い始めている」という人も、けっこういらっしゃいました。多くの場合、「事業承継税制が新しくなって、とにかく自社株はタダで息子に渡せるようになったんでしょ」という感覚なんですね。あえて言えば、多くの税理士さんも、それに近いと感じます。
2018年度からの特例措置の導入を伝える新聞などでも、そういうトーンの報道がされました。
贈与も相続も、100%の納税が猶予される。適用の要件も、大きく緩和された。後継者さえ決まれば、もう事業承継に悩まなくていい――。実際、国の狙いもそこにあるのでしょう。でも、現実には、説明してきたようなリスクが厳然としてあるわけですね。例えば1回でも税務署への「継続届出書」を出し忘れたら、「猶予していた相続税を、利子税も含めて一括でお支払いください」と言われても、文句は言えないことになっているのです。
あえて認めた特例なのだから、ということなのでしょうか。
まあ、日本の税制はいつもそうなのですけれど、制度を作ってから現場でいろんな不都合や矛盾が認識されると、その部分を通達やQ&Aなどでフォローしていく、というパターンですよね。
おっしゃるように、事業承継税制自体、徐々に使いやすい方向へと変更が加えられてきました。
ですから、「2つのリスク」についても、今後何らかの手当てがされていく可能性は、あるのではないでしょうか。ただし、それは将来の話です。現状では、「タダで譲ることができる」ということばかりに目が行くと、大きな問題を抱え込むことになるかもしれないのです。

「少しずつ贈与」を基本に置く

ただ、先生のお客さまでも、特例の適用を始めたところがあるというお話もありました。「やるかやらないか」は、どこで判断なさっているのでしょう?
まず、「1つ目のリスク」の相続人の問題については、自社株を譲るのが1人っ子であれば、ノープロブレムです。そこが1つの判断材料になるでしょう。2つ目の長期間のフォローの課題も含めてトータルに考えた場合には、ズバリ「特例措置を適用すると、金額的なメリットがどれくらいあるのか?」を基準に検討すべきだと思います。
自社株の株価はどれくらいで、それに伴う贈与税、相続税が具体的にいくらになるのか、ということですね。
そうです。そのメリットが大きいのならば、私の感覚で言えば5億円ぐらい違うのであれば、適用を考えるべきかもしれません。逆に納税が1000万円程度で済むのにやろうという方がいたら、私は止めます。リスクと釣り合わないばかりか、しかるべき事務所にフォローを依頼することにより、新たなコストも発生するわけですから。
そこも考慮に入れる必要があります。
あとは、会社の規模や、税金の支払い能力、先代と後継者の考え方ということになるでしょうか。ちなみに、私の事務所では、現在事業承継税制の対象になる会社が50社ほどありますが、実際に適用したのは、今のところ5社なんですよ。
すべてのお客さまに、ずっとお話しいただいたことを説明するわけですね。
はい。そのうえで、最終的にはお客さまの判断ということになりますが、大半は、初めは適用を考えていても、「そういうことなら、やめておこう」という結論になるんですよ。
やめた方には、どんなアドバイスを?
ある意味、自社株対策の「鉄板」である、「後継者に少しずつ株を譲渡していきましょう」という話をして、そのためのサポートを行います。あとあとのことを考えたら、少し無理をしてでもこのやり方で承継を終えるのが、やっぱり理想です。逆に言えば、株価が高すぎたりして、どうしてもそれが困難なケースでは、きちんとリスクを認識し対策を講じたうえで、事業承継税制を活用すべきでしょう。
 セミナーに来た経営者の方を見ていて私が心配になるのは、「税制が新しくなったから、もう自社株対策は必要ない」と思い込んでいる方が、決して少なくないということです。もう一度、「それは誤解です!」と申し上げておきたいですね。
早合点は禁物ですね。事業承継をお考えの方は、それに詳しい専門家に一度相談なさることをお勧めします。
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