会社設立ではさまざまなことに気をつけよう! 会社設立の注意点とは | MONEYIZM
 

会社設立ではさまざまなことに気をつけよう!
会社設立の注意点とは

サラリーマンから起業をしたり、個人事業主から法人成りしたりと、会社設立にはいろいろなケースがあります。しかし、どのようなケースの会社設立であっても、設立にあたっていくつか注意しなければならない点があります。

 

そこで、ここでは設立前、設立時、設立後に分けて、会社設立の注意点を解説します。

会社設立前に注意したいこと

まず、会社設立前に注意したいことについて見ていきましょう。会社設立前に注意したい事は、ずばり税金のことです。なぜなら、税金のことに注意せずに会社を設立してしまうと、必要以上の税金を納める必要でるケースがあるからです。会社設立前に注意したい税金には、次のものがあります。

資本金の金額によって税負担が異なる

会社を設立する際には、資本金の金額を決める必要があります。以前、株式会社を設立する際には最低1,000万円の資本金が必要でしたが、現在は資本金の最低金額はありません。

ただし、資本金が多いと、それだけ対外的な信頼が高くなりますが、税負担も多くなります。例えば、法人税の税率は資本金によって、次のように定められています。

 

法人税の税率

区分 所得金額 税率
中小法人
資本金1億円以下
年800万円以下の部分 15%
前3年の平均所得が15億円を超える場合は19%
年800万円超の部分 23.2%
中小法人以外
資本金1億円超
一律 23.2%

 

年800万円以下の所得の場合は、中小法人であれば、大きく税率が下がります。

 

また、資本金の金額が3,000万円以下の中小企業者(特定中小企業者等)の場合は、中小企業経営強化税制の税額控除の割合が高くなるなど、資本金の金額で税の優遇措置の適用可否が変わります。

 

会社設立時には、自社が適用したい税率や税の優遇措置を考慮して、資本金の金額を設定する必要があります。

消費税の免税判定に気をつけよう

法人設立時の資本金で特に気をつけなければならないのが、消費税の免税判定です。

会社を設立すると、最大2年間は消費税の納付を免除されますが、この免除を受けるには「資本金1,000万円未満であること」という条件があります。資本金1,000万円以上の会社は設立年度から、消費税を納付する必要があります。

 

しかし、資本金1,000万円未満の法人であっても、2年目についてはさらに判定があります。1年目の上半期の売上や給料の支払い額が1,000万円を超える場合は、2年目に消費税を納付しなければなりません。逆に、1年目の上半期の売上や給料の支払い額が1,000万円以下の場合は、2年目も消費税の納付が免除され、少なくとも1年間は消費税が免税されます。

 

消費税の金額は、他の税額と比べて納付額が大きいです。設立時の資本金を1,000万円未満にすることで少なくとも1年間は消費税が免税され、大きなメリットになります。

会社設立時に注意したいこと

次に、会社を設立するときに注意することを見ていきましょう。会社を設立するときに注意したいことは、税金面のことではなく、会社の重要事項についてです。会社設立時に注意したい重要事項には、次のものがあります。

設立登記事項についての注意点

会社の設立時に注意したいことのひとつが、設立登記事項のことです。設立時には、法人名や所在地など会社の情報を、法務局で登記しますが、ここで注意したいのが「類似商号」です。

 

昔は同じ地域に同業種で同じ名前、もしくは類似している名前の法人が既にある場合は、設立登記をすることができませんでした。これは、同じ名前の会社が近くにあることにより、企業の営業活動に不利益を与える可能性があるからです。

 

しかし、現在はこの規定はありません。極論をいうと、同じ地域に同業種で同じ名前、もしくは類似している名前の法人が既にある場合でも、設立登記をすることは可能です。

 

ただし、設立ができたといっても、不正競争防止などの観点から、損害賠償や商号を使うことを差し止めるなどの請求をされる可能性はあります。そのため、事前に同じ会社名が使用されていないかどうかを必ず調査する必要があります。

 

決算月の決め方の注意点

会社の設立時では、決算月をいつにするのかを決めなければなりません。しかし、決算期をいつにしたら良いか迷う人も多いです。決算期を決めるときに、まず考えるべきことは繁忙期を避けることです。

 

決算月では棚卸などさまざまな業務を行う必要があります。また決算月から2か月以内に法人税などの申告書を作成し、税務署などに提出しなければなりません。これらの作業はかなりの労力を要するため、繁忙期に決算月を設定することは避けるようにしましょう。

 

次に考えたいのが、納税のことです。原則、決算月から2か月以内に法人税や消費税などの税金を国などに納める必要があります。そのため、資金に余裕のある月に決算月を設けたほうが、資金繰りが楽になります。

会社設立後の注意点

最後に、会社設立後の注意点です。会社設立後は、主に給料関係について注意する必要があります。会社設立後に注意したい給料関係の事項については、次のものがあります。

役員報酬の決め方に気をつけよう

個人では事業主への給料を経費にできませんが、会社では、経営者への報酬を役員報酬として経費にできます。ただし、役員報酬を経費にするためには、その報酬が定期同額給与でなければいけません。定期同額給与とは、次の条件にあてはまる給与のことです。

 

  • 支給時期が毎月(1月以下の一定の期間)であること
  • その会計期間の毎月の給料額が同額であること

 

役員報酬は、1年間に会社が生み出すであろう利益を予想して、金額を決めることになります。しかし一度役員報酬を決めると、会社を設立した年度にその金額を変更した場合は、役員報酬が経費になりません。会社の利益を事前にしっかりシミュレーションしておく必要があります。役員報酬は通常、定時株主総会の決議などにより金額が決まります。

 

設立した年の次の年度からは、定時株主総会の決議で役員報酬の金額を変更できます。

 

なお、定時株主総会によって役員報酬の金額変更を決定した場合、会計期間開始の日から3か月以内の役員報酬の変更であれば、会計年度の途中で金額を変更しても、上記2つの条件を満たすとし、定期同額給与として認められます。

社会保険料の負担に注意する

個人事業主から法人成りした場合に、特に気をつけたいのが、社会保険料の負担についてです。個人事業主が1人で仕事をしている場合や従業員が5人未満の場合は、社会保険に加入する必要はありませんでした。

 

しかし、法人の場合は、会社に在籍するのがたとえ、経営者1人の場合であっても、社会保険に加入する必要があります。そのため、特に従業員がいる場合では、社会保険料の負担が増加します。

 

令和3年3月以降の東京都の社会保険料率(協会けんぽ)は、健康保険料率が9.84%、介護保険料が1.8%、厚生年金保険料率が18.3%となっています。会社は、この半分を負担するため、給与額のおおよそ15%程度を負担する必要があります。

 

このほかにも、労働保険の加入が必要です。

まとめ

一般的に個人と法人では、利益が大きくなると法人のほうが税負担が低くなります。そのため、事業が軌道に乗ると、法人を設立するケースは多いです。しかし、法人の設立には、法人設立前、設立時、設立後でそれぞれ注意をしなければならない事項があります。判断を間違えると、会社に大きな負担がかかる可能性があります。

 

これらの注意点は、経営者一人ですべてを判断することは難しいです。そのため、会社の設立を考えている場合は、できるだけ早く、税理士などの専門家に相談したほうが良いでしょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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