音楽・出版…印税はどのくらい入る?種類や仕組みを解説。過去の印税ランキングも | MONEYIZM
 

音楽・出版…印税はどのくらい入る?種類や仕組みを解説。過去の印税ランキングも

「ミュージシャンや作家の印税が気になる」という方は多いのではないでしょうか。印税とは著作権がある著作物に対する「使用料」です。書籍や音楽など著作物の種類・契約によって印税の種類や収入が異なります。
印税の考え方、音楽・出版物の計算方法、音楽の印税ランキングなどについて解説していきます。

印税とは著作権がある著作物に対して支払われる「著作権の使用料」

印税とは

印税とは著作権がある著作物に対しての「使用料」を指します。
印税の率(パーセンテージ)は「著作権料率」と言い換えることもできます。
著作権法における「著作物」は「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されており、以下の9つが挙げられています。
 

1. 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
2. 音楽の著作物
3. 舞踊又は無言劇の著作物
4. 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
5. 建築の著作物
6. 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
7. 映画の著作物
8. 写真の著作物
9. プログラムの著作物

 

「印税」が支払われるものとして広く知られているものに音楽や小説があります。
今回は音楽・書籍の印税を中心に解説していきます。

印税の計算方法は著作物の種類・契約によって異なる

印税率は著作者(作曲家・作詞家・作家・著者など)と版権を所有する会社(出版社・音楽出版社など)の間で取り決めます。
 

音楽の場合は著作権印税・原盤印税・アーティスト印税の3種類があります。作曲家・作詞家などの収入になる「印税率」は合計23%程度です。
 

書籍は一般書で10%程度の事例が多いです。音楽・書籍に分けて計算方法を見ていきましょう。

音楽では、著作権印税・原盤印税・アーティスト印税の3つがある

音楽では作曲者・作詞家などに対して、著作権印税・原盤印税・アーティスト印税が発生します。一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が著作権の管理者であり、音楽を利用したいTV局などはJASRACに使用料を支払います。

著作権印税

著作権印税とは、利用者(テレビ局・カラオケ事業者・コンサート主催者など)が著作権管理業者の一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)に支払います。JASRACと作詞者・作曲者が著作権信託契約を結んでいる作品の場合、1曲の使用料について少なくとも5割をJASRACが直接作詞者・作曲者に分配します。
作詞者・作曲者に5割以上としている理由は、音楽著作権管理団体の国際組織CISACが「演奏権に関する標準相互管理契約書」で「著作者保護のため1曲の使用料に占める音楽出版者の取り分の合計は1/2を超えてはならない」という条項を設けていることです。
 

音楽出版者がJASRACと著作権信託契約を結んでいるものの作詞者・作曲者が結んでいない場合には、すべての使用料を音楽出版者に分配します。音楽出版者は、作詞者・作曲者へ再分配します。
 

日本ではCDは定価の6%、ライブは定価の5%※が一般的と言われています。
 

例えば地上波のテレビで楽曲を使用する場合、局によって使用料は異なります。1曲1回あたりの放送使用料の単価はローカルTV局の場合3,000~7,200円程度、民放キー局は8,400~12,000円です。

※計算方法には、「1公演ごと」と「1曲ごと」の2種類があり、どちらの方法で計算するかは、コンサートで演奏した曲数や演奏時間などによって変わります。

原盤印税

原盤印税は作曲家・作詞家が著作権法96条に定められたレコード製作者として「レコードを複製する権利」の対価として支払われます。
レコード会社・音楽出版社などと原盤使用料(原盤印税)を定め原盤契約を結びます。
CDは定価の10~18%のケースが多いです。

アーティスト印税

著作権法91条「実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する」に記された権利の対価として「アーティスト印税」があります。
アーティスト印税とは、レコード会社との契約でCDが実際に売れた枚数に応じて支払われる印税です。
日本ではCDは定価の1~3%が一般的です。

1982~2011年までの印税ランキングトップ3と2022年のトップ10

音楽ではTV・ラジオ局などに楽曲が使用された回数・CDの実売数などが印税となります。
 

JASRACでは毎年音楽配信・カラオケ・CMなど、著作物使用料の分配額が多い作品の作詞者・作曲者・音楽出版社の功績と栄誉を称え「JASRAC賞」を発表しています。
 

1982年に創設され、2022年で40回目を迎えました。
 

2022年の分配額トップ10を見てみましょう。

順位 作品名(アーティスト名) 作詞者 作曲者
1 紅蓮華
(LiSA)
LiSA 草野 華余子
2 Pretender
(Official髭男dism)
藤原 聡 藤原 聡
3 Lemon
(米津 玄師)
米津 玄師 米津 玄師
4 白日
(King Gnu)
常田 大希 常田 大希
5 君のうた
(嵐)
ASIL 多田 慎也
A.K.Janeway
6 I LOVE...
(Official髭男dism)
藤原 聡 藤原 聡
7 鬼滅の刃BGM 椎名 豪
8
(中島 みゆき)
中島 みゆき 中島 みゆき
9 宿命
(Official髭男dism)
藤原 聡 藤原 聡
10 エヴァンゲリオンBGM 鷺巣 詩郎

(敬称略)
引用:一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)「2022年分配額TOP10 国内作品(総合)」
 

2011年には、1982年から2011年までの各年度の上位100作品(国内作品のみ)の分配額を集計したJASRAC賞30回記念特別賞が発表されました。
 

1位はSMAPの「世界に一つだけの花」、2位は五木ひろしさん・木の実ナナさんの「居酒屋」3位は都はるみさん・宮崎雅さんの「ふたりの大阪」でした。

本の出版でもらえる印税はいくら?

書籍の印税率は一般書では10%程度、児童書は8%程度と言われています。
出版社との契約形態により著者に入る印税が異なります。

出版物の印税・計算方法

出版物の印税の対象は、契約時に著者と出版社が話し合い決定します。
 

契約時に「発行部数」で契約した場合には、発行された部数すべてに印税がかかります。よって書籍が売れなくても印税は保証されます。
 

実売部数(実際に売れた分)で契約すると、本が売れなければ印税は入りません。
ただし、販売部数が多い場合には作家にとって多くの印税が手に入ります。

発行部数の場合
本の価格 x 発行部数 x 印税率=印税

実売部数の場合
本の価格 x実売部数 x 印税率=印税

電子書籍は印税率が高い

電子書籍はAmazon Kindleの自己出版(KindleDirectPublishing)の場合、紙の書籍に比べて印税率が高くなっています。
販売価格の35%(最低価格99円~最高価格20,000円)もしくは販売価格の70%―配信コスト(最低価格250円~最高価格1,250円)で著者が選択できます。
自身で書籍の内容に合った販売価格を設定し、印税率を選択します。

まとめ

印税とは何か、音楽・書籍の印税の仕組みや種類・計算方法、音楽の印税ランキングをご紹介しました。「印税」と一口に言っても書籍と音楽では仕組みが異なり、興味深いですね。
 

田中あさみ
大学在学中に2級FP技能士を取得、会社員を経て金融ライターとして独立。金融・投資・税金・各種制度・法律・不動産など難しいことを分かりやすく解説いたします。米国株・ETFを中心に資産運用中。
「税金情報」カテゴリの最新記事