国の経済活動の大きさを表すGDPにおいて、2023年の日本の名目GDPがドイツに抜かれ、世界3位から4位に落ちてしまいました。内閣府が発表したGDP値をドル換算すると、日本は4兆2106億ドル、ドイツは4兆4561億ドルという結果になっています。
なぜ日本はドイツに抜かれてしまったのでしょうか。今後の日本経済の見通しとともに解説します。
日本の名目GDPの変動に関する背景情報
日本経済は長年、低迷を続けている
そもそもGDP(国内総生産)とは、国内で作られたモノやサービスの付加価値を表します。名目GDPは、それらの生産数量に市場価格をかけて得られる総額を合計することで算出されます。一方、実質GDPはこの総額から物価の変動による影響を取り除いたものです。例えば、生産された財の価格が一気に2倍になったとき、名目GDPは単純に2倍になりますが、経済の実際の規模が2倍になったわけではありません。そこで、物価変動の影響を考慮しない実質GDPが、経済の実態を正確に反映する指標とされています。
近年、日本の実質GDP成長率は他の先進国に比べて低調でした。この低成長の背景には、低い労働生産性と設備投資額の動向が挙げられます。特に、低賃金の非正規雇用が広く利用されており、労働生産性向上に向けた意欲が高まらない状況が指摘されています。
また、中小企業が全勤労者の7割を雇用しており、これらの企業の多くは投資の原資に限りがあるため、結果的に日本全体の設備投資額が活発化していません。
さらに、日本の人口減少は加速しており、出生数も2022年の79.9万人から2059年には50万人を割り込むとの見通しもあり、今後、さらに少子高齢化が加速することが予想されます。
円安の影響で日本の名目GDPはドルベースで低下!ドイツは物価高で増加
こうした状況下に加えて円安が進行した影響で、日本の名目GDPはドイツに比べて後退してしまいました。
実際に2023年1月時点でのドル円は125円前後でしたが12月時点では140円前後にまで円安が進みました。
一方、ドイツではロシアのウクライナ侵攻を皮切りに物価高が続き、名目GDPが増加している状況です。
内閣府が2月15日に発表したデータによると、物価の変動を除いた実質GDPは2023年10〜12月で前期比ー0.1%、年率ー0.4%という結果でした。2四半期連続のマイナスとなっており、特に個人消費と設備投資を中心に内需が落ち込んでいます。
GDPの過半数である個人消費は前期比-0.2%で、3四半期連続でマイナスとなっています。
新型コロナウイルスの影響から回復しつつも、冬の影響で衣料品や外食の消費が落ち込みました。
また、設備投資も前期比-0.1%と同じく3四半期連続で落ちている状況です。
日本は1968年に国民総生産(GNP)でドイツの経済規模を超え、2009年までアメリカに次いで2位の経済大国でした。
しかし、2010年に中国に名目GDPが抜かれて3位、そして今回ドイツに再度抜かれて4位となっています。
自国の通貨建てで長期推移をみると、日本のGDPの伸び率はドイツに比べて低い状況なので、日本経済の生産性が低いことがわかります。
日本経済は再びGDP3位になるのか
おそらく、日本経済が再びGDP3位になる可能性は限りなく低く、今後、さらに日本のGDPランキングが下がる可能性もあります。たとえば、世界一の人口大国となったインドが2050年には世界第2位のGDP規模まで成長するといわれています。そして日本に限らず、先進国の出生数が低下していることから、日本だけでなく、今後は先進国のGDPが縮小し、人口動態が若い新興国の台頭が予想されます。日本の課題である人口減少や経済の停滞はすぐに解決しない課題であり、新たなテクノロジーの力が必要になるでしょう。