マンションの短期転売に課税強化?いまの税率は約40%、「5年」の数え方を間違えると損する人は

[取材/文責]マネーイズム編集部

都心の新築マンション価格の高騰を背景に、「働く世帯が家を買えない」という声が強まっています。その対策として、自民党がマンションの短期転売にかかる税金を重くする検討を始めました。

結論から言うと、いま個人が所有期間5年以下の不動産を売って利益が出た場合の税率は、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて39.63%です。報道で「約40%」とされているのはこの税率で、与党内ではこれを大幅に引き上げる案が出ています。ただし、引き上げ幅や対象、いつから適用するかは、まだ示されていません。また、「5年」は買った日から数えるのではなく、売った年の1月1日時点で判定するため、5年たってから売っても短期扱いになることがあります。

本記事では、自民党の検討の中身、いまの短期譲渡の税金の仕組みと試算、課税強化で影響を受けそうな人・受けにくい人を解説します。

1. 自民党がマンションの短期転売への課税強化を検討

ここでは、自民党で始まった議論の内容について解説します。

千代田区などから意見を聞き、年末の税制改正論議へ

テレ朝NEWS(ANN)の2026年10月21日の報道によると、自民党は都市部のマンション価格の抑制に向けて、全国に先駆けて転売対策を打ち出した東京都千代田区の区長や大学教授らから意見を聞きました。

会合では、自民党の住宅土地・都市政策調査会長が、2024年に東京23区で販売された新築マンションの約1割が1年以内に転売されたことを挙げ、政府による短期転売対策の必要性を訴えたとされます。千代田区は2025年7月、都市開発諸制度や市街地再開発事業で販売されるマンションについて、引き渡しから原則5年間は転売できない特約を付けることや、同じ建物で同じ名義の人が複数の住戸を買うのを禁止することを、業界団体(不動産協会)に求めています。

与党内では、所有期間5年以下の短期売買の税率(現在は約40%)を大幅に引き上げる案が浮上しており、年末の税制改正論議に向けて議論が本格化する見通しです。一方、出席した議員からは「働いている世帯が住宅を買えるようにしないといけない」という意見のほか、すでに購入した人が大きな影響を受けないよう配慮すべきだとして、規制に慎重な意見も出ています。

新築マンションの短期売買は東京の都心ほど多い

国土交通省は2025年11月25日、不動産登記の情報を使って、三大都市圏と地方4市の新築マンション約55万戸(2018年1月〜2025年6月に保存登記されたもの)の取引を調べた結果を公表しました。

それによると、保存登記から1年以内に売買される「短期売買」は東京都を中心に割合が高く、上がる傾向にあります。都心に近いほど割合が高く、大規模なマンションほど高い傾向もみられました。たとえば東京23区の40㎡以上の住戸では、2024年上期の短期売買の割合が、大規模マンションで9.9%、それ以外のマンションで3.3%でした。

2. いまの短期譲渡の税金はいくら?

ここでは、個人が土地や建物を売ったときの税金の仕組みについて解説します。

短期は39.63%、長期は20.315%

個人が土地や建物を売って得た利益(譲渡所得)は、給与などとは分けて税金を計算する「分離課税」です。譲渡所得は、売った金額から、買ったときの代金などの取得費と、仲介手数料などの譲渡費用を差し引いて計算します。なお、建物の取得費は、購入代金などから所有期間中の減価償却費に当たる額を差し引いた金額になります。

税率は、所有期間が5年以下の「短期譲渡所得」か、5年を超える「長期譲渡所得」かで大きく変わります。

区分 所得税 復興特別所得税 住民税 合計
短期譲渡所得(所有期間5年以下) 30% 0.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得(所有期間5年超) 15% 0.315% 5% 20.315%

※復興特別所得税は、所得税額に2.1%を掛けて計算します(国税庁の2026年4月1日現在の案内による)。表の0.63%・0.315%は、所得税率にこの2.1%を掛けたものです。

短期の税率は長期の約2倍です。報道で「現在は約40%」とされているのは、この短期の合計税率39.63%を指しています。

「5年」は売った年の1月1日時点で数える

見落としやすいのが、所有期間の数え方です。国税庁は、長期譲渡所得を「譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの」、短期譲渡所得を「譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のもの」としています。

たとえば2021年7月に買ったマンションを2026年10月に売ると、買ってから5年以上たっていますが、売った年(2026年)の1月1日時点ではまだ5年たっていません(4年半ほど)。そのため短期譲渡所得になり、39.63%の税率がかかります。長期譲渡所得になるのは、2027年1月1日以降に売った場合です。

つまり、自分で買った不動産なら、実際には「買った日の後に来る1月1日を数えて、6回目の1月1日を迎えた後」に売らないと長期にならない、と覚えておくと間違えにくくなります。

試算:利益1,000万円なら税額の差は約193万円

2021年7月に5,000万円で買ったマンションを6,200万円で売り、仲介手数料などの譲渡費用が200万円かかったケースで比べてみます。計算を単純にするため、建物の減価償却や特別控除は考えず、譲渡所得は1,000万円とします。

項目 2026年中に売却(短期) 2027年以降に売却(長期)
所得税 300万円 150万円
復興特別所得税 6万3,000円 3万1,500円
住民税 90万円 50万円
合計 396万3,000円 203万1,500円

売る時期が数か月違うだけで、税額に約193万円の差が出ます。実際には建物の減価償却費の分だけ取得費が減るため、譲渡所得はこの試算より大きくなります。

※長期の欄は、2026年分と同じ税率で計算した目安です。

3. 課税強化で影響を受けそうな人・受けにくい人

ここでは、検討中の課税強化が誰に影響しそうかについて、いまの制度から考えられる範囲で解説します。

影響を受けそうなのは、短期で売って利益を出す人

議論の目的は、値上がりを見込んで新築マンションを買い、すぐに売る投機的な取引を抑えることです。短期の税率が上がれば、買ってから数年以内に売って利益を得る人の手取りは直接減ります。投資目的で複数の物件を持つ人や、相続・資金繰りなどの事情で近いうちに不動産を売る予定がある人は、議論の行方を注視しておく必要があります。

ただし、現時点では引き上げ幅も、いつの売却から適用されるかも示されていません。すでに購入した人への配慮を求める意見も出ており、内容は年末にかけて変わる可能性があります。

マイホームなら「3,000万円の特別控除」は所有期間を問わない

自分が住んでいる家を売った場合は、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります。住まなくなった家も、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売れば対象です。

そのため、転勤や住み替えなどでやむを得ず5年以内にマイホームを売った人は、利益が3,000万円以内なら、いまの制度では短期でも税金がかからない場合があります。ただし、この特例を受けることだけを目的に入居した家や、別荘などの趣味・娯楽用の家は対象外です。売った年の前年・前々年にこの特例(被相続人の居住用財産に係る特別控除の特例によって受けた場合を除きます)や、マイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を受けている場合、親子・夫婦など特別な関係にある人に売った場合も使えません。適用を受けるには確定申告が必要です。

今回の課税強化の報道では、この特例やマイホームの扱いについては触れられていません。

法人の「土地譲渡益重課」は2029年3月まで停止中

法人が不動産を売った場合、土地・建物の売却収入は益金に含まれ、ほかの利益と合算して法人税を計算するのが基本です。後述の重課制度が停止中のため、現在は個人のような短期・長期の税率の違いはありません。法人の税金の計算や、個人と法人のどちらが有利かについては、不動産を短期売買した場合の税金は個人と法人のどちらがお得?で解説しています。

ただし租税特別措置法には、土地の譲渡益に通常より高い税率をかける「土地譲渡益重課制度」があります。埼玉県の案内によると、法人が土地を売った場合、短期は通常の法人税に10%、長期は5%を上乗せする仕組みですが、1998年1月1日から2029年(令和11年)3月31日まで課税が停止されています。個人が事業として土地を短期で売った場合などにも重課の仕組みがあり、同じく停止中です。

短期転売を抑える方法として、こうした停止中の制度を使うかどうかも、今後の議論の焦点の一つになりそうです。

4. 不動産の売却を考えている人が今から確認しておきたいこと

ここでは、不動産を売る予定がある人が、制度が決まる前に確認しておきたい点について解説します。

・買った年月と、売る年の1月1日時点の所有期間を確認する。数か月待てば長期になるケースもある
・売却益の見込みを、取得費(建物は減価償却後)と譲渡費用から計算しておく。購入時の売買契約書や仲介手数料の領収書は保管しておく
・自宅として住んでいる(住んでいた)物件なら、3,000万円の特別控除の要件に当てはまるかを確認する
・年末にかけての与党の税制改正論議(税制改正大綱など)で、税率・対象・適用時期がどうなるかを確認する

税率が上がる前に売るべきか、長期になるまで待つべきかは、売却益の大きさや資金計画、ほかの特例との兼ね合いで変わります。売却の時期を決める前に、税理士に試算を依頼すると安心です。不動産を売ったときの税金の全体像は不動産の売却時の税金は?計算方法や納付時期、確定申告などを詳しく解説!、使える特例は個人が不動産を売却した場合に使える特例の種類とその内容もご覧ください。

5. まとめ

自民党は、都市部のマンション価格を抑えるため、短期転売への対策の検討を始めました。与党内では、所有期間5年以下の不動産を売ったときの税率(現在は所得税・復興特別所得税・住民税で39.63%)を大幅に引き上げる案が出ており、年末にかけて議論が本格化する見通しです。

いまの制度でも、短期の税率は長期(20.315%)の約2倍です。しかも所有期間は売った年の1月1日時点で判定するため、5年を過ぎてから売っても短期になることがあります。一方、マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除は所有期間を問わずに使えます。不動産の売却を考えている人は、所有期間と売却益の見込みを確かめたうえで、年末の議論の行方を見守りましょう。

※本記事は2026年10月27日時点の報道と、国税庁などが公表している情報に基づいています。課税強化の内容は正式に決まったものではないため、最新の情報は今後の税制改正大綱などでご確認ください。

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