同居して親の面倒をみていた長男と、それ以外の兄弟姉妹が揉める。これも相続争いのよくあるパターンです。献身的に介護したのに、相続においてその貢献が評価されない長男夫婦、といったケースもありますが、逆に他の兄弟の言い分に「理」のある場合も。相続に実績のある税理士法人アクトライズの松尾基宏先生は、兄弟間のこんな相続を経験したことがあるそうです。
「自分は介護した」「親の金を使っただろう」
初めから喧嘩腰の相続の行方は……
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2019/11/19
無職の長男が母親を介護していた
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まず相続について整理しておくと、夫は10年ほど前に他界していて、相続人は2人の子どもです。相続財産は、自宅と大型店に駐車場として貸していた土地が、合わせて3億円ほど。預貯金はほとんどありませんでした。夫の死後、認知症を患っていた母親を、独身で無職の60代の長男が自宅で介護していて、次男は実家を出て家庭を持っていました。
長男は、昔商売をしていて、私が税務申告などをやっていたんですね。そのつながりで、「母の相続を頼みたい」という依頼を受けたのです。
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ちなみに、次男の方からすると、私は「兄貴が連れてきた税理士」です。「どうせ兄の見方をするのだろう」と、私に対しても不信の目を向けているのが、ありありとわかりました。
根っこにあった感情の問題
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そうやってあらためて話を聞いてみると、次男の方には、大きな感情のわだかまりのあることがわかってきました。この兄弟は10歳近く年が離れていたこともあって、「小さな頃から何かにつけて自分が我慢させられた」「兄はいつでも威張っていたのだ」と。
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ともあれ、反発しあっているばかりでは、らちがあきません。主張としては、「駐車場をすべて」という次男の要求が明確でしたので、長男にそれを受け入れる意思があるかどうかに絞って、話を詰めていきました。その結果、自宅は長男が、他の不動産は次男が相続するというかたちで、まとめることができたのです。
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一次相続で考えるべきだった
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配偶者が相続した遺産のうち、課税対象となるものの額が1億6000万円まで、それを超えても法定相続分までは課税されない制度。
両親のうち、どちらかが先に亡くなって発生するのが一次相続、残った親の相続が二次相続。
民法に定められた、相続人が最低限受け取れる遺産のこと。被相続人(亡くなった人)の配偶者、子ども、親などが相続人の場合に認められる。
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