フリーランスは納税義務を果たすために毎年確定申告を行います。作業が多いうえに、多くの場合最後にお金を納めなければならない確定申告を好きだという人はあまりいないでしょう。確定申告では収入や所得を正確に申告する必要がありますが、事業者として、また個人として考えたいのは控除の仕組みを上手に活用することです。今回はフリーランスが活用できる寄附控除について詳しく解説します。
寄附控除とは?
フリーランスなどの個人が国や地方公共団体、公益的な事業を行う法人、政党などの政治活動を行う団体に寄附をすると所得税が減額される場合があります。これが寄附控除です。寄附控除には所得控除と税額控除の2種類があります。
所得控除
フリーランスが確定申告するときには、収入から経費などを差し引いた金額を所得として把握します。しかし、所得のすべてが課税対象となるわけではありません。寄附や医療費、社会保険料など、さまざまな出費の一部または全部が所得控除となり課税対象から除外されます。所得税は、所得から所得控除を引いた金額に対して所得税率を適用して算出されます。
税額控除
所得に所得税率を適用した金額がそのまま納付額となるわけではありません。税額控除はそこから一定の金額を控除するもので、一部の寄附控除ではこの税額控除を選択することができます。所得控除と税額控除のどちらかを選択できる場合、所得税率が関与する所得控除よりも全額が控除される税額控除の方が、多くの場合大きな節税効果を得られます。
寄附金控除(所得控除)
寄附金控除の対象 ― 特定寄附金
寄附が所得控除の対象となるには、「特定寄附金」として認められる必要があります。特定寄附金の主な対象は以下のとおりです。
- 国や地方公共団体
- 公益社団法人、公益財団法人
- 特定公益増進法人
- 公益性が認められる特定公益信託
- 一定の条件を満たす政治活動
- 認定NPO法人
- 特定新規中小会社により発行される特定新規株式
「特定公益増進法人」には、独立行政法人、地方独立行政法人のうちの一部、日本司法支援センター(法テラス)、一定の条件を満たす私立学校、社会福祉法人、更正保護法人などがあります。政治活動への寄附とは、政党や政党支部、政治資金団体、公職の候補者などに対する寄附のことです。特定寄附金として認められるためには、寄附の対象ごとに定められた条件を満たす必要があります。
寄附金控除額の計算方法
寄附金控除額は次の式で計算されます。
特定寄附金の合計額が所得金額の40%を超える場合はその範囲までしか控除を受けることができません。つまり、所得が500万円であれば特定寄附金のうち控除を受けられるのは200万円までであり、仮に220万円を寄附したとしても寄附金控除額は
となります。
寄附金控除を受けるための手続き
寄附金控除を受けるためには、確定申告の際に寄附したことを証明する書類を添付もしくは提示する必要があります。
- 寄附金の受領証(領収書)
すべての対象について、寄附金の受領証(領収書)か受領の電磁的な証明書(「電磁的記録印刷書面」と呼び、電子データを印刷したもの)を添付する必要があります。 - その他の書類
寄附の対象によっては受領証(領収書)以外の書類を提出する必要があります。
寄附金特別控除(税額控除)
寄附金特別控除の対象と税額控除額の計算方法
寄附の対象によっては税額控除を選択できる場合があります。税額控除の計算方法は寄附の対象ごとに異なり、
- 政党などへの寄附金
(税額控除額)=(政党などへの寄附金額の合計-2,000円)×30% - 認定NPO法人などへの寄附金
(税額控除額)=(認定NPO法人などへの寄附金額の合計-2,000円)×40% - 公益社団法人などへの寄附金
(税額控除額)=(公益社団法人などへの寄附金額の合計-2,000円)×40%
となっています。端数が出た場合は100円未満が切り捨てです。
寄附金特別控除の金額も所得による上限があります。政党などへの寄附金や認定NPO法人などへの寄附金、公益社団法人などへの寄附金の合計は所得の40%までしか控除の対象となりません。その他、政党への寄附金単独で所得の25%まで、認定NPO法人などへの寄附金と公益社団法人などへの寄附金の合計が所得の25%までしか控除の対象にならないという制限もあります。
寄附金特別控除を受けるための手続き
寄附金特別控除を受けるための手続きは寄附金控除と変わりません。確定申告するときに受領証(領収書)と他の書類を添付または提示して手続きします。寄附金控除と寄附金特別控除のいずれを受けるか事前に決め、確定申告の際に必要な書類を提出すれば控除を受けられます。
個人住民税の寄附金税額控除
ここまでは国税である所得税が控除される方法について説明してきましたが、寄附をしたときには所得税以外に地方税である住民税も控除される場合があります。
個人住民税の寄附金控除には3つのパターンがあり、最も控除額の大きい「ふるさと税制」については次項で詳しく解説します。残りの2つのパターンでは、基本的には以下のように住民税が税額控除されます。
- 住所地の都道府県共同募金会・日本赤十字社支部に対する寄附金
(住民税控除額)=(寄附金額の合計-2,000円)×10% - 都道府県・市区町村が条例で指定する寄附金
(住民税控除額)=(寄附金額の合計-2,000円)×4~10%
都道府県・市区町村が条例で指定する寄附金の控除率は、都道府県と市町村のどちらが指定したかにより違いますが、両者が指定すると10%になります。
住民税の場合も、控除の対象となる寄附金合計には所得の30%以内という限度があります。住民税の寄附金税額控除の対象になる寄附は所得税の寄附控除の対象にもなっているので、所得税の確定申告を行っておけば住民税で寄附控除を受けるために手続きを行う必要はありません。
ふるさと納税
ふるさと納税とは
ふるさと納税は寄附控除の一種です。ふるさと納税では、地方自治体に寄附をすると原則として「寄附金額の合計-2,000円」が所得税と住民税から全額控除されます。ふるさと納税の控除額は非常に大きく、また寄附金のうち3割までの返礼品を送付することも認められています。ふるさと納税はぜひ活用したい寄附控除です。
全額控除できるか確認する方法
総務省のふるさと納税ポータルサイトに、本人の収入と家族構成からいくらまでのふるさと納税ならば全額が控除されるのかの目安を確認できる早見表が公開されています。また、収入や家族構成を入力すると全額控除の上限額が分かるExcelファイルをダウンロードすることもできます。
ふるさと納税の手続き
ふるさと納税の手続きは確定申告で行います。自治体に応募して寄附したときに発行される受領書などを添付して申告します。
新型コロナとふるさと納税
多くの自治体が、ふるさと納税の仕組みを活用して新型コロナウイルス対策のための寄附を募っています。また、新型コロナウイルス対策以外にもプロジェクトを特定した寄附金募集も増えているため、この機会にふるさと納税を使って応援したい自治体に力を貸すことも検討したい選択肢です。
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フリーランスが活用したい寄附控除の仕組み【個人事業主のお金の話】|3分でわかる!税金チャンネル
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まとめ
公益性の高い団体や活動に寄附をすると所得税や住民税の控除が受けられます。寄附の対象によって、所得控除を受けられるか税額控除を受けられるか、またどれだけの額の控除が受けられるのかなどが異なります。なかでもふるさと納税は控除幅が大きいのでおすすめの寄附制度です。フリーランスの方々はほとんどが確定申告することでしょう。確定申告の時にひと手間加えることで、賢く寄附して世の中に貢献してはいかがでしょうか。