【平成30年度】税制改正大綱の主な変更点を解説! | MONEYIZM
 

【平成30年度】税制改正大綱の主な変更点を解説!

今後の税制度のあり方に大きく影響するであろう、平成30年度税制改正大綱が発表されました。今年度の改正の軸は、個人所得課税の見直しやデフレからの脱却、経済活動の国際化、たばこ税の見直しなどです。毎日の生活に関わる部分での変更も多くありますので、この記事を読んで正確に把握しておきましょう。

所得課税の見直し

まず多くの人に大きく関わるのが、所得に対する課税の見直しでしょう。「働き方改革」を後押しする観点から、フリーランスなど多様な働き方に対応し、税による所得の再分配機能を強めるという2つの目的のために、給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替が検討されます。

 

具体的には、給与所得控除や公的年金等控除を一律的に10万円引き下げる代わりに基礎控除の10万円引き上げが行われ、高所得者の負担が増すこととなります。基礎控除については「逓減・消失型」の計算方式が用いられ、所得が高い人ほど控除が減る、もしくは全くないようになるよう制度設計されています。さらに配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額も引き下げられ、こちらでも本人と配偶者の所得に応じて「逓減・消失型」の計算方式が用いられます。

 

合わせて、青色申告特別控除の控除額も現行の65万円から55万円に10万円引き下げられます。所得税の確定申告書、貸借対照表、損益計算書等の提出を期限内にe-Taxを用いてオンラインで行えば、控除額は現行の65万円のままとなります。

デフレ脱却、経済再生

所得課税を見直し個人の税負担を増大させる一方、政府は今回の税制大綱でデフレ脱却を目的として、企業の賃上げ・生産性向上の奨励や、地域の中小企業の設備投資を促すための税制の導入を積極的に推し進める姿勢を見せています。

 

例えば賃上げを行った企業については、賃上げ金額の一定割合の税額控除を認めています。また企業内外のデータをICTによって活用することで生産性を向上させる取り組みを支援するため、情報連携投資を対象とする特別償却や税額控除ができる仕組みを導入します。

 

また、地域の中小企業の設備投資の促進のため、市町村の求める計画に従った設備投資については固定資産税が減免されることにも注目すべきでしょう。加えて、高齢化する中小企業の経営者の世代交代を行うことで生産性を向上させるため、贈与や相続によって事業を承継する場合に税の優遇が受けられるようになります。

地方財政の構築

それぞれの地域が行政サービスを継続的に提供していくため、確固とした地方税の財政基盤の構築が目指されています。そのための最も大きな変更が、地方消費税の清算基準の抜本的な見直しです。地方消費税はその性質上、最終消費地と税収が帰属する自治体を一致させる必要があり、その判断のための基準は清算基準と呼ばれています。今回の改正では、最新の消費実態をふまえて、生産基準における統計データの扱い方が改められています。

 

基礎自治体の財政を安定的に支える固定資産税については、基本的にこれまでの負担調整措置の仕組みが継続されます。その背景には、3大都市圏では商業地の地価は上昇が続いている一方で、地方では下落幅こそ縮小しているものの依然として下落傾向が続いていることがあります。

経済活動の国際化

この点に関しては大きく分けて、国際課税に関する制度と、外国人の出国後の相続税納税義務の見直しが主に行われます。

 

前者は、いわゆるBEPS(税源浸食と利益移転)などの租税回避や、国際的な脱税を防ぐための施策です。これにより、恒久的施設(Permanent Establishment)の定義や、外国子会社合算税制等の見直しがなされます。

 

対する後者は、より多くの高度外国人材を呼び込み、長期間滞在を促すための施策です。具体的には、外国人が出国後に相続や贈与を行った際、基本的に日本国外にある財産であれば相続税等による課税対象とならないと定め、税負担の重さによって彼らの来日を妨げないようにします。

納税環境の改善

政府は社会のICT化に合わせて、税金に関する申告手続の電子化を促進するとしています。例えば資本金が1億円を超える大会社は原則としてアナログな書面ではなく、e-Taxを通じて法人税や消費税等の電子申告をすることが義務化されます。また給与を受け取っている者の所得税の年末調整も、より容易に電子申告できるよう申告方法が一部変更されます。

 

今回の改正では、適正な納税がより行われるよう特に贈与税・相続税の課税が見直されます。これは一般社団法人・一般財団法人に財産を移すことによる課税逃れや、小規模宅地等の特例の主旨を無視した形での当制度による節税を防止するために行われるものが中心となっています。

たばこ税見直し

政府は、高齢化社会によって社会保障に関する費用の増加が財政事情を逼迫していることを背景として、たばこ税引き上げの必要性を認めています。ただし、単純に財源確保のみを目的として税率が引き上げられるわけではなく、消費者やたばこを生産している農家・たばこを販売している店舗への影響や、国民の健康推進を総合的に考慮して税率は決定されるとしています。

 

また近年普及している加熱式たばこには、紙巻たばことの間に大きな税率格差が存在しますが、どちらも同じたばこであることから、加熱式たばこへの税の計算方法が変更されます。

☆ヒント
経営者にとって税制度の変更は、日常の暮らしはもちろんのこと、ご自身のビジネスにも直接影響するものです。様々な制度がある中、どのような選択をするかでコストは大きく変わってきます。しかしその一方で、現在の複雑化した制度では、普段の経営活動の合間に正しい判断を下すのは決して容易ではないことも事実です。税額の計算は複雑で、面倒な手続きが求められることもしばしばあります。私たちビスカスでは、個々のケースに応じて、その分野に通じた税理士を多数紹介しておりますので、ぜひこの機会にご検討されてはいかがでしょうか。

まとめ

今回の税制大綱では、単純な税率変更や控除の見直しだけではなくICTを用いた新たな納税方法の導入が提唱されています。納税金額を気にするだけではなく、自身にあった納税方法を選択していくことがより一層重要になっていくでしょう。

 

加えて、大綱には今後もフレキシブルに税制度を適宜変更していく旨が明記されています。常に最新かつ正確な情報を把握した上で様々な判断を行うことが必要です。

山田隆裕
慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。
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