本当に「フリーランス減税」か?
2020年から適用される税制改正
本当に「フリーランス減税」か?  2020年から適用される税制改正
最終更新日:
2019/3/14
 
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平成30年税制改正の大綱が発表された際に「フリーランス減税」として話題となった改正が2020年から適用されます。本記事ではこの改正が本当にフリーランス減税と呼べるのか、徹底的に考察します。

所得税控除

2017年12月14日に、「2018年度税制改正大網」が公表されました。この税制改革では2020年からフリーランスの人の所得税が減税される見込みです。

 

働き方の多様化がすすんだことへの対応策として打ち出された税制改革とあって、期待されているフリーランスの方も多いのではないでしょうか。自営業者の間には、昔から「会社員より所得税控除が少ない」という不公平感や批判がありました。それが解消されるのではないかと期待感が高まっています。

 

こうした不公平感や批判の元は、会社員などの給与所得者にだけ認められている給与所得控除です。給与所得控除とは、給与所得額の計算において、収入に応じた一定の額を差し引くことをいいます。会社員として働く上で必要な制服や通勤手当などは会社から支給されますが、スーツや靴などは業務上必要であるにもかかわらず、会社から支給されることがありません。しかし、会社員のスーツ代などの必要経費を個人が各々申告するとなると、税務署がそれをすべてチェックするのは大変な労力が必要なため、現実的ではありません。そこで、すべての会社員に一律の経費を決めてしまい、申告に要する労力のカットと、個別にかかる経費への公平性を目的に設けられたのが給与所得控除です。

 

他方のフリーランスを含む自営業の経費は自己申告です。実際に店舗を構えて事業を営む自営業者に加え、最近ではパソコンひとつで仕事をするフリーランスが増えており、売上の1割程度しか経費がかかっていない人もいます。2020年からはじまる税制改革で、この不公平感が解消されるのではないかといわれています。

3種類の控除の見直し

2020年の税制改革のうち、個人所得の課税に関して大きな影響を与えることになると目されているのが、基礎控除、給与所得控除、公的年金等控除の3つの控除についての見直しです。

基礎控除

基礎控除は納税義務者すべての人に適用される所得控除で、現行では一律38万円が収入から差し引かれています。2020年からは、この基礎控除が48万円に引き上げられます。基礎控除が10万円引き上げられると課税される所得が減り、納める所得税が少なくなります。ただし、下表の通り、事業所得と給与所得の合計額が2,400万円を超えると控除額が段階的に引き下げられ、2,500万円を超える場合はその恩恵が消失することになります。

 

年収 基礎控除額
2,400万円を超え2,450万円以下 32万円
2,450万円を超え2,500万円以下 16万円
2,500万円を超える場合 適用なし

給与所得控除

前述の通り、給与所得控除は会社員等の給与所得者が対象です。基礎控除の38万円と合わせて収入から差し引かれますが、この給与所得控除が一律10万円引き下げられます。給与所得控除が10万円引き下げられると納める税金が増えることになりますが、基礎控除が10万円引き上げられていますから、給与所得者はプラスマイナスゼロということになります。

 

また、控除上限額と、それが適用される収入金額も変更されます。現行制度では1,000万円超の収入で控除される220万円が上限となっていますが、850万円超の収入に対して195万円が控除されるようになります。したがって、850万円を超える収入がある人にとっては実質の増税となってしまいますが、子育て世帯等には負担増が生じないよう配慮する措置が講じられます。

公的年金等控除

国民年金や厚生年金などの公的年金は、年金以外の収入との合計額がいくら高額でも、年金だけで生活している人とまったく同じ控除が受けられる仕組みになっていると指摘されていました。この不公平感を解消するため、今回の税制改革で、高所得者には控除額に上限が設けられることになりました。

 

改正内容は、控除額を一律10万円引き下げ、公的年金等以外の収入が1,000万円を超える場合は控除額に195.5万円の上限を設けます。また、1,000万円以上の場合は控除額を引き下げます。

減税となる場合とならない場合

これまで今回の税制改正で見直される点について述べてきましたが、次は、実際に減税になる人とならない人の違いをみていきます。

青色申告で電子申告の人は減税

現行の税制では、要件を満たす青色申告者は、青色申告特別控除として最大65万円の控除が受けられます。これが今回の税制改革によって10万円引き下げられて最大55万円になりますが、国の納税システム「e-Tax」を使って確定申告をする青色申告者に限り、これまでどおり65万円の青色申告特別控除を受けることができます。この場合は、基礎控除の引き上げと合わせて減税となります。

 

ただし、電子帳簿保存法により国の定める要件に従って帳簿を保存していない場合は、電子申告を利用していても青色申告特別控除は55万円に削減されます。2019年1月現在、クラウド会計ソフトの多くはこの電子帳簿保存法に対応していませんので、帳簿を印刷して保存しておく必要があります。

☆ヒント
青色申告書を印刷して税務署に送付している旧来の申告方法では、これまでのように最高額の控除を受けることができなくなります。税制改革のたびに変わる確定申告の準備で貴重な時間を無駄にしてしまわないためにも、一度ビスカスへご相談ください。ビスカスでは、税理士のご紹介・ご相談を無料で承っております。

青色申告で電子申告をしない人はプラスマイナスゼロ

青色申告者で電子申告を利用せず紙ベースで申告している人は、青色申告特別控除の引き下げ10万円分が増税となりますが、基礎控除の引き上げ10万円の恩恵が受けられますので、合わせるとプラスマイナスゼロとなります。今回の税制改正によるメリットを得るためにも、今後はメリットの多い電子申告を使って申告することも視野に入れていきましょう。

白色申告の人は減税

白色申告の人は基礎控除10万円の引き下げによる恩恵を受けることができ、減税となります。

一部の会社員は増税になる

給与所得控除の引き下げにより、850万円を超える収入のある給与所得者は増税になります。しかし、22才以下の子どもや本人が特別障害者である場合、そして特別障害者である同一生計の配偶者または親族がいる会社員は対象外となっています。

「フリーランス減税」とは呼べない?

2015年におこなわれた、クラウドソーシングサービス業界大手のランサーズ株式会社による調査によると、フリーランスの人口は日本の労働人口の約19%にあたる1,228万人とされています。副業で仕事をする人も含めると、今後もフリーランスは増えていくと予測されます。しかし、フリーランスの平均年収は300万円から400万円となっており、なかなか上昇傾向にありません。

 

その中で今回の税制改正は「フリーランス減税」と期待されていましたが、単なる「給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替」に過ぎず、予想されていたほどの減税効果はありません。たとえば、年収400万円のフリーランスの場合、減税効果は年間2万円程度にとどまります。会社員に比べ収入の安定しないフリーランスにとっては、あまりに少ない減税効果といわざるを得ません。

まとめ

2018年度税制改革で決まった見直しは、2020年1月から実施されることになっています。「フリーランスの税金が低くなる」と期待されていましたが、実際には電子申告を利用するというような条件があり、減税効果自体もさほど大きなものではありません。しかし、政府はフリーランス支援に向けて労災保険の適用へ法整備を整えると発表しています。今後ますます増えていくと予測される新しい働き方への支援が拡大することを期待しましょう。

株式会社プロジェクトカンパニー 松本孝輝
東京大学卒。在学中は経済工学や産業組織論を中心に専攻。
現在はコンサルティング会社に勤務し、ITを用いた集客やブランディングなど専門にコンサルティング業務を行う。
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