確定申告の際に経費の項目で悩んだことはありませんか? 本記事では、そんなフリーランスの方向けに経費として扱えるものとそうでないもの、注意点を解説します。
確定申告では経費が一番大事?
そもそも経費とは、「事業をおこなう上でかかった費用(コスト)」を指します。事業所得、不動産所得、雑所得の金額を計算する際に、業務上かかった経費を収入から差し引くことが認められています。ごく簡単にいえば、確定申告における所得の計算は、収入から経費と各種控除を引くことで求められ、この所得に税率を掛けたものが所得税・住民税となります。よって、収入から差し引かれる経費が多ければ多いほど所得が減りますので、納める税金が少なくなる、つまり節税になるというわけです。
しかしながら、経費はあくまでも事業に要するコストですので、事業に関係しないもの、たとえば医療費や通常の食費などは経費として認められません。次項では、何が経費にできるのかを具体的に見ていきましょう。
経費にできるもの
経費には様々な科目があります。ここでは、一般用の青色申告決算書に記載されている経費の科目について見ていくことにします。
租税公課
租税公課とは、税金や公的負担金のことを指します。フリーランスが経費として計上できる租税公課には、住民票発行手数料、印鑑証明書発行手数料、印紙税、自動車税、固定資産税、登録免許税などがあります。車や事務所を公私兼用している場合、自動車税や固定資産税はそれぞれ事業割合に応じて按分したものを計上します。
<例>事業割合50%の自動車税40,000円を現金で納付した場合
借方 | 租税公課 20,000円 | 貸方 | 現金40,000円 |
事業主貸 20,000円 |
なお、所得税、住民税は経費にはなりません。また、国民健康保険料(税)、国民年金保険料は確定申告書に別途社会保険料控除として計上しますので、租税公課としては計上できません。その他、罰則的な性格を持つ交通違反反則金、延滞税などは租税公課の対象外となります。
荷造運賃
商品の発送に伴う運賃、宅配便などの支払いを指します。他にも、梱包に必要なダンボール代、梱包テープ、エアキャップなども荷造運賃となります。
水道光熱費
水道、電気、ガスなどの支払いです。他にも、灯油代、プロパンガスなども含みますが、いずれも自宅に事務所や店舗がある場合は、事業用と個人の生活分とを按分しなければなりません。
旅費交通費
業務に必要な交通費、出張手当や宿泊費、タクシー代、定期代などの支払いです。交通系ICカードを使用する場合もこの旅費交通費で処理しますが、同じICカードで交通費以外の代金も支払っていると混乱が生じがちです。コンビニエンスストアなどでは使用しないように決めておき、利用明細を保管することで、旅費交通費として計上することが簡便になります。なお、車両の維持や使用に必要な経費は、青色申告決算書には記載されていない勘定科目ですが、車両費、または車両関係費として計上することも可能です。
通信費
電話、FAX、インターネット利用料、携帯電話料金、郵便料金がこれに該当します。その他、プロバイダー料金やドメイン使用料も含まれます。プライベートでの使用が含まれる場合は按分を忘れないようにしましょう。
広告宣伝費
不特定多数の人を対象とした商品や企業の宣伝のための費用です。ノベルティグッズ、ポスター、チラシ、ウェブサイト制作などが該当します。
接待交際費
事業を円滑におこなうために必要な取引先との飲食やお中元、お歳暮などの支払いです。香典、祝い金、見舞金なども含まれます。
損害保険料
事業用として使用している自動車の保険料、損害保険料にかかる支払いなどです。プライベートと兼用の場合は、割合に応じて按分します。なお、フリーランス個人の生命保険料は経費として認められません。
修繕費
備品、機械、建物の修繕にかかる費用の支払いです。事務所の保守点検費用、部品の取り替え、定期点検なども含みます。
消耗品費
10万円未満のものや、使用可能期間が1年未満のものが該当します。筆記用具、ソフトウェア、パソコン周辺機器、本棚などです。
減価償却費
自動車や機械など、高額で長期に渡って使用するものを購入した場合、法律で決められた年数に分けて経費に計上します。そのため、減価償却が認められるものがない場合は、この勘定科目は使用しません。
福利厚生費
定期健康診断費用、予防接種、常備薬、社員旅行などが該当します。ただし、従業員のいない事業者個人や事業者と専従者のみの場合は適用外となります。
給与賃金
従業員に対する給与、各種手当、賞与の支払いです。専従者がいる場合は専従者給与として別途計上します。
外注工賃
外部の業者に業務を依頼したときの支払いです。デザイン料、調査料などです。
地代家賃
事務所、店舗、倉庫、駐車場などの賃借にかかる費用の支払いです。自宅で仕事をしているフリーランスの方は按分する必要があります。
貸倒金
売掛金や貸付金が取引先の倒産などで回収不能になった場合に計上します。
雑費
臨時的な支払い、他の経費に該当しない支払いの場合に使用します。
経費として計上するために必要なもの
前述の通り、収入から差し引かれる経費が多ければ多いほど節税になりますが、経費として計上するには事業に関するものでなくてはなりません。さらに、経費を計上するにあたって、その証拠となる領収書やレシートが必要です。なお、香典や祝儀など、領収書がない出費については、出金伝票で代用が可能です。また、領収書やレシートは白色申告の場合は5年、青色申告の場合は7年の間保管することが法律で義務づけられています。
経費にできないもの
以上、フリーランスが確定申告する上で経費に計上できるものを見てきましたが、経費として扱えないものについてもいくつか言及しました。ここで改めてまとめておきましょう。
所得税・住民税
フリーランスが支払う所得税や住民税は、事業をおこなう上で必要なものではありませんので経費として認められません。事業用の銀行口座から支払った場合は「事業主貸」として計上します。
<例>住民税を事業用の普通預金から支払った
借方 | 事業主貸 10,000円 | 貸方 | 普通預金 10,000円 |
交通違反反則金・延滞税
事業で自動車を使っていたとしても、駐車違反等の交通違反反則金は経費として認められません。同じ意味で、延滞税や加算税などの罰則的な税金や、その他の罰金や過料も経費として計上できません。
国民健康保険料(税)・国民年金保険料
これらは確定申告時には社会保険料控除に計上するため、経費として計上できません。
生命保険料・地震保険料
事業主個人の生命保険料や、自宅の地震保険料は経費として認められません。ただし、会社員と同様、確定申告時に生命保険料控除として所得控除することが可能です。
健康診断費用・予防注射
事業主の健康維持のために受けた健康診断費用や予防注射は経費に計上できません。
その他個人的な支出
自宅で事業をおこなっている場合の家賃や、プライベートと兼用で利用している携帯電話などは、その費用をすべて経費として計上することはできません。事業に用いている割合に応じて按分する必要があります。
<例>自宅の一部(使用割合30%)の自宅家賃100,000円を事業用の普通預金から支払った
借方 | 地代家賃 30,000円 | 貸方 | 普通預金 100,000円 |
事業主貸 70,000円 |
経費率に注意!
経費が多いほど節税になるとはいえ、収入に対して経費の割合が不自然に高すぎると、税務署のチェックが入りやすくなります。この収入に対する経費の割合を「経費率」といい、「経費÷収入」で求めることができます。経費率の基準値は公的には明らかにされていませんが、売上規模や業種によって異なるのが当然だといえます。製造業や小売業といった経費を多く必要とする業種と、ライターやデザイナーのようにパソコンを使って仕事をしている業種とでは、経費率は大きく違ってきます。
インターネット上には、経費率の目安となる数字が紹介されていることがあります。しかし、国税局や税務署が明らかにしていない以上は、そうした数字はあくまでもひとつの目安として捉え、あまり神経質になる必要はないでしょう。本当に事業に必要な経費だけを計上していれば、たとえ今期の経費率が例年より大きく膨らんでしまったとしても、合理的な説明ができるはずです。
まとめ
確定申告の際に悩むことの多い経費の項目を、一般用の青色申告決算書に記載されている項目ごとにご説明してきました。経費として扱えるものとそうでないものに注意しながら、正しく節税しましょう。