就労困難者を受け入れたときに申請できる 「特定求職者雇用開発助成金」とは? | MONEYIZM
 

就労困難者を受け入れたときに申請できる
「特定求職者雇用開発助成金」とは?

厚生労働省は、労働者の雇用維持や離職する労働者の再就職の支援などを目的として、さまざまな雇用関係の助成金を用意しています。その中の「特定求職者雇用開発助成金」は、労働者を新たに雇い入れる際に適用される助成金です。本記事では、特定求職者雇用開発助成金のうち、特に就労困難者を受け入れる際に申請できる「特定就職困難者コース」について詳しく解説します。

雇用関係の助成金

まず、雇用関係助成金の受給対象、および支給規定の基本的な情報から解説します。厚生労働省による中小企業の定義づけや支給額の割増規定に関する情報についてまとめているので、就労困難者の雇い入れを検討している雇用主の方は、ぜひ参考にしてください。

雇用関係助成金検索

厚生労働省のホームページでは、申請者の取組内容と支給対象者に応じて申請できる雇用関係助成金について、検索、表示することができます。雇用関係助成金の種類を細かく把握していなくても、検索サービスを活用すると申請忘れや間違いなどを防ぎやすくなります。

雇用関係助成金の詳細

雇用関係助成金の支給規程は厚生労働省によって定められたものです。本項では、雇用関係助成金の全コースに共通する支給規程を解説したうえで、支給額の割増条件や受給停止条件に関する解説を進めていきます。

 

  • 受給対象となる事業主
    受給対象となるのは、「雇用保険適用事業所である」、「期間内に受給申請を行う」、「調査機関からの書類提出要請および実地調査に応じる」こと、これら3点を満たした事業主とされています。実際には、雇用関係助成金の種類毎に規定された条件もあわせて満たしていないと、受給対象とはなりません。
  • 受給対象から外れる場合
    以下の7項目のいずれかに該当する場合、受給対象から外れます。

    1. 不正受給をしてから3年以内に支給申請をした事業主、あるいは支給申請日後、支給決定日までの間に不正受給をした事業主
    2. 支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主
    3. 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反があった事業主
    4. 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれら営業の一部を受託する営業を行う事業主
    5. 暴力団関係事業主
    6. 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主
    7. 不正受給が発覚した際に都道府県労働局等が実施する事業主名等の公表について、あらかじめ同意していない事業主
  • 「中小企業事業主等」の範囲
    雇用関係助成金における「中小企業事業主等」の範囲は、以下のとおり業種によって異なります。
  • 生産性要件
    雇用関係助成金を申請した企業のうち、特定の条件を満たす企業には支給額を割増する制度があります。具体的には、「助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」(※)が、申請する3年度前と比較して6%以上伸びていること」と、「申請する直近年度および3年度前から雇用している被保険者を、事業主都合によって解雇していないこと」が割増支給を行う条件です。

    ※生産性=(営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+ 租税公課)/雇用保険被保険者数

  • さまざまな雇用関係助成金
    未経験者を対象とする「トライアル雇用助成金」と、高齢者や特定の精神疾患である人などを対象とする「特定求職者開発雇用助成金」の2種類に大別することが可能です。その他具体的な要項に関しては厚生労働省のホームページに掲載されています。

特定求職者雇用開発助成金

続いて、雇用関係助成金のうち、雇入れ関係の助成金について解説します。適用対象に応じて分けられた8つのコースの名称、および基本的な適用条件を紹介しているので、適用条件を簡単に知りたいという方はぜひ参考にしてください。

制度の趣旨

厚生労働省によると、「高年齢者や障害者などの就職が特に困難な者を、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により継続して雇用する事業主を助成するものであり、これらの方の雇用機会増大および雇用の安定を図ること」を目的とした制度とされます。

8つのコース

雇用対象を雇い入れる事業主は、労働者の年齢、身体的および精神的障害の有無や程度、生活環境などによって8つに分類されたコースから適切なものを選び、規程の手続きに沿って導入申請を実施する必要があります。

 

  • 特定就職困難者コース
    高年齢者、障害者などの就職が特に困難な人を、雇用保険被保険者として継続して雇い入れる事業主に支給される助成金です。
  • 生涯現役コース
    65歳以上の離職者を、雇用保険の高年齢被保険者として1年以上継続して雇い入れる事業主に支給される助成金です。
  • 被災者雇用開発コース
    東日本大震災の被災地域において被災離職者となった人を、雇用保険の一般被保険者として1年以上継続して雇い入れる事業主に支給される助成金です。
  • 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
    発達障害者または難治性疾患患者を、雇用保険の一般被保険者として1年以上継続して雇い入れる事業主に支給される助成金です。
  • 三年以内既卒者等採用定着コース
    高校の既卒者あるいは中退者を募集対象として含める新卒求人の申込みまたは募集を行い、通常の労働者として初めて雇い入れたうえで、1年以上定着した場合に支給される助成金です。当コースの対象となるのは、平成31年3月31日までに申込みまたは募集を行い、同年4月30日までに雇い入れを実施した企業に限られます。
  • 障害者初回雇用コース
    障害者雇用の経験がない中小企業が、雇用率制度の対象となる障害者を初めて雇用し、1人目の雇用から3か月以内に法定雇用率を達成した場合に支給される助成金です。
  • 安定雇用実現コース
    就職氷河期といえる時代の影響によって正規雇用の機会を得られず、今後正規雇用に就くことが困難な人を、正規雇用労働者として雇い入れた企業に支給される助成金です。
  • 生活保護受給者等雇用開発コース
    ハローワークまたは地方公共団体において、3ヶ月を超えて支援を受けている生活保護受給者や生活困窮者を、雇用保険一般被保険者として、65歳以上まで、かつ2年以上継続して雇い入れる事業主に支給される助成金です。

特定就職困難者コースの詳細解説

ここでは、特定就職困難者コースの適用対象や支給額、申請する際の流れについて具体的に解説します。

対象労働者

特定就職困難者コースは、短時間労働者とそれ以外の労働者で支給対象となる労働者が異なります。短時間労働者においては、60~65歳未満の高年齢者、母子家庭の母、重度障害者などが対象です。それ以外の労働者においては、高年齢者、母子家庭の母、重度障害者などを除く身体・知的障害者および重度障害者などが対象です。なお、「重度障害者など」とは、重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的および精神障害者を指します。

対象となる事業主

高年齢者や障害者などの就職が特に困難な人を雇用保険一般被保険者として雇い入れ、対象労働者を65歳以上まで継続して雇用し、雇用期間が2年以上であることが確実とされる場合は、特定就職困難者コースにおける助成金の支給対象になります。

支給対象から外れる場合

厚生労働省が規定する「雇用関係助成金を支給できない事業主(事業者団体を含む)」の規約に抵触した事業主は、支給対象から除外されます。その他、特定就職困難者コースにおいて対象となる事業主の要件を満たさなくなった場合にも、支給対象から除外されます。

支給額

特定就職困難者コースにおける支給額は、労働者の勤務時間や年齢、障害の有無に応じて以下のように決められています。

支給申請の流れ

特定就職困難者コースの支給申請を行う事業者は、対象者の該当する支給対象期ごとに規定の特定求職者雇用開発助成金支給申請書を管轄労働局長に提出しなければなりません。加えて、管轄労働局長が必要と認める規定の添付書類についても、要求に応じて提出する必要があります。規定の支給申請書のテンプレートおよび記入マニュアルについては厚生労働省の公式ホームページから取得可能であり、各種問い合わせは管轄労働局およびハローワークが対応窓口です。

☆ヒント
近年、支給要件の変更は1~2年に1回ほど実施されており、平成30年には支給対象者を雇止めあるいは離職された場合に、助成金を一定期間支給停止するように制度変更が実施されました。今後、雇用開発助成金制度の導入を検討する事業主は、前もって最新の支給要件を常に調査および把握しておくことが必須条件です。支給要件を正しく理解するには税法に関する専門知識が必要であることから、税理士へ相談すると雇用開発助成金制度を誤解なく把握しやすいでしょう。支給要件を正しく理解しておくと、自社にとって有用な労働希望者を特定就職困難者として雇用できる可能性を向上させられます。

まとめ

特定求職者雇用開発助成金に関する共通の支給規定と、特定求職者困難コースに関する具体的な支給額および申請時の流れを解説しました。基本的な規定を正しく理解して、助成金制度を有効に活用していきましょう。

永井綾
慶應大学法学部卒。 外資系コンサルティング会社に勤務後、某有名法律事務所に転職し、広報業務に携わる。 コンサルティング業務での幅広い業界知識と、法学部・法律事務所で培った知識を解説します。
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