勤めている会社を退職した場合は、退職の手続きを行い、失業保険を受け取ることができます。しかし、失業保険を受給した場合に気になるのが税金のことです。失業保険を受給したら税金は課されるか、確定申告が必要なのか気になる人も多いでしょう。
そこで、ここでは失業保険と確定申告の関係について詳しく解説します。
失業保険は税金がかからない
1年間に収入がある人は、サラリーマンを除いて原則、確定申告をして税金を納める必要があります。しかし、収入の中には、税金が課されないものもあります。税金が課されない主な収入(非課税所得)は、次の通りです。
・非課税所得の代表例
区 分 | 非課税所得の項目 |
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利子・配当所得に関するもの | ・障害者等の少額預金の利子 ・勤労者財産形成住宅や勤労者財産形成年金貯蓄等の利子等 ・納税準備預金の利子 ・NISA、ジュニアNISAに係る配当等 |
給与所得・公的年金に関するもの | ・傷病者や遺族などの受け取る恩給、年金等 ・給与所得者に支給される一定の旅費、限度額内の通勤手当など ・国外で勤務する者の受ける一定の在外手当 ・文化功労者年金法の規定による年金等 |
譲渡(山林)所得に関するもの | ・生活に通常必要な動産の譲渡による所得 ・NISA、ジュニアNISAに係る譲渡所得等 ・国や地方公共団体等に財産を寄附した場合の譲渡所得等 |
一時所得、雑所得に関するもの | ・学資金及び扶養義務を履行するために給付される金品 ・相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの ・心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基づいて取得する保険金、損害賠償金、慰謝料など ・生活支援定額給付金など |
他の法律で課税されないもの | ・失業保険、失業給付金(雇用保険法) ・宝くじの当選金(当せん金付証票法) |
さまざまある非課税所得の中に、失業保険や失業給付金も含まれています。そのため、失業保険には税金がかかりません。
失業保険で確定申告をしたほうが良いケース
失業保険には、税金がかかりません。そのため、原則、確定申告は不要です。しかし、失業保険を受給している場合でも、確定申告をしたほうが良い場合もあります。それは税金の還付があるときです。
ここでは、失業保険で確定申告をしたほうが良い代表的なケースを見ていきましょう。
年内に再就職をしなかった場合
サラリーマンは、毎月の給料から所得税などが天引きされています。これを源泉徴収といいます。実は、源泉徴収されている所得税の金額は、通常であれば年末調整で追加の天引きがないような金額になっています。むしろ、年末調整で還付になる場合も多いです。
では、年の途中で退職した場合はどうかというと、退職時に年末調整はされません。再就職した勤務先で、退職前の給料と再就職先での給料を合算して年末調整されます。年内に再就職をしなかった場合は、年末調整が受けられません。
源泉徴収されている所得税の金額が大きい場合は、確定申告で還付を受けられる可能性があります。所得税の還付がある場合で、還付される金額と確定申告の手間を考え、所得税の還付を受けたほうが得と判断した場合は、確定申告をしたほうが良いでしょう。
失業中に支払った社会保険料がある場合は通常、社会保険料控除の金額が増加し、還付される税金の金額が増えるため、忘れずに社会保険料控除に含めましょう。
医療費控除などがある場合
1年間に一定金額の医療費を支払った場合は、医療費控除を受けることができます。ただし、医療費控除は年末調整で控除されません。医療費控除を受けるためには、確定申告が必要になります。
年内に再就職をしなかった場合も、年内に再就職した場合も、医療費控除を受けて税金の還付を受ける場合は、確定申告を行いましょう。
失業中に収入がある場合
失業中、再就職先が見つかるまでの間に、アルバイトやパートなどをするケースも多いです。失業保険は税金がかかりませんが、アルバイトやパートなど給料は税金が課されます。また、副業で不動産収入がある場合なども、その収入には、税金が課されます。そのため、失業中に収入がある場合は、原則、確定申告をする必要があります。
失業保険を受給した場合の確定申告の方法と手順
失業保険を受給した場合であっても、税金の還付を受ける場合や、失業中に収入がある場合は確定申告が必要です。
ここからは、失業保険を受給した場合の確定申告の方法と手順について見ていきましょう。
失業保険を受給した場合の確定申告の期間と手順
失業保険を受給した場合で確定申告を行う期間は通常、翌2月16日から3月15日までです。失業中に収入があって所得税の納付がある場合は、所得税の納付期限も同じ3月15日までです。所得税の還付がある場合は、翌1月1日から申告をすることができます。
次に、確定申告の手順について見ていきましょう。確定申告の手順は、次のようになります。
①必要書類の用意
確定申告書の書類は税務署の窓口や国税庁のホームページから入手します。生命保険料などの控除証明書は、保険会社から送付されてきます。
②確定申告書の作成
必要書類がそろったら、確定申告書を作成します。確定申告書に、住所・氏名などの納税者の情報、収入や所得金額、所得控除金額、納税額などの必要事項を記載します。
会計ソフトや国税庁のホームページの確定申告書等作成コーナーなどを利用して、確定申告書などを作成する場合は、必要事項を入力していくことで、所得金額や税額などが自動で計算され、確定申告書ができあがります。
③確定申告書の提出
確定申告書が作成できたら、税務署に提出します。税務署の窓口に持参、郵送、e-Taxの3つの提出方法があります。
- 税務署の窓口に持参
作成した確定申告書とその控えを、税務署の窓口に提出します。 - 郵送
所轄の税務署に、郵送で確定申告書などを提出します。郵送で提出する場合は、確定申告書などの控えや、切手を貼った返信用封筒も同封します。
郵送での提出期限は、提出期限の消印が有効となります。 - e-Tax
e-Taxを利用して、電子データのかたちで、確定申告書などを税務署に申告します。
e-Taxの利用には、事前に届出が必要です。
④所得税の納付や還付
確定申告を行い、納める税額がある場合は、所得税を納付します。所得税の還付がある場合は、確定申告書に記載した還付口座に、確定申告書の提出から1か月程度で還付されます。
失業保険を受給した場合の確定申告で必要な書類
失業保険を受給した場合の確定申告で必要な書類は、次の通りです。
・確定申告書A
確定申告書は、税務署の窓口や国税庁のホームページから入手できます。
確定申告書にはAとBの2種類がありますが、収入が給与のみ(アルバイト・パートも含む)の場合は、確定申告書Aを用います。
・その年のすべての勤務先の源泉徴収票(退職前、再就職先、失業中に行ったアルバイトやパート先)
・生命保険料などの所得控除証明書
・医療費控除の明細書(医療費控除を受ける場合)など
医療費控除の明細書や住宅ローン控除を受ける場合の住宅借入金等特別控除額の計算明細書など、状況によって必要書類が異なる場合があります。
まとめ
失業保険には、所得税などの税金は課されません。そのため、原則、失業保険の受給に関する確定申告は不要です。
しかし、税金の還付がある場合や失業中に収入がある場合は、確定申告が必要です。特に、税金の納付がある場合は、申告・納付期限を遅れてしまうと、延滞税などのペナルティが発生することもあります。忘れずに期限内に申告しましょう。