税金の「申告漏れ」「所得隠し」「脱税」とは?それぞれのペナルティも解説

税金の「申告漏れ」「所得隠し」「脱税」とは?それぞれのペナルティも解説
公開日:
2020/05/12
最終更新日:
2024/04/17
 
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企業や、芸能人をはじめとする有名人の「税金トラブル」が、しばしばニュースになります。よく目にするのが、「申告漏れ」や「所得隠し」という言葉。
ところで、これらの用語には、どんな「定義」があるのでしょうか?税務署に見つかるとペナルティがあると聞くけれど、具体的には?わかりやすく解説します。

「意図的かどうか」が分かれ目になる

納税は、憲法に定められた国民の義務です。原則として誰も逃れることはできず、義務を怠った場合には、その金額や悪質性なども加味したペナルティを(時には刑事罰も)課せられることになります。
ところで、ひと口に「税逃れ」と言っても「申告漏れ」「所得隠し」、さらには「脱税」というのもあります。それぞれどんな違いがあるかを見ていきましょう。

税務調査により発覚するケース

所得税では、納税者本人や税務代理をする税理士が税金を計算・申告し、納税者が確定した税金を納付する「申告納税制度」を採用しています。税務署では提出を受けた税務申告について、所得金額が正しく計算されているか?所得の申告漏れや所得隠しの可能性はないか?等をチェックします。チェックしていく過程で、計算間違いや申告漏れなどが推測される申告については、後日詳細な調査を行うことがあります。これが「税務調査」です。売上や経費の計上根拠となった原始記録や作業日報の確認、現預金の入出金や役員個人名義の通帳に至るまで詳しく精査していきます。申告書を提出するだけでは見えてこない申告漏れや所得隠しなども、税務調査による詳細なチェックにより発覚するというケースが考えられます。

税務調査がなくても申告漏れが発覚するケースがある

税務調査以外でも、所得漏れや所得隠し、脱税が発覚するケースがあります。

1.反面調査

税務調査には、対象者を直接調査せず、対象者が取引する得意先や仕入先に対して税務調査を行い、取引の裏付けを行う「反面調査」があります。売上(収益)の所得隠しを例に考えてみましょう。こちらの売上は得意先にとっては仕入になりますが、もし仮に所得隠しを意図して売上を未計上としても、得意先に対する反面調査で仕入計上が確認できれば、こちらの売上未計上が発覚することになります。

2.資料せん

「資料せん」とは、一定要件に該当する取引についての情報収集を目的として税務署が依頼する書面調査です。「資料せん」には、売上や仕入、外注費、リベートなどの調査対象のうち、一定期間内で一定金額以上の取引を行った取引先の会社名と取引金額を記載します。前段の「反面調査」と同様に、得意先や仕入先が提出した資料せんの情報から、こちらの所得漏れや所得隠しが発覚することがあります。

申告漏れとは

「申告漏れ」とは、単純な計算ミスや経費計上の誤り(経費にできないものを間違って計上してしまった)などが原因で、納税額を少なく申告した場合を指します。
「税金をごまかそう」という悪意がなく、意図的な工作などを行っていないことがポイントです。

所得隠しとは

納税額が実際よりも少なかったという点では、申告漏れと同じでも、それを目的に、例えば売上の隠蔽や架空経費の計上、関係書類の改ざんなどを行った場合は「所得隠し」と呼ばれます。
後述のように、申告漏れよりも重いペナルティを覚悟しなくてはなりません。

脱税とは

簡単に言えば、「所得隠し」の悪質性が高く金額も大きかったために、検察庁に告発され、刑事罰の対象になった場合が「脱税」です。

それぞれの違い

これらの「税逃れ」は、通常、税務当局の「税務調査」によって捕捉されます。ただし、「申告漏れ」と「所得隠し」が、基本的に各地の税務署による任意調査(基本的に事前通知あり、税理士同席可)によるものなのに対して、「脱税」は国税局査察部(マルサ)の強制捜査を基に告発されることになります。

整理すると、

  • 申告漏れと所得隠しの違いは、「意図的かどうか」
  • 所得隠しと脱税については「悪質性の高さ」で判断される

ということになるでしょう。

ただし、税法などにそれぞれの定義が明記されているわけではありません。
実際、「意図的かどうか」は、当人しか知り得ない事実です。逆に言えば、どちらに分類されるのかは、最終的には税務当局の判断次第、ということになるのです。もちろん、ちゃんとした立証の必要があります。所得隠しと脱税の線引きについても、同じことが言えるということは、頭に入れておくべきでしょう。

状況によって「加算税」が課せられる

もし、これらの事態が発覚した場合、本来支払うべき税の不足分に加えて、原則として4種類ある「加算税」のどれかと、「延滞税」(納付すべき税金を納付期限までに納めない場合に課税される)が追徴課税されます。
それぞれのケースについて課税される「加算税」は、次の通りです。

「申告漏れ」の加算税

過少申告加算税

申告期限内に申告はしていたものの、申告額が本来支払うべき税よりも少なかった、という場合に課税される。

無申告加算税

定められた申告期限までに申告をしなかった場合に課税される。

不納付加算税

源泉所得税(※1)を納付期限までに納めなかった場合に課税される。

「所得隠し」および「脱税」の加算税

重加算税

納税額を意図的に偽装・隠蔽したうえで、無申告、過少申告を行った場合に課税される。修正申告によって支払うべき税額の35%ないし40%という、高額の追徴となる。

※1源泉所得税:企業が従業員や報酬を受け取る人から源泉徴収し、本人に代わって納める所得税。

税金にも「時効」はある

このように、正しく納めないと厳しいペナルティもある税金ですが、借金などと同様に「時効」があります。
申告の状況などによって

  • 申告期限内に申告書を提出した→申告期限から3年
  • 申告期限内に申請書を提出していない→申告期限から5年
  • 申告内容に虚偽の記載や脱税の意図があった→申告期限から7年

となっています。
なお、1や2のケースでも、脱税の意思が発覚した場合には、時効期間は7年となります。

時効が成立しないケースとは

ただし、時効期間内に税務署から督促状が届いたりすれば、「消化」した年月はリセットされ、新たにカウントが始まります。「税逃れ」の期間が長引けば、それだけ発覚した場合の延滞税が嵩む結果にもなりますから、「逃げおおせる」と考えて時間を過ごすのは、大きなリスクと言えるでしょう。

申告漏れの修正申告する場合の手順

修正すべき収入や費用の金額を特定する

修正申告をする際にはまず、税額計算の基礎となる修正後の所得金額を確定させることから始めます。売上の計上漏れや仕入の過大計上など、当初申告に対してどのような修正を行うのかを特定し、正しい所得金額を再計算します。

修正申告書の作成

所得金額を計算した後は、修正後の正しい所得に基づいて確定申告書を再度作成し、修正後の税額を確定させます。これを修正申告書と呼びますが、修正申告書には当初申告の収入金額や所得金額を記載する必要はなく、修正後の収入金額や所得金額だけを記載すればよいことになっています。

修正申告にかかる税金の納付

上記の修正申告書で計算した結果、当初申告と比較して増加した税額を納付することになります。なお、修正申告にかかる税金の納期限は、修正申告書の提出日となりますので注意してください。また、修正申告にかかる税金は申告期限後の納税になりますので、状況に応じて以下のペナルティが課されることになります。

1.無申告加算税

原則として、納付すべき税額の50万円までの部分は15%、50万円を超える部分は20%の割合で無申告加算税が課されます。なお、令和6年1月1日以降に法定期限が到来するものについては、納付すべき税額の50万円までの部分は15%、50万円を超え300万円までの部分は20%、300万円を超える部分は30%の割合で無申告加算税が課されます。税務調査において帳簿の提示を行わなかった場合や、過去にも修正申告にかかるペナルティを課されたことがある場合は、上記の無申告加算税にさらに一定割合が上乗せされますので注意してください。また、税務調査の前に一定要件を満たす自主的な修正申告を行った場合には無申告加算税が5%に軽減されます。また、過去5年間のうちに、修正申告にかかる加算税の適用を受けていない方が、法定申告期限の1カ月以内に修正申告を行えば無申告加算税は免除されます。

2.延滞税

法定納期限から修正申告にかかる税金を納付した日までの期間について、延滞税が課されます。修正申告書を提出するまでの期間及び提出後の翌日から2月を経過する日までの期間は、年7.3%又は延滞税特例基準割合に1%を加えた割合のいずれか低い割合、2ヶ月を超える期間については、年14.6%又は延滞税特例基準割合に7.3%を加えた割合のいずれか低い割合がそれぞれ課されます。なお、令和6年12月末までの利率は2ヶ月を経過する日までの期間が2.4%、2ヶ月を超える期間が8.7%となっています。

税金に関して疑問・不安のある方へ

「申告漏れ」と「所得隠し」の間には、「税金を逃れる意図があったのか、なかったのか」という線引きの基準がありました。ただし、最終的に判断するのは、あくまでも税務署であることをお忘れなく。過去の申告内容に不安がある場合などには、すぐに税理士に相談することをお勧めします。

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この記事の執筆者
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