納税が国民の義務であることは、誰もが知っています。同時に、申告のやり方(例えば経費計上の仕方)によって、納税額に差が出ることも、知らない人はいないでしょう。普通は、少しでも支払う金額を少なくするために、あれやこれやと節税を考えるのですが、「やりすぎる」と脱税に!? その「境界線」はどこにあるのでしょうか?わかりやすく解説します。
目 次
「脱税」とは?「節税」や「租税回避」とどう違う?
節税とは?
所得税、法人税は、所得(売上から経費などを差し引いた金額)に、決められた税率を掛けて計算されます。ですから、できるだけ所得を抑える、例えば経費で落とせるのもはきちんと落とした上で申告することが重要になるのです。特に所得税は、所得が高いほど税率もアップしていく累進課税になっているので、それには大きな意味があります。
このように、合法的に税金の軽減を図るのが、「節税」です。
脱税とは?
他方、使っていない経費を計上するといった違法なやり方で所得を減らして、支払う税を減らす行いが、広い意味での「脱税」です。
租税回避と脱税の違いは?
ちなみに、最近時々耳にするのに、租税回避という言葉があります。例えば、お金を税率の低い地域に移すなどの行為を指すのですが、これは脱税になるのでしょうか?
実は、これは合法です。租税回避というのは、「税法が想定していない方法で税を軽減させる行為」のことを言い、少なくとも現状では節税の範疇にあることになるのです。
ただ、税の公平性の観点から、そうした行為に対する批判も高まっており、今後規制する法律などができて、「禁止」される可能性もあります。
脱税と課税逃れ・所得隠し・申告漏れはどう違う?
さて、「脱税」に似た用語に、「課税逃れ」「所得隠し」「申告漏れ」があります。それぞれ、どんな違いがあるのでしょうか?
税法に明確な規定があるわけではない
実は、税法などに「これは脱税」、「こういう場合は申告漏れ」といった明確な規定があるわけではありません。
「脱税」は、普通「意識して税金をごまかす行為」という広いイメージで捉えられていますが、「税法に違反して起訴され、さらに有罪判決が下った案件」と捉える見方もあります。
国税庁によれば、2018年度に査察調査(※1)の結果、検察庁に告発した事案の脱税額は、合わせて17億円となり、過去5年間で最高額でした。ただし、案件自体は17件ですから、今の定義に従うならば「脱税事件は年に20件程度」ということになるでしょう。
「課税逃れ」と「所得隠し」はほぼ同義
また、「課税逃れ」と「所得隠し」は、ほぼ同じ意味で使われています。どちらも、「違法な手段を使い、意図的に税金の支払いを少なくしようとする」行為にほかなりません。刑事罰の対象になるような「脱税」に比べると、悪質性や税逃れの金額が低い場合に用いられます。
「申告漏れ」は意図的な行為ではない
一方、「申告漏れ」は、例えば、計上できない経費を間違って計上してしまった、というように、悪意のないミスを指すのが一般的です。ただし、ミスだからといって、そのまま許してくれるわけではありません。
脱税にあたる行為とは?
今説明したように、税金を減額するためには所得を減らせばいいわけです。
よくある脱税の手段としては、主に次の3つがあります。
売上自体を過少に申告する
例えば、現金商売で売上の一部を「抜く」、あるいは相手先からの支払いを会社や事業用とは違う銀行口座に指定して儲けから除外する、といった方法です。「所得=売上-経費など」ですから、大元の売上数字を小さくすれば、大きな「減税効果」が見込めます。
経費を水増しする
領収書の金額を書き換えたりして偽造する、架空の仕入れを計上する、といった方法が使われます。
期末在庫を減らす
仕入れのコストは「売上原価」(経費)として、売上から差し引くことができます。ただし、それは実際に売れたぶんで、仕入れたけれど期末在庫として残ったものについては、差し引くことができません。すなわち、在庫が多いと所得も増えてしまいます。そこで、これを帳簿上カットするというのも、常套手段です。
脱税がばれると、ペナルティの対象になる
これらは、税法で言う「納税義務を要する者がその義務を怠り、意図的に一部または全部を免れること」に当たり、あとで述べるようなペナルティの対象になることを覚悟する必要があります。
脱税はいつバレる?
税務調査でバレる
では、脱税はどのタイミングでバレるのでしょうか?脱税が発覚するのは主に
- 税務署による税務調査
- 国税局査察部(マルサ)による査察調査
です。
後者の査察調査は、悪質な脱税行為であったり、脱税額が大きなケースを中心に調査します。ドラマ等でよくあるような、会社に乗り込んで社内中を捜査…というのはこの査察調査です。
中小企業や個人事業主の場合、基本的には前者の「税務調査」で調査されます。
税務調査に入られた場合、税務署は脱税の手口やその判別方法について熟知しているので、脱税はほぼ確実にバレます。
もし税務調査の連絡が来たら?
税務調査(一般調査)では、調査官が突然やってくるということは基本的にありません。税理士に税務申告を依頼している場合には、税務署からまずその税理士に連絡が入るのが普通です。顧問税理士がいるにもかかわらず、直接税務署員がやってきたりした場合には、「税理士が来るまで待ってください」という毅然とした態度で接するようにしましょう。
もし税理士をつけていない場合、税理士の立会い無しで税務調査を迎えることもできますが、どのように対応したら良いか分からず税務署の言いなりになってしまうケースも少なくありません。税務調査の連絡が入ってからでも遅くはありませんので、税理士をつけることをおすすめします。
また、税理士に税務調査対応のみを依頼することもできますが、事業を続けるうえで税理士から継続的にサポートを受けられるよう、顧問契約を結ぶことも検討すべきでしょう。
資産状況からバレる
資産状況から脱税がバレることもあります。
例えば、家を購入したとして、その際に不動産登記を行いますが、この登記情報は法務局から税務署へ渡されます。
ただ、税金を払っていない(利益が出ていない)にも関わらず家を購入できるのは変だ、というきっかけでチェックされます。
密告でバレる
国税庁では、脱税を密告する窓口(情報提供フォーム)があります。
情報提供フォームでは、誰が脱税しているか、脱税者の個人情報、脱税の手段や方法などを記入することができます。
また、税務署に電話したり、郵送でも密告することが可能です。
国税職員には厳格な守秘義務が課されていますので、密告者の情報が漏れることはありません。
脱税がばれたら、悪質性に応じたペナルティが課される
国民の義務である納税を怠った場合、本来納める分の税金と実際に納めた税金の差額である追徴税を支払います。
それだけでなく、脱税のペナルティとして、付帯税を課せられることになります。付帯税には4種類の「加算税」と「延滞税」「利子税」の計6種類があります。
過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・重加算税
加算税は、脱税が発覚した時期や悪質度、納税者が申し出たのか・税務署に指摘されたのか、などによって税率が異なってきます。

引用:財務省
過少申告加算税
申告期限内に申告はしていたものの、申告額が本来支払うべき税よりも少なかった、という場合に課税されます。
無申告加算税
定められた申告期限までに申告をしなかった場合に課税されます。
不納付加算税
源泉所得税(※2)を納付期限までに納めなかった場合に課税されます。
重加算税
納税額を意図的に偽装・隠蔽したうえで、無申告、過少申告を行った場合に課税されます。悪質な脱税と判断された時に課せられるのがこれで、とりわけ高い税率が課せられることになります。
延滞税
納付すべき税金を納付期限までに納めない場合に課税されます。加算税が課せられている場合には、それにプラスして支払わなくてはなりません。
利子税
納付期限に一括で納税できず、残りを「延納」する場合に課税されます。
脱税の時効は何年?
ちなみに、脱税行為にも7年の時効があります。ただし、借金などと同様、税務署から督促状が届いたりすれば、時効はそこでいったんリセットされて、再びゼロからカウントが始まります。脱税の期間が延びれば、それだけ延滞税などが嵩んでいくことにもなります。
脱税で刑事罰を受けることもある
上記の付帯税は、国税通則法という法律に基づく「行政処分」です。
さらに、悪質な脱税行為が発覚した場合には、これらに加えて刑事罰が規定されています。基本的には「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」で、その両方が課せられることもあります。
税金に関して疑問・不安のある方へ
経営環境が厳しい中、少しでも税金を低く抑えたい。しかし、「バレないだろう」という気持ちで行った税逃れは、後に大きなツケとなって返ってくる可能性があります。適切な納税に努めるようにしましょう。税金に関して疑問、不安のある方は、専門の税理士に相談することをお勧めします。
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