税理士は、「税の専門家」。誰に頼んでも、万全の税金対策をしてくれるはず――。そういうイメージを持っている方は、多いのではないでしょうか。でも、実際には、顧問税理士に対して「まともな節税の提案もしてくれない」といった不満を持つ経営者も少なくないようです。なぜそんなことが起こるのか? 「いい税理士さん」はどうやって探せばいいのか? わかりやすく解説します。
目 次
ところで「節税」とは何か?
「節税」は、法律(税法)の範囲内で支払う税金を軽減しようとする行為のことを言います。
例えば、必要経費(※)として認められる支出を間違いなく計上して、課税対象となる所得を圧縮するのは、節税です。
日本は、「申告納税」と言って、納税者が税額を計算し、納税する制度を採用しています。仮に「落とせる経費」があったのに計上せず、結果的に払わなくてもいい税金を支払ったとしても、それは「納税者側の責任」になります。
同時に、節税のつもりで行った行為が、そうとは認められないことがあり得ることにも、注意が必要でしょう。これも経費に引き寄せて言うと、「経費として認められるかどうか」は、判断が微妙な場合も多くあります。
もし申告後に、税務署が認めないということになれば、申告のやり直しを求められたうえに、加算税などのペナルティを課せられることもあるのです。
節税のために選ぶべき税理士とは?
以上も踏まえたうえで、「節税に強い税理士選び」のチェックポイントを押さえていくことにします。
(1)そもそも、節税対策を「しない」税理士もいる
中には、初めから節税の意思がない、あっても極めて消極的なスタンスの先生もいます。
税理士の第一の任務は「適正申告」「適正納税」です。その原則からすれば、確かに節税は、二の次三の次と言うこともできるでしょう。
「税務調査に入られても怖くないから」と、税金対策を避ける税理士もいます。
しかし、「無駄な税金」は、経営基盤に悪影響を与えかねません。税理士を吟味する際には、まず「節税のサポートをしてもらえるのか」をしっかり確かめる必要があるでしょう。
(2)節税も「基本知識」と「経験」がモノをいう
多くの税理士は、顧客の節税に積極的で、そのことを「売り」にしています。ところが、それが見かけ倒しだったり、持っているスキルが自分とはミスマッチだったりして、期待するような効果が生まれていないケースも少なくありません。
税理士の資格試験は難関ではありますが、試験科目は一部を除き選択制のため、資格を持っているからすべての税法に詳しいかというと、そうではないのです。
一例を挙げれば、法人税には抜かりがないけれど、資産税関連はほとんどわからない、といったこともあり得ます。中小企業の経営をサポートするためには、社長個人の資産や相続への目配りも欠かせません。そうした分野の知識がなければ、対策が打てずに多額の相続税が発生し、それが次世代への事業承継のネックになってしまった、などということになりかねないのです。
さまざまな顧客を担当し、実績を積み重ねてきたキャリアも、チェック項目の1つになるでしょう。ただし、かつての「税務申告だけしていれば、十分食べていけた時代」を長く経験した税理士の場合、逆に節税が苦手だったりすることもあります。「経験年数」のみが指標にはならないことも、申し添えておきたいと思います。
(3)自社・自分の業界に詳しいか?
業種や業界によって、独自の課税が行われたり、逆に非課税制度が設けられていたりします。独特の商習慣を理解しているかどうかで、節税のアドバイスのレベルには差が出るはずです。
税理士の「業界知識」も確かめましょう。
(4)最新情報への感度は高いか?
税制や税法は目まぐるしく変化しています。常に最新情報にアクセスできているか・アクセスしようという意欲があるかは、とても重要なポイントです。
付け加えれば、電子申告やクラウド会計の普及など、この分野でもIT化が進んでいます。
テクノロジーに強い税理士を選ぶことも、円滑な申告、節税対策にとってプラスに働くでしょう。
(5)税務調査で戦える税理士か?
申告内容に誤りがないかどうか、税務署が帳簿などを調べにやって来ることがあります。それが「税務調査」(任意調査)です。
その結果、「申告が間違っている」と指摘され、それを認めざるを得なくなれば、せっかくの節税対策が無意味になるばかりではなく、「加算税」などを余計に支払わなくてはなりません。
税務調査には税理士の立ち合いが認められていますから、そんなことにならないように、しっかり対応してもらう必要があります。しかし、やはり調査に対応した経験がなく、税務署の言いなりになってしまうような先生もいます。節税対策をしっかり「完了」させるためにも、税務調査にも強い税理士を選びましょう。
(6)「節税ありき」ではない税理士を選ぶ
節税は、やろうと思えば簡単です。「合法的な経費」を積み増したりして、所得を少なくすればいいのです。極論すれば、会社を赤字にすれば、法人税は1円も払わなくて済むでしょう。
しかし、経費を使えば使うほど、会社に残るキャッシュも減っていきます。事実、「とにかく税金を払うのは嫌だ!」という社長の意思に従って、毎年、赤字申告に近い状況をつくるためにせっせと指導している税理士もいます。
しかし、事業の拡大・発展という会社の本来の目的から見れば、それは本末転倒と言うしかありませんよね。
もし、先ほどの社長のような顧客がいたとしたら、「それでは会社を成長させることはできませんよ」とアドバイスしてくれるような税理士を選ぶのが大切です。
「節税ができない」というのと「節税第一のアドバイスはしない」というのとでは、まったく意味が違うのです。
「節税」に関するQ&A
それではここで、税理士紹介28年のビスカスへお客さまからよく寄せられる節税関連の疑問・質問をQ&A形式でご紹介していきます。
Q.積極的に節税のアドバイスを受けるためにはどうすれば良い?
A.まずは、「積極的に節税したい」という意向を税理士にしっかりと伝えることが重要です。税理士の業務の中には税務コンサルティング業務や税務相談業務が含まれていますので、クライアントの状況に沿って適切な節税対策を提案してもらうことが可能です。経費計上を漏れなく行うといった方法のほか、税制を活用した方法など、素人ではなかなか難しい方法での対策をしてもらえる場合があります。
ただし、正しく納税ができるようサポートするのが税理士の本来の業務であるため、中には積極的な節税をすすめないスタンスの税理士もいます。節税に対する姿勢や考え方は依頼する税理士と事前にすり合わせをしておく必要があるでしょう。
Q.節税にはリスクが付き物?
A.税金の負担を軽減させることができる「節税」ですが、実はリスクも存在します。まず、ひとつめのリスクが「税務調査のリスク」です。過度な節税対策やグレーゾーンといわれる対策を行うことで、税務調査で指摘される可能性が高まります。適正な方法で節税対策をしている場合でも、ある程度のリスクがあると考えておくのがよいでしょう。
また、次に「融資が受けにくくなるリスク」があげられます。節税対策によって利益を抑えられることによって融資の際に金融機関からの評価が下がってしまう可能性が考えられます。
節税には上記のようなリスクがあることも事前に説明をしたうえで、自社にとってどのように対応するのが良いのか、最適な方法を提案してくれる税理士を選ぶとよいでしょう。
Q.経営者の資産形成までのアドバイスを受けることはできる?
A.税理士は税務のプロであるため、節税対策であったり、将来の相続を見据えた資産税対策などについては相談に乗ってもらうことができますが、経営者個人の資産形成のアドバイスまでは対応していない場合があります。資産形成の相談については依頼する税理士が対応可能かどうか事前に確認しておきましょう。
ビスカスにお問い合わせ頂いた場合、コーディネーターにご要望をお伝え頂ければ、その要望にあった税理士の先生をお探しします。「資産形成を含めて相談できる先生を紹介して欲しい」とお気軽にご相談ください。
まとめ
税理士だから、みんなが節税の達人だとは限りません。無理のある税金対策ではなく、事業の成長に役立つ節税をサポートしてくれる税理士を選びたいものです。
実績のある税理士紹介会社を利用するのも、一つの方法でしょう。