フランチャイズオーナーが支払うべき税金と節税ポイントとは?

フランチャイズオーナーが支払うべき税金と節税ポイントとは?
最終更新日:
2024/12/10
この記事の監修者
おだね税理士事務所
代表 小田根 大輔(税理士)
 
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フランチャイズ経営ではどんな税金がかかるのか?

フランチャイズ経営に乗り出すタイミングは、人それぞれでしょう。ビジネスの経験がなく1から始める場合や脱サラしてチャレンジする場合、別に仕事を持ちながら副業としてスタートさせることもあるかもしれません。

いずれにせよ、事業を営む以上、税金をきちんと支払わなくてはなりません。ビジネスを軌道に乗せるためには、節税の意識も強く持つ必要があります。サラリーマンであれば、税金まわりのことは会社任せでよかったのですが、独立したら、自分で判断し行動しなくてはならないのです。

まず前提として、フランチャイズオーナーは“個人事業主”です。最初に、個人事業主に課せられる一般的な税金について説明します。

〈1〉所得税

個人事業主には、毎年1月1日~12月31日の間に稼いだお金に対して、所得税が課税されます。
所得には、給与所得や不動産所得など10種類あるのですが、フランチャイズ経営で得るのは「事業所得」です。この所得については、自分で税務署に確定申告を行い、併せて納税する必要があります。
確定申告というのは、その年の所得を計算して税務署に申告し、税金を納めるための手続きのことで、原則として、翌年2月16日~3月15日までの間に済ませなくてはなりません。

ちなみに、所得税は「累進課税」といって、所得が増えるほど税率自体も高くなっていきます。それだけに、節税=所得を低く抑えることは重要な意味を持ちます。

〈2〉住民税

所得税が国に納める「国税」なのに対して、これは都道府県、市区町村に収める「地方税」です。所得税の確定申告を行うと、その内容に基づいて税額を計算した市区町村から、納付書が送られてきます。

〈3〉事業税

290万円以上の事業所得にかかる税金です。所得が290万円に満たなければ、課税はされません。税率は、業種ごとに決まっていて、多くの場合5%です。
したがって、事業税の額は、

( 所得 - 290万円 )× 5%

ということになります。

〈4〉消費税

この税金は、全員に納付義務があるわけではありません。課税対象になるのは「前々年の売上高が1,000万円以上、または前年1月から6月までの売上高および給与支払額が1,000万円以上ある事業主」です。「年間売上高1,000万円」を超えるかどうかというのが、1つのラインになるのです。

課税対象になった場合の消費税(税率10%)の額は、

課税売上高の10% - 課税仕入れ等の10%

で計算されます。
「課税仕入れ等の10%」とは、仕入金額などに上乗せして取引先に支払った消費税の金額です。納付の際には、忘れずにこの分を差し引く必要があります。

 

節税のカギは「経費」にあり

上記の〈1〉~〈3〉の納税額は、所得によって変わります。ですから、節税のためには、「できるだけ所得を抑えること」がポイントになります。

ここで押さえておきたいのが、「収入(売上)と所得は違う」ということです。
収入を得るためには、必要な備品を購入したり、人を雇えば人件費を支払ったりと、さまざまな支出が発生します。総収入からそれらの「経費」などを差し引いたものが、これら税金計算のベースになる所得なのです。
フランチャイズ経営の場合には、後述するように、「本部」に支払うロイヤリティ(経営指導料、フランチャイズ手数料)なども、この計算に大きく影響することになります。

何を経費(正確には「必要経費」)で落とせるのかは、業種やフランチャイズ契約の内容などによって異なりますが、基本的には次のような「原則」があると覚えておきましょう。

  • 収入を得るために支出したものであること
  • 領収書などにより、支出の証明ができること
  • 妥当な範囲の支出であること

例えば、プライベートで着る洋服が経費になることはありませんが、仕事用のユニフォームであれば、認められます。
仕事先との会食の出費は、基本的に「接待交際費」として認められるものの、数人で10万円も飲み食いしたら、「妥当な範囲」とみなされない公算大なのです。

フランチャイズオーナーができる節税対策とは?

小田根 大輔

監修税理士からのワンポイントアドバイス

フランチャイズオーナー(に関わらず個人事業主の全般)が節税対策をする上で大事なことは青色申告の承認を受け、複式簿記により記帳(会計ソフトを使用すれば自動的に複式簿記で記帳されます)し、事業に関連する費用を漏れなく計上することです。
青色申告を行うことで青色申告特別控除として55万円(電子申告を行うと65万円)又は10万円を所得から控除することができるほか、青色事業専従者としてご家族に従業員として働いてもらい、給料を支払うことで経費とすることが可能です。
経費の他、小規模企業共済(個人事業主のための積み立てによる退職金制度)に加入することにより、その掛金はすべて所得控除となります。また、共済金を受け取るときには一定要件を満たすことで退職金扱いとなり税制上優遇されております。

個人事業主の必要経費とは、所得税法37条1項において売上原価、収入を得るために直接に要した費用、販売費・一般管理費その他業務について生じた費用の額と定義されております。また、所得税法45条1項に必要経費とならないものが列挙されており、家事上の経費(プライベートの支出)及び家事関連費(自宅の一部を事業用に使用している場合の家賃等)が含まれております。ただ、家事関連費であっても所得税法施行令第96条において、①その主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その部分を明らかに区分できる場合、②青色申告の承認を受けており、業務の遂行上直接必要であることが明らかな部分については経費とされます。

コンビニエンスストアのフランチャイズオーナーで考えると、商品の仕入れは売上原価、ロイヤリティは直接要した費用、店舗家賃は販売費一般管理費その他の費用となり、経費として収入から差し引くことになります。また、自家用車を事業に使用している場合には、その使用部分を走行距離などに応じて、プライベートと業務が明確に区分がされている場合には業務部分を経費とすることができます。

一方で、顧客獲得のためにロータリークラブなどに入会することがある場合もあるかと思いますが、これが業務と直接関係し、業務遂行上必要なものと課税庁に認められず、入会金や会費が経費ではなく家事に該当するとされたケースもありますので経費の判断が難しい場面もあります。

加盟金やロイヤリティの扱いに注意する

フランチャイズ経営が他の業態と違うことの1つに、スタートアップ時の加盟金、月々のロイヤリティというお金の発生する点が挙げられます。税務処理の際には、これらの扱いに少し注意する必要があります。

加盟金

フランチャイズに加盟する場合に、ノウハウ提供料・経営指導料・エリア取得料といった名目で一時金を支払うことがあります。「収入を得るために支出したもの」ですから、初年度に全額を経費で落としたいところですが、それはできないのです。
このように、将来的に返還されないことが確定している一時金は、「繰延資産」として、いったん資産に計上しなくてはなりません。そのうえで、何年かにわたって「費用」として経費に計上していきます。

フランチャイズの加盟金は、原則として5年間が償却期間(費用に計上する期間)とされますから、5年間、均等額を経費にしていくことになります。

ロイヤリティ

事業体本部に定期的に支払うロイヤリティは、当然経費ですから、確実に計上しましょう。

さきほど、「事業税は290万円以下ならば課税されない」という話をしました。「そんな金額はすぐに超えてしまう」と感じるかもしれませんが、これも説明したように、290万円は売上ではなく「所得」です。
ロイヤリティをしっかり経費計上すれば、事業所得は圧縮され、免税ないし納税しても金額が低く抑えられることになるでしょう。

一方、「消費税については、売上1,000万円が分岐点」という話をしました。個人商店などであれば、「年間売上を1,000万円未満に抑えて、消費税を免除される」という行動がありえるかもしれません。しかし、フランチャイズの場合には、ロイヤリティの支払いを考えると売上の抑制などは非現実的です。最初から、消費税の支払いを織り込んだ事業計画が必要になるでしょう。

個人のフランチャイズオーナーは法人化すべき?

小田根 大輔

監修税理士からのワンポイントアドバイス

個人のフランチャイズオーナーが法人化すると、税金の負担が軽くなるケースもありますので一定程度の事業規模になった場合には法人成りを検討されるといいかもしれません。

その際の判断材料として事業所得の金額で判断いただくとよろしいかと存じます。これは個人事業主の所得税と法人税の税率の違いによるものです。所得税の税率は課税所得に応じて5%から45%となっており、住民税を合わせた最高税率は55%となります。一方で法人に係る実効税率は法人税、住民税、事業税を合わせて一般的に約34%(中小法人の年800万円以下の所得の法人税率は15%となるためその場合の実効税率は約24%)となります。所得税の税率が23%(住民税と合わせて33%)超となる所得金額(約700万円)を超えるあたりから法人成りの検討をはじめると良いかと存じます。

法人成りのメリットは個人事業主(法人成りより役員になる)に役員報酬を支払い法人の経費とできるほか、上記のようなロータリークラブの入会金や会費も経費(交際費、寄付金扱い)として個人事業主の時には経費と出来なかったものが経費として計上することが出来ます。税務上のメリットの他、法人となると社会的な信用が得られ、金融機関からの融資が受けやすくなる、人材採用がやりやすくなる、法人でないと対象とならないサービスを受けられる、といったものが挙げられます。
また消費税の納税義務判定において、新設法人となり基準期間(前々事業年度)の売上がないので、最長で2年間は免税事業者となります(資本金1,000万円未満の場合に限る)。

デメリットとしては、役員1人でも社会保険への加入が義務となり、社会保険の負担が増え、法人成りの税務メリットを上回る支出となるケースがあります。また、法人を設立する費用や、所得金額が0円でも法人住民税の均等割が発生するなど、個人事業主の時よりも負担が高くなることがあります。

法人成りを検討する際は、メリット・デメリットを比較検討し、専門家(税理士・公認会計士・社会保険労務士・司法書士など)にご相談することをおすすめいたします。

フランチャイズ業に詳しい税理士をお探しの方へ

フランチャイズ経営者が節税するためには、この他にも、確定申告を青色申告(※)にして特別控除を受ける、といったノウハウがあります。不明な点は、フランチャイズ経営に詳しい税理士に相談をしましょう。実績ある税理士紹介会社に依頼すれば、最適のプロが見つかるはずです。

※青色申告:複式簿記の手法に基づいて帳簿を記載し、その記帳を基に所得税、法人税を計算して申告すること。特別控除(65万円)などの特典がある。

よくある質問

フランチャイズオーナーが支払うべき税金は何ですか?

フランチャイズオーナーが支払うべき税金には、所得税、住民税、事業税、消費税があります。所得税は累進課税であり、住民税は地方税、事業税は所得が290万円以上の場合に課税され、消費税は年間売上が1,000万円を超える場合に課税されます。

フランチャイズの節税方法にはどのようなものがありますか?

節税のカギは経費の計上にあります。収入を得るために支出したものを経費として計上することで所得を抑え、税負担を軽減できます。具体的には、事業に関連する備品購入費や人件費などが該当します。

加盟金やロイヤリティの税務処理方法は?

加盟金は「繰延資産」として資産に計上し、原則5年間で償却します。ロイヤリティは経費として計上できますので、しっかりと処理することが重要です。

消費税の課税対象となる条件は何ですか?

前々年の売上高が1,000万円以上、または前年1月から6月までの売上高か給与支払額が1,000万円以上である事業主が消費税の課税対象となります。

青色申告をするメリットは何ですか?

青色申告をすることで、特別控除や損失の繰越控除などの特典が受けられます。複式簿記の手法に基づいて帳簿を記載し、所得税や法人税の計算を行う必要があります。

この記事の監修者
おだね税理士事務所
代表 小田根 大輔(税理士)
業界歴15年間で、法人・個人事業主の顧問業務、申告(法人税、消費税、所得税、相続税)業務のほか、財務・税務のデューデリジェンス業務、公益法人の顧問業務、M&Aや事業承継業務など、幅広い業務に携わってまりました。これらの経験を通じて、企業の成長と発展には、税務・会計の専門家としてのサポートが不可欠であることを確信しております。また、企業経営には、常に様々な課題がつきものです。税務・会計に関するお悩みはもとより事業に関することまで、どうぞお気軽にご相談ください。お客様の立場に寄り添い、最善のサポートをさせていただきます。

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この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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