農業の税務に強い税理士の選び方。報酬相場や税金のポイントを解説
- 最終更新日:
- 2025/08/27

- この記事の監修者
- 税理士紹介業界で30年・40万件超の現場を知るパイオニア
株式会社ビスカス 代表取締役 八木美代子
農業での税理士報酬はいくらが相場か?
個人経営の場合の費用相場
農家(個人経営)が税理士に依頼する際、業務内容別の目安は以下の通りです。
- 顧問料:月額1〜3万円程度
- 確定申告代行:年間7〜15万円程度(一般的な相場感)
- 記帳代行:年間10〜30万円程度(仕訳量・作業量に応じて変動)
ただし、農業特有の在庫計上や生物資産・育成費の棚卸処理などがある場合、一般の個人事業より作業負担が増え、費用が上振れすることもあります。
法人経営の場合の費用相場
法人農家では業務量が増えるため、以下のような費用感が目安になります。
- 顧問料:月額2〜5万円程度
- 決算・法人税申告代行:年間7〜15万円程度(相場感)
- 記帳代行:年間10〜30万円程度(規模・仕訳数により変動)
さらに法人化に伴う勘定科目内訳書や事業概況報告書などの書類が増えるため、一般の個人事業以上に費用がかかることが多いです。
費用が変動する主な要因
- 年間売上高や事業規模(規模拡大で作業量増加)
- 取引量・仕訳数(多いほど記帳作業が増える)
- 書類作成の手間(農業特有の棚卸・生物資産など)
- 消費税申告の有無(課税事業者は追加の申告対応が必要)
農業は会計・税務処理が特殊なため、依頼前に必ず見積もり・相談を行っておくことが重要です。
農業経営者に課税される税金は?
農業経営者にかかる税金は、個人経営と法人経営で大きく異なります。以下に主な税金を整理しました。
個人経営の場合
- 所得税:農業所得や副業収入を合算した金額に課税。累進課税制度で、所得が増えるほど税率が高くなる。
- 個人住民税:前年の所得に応じて課税。
- 個人事業税:農業は原則非課税。ただし畜産業(養豚・養鶏・酪農など)は課税対象となる。
- 消費税:課税売上高が1,000万円を超える場合は申告・納税が必要。
農業と畜産業を併せて営んでいる場合、経営形態や事業の割合によって課税可否が異なるため、専門家の判断を仰ぐことが望ましいでしょう。
法人経営の場合
- 法人税:法人の所得に課税。中小法人(資本金1億円以下)は23.2%、協同組合等は19%。年800万円以下の所得には軽減税率15%が適用。
- 法人住民税・法人事業税:法人の所在地・所得に応じて課税。
- 消費税:課税売上高が基準を超える場合に必要。
法人化には「節税効果(所得税より法人税の方が低率になりやすい)」「対外信用力の向上」「事業承継のしやすさ」などのメリットがあります。
農地所有適格法人の特例
農業法人のうち、市町村の農業委員会が認めた「農地所有適格法人」には、農業経営基盤強化準備金など税制上の優遇措置があります。ただし法人形態・事業要件・議決権・役員要件など、すべての条件を満たす必要があり、申請は複雑です。
そのため、法人化や農地所有適格法人の申請を検討する際には、必ず専門家への相談をおすすめします。
農業経営の会計・税務の特殊性とは?
農業経営は、他の事業と比べて会計処理が複雑です。専用の勘定科目や在庫管理、生物資産の計上など独自のルールが多く、日常の経理から確定申告まで専門知識が欠かせません。最近では農業簿記に対応した会計ソフトも普及していますが、仕訳や申告の判断にはやはり専門家の支援が必要です。
農業特有の勘定科目
農業簿記には、一般的な事業では使わない専用の勘定科目があります。代表的なものは次の通りです。
- 種苗費:種子・苗・球根の購入費用
- 素畜費:子牛や子豚などの購入費用や運搬費
- 飼料費:配合飼料や飼料添加物の購入費用
- 小作料:農地を借りて利用する際の地代
- 土地改良費:区画整理や用排水路の整備など農地改良にかかった費用
棚卸処理
農業では、収穫前後の作物や飼育中の家畜など、多様な在庫が発生します。これらは次のように区分して棚卸を行います。
- 農作物:収穫済みで未販売の農産物
- 仕掛品:栽培中の作物や飼育途中の家畜
- 原材料:種子、肥料、飼料、農薬、冷凍精液など
- 貯蔵品:燃料、包装材料、収入印紙など
「生物資産」の管理
果樹の成木や搾乳牛・繁殖豚といった生産活動中の家畜は「生物資産」として固定資産に計上し、減価償却を行います。育成費用を積み上げた金額を取得価額とするため、経理処理は一層複雑になります。
経理処理の複雑さとソフトの活用
農業は特殊な会計処理が多いため、仕訳や棚卸の判断を誤ると税務調査で指摘を受けやすい分野です。農業簿記に対応した会計ソフトを利用すれば日常の記帳は効率化できますが、決算や申告の精度を高めるには専門家のサポートが欠かせません。
農家・農業経営者はどんな税理士に頼めばいい?
農業経営では、会計や税務だけでなく相続・法人化・経営全般にまで関わる課題が多く発生します。どんな税理士を選ぶかによって、節税効果や経営の安心感は大きく変わります。
農業税務の実績がある
農業には専用の勘定科目や棚卸のルールがあり、経験の浅い税理士では処理を誤るリスクがあります。農業経営のサポート実績が豊富な税理士であれば、確定申告や消費税申告もスムーズに対応でき、税務調査への不安も軽減できます。
相続に詳しい
農地の相続や譲渡は避けて通れない課題です。相続税の計算や農地の評価方法は複雑で、知識や経験が不足していると不必要に高い税額を支払うことになりかねません。相続に強い税理士に相談すれば、円滑な承継や節税対策につながります。
不動産に詳しい
農業収入に加え、不動産収入を得ている方も少なくありません。不動産に関する税務に詳しい税理士なら、賃貸経営や土地活用と農業の収支を合わせて最適化でき、相続対策としても有利です。
法人化に強い
個人経営から法人化を検討する場面も増えています。法人化は「節税」「信用力の向上」「事業承継のしやすさ」といったメリットがありますが、設立時の手続きや要件は専門的です。法人設立や農地所有適格法人に詳しい税理士がいれば、将来を見据えた判断が可能になります。
農業経営アドバイザー資格を持つ
農業経営アドバイザー(日本政策金融公庫認定)は、農業経営全般の相談に対応できる専門家です。税務だけでなく、労務管理や資金繰り、販売戦略やマーケティングなど幅広い助言を受けられるのが特徴です。資格を持つ税理士なら、日々の経営課題に寄り添った実践的なアドバイスを得られるでしょう。
農業税理士選びで失敗しないための注意点
先ほどご紹介した「選ぶべきポイント」を外してしまうと、実際の経営で思わぬ不利益につながることがあります。ここでは、よくある失敗例と注意点を挙げておきます。
農業に不慣れな税理士を選んでしまう
農業特有の勘定科目や在庫処理に対応できないと、帳簿の誤りや税務調査での指摘につながります。結果として追徴課税や修正申告が必要になることもあります。
将来を見据えた提案がない
相続や法人化への知見が浅いと、目先の申告はできても「次の世代への承継」「経営の拡大」といった長期的な課題に対応できません。長く付き合えるパートナーかどうかを確認しましょう。
経営全体への視点が欠けている
記帳や申告の代行だけにとどまり、資金繰りや経営改善の相談に応じてもらえない場合、経営課題を一緒に解決する存在にはなりません。農業経営全般を理解しているかどうかが見極めのポイントです。
税理士選びで失敗しないためには、「農業に強いか」「将来を見据えた提案力があるか」「経営全体を理解しているか」という観点で比較検討することが大切です。
よくある質問
税理士費用の相場はどのように決まるのですか?
税理士費用の相場は、年間売上高、取引量、取引内容によって異なります。特に農業など特殊な会計処理が必要な場合は費用が高くなることがあります。詳細については、個別の相談が必要です。
個人経営の確定申告にかかる費用の目安は?
個人経営の場合、年間売上高によって税理士費用が変動します。取引量や取引内容によっても費用が増加することがありますので、具体的な費用については事前に確認することをお勧めします。
法人経営の確定申告にかかる費用の目安は?
法人経営の場合、確定申告にかかる税理士費用は年間売上高や書類作成の手間によって決まります。法人税の確定申告書の他に、勘定科目内訳書や事業概況報告書などが必要なため、個人経営よりも高くなる傾向があります。
消費税の課税事業者になると費用はどうなりますか?
消費税の課税事業者になると、所得税の確定申告とは別に消費税の確定申告も必要になります。そのため、追加の費用が発生する点に注意が必要です。
農業の確定申告には特別な費用がかかりますか?
はい、農業の確定申告では、栽培中の農産物の在庫計上や育成費用の算出など、通常の個人事業と異なる会計処理が必要なため、費用が高くなることがあります。事前に税理士と詳細を確認することが重要です。
農業に詳しい税理士をお探しの方へ
農業経営には、頼りになる税理士のサポートが必要です。実績のある税理士紹介会社を使えば、ニーズに合った税理士をスムーズに見つけることができるはずです。

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