芸能業・タレント業の税務を解説 確定申告は必要?経費にできるものは何?

芸能業・タレント業の税務を解説 確定申告は必要?経費にできるものは何?
公開日:
2021/09/08
最終更新日:
2024/04/09
 
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俳優や声優、モデルなどの芸能業をしている人の税金は、プロダクションとの契約形態などによって、扱いが異なるため、注意が必要です。自分の得ている収入は、給与所得、それとも事業所得?確定申告は必要になる?その場合、どんなものが経費になるのか?今回は芸能業・タレント業の税金をわかりやすく解説します。

確定申告が必要な人は?

俳優、女優、声優、歌手、アイドル、モデルなどの芸能活動で得た所得には、所得税が課税されます。ただし、同じ所得でも「給与所得」なのか「事業所得」なのかによって、申告・納税のやり方が違ってきます。

給与所得になる場合とは?

芸能活動を行うときには、プロダクションと契約することが多いでしょう。そのプロダクションと「雇用契約」を結んで(=雇われて)、活動の対価を給与(固定給、固定給+歩合、完全歩合)で受け取る人は「給与所得者」になります。普通のサラリーマンと同じで、所得税や住民税は、毎月の給与から天引き(源泉徴収)され、もし“取られ過ぎ”があった場合には、年末調整で戻ってきます。

そのため、芸能活動で得た所得の税金については、基本的に「事務所任せ」で問題ないでしょう。ただし、年収が2,000万円を超える場合には自分で確定申告をしなくてはなりません。

事業所得になる場合とは?

一方、プロダクションに雇われるのではなく、単に「マネジメント契約」を結んで活動する人は「個人事業主」で、その所得は「事業所得」となります。この場合には、自ら確定申告する必要があります。
専業で芸能業に携わっている人はもちろん、会社勤めやアルバイトをしながら、兼業・副業で活動している人も、そこで得た所得(収入ではないため注意が必要です。後述で説明します)が20万円を超えた場合には、申告しなくてはなりません。

確定申告で注意すべきこととは?

申告のベースになる「所得」とは?

確定申告とは、毎年1月1日~12月31日までの所得と税額を自ら計算し、原則として翌年3月15日までに税務署に申告・納税することを言います。所得があるのに申告を怠ったり、実際と異なる内容の申告を行ったりすると、追徴課税(※)などのペナルティを受けることもありますから、注意しましょう。
同時に、節税の意識もしっかり持つ必要があります。その際、カギになるのは「必要経費」です。

先ほどの事業所得についての説明で記した通り、収入と所得は違います。受け取ったギャラの総額(「収入」)から、この「経費」(例えば、スタイリストに支払った報酬)などを差し引いた金額が「所得」なのです。

収入 ― 経費 = 所得

所得税は、所得に一定の税率を掛けて計算されます。「経費が多い」、つまり「所得が少ない」ほど、支払う税金も少なくて済みます。従って、「認められる経費は忘れずに計上する」ことが、節税の大きなポイントになるわけです。
所得税は、法人税などと異なり、所得が増えるほど税率も上がっていく「累進課税」になっているので、このことはさらに大きな意味を持っています。

※追徴課税:申告漏れや脱税の目的で、本来支払うべき税金よりも納税した金額が少なかった場合に、追加で税金を支払うこと。過少申告加算税などの「加算税」、「延滞税」がある。

何が経費にできるのか?

とはいえ、すべての領収書を経費にできるわけではありません。「必要経費」の名の通り、「事業で収入を得るために必要な費用」であることが、その要件です。
逆に言えば、生活費の支払いなどは、必要経費にはなりません。また、事業と生活の両方に使用する場合(例えば、携帯電話料金)は、事業に使用する分のみを経費にすることができます。

問題は、その線引きの仕方です。何が経費に認められるのか、詳しく法律に列挙されているわけではありません。一般的に、個人事業主の経費については、判断の難しいことが少なくないのですが、芸能業の場合にはとりわけ「微妙」なケースが多いのです。判断を間違えれば、税務署に否認されるかもしれないし、反対に経費にできたのにしなかった、というミスも起こりやすいと言えるでしょう。

では、具体的な事例を見ていきましょう。

衣装代

ステージでしか着ない特殊な衣装などは、文句なく経費にできます。一方、仕事にも使うけれど、普段着にもなる洋服などについては、少なくとも全額を経費で落とすのは難しいでしょう。例えば、購入金額の50%のように、事業に使った分を按分(※)して経費にすることは可能です。ただし、なぜその按分比率になるのかについて、合理的に説明できることが求められます(以下も同様です)。

※按分:基準に基づいた割合で金額を割り振ること。

美容室代、エステ代、化粧品代

美容室代やエステ代、化粧品代といった費用も、仕事のみに支出したもの(例えば、撮影に合わせて髪をセットし、仕事が終わったら元に戻す)については、全額経費にしてOKです。仕事のみでない場合には、按分して経費にします。

人件費

仕事のためのマネージャー、付き人、スタイリストなどを雇用したり、業務委託で作業を頼んだりした場合の報酬は、必要経費になります。

事務所の家賃

仕事用に事務所を借りた場合には、その家賃を全額経費にすることができます。自宅を「事務所兼用」にしている場合には、生活で使った部分と按分します。

事務所の水光熱費

事務所を仕事用に借りている場合には、その事務所の水光熱費も全額経費になります。自宅兼事務所では、やはり按分して経費計上します。

通信費

携帯電話料金、インターネット使用料、郵送費なども同様です。仕事専用であれば全額経費、そうでなければ按分して経費計上します。

旅費交通費

仕事のために支払った電車代、バス代、タクシー代、飛行機代などは、経費になります。

接待交際費

仕事関連であることが明確な飲食費、接待費、プレゼント代、花代、祝儀、香典などは経費にできます。仕事仲間との単なる飲食などは、当然認められません。

研究費、研修費

例えば、舞台の役作りに必要な研修やトレーニングへの支出や、芸能関係の書籍代、観劇、資料収集、勉強会、取材旅行などの費用も必要経費です。ただし、これらも「仕事のため」であることがしっかり説明できることが必要です。

広告宣伝費

自らの宣伝のために作製したポスター、パンフレット、ノベルティグッズなどの費用も、経費にすることができます。

税理士などへの報酬

税理士や弁護士などの専門家と契約している場合には、その報酬や手数料などを経費計上することができます。

確定申告は税理士に依頼すべき?

確定申告のプロとして、「税理士」がいます。依頼すべきか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。結論として、確定申告は税理士に依頼することをおすすめします。理由として、以下の点があげられます。

【正確な申告が行える】

くり返しになりますが、税理士は確定申告のプロです。前述したように、芸能業では経費として認められるものと認められないものの線引きが難しいケースが多くあります。自分だけで行うと、判断を間違え正しい申告が行えない場合もあります。税理士に依頼すれば、確かな税務知識のもと安心して確定申告することができます。

【時間を節約できる】

確定申告を税理士にお願いすれば、申告にかかる時間を節約することができます。自分で確定申告する場合、日々の領収書などの管理、記帳が必要です。経費ごとに項目を分けなければなりませんし、決算書作成も大きな労力が必要になります。税理士事務所のなかには、決算書の作成だけでなく記帳からお願いできるところもあります。依頼すれば、本来割かなければならなかった確定申告のための時間を、本業である芸能業に回すことができます。確かに経理も大事な仕事ではありますが、芸能業の場合、自分に替わって活動してくれる人はほかにいません。任せられる確定申告は税理士に依頼し、自分は替わりのきかない芸能業に専念するのが、効率的ではないでしょうか。

【信用を得られる】

決算書に税理士のハンコがあれば、税務署からの信頼も高くなります。税務調査の対象にも比較的なりにくくなるのです。一度税務調査の対象になってしまうと、全ての書類がチェックされることになり、大きな労力が必要になります。信用を得られるのは、税理士に依頼する大きなメリットと言えるでしょう。

まとめ

このほかにも、仕事の中身によって、経費にできる支出が存在する可能性があります。ただし、説明してきたように、「何が経費にできるのか」がグレーゾーンにあることも少なくありません。迷う場合には、確定申告のことも見越して税理士に相談してみることをお勧めします。

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この記事の執筆者
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