NECと富士通、6Gの未来に挑む 高性能半導体の開発を強化 | MONEYIZM
 

NECと富士通、6Gの未来に挑む 高性能半導体の開発を強化

次世代通信規格「6G」の策定作業が2024年に始まる見通しです。
都市部での通信がすでに逼迫しているため、6Gの高い周波数帯を活用する技術が求められており、NECと富士通は、基地局向け半導体の開発に注力し、無線通信分野での存在感を高めることを目指しています。

2024年に始動する6Gの舞台裏

第3世代移動通信システム(3G)をはじめとした移動通信システムの仕様の検討・策定を行う国際標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Projectの略)は、2023年12月上旬に各国·地域の関連団体と協力し、6Gの技術仕様策定に取り組むと表明しました。今後は2024年以降に本格的な議論を行い、基地局メーカーから6Gの規格を構成する技術要素の提案を募集する予定です。
 

6Gでは、通信速度を5Gの10倍に向上させ、毎秒100ギガビット前後の通信速度を実現することが目標とされています。これにより、オフィスや工場、病院、教育などの現場で拡張現実(AR)や仮想現実(VR)技術の普及が期待されています。
電波がつながりやすい1ギガヘルツ以下の「プラチナバンド」は、すでに携帯電話やテレビ放送に割り当てられており、6Gの大容量通信に必要な帯域は100ギガヘルツを超える「サブテラヘルツ波」などに限られます。これらの高い周波数帯では、高性能な半導体が必要とされています。
 

米国の連邦通信委員会(FCC)では、世界に先駆けて「テラヘルツ波」と呼ばれる周波数帯(95G~3THz)の電波を6G向けに検討するように推奨しています。
日本でも、特定実験試験局に使用できる周波数帯として92G〜100GHz、152G〜164GHz、287.5G〜312.5GHzが追加されました。
 

6Gに向けて注目されているのは、90G〜300GHzの範囲で、これが主な検討対象とされています。こうした周波数帯のことを「サブテラヘルツ波」と呼び、今後も進化を続ける通信技術に新たな可能性をもたらすことを示唆しています。
 

NECは10月に、6Gで利用される150ギガヘルツ帯の電波に対応する通信用半導体を試作しました。これは4つの異なる周波数帯で大容量の電波を同時に送信できるアンテナ一体型半導体で、世界初の開発としています。
 

一方、富士通も高出力に耐える屋外基地局向けの半導体を開発中で、高周波数帯の電波を遠くに届けるために耐久性の高い素材を採用しています。
 

さらに6Gでは、通信に「サブテラヘルツ波」だけでなく、屋内では「マイクロ波」や「ミリ波」の周波数帯も使われる予定です。NTTドコモは、6Gの周波数帯に対応する小型アンテナの技術開発を進めており、屋外基地局と同様にスマートフォンとの通信を効果的に行うことを目指しています。
 

高周波数帯の電波は建物や壁を通り抜けにくいため、NTTドコモは高周波数帯の電波を反射する建材や電波を通しやすい窓ガラスの研究にも取り組んでいます。また、山間部や離島向けには「空飛ぶ基地局」の開発も進行中です。
 

無線通信関連の特許使用料は年間1兆円を超え、有力な特許を持つ企業が競争で優位に立っています。たとえば中国の華為技術(HUAWEI/ファーウェイ)が5Gの特許で首位を占め、日本企業は存在感が低い状況です。
 

米国が中国の盗聴などを懸念し、ファーウェイの製品排除を提唱したことで、西側諸国では5G基地局の調達からファーウェイを除外する傾向が広がっています。これにより、自国内で無線通信分野の主要メーカーを育成し、多岐にわたる調達手段を確保することが、経済安全保障上の重要な課題となっています。
 

国際的な経済安全保障の観点から、NTTはNECとの提携や子会社のNTTイノベーティブデバイスを通じて富士通の半導体子会社に出資するなど、6Gの技術開発に積極的に取り組んでいます。

鈴木林太郎
金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数。
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