事業承継は税理士に相談できる?メリットと税理士に求められる知識やスキルも解説

事業承継は税理士に相談できる?メリットと税理士に求められる知識やスキルも解説
最終更新日:
2025/11/20
この記事の監修者
おだね税理士事務所
代表 小田根 大輔(税理士)
 
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事業承継で何も対策をしないまま相続が発生すれば、後継者に数千万円から億単位の税負担がのしかかります。税理士に相談することで、事業承継税制の活用や計画的な株式移転により、税負担を大幅に軽減できます。ただし、全ての税理士が事業承継に精通しているわけではありません。この記事では、税理士に依頼できる業務内容から費用相場、強い税理士の選び方まで解説します。

税理士に依頼できる事業承継の業務とは?

税理士は自社株の評価、相続税・贈与税対策、承継方法の選定など、事業承継に関する幅広い業務を担います。税務・財務の専門家として経営者の意思決定を支援し、円滑な事業承継を実現します。

承継方法の選定と実行支援

親族内承継、従業員承継、M&Aのいずれが適しているかは、会社の状況や経営者の意向により異なります。
税理士は各手法の税務上のメリット・デメリットを示し、最適な承継方法の選定を支援します。親族外承継ではMBOの株価算定や金融支援の申請サポート、M&Aでは税務デューデリジェンスや組織再編に伴う税務処理など、実行段階での具体的なサポートも行います。

自社株式の評価

事業承継では自社株式の適正な評価が出発点となります。
税理士は類似業種比準方式や純資産価額方式など、会社の規模や業種に応じた評価方法を用いて株価を算定します。この評価額が相続税・贈与税の計算基準となるため、評価方法の選択や評価額の引き下げ対策も含めて助言します。

相続税・贈与税対策の立案

後継者への株式移転では多額の税負担が生じる可能性があります。
税理士は暦年贈与や相続時精算課税制度の活用、生命保険を使った納税資金の確保など、具体的な節税スキームを提案します。事業承継税制を活用すれば相続税・贈与税の納税が100%猶予されるため、適用要件の判定や申請手続きのサポートも重要な業務です。

株式分散の防止と集約

相続により株式が分散すると経営の安定性が損なわれます。
税理士は種類株式の発行や議決権制限株式の活用、他の相続人への代償分割の設計など、後継者が経営権を確保できる株式承継プランを策定します。すでに分散している場合は、株式の買取りや属人的株式の導入といった集約策も提案します。

資金調達と財務面のアドバイス

後継者が株式を取得する際の資金調達は大きな課題です。
税理士は経営承継円滑化法に基づく融資制度の活用や、従業員持株会の設計、金融機関との交渉資料の作成など、資金面での支援を提供します。売却による事業承継では、譲渡所得税の試算や代表者の退職金設計も含めて総合的にアドバイスします。

事業承継を税理士に相談するメリット

税理士は自社株評価や税務対策だけでなく、承継計画の立案から実行まで総合的にサポートします。専門知識と実務経験を活かし、数千万円から億単位の税負担を軽減できる可能性があります。実際に中小企業庁の調査では、事業承継を行った企業の7割以上が税理士・公認会計士に相談しています。

数千万円規模の節税効果

自社株の評価額が高い企業では、何も対策をしないと相続税・贈与税が数千万円から億単位になる可能性があります。
税理士は株価引き下げ策、事業承継税制の活用、暦年贈与の計画的実行など、複数の手法を組み合わせて税負担を大幅に圧縮します。事業承継税制を適用すれば相続税・贈与税の100%納税猶予も可能で、要件を満たせば実質的な免除となります。早期に相談することで選択肢が広がり、より大きな節税効果が期待できます。

承継に関わる全資産の最適化

事業承継では自社株だけでなく、事業用不動産や設備、現預金など様々な資産を承継します。
税理士は会社財産と個人財産を総合的に評価し、どの資産をどのタイミングで誰に承継させるかを最適化します。不動産の評価減を活用した節税や、生命保険を使った納税資金の確保など、資産全体を俯瞰した戦略的なプランニングが可能です。

後継者の負担を最小化する実行支援

事業承継では複雑な手続きと膨大な書類作成が必要です。
税理士は承継計画の策定から、事業承継税制の認定申請、相続税・贈与税の申告書作成、株式移転の実務まで一貫してサポートします。5年から10年に及ぶ承継プロセス全体のスケジュール管理も担い、経営者と後継者が本業に集中できる環境を整えます。

専門家ネットワークによるワンストップ対応

事業承継では税務以外にも、株式譲渡契約書の作成、登記手続き、従業員の処遇、M&A交渉など多様な専門知識が必要です。
経験豊富な税理士は弁護士、司法書士、社会保険労務士、M&A仲介会社との協力体制を持っており、各専門家を適切なタイミングで招集します。経営者が複数の専門家を個別に探す手間が省け、スムーズな連携により承継の質も向上します。

承継後の経営安定化サポート

事業承継は株式移転で終わりではありません。新体制での税務申告、資金繰り管理、経営計画の見直しなど、承継後も様々な課題が発生します。
顧問税理士として継続的に関与することで、経営体制の変化に応じた機動的なアドバイスが受けられます。後継者の経営判断を財務面からサポートし、承継後の企業成長を後押しします。

小田根 大輔

監修税理士からのワンポイントアドバイス

経営者の方が事業承継を進めるにあたって意識するポイントは出来るだけ早く専門家に相談することです。満足な事業承継を成し遂げるには、後継者育成、株式対策、事業承継税制の活用など、多くの準備が必要となり、時間を要する場合が多いです(一般的に5〜10年と言われています)。早期に事業承継を検討することで、打てる対策も多くなり、スムーズな事業承継を実現することが可能となります。

また、何よりも大事なことは、経営者自身と後継者の『想い』だと考えられます。事業承継とは単なる財産の移転ではなく、経営者の想い(事業の継続、従業員の雇用を守る、取引先その他地域経済への貢献、これまでの経営の対価を得る、など。)を次世代に託すプロセスです。

事業承継には親族内承継、親族外承継、M&Aを活用した承継など様々な方法がありますが、それぞれの方法にメリット・デメリットがあり、会社の規模・業種、経営状況、後継者の有無などにより最適な方法は異なります。

そのためにも早期に事業承継に着手して、専門家に相談し、あなたの『想い』を実現するための最適な事業承継プランを検討されることをお勧めいたします。また、無料相談やセミナーなども活用して、情報収集をすることも肝要であると思います。

税理士に求められる知識・スキル

事業承継を成功させるには、法人税務だけでなく相続税・資産税の知識を持ち、複雑な承継プランを実行できる税理士が必要です。専門知識に加えて、関係者との調整力や他の専門家との連携力など、実務スキルも重要な選定基準となります。

求められる専門知識

事業承継では法人税、相続税、贈与税など複数の税法が絡むため、幅広い税務知識が求められます。特に相続税・資産税の実務経験がなければ、自社株評価や納税資金対策など適切なアドバイスはできません。

事業承継税制と組織再編税制

事業承継税制の納税猶予要件は複雑で、適用後も5年間の事業継続要件や雇用確保要件を満たす必要があります。要件を満たせなかった場合の利子税の負担や、取消事由の詳細な理解が必要です。また、会社分割や株式交換などの組織再編を伴う場合は、適格要件や繰越欠損金の引継ぎなど、組織再編税制の知識も不可欠です。

相続税・資産税の実務経験

多くの税理士は法人税務を専門としていますが、事業承継では経営者個人の相続が関わるため、相続税・資産税の知識が同等に重要です。自社株の財産評価、類似業種比準価額や純資産価額の計算、不動産の評価減、生命保険を使った納税資金対策など、資産税の実務経験がなければ適切な対策は立案できません。相続税申告の実績が豊富な税理士かどうかを確認することが重要です。

会社法・民法の関連知識

株式の種類や譲渡制限、種類株式の設計には会社法の知識が必要です。また、遺留分や代償分割、遺言書の活用など、民法の相続規定も事業承継に深く関わります。従業員持株会やMBOのスキーム構築、金融機関の融資制度や補助金など、実務的な承継手法にも精通していることが望ましいです。

求められる実務スキル

専門知識を実際の承継に落とし込むコンサルティング能力と、多様な関係者を調整するコミュニケーション能力が求められます。加えて、弁護士や司法書士など他の専門家と連携するプロジェクトマネジメント能力も重要です。

承継プランの立案と実行管理

企業の財務状況、後継者の有無、取引先との関係など、個別の事情を踏まえた最適プランの立案力が求められます。単に制度を説明するだけでなく、5年から10年のタイムスパンで具体的な実行計画を設計し、各段階での進捗を管理する能力が必要です。株価の推移を予測しながら贈与のタイミングを調整するなど、動的な計画修正も求められます。

関係者調整とコミュニケーション能力

事業承継では現経営者、後継者、家族、従業員など、利害が対立する関係者との調整が避けられません。税理士には各関係者の意向を丁寧に聞き取り、時には厳しい現実を伝えながらも信頼関係を維持するコミュニケーション能力が求められます。特に現経営者が感情的に引退を受け入れられない場合や、後継者候補が複数いて株式分散のリスクがある場合など、難しい局面での調整力が問われます。

専門家ネットワークの活用力

事業承継は税務だけで完結しません。株式譲渡契約書の作成では弁護士、登記では司法書士、従業員の処遇では社会保険労務士、M&Aではアドバイザーなど、複数の専門家と連携するプロジェクトマネジメント能力が必要です。各専門家の強みを理解し、適切なタイミングで依頼し、全体を統括する役割を担います。専門家ネットワークを持っているかどうかも、税理士選びの重要なポイントです。

事業承継に強い税理士選びのポイント

事業承継は企業の将来を左右する重要な局面であり、税理士選びは特に慎重に行う必要があります。適切な税理士との出会いが、円滑な事業承継の実現につながります。相談する税理士を選ぶ際には、税務の専門知識はもちろんのこと、企業の将来を見据えた提案ができる実践的なスキルと経験を持っているかを確認することが重要です

早期相談の重要性

事業承継は長期的な視点で取り組むべき重要な経営課題です。早期に着手することで、より多くの選択肢と対策が可能となります
例えば、贈与税の基礎控除(年間110万円)を活用した計画的な株式移転や、後継者の育成期間の確保など、時間的余裕があることで実現できる対策は数多くあります。
特に自社株式の評価や納税資金の準備など、財務面での対策には相応の時間が必要です。現経営者が元気なうちから、将来を見据えた計画的な準備を進めることが重要です。「事業承継に不安がある」「何から始めればよいかわからない」という段階でも、まずは税理士に相談することをお勧めします

事業承継税制への対応力

2018年度に改正された事業承継税制は、一定の要件を満たせば贈与税・相続税の納税が100%猶予される画期的な制度です。しかし、この制度を適切に活用するためには、税理士の専門的なサポートが不可欠です。

多くの注意点もあり

事業承継税制の適用には様々な要件があり、慎重な検討が必要です。例えば以下のような点に注意が必要です。

  • 税の「猶予」であって「免除」ではないこと
  • 5年間の事業継続要件があること
  • 雇用確保要件を満たす必要があること
  • 資本金の増減に制限があること
  • 経営環境の変化への対応に制限がかかる可能性があること

短期的ではなく長期的な視点で税理士を選ぶ

事業承継税制の活用後も、様々な要件を継続的に満たしていく必要があります。そのため、税理士選びでは以下の点を重視することが重要です。

  1. 事業承継の実績とノウハウ
  2. 継続的なフォロー体制の有無
  3. 他の専門家とのネットワーク
  4. コミュニケーション能力
  5. 経営支援の視点

事業承継を相談できる税理士はどう見分ける?

小田根 大輔

監修税理士からのワンポイントアドバイス

税理士も、医師や弁護士と同じようにそれぞれ得意・不得意とする分野があります。事業承継を相談するにあたり、その税理士が事業承継を専門としているのか、事業承継業務を行った経験があるのかをホームページや相談の場で次のことを確認されるとよろしいかと存じます。
・何件ほど事業承継を支援したことがあるのか?
・どのような規模、業種の会社の事業承継を支援したのか?
・最近手がけた事業承継の事例について?

事業承継を得意としている場合でも、その税理士が固執する手法ではなく、経営者・後継者の『想い』を実現するような方法を提案する税理士に相談されることをお勧めいたします。そのためにも本文に記載されている、専門的知識とコンサルティング能力、コミュニケーションとマネジメント力があるのかに注目しましょう。

また、事業承継には司法書士・弁護士といった法律家と連携する場面(株式譲渡、登記関係、遺言書の作成など)が多々ありますので、専門家ネットワークがあることも相談するにあたって確認されることをお勧めいたします。

税理士に事業承継を依頼した場合の費用

税理士報酬は、顧問契約による月次報酬に加えて、事業承継計画の策定や株式評価、税務申告書の作成など、個別業務ごとに発生するケースが一般的です。M&A仲介会社のような「完全成功報酬制」ではない点に留意しましょう。

料金相場

親族内承継や規模の小さい企業であれば、数十万円から数百万円程度が目安となることもあります。一方、資産規模が大きい場合や複雑なスキームを伴うM&Aなどでは、総額で数百万円以上になる可能性もあります。

費用対効果の考え方

事業承継では、節税対策や株式の適正評価が将来的なコスト削減に直結します。税理士費用は短期的には大きな出費に感じるかもしれませんが、長期的な節税メリットやトラブル回避を考慮すると十分に投資価値があるといえます。

見積もり・相談の重要性

具体的な費用は、税理士との事前面談や見積もりによって確認することが不可欠です。最初にしっかり相談しておくことで、「いつ、どの程度の費用が発生するのか」を把握でき、承継プロセス全体の計画が立てやすくなります。

事業承継で税理士をお探しの方へ

事業承継では自社株の評価、相続税・贈与税対策、承継方法の選定など、専門的な知識と長期的な計画が不可欠です。
事業承継税制を活用すれば税負担を大幅に軽減できますが、適用要件は複雑で、相続税・資産税の実務経験を持つ税理士でなければ適切なサポートはできません。対策は早く始めるほど選択肢が広がり、より大きな節税効果が期待できます。
事業承継に不安を感じたら、まずは実績豊富な税理士に相談することをおすすめします。

よくある質問

事業承継に強い税理士を選ぶメリットは何ですか?

事業承継に強い税理士を選ぶことで、自社株の評価や相続税対策など、専門的なアドバイスを受けることができ、スムーズな事業承継が実現できます。

事業承継の方法にはどんな種類がありますか?

事業承継には、親族内承継、親族外承継、M&Aを活用した承継の3つの方法があります。それぞれのメリットとデメリットを理解して選択することが重要です。

事業承継税制とは何ですか?

事業承継税制は、一定の条件を満たせば、自社株の贈与税・相続税を猶予する制度です。ただし、条件を満たさない場合は猶予された税金を支払う必要があります。

事業承継を進める上での注意点は何ですか?

事業承継を進める際には、早めの準備と計画が重要です。また、税理士や他の専門家との連携も必要です。

事業承継において税理士の役割は何ですか?

税理士は、事業承継における税務対策や自社株の評価、相続税・贈与税のシミュレーションなど、税務に関する業務を中心にサポートします。

この記事の監修者
おだね税理士事務所
代表 小田根 大輔(税理士)
業界歴15年間で、法人・個人事業主の顧問業務、申告(法人税、消費税、所得税、相続税)業務のほか、財務・税務のデューデリジェンス業務、公益法人の顧問業務、M&Aや事業承継業務など、幅広い業務に携わってまりました。これらの経験を通じて、企業の成長と発展には、税務・会計の専門家としてのサポートが不可欠であることを確信しております。また、企業経営には、常に様々な課題がつきものです。税務・会計に関するお悩みはもとより事業に関することまで、どうぞお気軽にご相談ください。お客様の立場に寄り添い、最善のサポートをさせていただきます。

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この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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