【2026年版】個人事業主の節税対策を解説!忘れやすい・間違えやすい節税ポイントは?

【2026年版】個人事業主の節税対策を解説!忘れやすい・間違えやすい節税ポイントは?
最終更新日:
2025/12/17
 
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「経費計上を忘れていた」「青色申告の控除額を知らなかった」──こうした理解不足で数十万円単位の損をしている個人事業主は少なくありません。節税の核心は「必要経費と所得控除を漏れなく計上すること」。特に2024年以降は電子申告で65万円控除、小規模企業共済で最大84万円控除など、活用すべき制度が増えています。本記事では確定申告の際に間違いやすい点を中心に、個人事業主の節税ポイントを具体的に解説します。

個人事業主の節税の基本構造

個人事業主の所得税は「売上-必要経費=所得」から「所得控除」を差し引いた「課税所得」に税率を掛けて計算されます。つまり節税の基本は必要経費と所得控除の2つを最大化することです。

個人事業主が支払う主な税金は所得税、住民税、事業税、消費税の4つ。このうち消費税は売上1,000万円未満なら原則免税、事業税は課税業種と税率が法定されています。所得税と住民税は所得金額がベースとなるため、この2つを抑えることが節税の核心です。

所得税は累進課税で、所得が上がるほど税率も上昇します。課税所得195万円以下は5%ですが、4,000万円超は45%にまで跳ね上がります。例えば課税所得が500万円なら税率20%、100万円減らせば20万円の節税効果です。やり方次第で数十万円単位の差が出るため、正確な経費計上と控除活用が不可欠です。

必要経費で節税する8つのポイント

必要経費の計上漏れは最も多い節税機会の損失です。「事業で収入を得るために必要な出費」は全て経費になりますが、按分や証拠書類の保管など、正しい処理が求められます。在宅勤務の増加で按分対象も拡大しており、家賃・光熱費・通信費・車両費など、生活と重なる出費を適切に経費化することで年間数十万円の節税効果が期待できます。

【ポイント1】「収入を得るために必要な出費」を全て計上する

必要経費とは「事業によって収入を得るために必要になったお金」のことで、法律で項目が決められているわけではありません。判断基準は「その支出が事業に必要かどうか」です。

例えばペットの餌代は通常経費になりませんが、ペットカフェを経営しているなら購入費用も餌代も必要経費になります。フリーランスのデザイナーがデザインソフトを購入すれば経費、趣味で買えば経費外です。税務署は「事業との関連性」を重視するため、領収書とともに「何のために購入したか」を記録しておいてください。

【ポイント2】在宅勤務費用は按分して経費化する

自宅を事務所として使っている場合、家賃・水道光熱費・通信費のうち、実際に仕事で使用している分を必要経費に計上できます。これを「家事按分」と言います。

按分割合は「合理的な基準」で決めます。家賃なら総床面積に占める事務所スペースの割合、電気代なら仕事時間の割合が一般的です。例えば50㎡のマンションで10㎡を事務所として使用し、家賃10万円なら2万円(10㎡÷50㎡×10万円)を経費計上できます。通信費は仕事での使用が50%なら、月額5,000円の半分2,500円を経費化します。火災保険料、インターネット料金、電気代、ガス代、水道代も按分対象です。按分根拠を説明できるよう、使用状況を記録しておいてください。

【ポイント3】サブスクリプション費用も経費になる

業務で使用するサブスクリプションサービスは全て経費計上できます。クラウド会計ソフト、デザインツール、ビジネスチャット、オンラインストレージ、動画編集ソフトなど、月額・年額を問わず必要経費です。

例えばAdobe Creative Cloud(月額6,480円)、ChatGPT Plus(月額2,700円)、Zoom Pro(月額2,000円)、Dropbox Plus(月額1,500円)など、業務に必要なら全額経費化できます。年額契約の場合は一括払いでも月割り按分でも構いませんが、一貫性を保ってください。プライベートでも使用する場合は按分が必要です。クレジットカード明細を保管し、何のサービスかメモを残しておきましょう。

【ポイント4】税金にも経費にできるものがある

支払った税金のうち、個人事業税・固定資産税・自動車税・印紙税など、事業に関連する税金は経費計上できます。一方、所得税・住民税・相続税・罰金は経費になりません。

経費にできる税金は個人事業税、固定資産税(事業用資産)、不動産取得税、登録免許税、自動車税、自動車重量税、自動車取得税、印紙税、地価税、利子税などです。経費にできない税金は所得税、住民税(都道府県民税・市町村民税)、相続税、国税の延滞税・加算税、地方税の延滞金・加算金、交通違反の罰金などです。特に個人事業税は前年分を当年の経費に計上できるため、確定申告時に前年の納税額を確認して計上してください。

【ポイント5】交際費は冠婚葬祭も含めて計上する

取引先や事業関係者との飲食費、祝儀、香典などの冠婚葬祭費用は全て交際費として経費計上できます。法人と異なり、個人事業主には交際費の上限額がありません。

取引先との会食(1人あたり5,000円以下は会議費)、得意先への手土産、取引先の結婚式や葬儀の祝儀・香典、お中元・お歳暮、接待ゴルフなどが対象です。例えば取引先の結婚式に3万円の祝儀を出せば全額経費、取引先の親族の葬儀に1万円の香典を出せば同様に経費です。ただし事業との関連性が問われるため、誰に・何の目的で支出したかを記録し、招待状や案内状を保管しておいてください。

【ポイント6】減価償却は30万円未満なら一括経費化

青色申告者は「少額減価償却資産の特例」により、30万円未満の資産を購入年度に一括で経費計上できます(年間合計300万円まで)。通常は10万円以上の資産を減価償却する必要がありますが、この特例で大幅に節税できます。

例えばパソコン25万円、プリンター8万円、デスク12万円を購入した場合、合計45万円を全額当年の経費にできます。通常なら耐用年数で按分(パソコン4年、プリンター5年、デスク15年)するため、初年度の経費は10万円程度です。特例を使えば45万円の経費計上で、税率20%なら9万円の節税効果が得られます。ただし年間300万円の上限があり、超過分は通常の減価償却になります。

【ポイント7】医療費は10万円超で医療費控除を適用

1年間の医療費が10万円(総所得200万円未満は所得の5%)を超えた場合、超過分が所得控除の対象になります。医療費控除は必要経費ではなく所得控除ですが、実質的な節税効果があります。

対象は本人・配偶者・生計を一にする親族の医療費です。病院の治療費、処方薬、通院交通費(公共交通機関)、歯科治療(自由診療も一部対象)、介護サービスなどが含まれます。例えば年間医療費30万円なら、30万円-10万円=20万円が控除額です。税率20%なら4万円の節税になります。セルフメディケーション税制(市販薬の購入で控除)との選択適用も可能ですが、医療費控除の方が一般的に有利です。領収書は5年間保管してください。

【ポイント8】車両費は走行距離で按分する

自家用車を事業とプライベート両方で使う場合、ガソリン代・車検代・保険料・駐車場代を走行距離や使用日数で按分して経費計上します。車両購入費も減価償却で按分可能です。

例えば年間走行距離1万kmのうち6,000kmが事業用なら按分率60%です。ガソリン代年間20万円なら12万円、自動車保険年間8万円なら4.8万円を経費計上できます。車検代15万円なら9万円が経費です。按分根拠として運転日誌(日付・行き先・距離・目的)を記録しておくと、税務調査で指摘されにくくなります。車両購入費は耐用年数6年(普通車)または4年(軽自動車)で減価償却し、按分率を乗じて経費化します。

所得控除で節税する6つのポイント

所得控除は所得金額から直接差し引ける制度で、税額に直結します。青色申告特別控除65万円、小規模企業共済84万円、iDeCo最大81.6万円など、活用次第で年間200万円超の控除が可能です。所得控除が増えれば課税所得が減り、税率区分が下がることもあるため、節税効果は控除額以上になることがあります。

【ポイント1】青色申告で最大65万円控除を受ける

青色申告には最大65万円の特別控除があり、複式簿記による記帳と電子申告(e-Tax)または電子帳簿保存が要件です。紙申告の場合は55万円控除になります。白色申告には控除がありません。

青色申告のメリットは特別控除以外に、赤字の3年間繰越、青色事業専従者給与の全額経費化、少額減価償却資産の特例(30万円未満一括償却)などがあります。例えば課税所得500万円で税率20%なら、65万円控除で13万円の節税です。青色申告を選択するには開業届とともに「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。提出期限は開業から2ヶ月以内、または青色申告したい年の3月15日までです。

【ポイント2】小規模企業共済で最大84万円控除

小規模企業共済は個人事業主の退職金制度で、掛金(月額1,000円~7万円)が全額所得控除になります。年間最大84万円の控除により、税率20%なら16.8万円の節税効果です。

掛金は自由に設定でき、増減も可能です(減額には一定の制限あり)。廃業・退職時に共済金を受け取れ、受取時も退職所得控除または公的年金等控除が適用されるため税負担が軽くなります。例えば月額5万円(年間60万円)を20年間積み立てると、元本1,200万円に共済金約1,270万円(予定利率1%換算)が受け取れます。貸付制度もあり、緊急時に掛金の範囲内で無担保・無保証で借入できます。中小機構の窓口で加入できます。

【ポイント3】iDeCoで老後資金を積み立てながら節税

iDeCo(個人型確定拠出年金)は掛金が全額所得控除になり、個人事業主は月額6.8万円(年間81.6万円)まで拠出できます。国民年金基金との合算上限です。税率20%なら年間16.3万円の節税効果があります。

iDeCoは60歳まで引き出せませんが、運用益が非課税で、受取時も退職所得控除または公的年金等控除が適用されます。例えば月額5万円(年間60万円)を20年間拠出し、年利3%で運用すると、元本1,200万円が約1,640万円になります。掛金は金融機関(銀行・証券会社)で設定し、投資信託や定期預金で運用します。小規模企業共済と併用すれば年間145.6万円の控除が可能です。

【ポイント4】家族への給与は青色事業専従者給与で全額経費化

青色申告者が配偶者や親族に給与を支払う場合、「青色事業専従者給与」として全額経費計上できます。白色申告では配偶者86万円、その他の親族50万円が上限です。

要件は、生計を一にする配偶者または15歳以上の親族で、年間6ヶ月超専ら事業に従事することです。「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、届出額の範囲内で支給します。例えば配偶者に月額20万円(年間240万円)支給すれば、240万円全額が経費になります。ただし「適正水準」が求められ、同業種・同規模の給与相場を超えると否認されるリスクがあります。社会保険料や源泉徴収の義務も発生するため、税理士に相談してください。

【ポイント5】ふるさと納税で実質的な節税効果

ふるさと納税は自治体への寄付額から2,000円を引いた金額が所得税・住民税から控除される制度で、返礼品(寄付額の3割以内)がもらえます。実質2,000円で返礼品を受け取れるため、家計の節約になります。

控除上限額は所得と家族構成で変わります。例えば課税所得500万円(独身・扶養なし)なら上限約6万円、4万円寄付すれば38,000円が控除され、12,000円相当の返礼品(米・肉・日用品など)が手に入ります。確定申告で「寄付金受領証明書」を提出すれば、所得税は還付、住民税は翌年度から減額されます。ワンストップ特例(確定申告不要制度)は個人事業主には適用されないため、必ず確定申告してください。

【ポイント6】社会保険料は全額控除対象

国民年金保険料・国民健康保険料(税)・介護保険料・後期高齢者医療保険料など、支払った社会保険料は全額所得控除の対象です。配偶者や子どもの分を支払った場合も控除できます。

国民年金は月額16,980円(令和6年度)で年間203,760円、国民健康保険は前年所得で変動しますが、年間30万円~50万円が一般的です。例えば年間社会保険料50万円を支払い、税率20%なら10万円の節税効果があります。国民年金の前納割引(2年前納で約1.5万円割引)を使えば、割引分も実質的な節税になります。確定申告時に社会保険料控除証明書(国民年金)または納付済額通知書(国民健康保険)を提出してください。

2024年以降の重要ポイント

2024年以降は電子帳簿保存法の本格適用、インボイス制度の定着など、デジタル対応が必須になっています。電子申告(e-Tax)で青色申告特別控除65万円を受けるには、電子帳簿保存または電子申告が必要です。紙申告では55万円に減額されます。

インボイス制度(2023年10月開始)により、適格請求書発行事業者の登録番号がない場合、取引先が仕入税額控除できなくなります。売上1,000万円未満の免税事業者も、取引先との関係で登録を迫られるケースが増えています。登録すると消費税の納税義務が発生するため、簡易課税制度(売上5,000万円以下)や2割特例(2026年9月まで)を活用して負担を軽減してください。

電子帳簿保存法は2024年1月から本格適用され、電子取引(メール添付のPDFなど)は電子保存が義務化されました。紙で保存していると税務調査で否認されるリスクがあります。会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生会計など)を使えば自動対応できるため、早めに導入してください。

まとめ

個人事業主の節税は、必要経費と所得控除を漏れなく計上することが核心です。在宅勤務費用の按分、サブスク費用の計上、30万円未満資産の一括償却など、経費化できる項目を把握しておけば年間数十万円の節税効果が期待できます。所得控除では青色申告特別控除65万円、小規模企業共済84万円、iDeCo81.6万円を組み合わせれば、年間200万円超の控除も可能です。

2024年以降は電子申告と電子帳簿保存が実質的に必須となり、インボイス制度への対応も求められます。会計ソフトの導入とともに、税理士のサポートを受けることで、適正な節税と法令遵守を両立させてください。確定申告の際は必要経費の計上漏れ、所得控除の適用忘れがないか、最終確認を怠らないようにしましょう。

税理士への依頼を検討中の個人事業主の方へ

個人事業主の節税は、必要経費と控除を漏れなく計上するのがポイントです。青色申告の複式簿記、電子帳簿保存法への対応、インボイス制度の判断など、専門知識が求められる場面も増えています。税理士に依頼すれば、適正な節税アドバイスとともに、記帳・申告業務を任せられます。税理士報酬は青色申告特別控除の節税効果でカバーできることも多いため、検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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