決算のみを税理士に依頼するメリット・デメリット、
報酬の相場などを解説

決算のみを税理士に依頼するメリット・デメリット、  報酬の相場などを解説
公開日:
2022/02/01
最終更新日:
2024/02/28
 
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会社・法人は、毎年事業年度末に決算を行い、法人税などの申告を行います。時間や労力に加え、簿記などの専門知識が必要な決算の作業を税理士に依頼する場合、大きく言って「決算・申告業務のみ頼む」と「顧問契約を結ぶ」の2つの方法があります。今回は、「決算・申告業務のみ頼む」を選択した場合のメリット・デメリット、さらにどちらを選ぶのが自社に適しているのかの検討のポイントなどについて解説します。

決算業務とは?決算月には何をすればいい?

法人が行う決算業務とは?

「決算」とは、一定期間の収入・支出を計算し、利益や損失を算出することを言います。期末には、その事業年度を通した決算内容をもとに納税額を計算し、税務署に申告しなくてはなりません。この決算から申告までの一連の事務作業が、ここで言う「決算業務」になります。

決算業務には、例えば次のような作業があります。

決算業務①毎日の帳簿付けをもとに「決算整理」を行う

決算作業は、毎日の帳簿付け(記帳)から始まっていると言っていいでしょう。ここでミスが重なったりすると、決算時に慌てることになります。期末には、それらに間違いなどがないかしっかりチェックしたうえで、年をまたぐお金を今期分と翌年以降の分に分けて計上する、棚卸資産(在庫)を正しく反映させる、といった「決算整理」を行います。

決算業務②残高試算表の確認

決算書を作る前に、個々の勘定科目における借方または貸方の残高を集計した残高試算表を作成し、確認します。帳簿の中身や集計に間違いがなければ、借方残高・貸方残高の数値が合致するため、誤りがないかが検証できます。

決算業務③法人税などの申告書の作成

法人税をはじめとする税金は、納税者自らが税額を計算し、申告書を作成して納税する「申告納税」方式が採られています。決算書をもとに計算の後、税務署に、法人税の申告書・消費税の申告書に加え、決算書や勘定科目の内訳書などを提出します。

決算業務④期限内に納税する

会社は、原則として“事業年度末から2ヵ月以内”に確定申告と税金の納付を行わなければなりません。申告期限に遅れたり、所得隠しが発覚したりすると、延滞税や加算税といったペナルティの対象になります。

決算月になったら何をする?

先述のように、決算作業は日々の帳簿付け(記帳)から始まりますが、特に年度末の決算月には“1年間の締め”として次のような作業が必要になります。

現預金の確認

金種表に基づき管理している現金と銀行預金の決算日の残高を確認、確定します。ともに会計帳簿上の残高と一致していることを確認します。

在庫の棚卸

製品・商品・仕掛品・材料・貯蔵品などの期末(決算日)の実数を数え、記録します(実地棚卸)。帳簿上の数値と照合し、ずれが生じた場合には、帳簿を修正する必要があります。

売掛金の把握、再請求

請求書を出したものの、長期間支払いが行われていない売掛金に対しては、再請求などを行います。万が一「貸倒れ」が発生した場合には、経費に計上します。

経費の未精算、税金の納付漏れの確認

従業員への仮払いや立替の未精算・未回収がないか、各種税金の納付忘れがないかを確認します。

減価償却資産台帳の確認

設備やソフトウェアなどの固定資産を持っている場合に記載する「減価償却資産台帳」について、決算日にその資産内容が存在しているか確認します。売却や廃棄したのに台帳上に資産が残っている場合には、削除処理が必要です。

決算時に税理士に渡すもの

月次監査の検証で必要になる書類

月次監査の時点で確認しきれなかった項目を決算監査で精査するために、以下の書類の提出を求められることがあります。

・領収書、請求書

食料品の軽減税率適用や、2023年10月に施行されたインボイス制度導入に伴い、消費税の課税事業者の方が仕入税額控除を受けるための要件がより複雑になりました。月次監査でできなかったインボイスの事業者登録番号のチェックや軽減税率適用の間違い等をチェックするために領収書や請求書が必要になります。

・通帳のコピーと振込明細

・報酬支払の際の支払調書

・賃金台帳

会計と賃金台帳の突き合わせの他に、「所得拡大促進税制」の適用を受ける際、各人別支給額の内訳として賃金台帳の提出を求められることがあります。

決算に必要な書類とは何か?

税理士に決算を依頼する際の決算の進め方として「税務申告書類の作成を含め決算業務の全てを税理士に任せる方法」と「決算処理を一旦自社で行った後、税理士に決算内容の検証・修正と税務申告書の作成を依頼する方法」があります。今回は、自社で作成した税務申告書類を税理士に監査してもらう方法について解説します。決算で税理士が提出を求める書類を挙げてみましょう。

・貸借対照表、損益計算書

資産や負債、純資産といった会社の財政状況を示す「貸借対照表」と、黒字・赤字といった当期の経営成績を示す「損益計算書」が必要になります。特に、税金計算の基礎となる利益が記載された「損益計算書」は正確に作成する必要があります。

・勘定科目明細書

上記の貸借対照表及び損益計算書に記載された各勘定科目の内訳明細を記載した書類です。決算時点の各勘定科目残高が正しいものか内容を精査する際に必要になります。

・総勘定元帳

1年間の仕訳取引を各勘定科目別に集計した資料です。勘定科目の取引内容を一覧で見ることができるので、毎月経常的に発生する収益や費用が12ヶ月分計上されているか、消費税の課税区分が正しいか等を精査する際に必要になります。

・法人税申告書、地方税申告書

国や都道府県、市区町村に納付する税額を計算するための資料です。計算方法に誤りはないか、税法の適用誤りや適用漏れはないか等を精査する際に必要になります。

・法人事情概況説明書

当期における会社の事業内容を総括した資料です。決算書は勿論のこと、従業員数や主な取引内容、代表者に対する報酬や賃借料の支払等を記載します。

・消費税申告書

消費税の課税事業者の方が、消費税の納税額を計算するために作成する書類です。法人税申告書と同様に、税法の適用違いや適用漏れ等がないかチェックするために必要です。

税理士に決算のみを依頼するメリット・デメリット

では次に、税理士に決算業務のみを依頼する場合のメリット・デメリットについて、見ていくことにします。

税理士に決算のみを依頼するメリット

決算の手間を減らすことができる

繰り返しになりますが、決算業務には専門知識が必要で、経営者自身がここにエネルギーを割いていると、本業に差し支える可能性が高くなります。専門性を備えた担当者を雇えればいいのですが、その分人件費が発生します。税理士に頼めば、それを下回るコストで決算業務を任せ、本業に集中することができるはずです。

税理士の署名で、決算書の信頼性が高まる

誰しも税務署の税務調査(※)は避けたいものです。税理士に決算業務を頼むと、申告書に税理士の署名・捺印が行われますから、決算書の信頼性が高まります(その場合でも、税務調査の可能性はゼロではありません)。

※税務調査:国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。税務署が行う任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。

顧問契約よりも費用を抑えることができる

税理士に業務を依頼すれば、当然報酬を支払わなくてはなりません。しかし、年間数十万円の顧問料が発生する顧問契約を結ぶ場合に比べれば、コストを大幅に削減することが可能です。

税理士に決算のみを依頼するデメリット

コストがかかる

顧問契約より費用が抑えられるとはいえ、「決算の外注」のコスト自体は発生します。事業が軌道に乗る前の売上が少ない段階などでそれを負担するのは、厳しいかもしれません。

顧問契約に比べ節税対策は限られる

節税対策は、年間(あるいは数年)を通して中長期的な視点から取り組めば、それだけ大きな効果が期待できます。しかし、決算業務のみを依頼する場合、基本的にはすでに数字が出来上がった状態からのスタートとなりますから、「やれること」は限られてしまいます。逆に言えば、顧問契約していれば、その都度節税や経営に対するアドバイスがもらえますし、疑問にも答えてもらえます(契約内容により対応に差はあります)。

顧問契約と違い税務調査の際に税理士が不在になる・準備不足になる可能性が高い

税務調査には、税理士の同席が許されています。しかし、顧問契約をしていない場合には、即座に対応してもらえないこともあり、準備不足で調査に臨む可能性が高くなります。

顧問税理士をつけるのとどちらがお得?

決算を税理士に依頼するメリット・デメリットを述べましたが、税理士と顧問契約を結ぶこととどう違うのでしょうか?
「決算のみ依頼するのがおすすめのケース」と「決算だけでなく顧問契約もするのがおすすめのケース」をそれぞれ解説します。

決算のみ依頼するのがおすすめのケース

売上が少ない場合

さきほども述べたように、起業したてで売上が不安定な場合などには、固定費が発生する税理士との顧問契約は、ある意味で経営リスクと言えます。売上が小さいということは、決算処理業務もそれほど複雑ではなく、節税策も初めから限られていますから、決算のみを依頼して事業が拡大してきたら顧問契約への切り替えを考えればいいでしょう。

社内に経理担当者がいる場合

事業規模や節税に対するニーズなどにもよりますが、すでに社内に経理担当者がいる場合には、決算のみを依頼するのが合理的と言えます。税理士との顧問契約が“不必要な出費”にならないよう、気をつけましょう。

決算だけでなく顧問契約もするのがおすすめのケース

ある程度の売上があり、消費税課税事業者となる場合

「決算のみ」か「顧問契約」かの判断基準の1つが、「消費税課税事業者かどうか」です。原則として、課税年度の前々年度の課税対象売上が1,000万円を超えると、課税事業者になります。売上自体が大きくなっていることに加えて、消費税の申告は非常に骨の折れる作業で、ミスも起きやすいのです。消費税を支払うようになったら、税理士と顧問契約することをおすすめします。

社内に経理担当者がいない場合

さきほどとは逆に、ある程度の事業規模でありながら、社内に経理のできる人材がいない時には、税理士と顧問契約して、決算・申告に万全を期すべきでしょう。この場合には、税理士のアドバイスを受けながら経理人材を育て、「決算のみ」に切り換える、という選択肢も生まれます。

節税対策をしっかり行いたい場合

特に収益性の高い企業の場合、専門家のアドバイスをもとにした効果的な節税を行うか否かで、申告後に会社に残るお金(資産)が大きく違ってきます。節税効果が顧問料の負担を上回ることが期待できる場合には、事業規模などを問わず、迷わず顧問契約するのがいいでしょう。

決算のみを税理士に依頼したときの報酬相場(株式会社の場合)

税理士に決算のみを依頼する場合の報酬の相場(年間)の目安は、次のようになっています。税理士探しの際に参考にしてみてください。

年間売上 報酬の相場
500万円以下 10万円~
1000万円以下 15万円~
3000万円以下 20万円~
5000万円以下 25万円~
7000万円以下 30万円~
1億円以下 35万円~
1億円以上 要相談

※上記はあくまで目安の金額です。実際にかかる金額は、年商や規模、業種などにより異なります。
詳しい相場はこちら→税理士顧問料・報酬・料金・価格の適正価格

まとめ

税理士には、会社の決算業務のみを依頼することができ、顧問契約を結ぶ場合に比べて安いコストで専門家の助けを借りることができます。ただ、会社の規模や状況によっては、自社で決算を行った方がいい場合や顧問契約を結ぶべき場合もあります。記事を参考にして、自社にはどのやり方が適しているのかを検討してみてください。判断に迷う場合には、実際に税理士の話を聞いてみるのもいいでしょう。

この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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