顧問税理士の解約・変更の流れ、ポイント、返してもらうべき書類とは?

スムーズな税理士変更・引継ぎのために
税理士はいつでも解約できるのか
顧問税理士を変更するのは、顧問先である企業・事業主の自由です。ただし、顧問契約書の「契約期間」には注意が必要です。
例えば、顧問契約書に「契約期間満了日の1ヵ月前までに、双方より意思表示のない限り、自動継続することを妨げない。」という記載があった場合には、10日前になって解約を申し出ても、相手側には「認められない」と主張する権利があるのです。解約を考える場合には、まずは現在の契約内容をチェックして、それに反しない状態で申し出るようにしましょう。
もし、自動更新期間に入っているのにどうしても解約したい場合には、税理士との話し合いになります。例えばですが、一定の「違約金」を支払って契約解除することも、相手の合意が得られれば可能です。
解約したら「違約金」は絶対に請求される?
なお、「違約金」というのは、「契約に違反した場合に支払うお金」で、本来ならば顧問契約書に定められた規定に従って請求されるべきものです。特に契約違反もなく、契約書に違約金の定めもない場合には、解約を申し出たからといって一方的に請求されることは通常ありません。万が一求められても、応じる義務はありません。
円満な顧問契約解除・引継ぎをするには?
ただし、契約上問題がないからといって、作業を機械的に進めるのは考えものです。税理士も人間ですし、難関と言われる資格を手にした自負があります。もちろん、仕事を失うのは辛い、という思いもあるでしょう。そうしたことを頭に入れたうえで、今の先生と円満に解約することを考えましょう。
感情的なしこりを生み、引き継ぎに協力してもらえなくなったりするのは、得策ではありません。仕事に問題があって交代を考えるようなケースでも、難点をあげつらうような対応はやめておくべきです。
税理士への断り方はどうすればいい?
あらためて、断り方の注意点をまとめました。
解約のタイミングを明確に伝える
さきほどの「契約期間」の問題も踏まえて、今の税理士には「○月末で契約解除したい」など、「いつ解約するのか」をはっきり伝えるようにします。
「解約の理由」には、ひと工夫
ただし、契約解除する理由については、はっきり言うのがいいとは限りません。「他にいい先生が見つかった」「報酬が高すぎる」など、解約の理由を率直に伝えると、相手によっては気分を害して、そこからの話が円滑に進まなくなる可能性もあるからです。状況に応じて、「知り合いから頼まれた」など、やんわりと「かわす」ことも考えるべきでしょう。
「電話のみ」は避けた方が無難
解約の意思の伝達方法は、メールなど内容の履歴、証拠が残る形にするのがベストです。電話の場合は、後で「聞いていない」「解約の期日が違う」といったトラブルにならないとも限りませんから、やり取りを録音しておくことをお勧めします。
「顧問契約解除合意書」を取り交わせるのがベスト
顧問契約解除合意書とは、その名の通り双方が契約解除に合意した、という文書です。これがなければ、契約解除が成立しないというものではありませんが、取り交わしておけば、後のトラブルを防ぐ武器になります。
一方、「顧問契約解除通知書」という文書もあります。これは、合意とは違い、今の税理士に対して一方的に「通知」するものですが、「解約の意思を示した」という証拠になります。相手に確実に届いたことを証明したい場合は、配達証明付き内容証明郵便で送付します。
税理士変更のポイントは、書類やデータをきちんと返却してもらうこと
税理士から返却してもらうもの一覧
顧問税理士の変更の“肝”は、業務のために預けていた書類やデータを確実に回収し、新しい税理士に受け渡すことにあると言っていいでしょう。ここで、返却してもらうべきものを列挙します。
〈基本的な書類〉
- 総勘定元帳 3期分
- 決算書(別表、決算書、内訳明細書、固定資産台帳)3期分
- 会社の定款
- 登記簿謄本
- 法定調書 償却資産申告書
- 消費税関係ほか税務署へ過去に提出した届出書
- 年末調整関係書類
〈期中の会計データ〉=税理士に記帳代行を頼んでいる場合
- 試算表
- 仕訳表
- 総勘定元帳
「新たな税理士が必要なもの」を揃えよう
税理士を変更して引き継いでもらうといっても、例えば新しい顧問税理士に現在進行形の資料だけ渡すだけでは、仕事を始めてもらうのは難しいでしょう。仕事を始めるためには、過去の勘定元帳や決算書などから、会社の状況や前の税理士の会計処理の仕方などについて、理解する必要があるのです。過去の数字は、税務調査(※)が入ったときにも必要になりますから、確実に返却してもらわなくてはなりません。
上記のリストを参考にしつつ、新しい税理士に「何が必要か」をしっかり聞いて、手元に揃えるようにしましょう。
もしも資料の返却を渋られたら?
数は多くありませんが、稀にこうした書類をなかなか返してくれない税理士もいるようです。解約したクライアントに対する感情的なしこりがあったり、あるいは自分のミスを知られたくない、といった事情があったりする場合です。
しかし、先ほどリストアップしたような書類の所有権は、税理士事務所ではなく、顧問先にあります。そのため、税理士の側には、求めがあればいつでも返却に応じなければならない義務があるわけです。この点は、臆することなく対応するようにしましょう。
一方、電子データに関しては、少し事情が違います。民法で定める所有権は、「有体物」に対して生じる権利とされているため、電子データは「圏外」扱いなのです。
そこで大事になるのが、やはり顧問契約書です。税理士の業務の成果物には電子データも含まれることや、その引渡方法などを明記しておけば安心です。
税理士同士の引き継ぎはアリ?
「難しい会計処理などについては、プロ同士で引き継いでもらうのがベストでは?」そう考えるかもしれませんが、実際には困難です。最初に述べたように税理士も人間ですから、「仕事を奪われる」ほうと「仕事をもらう」ほうが円滑なコミュニケーションをとるというのは、ハードルがかなり高いのです。税理士を変えようと思ったら、必要書類を返却してもらうところまで、自らが責任を持つ必要があると心得てください。
なお、書類を返却してくれないなどのトラブルが発生した場合には、その税理士が所属する税理士会に相談するのも1つの方法です。
解約の際に揉めてしまった場合は?
今の税理士がどうしても解約に応じてくれない、書類を返してくれない、といったトラブルが生じた場合には、まずは「税理士会」に相談してみましょう。税理士は、必ず地域ごとにある税理士会に所属しています(事務所が東京都にあれば、「東京税理士会」に相談)。その税理士会には、「紛議調停委員会」という機関があり、そこに申し立てをすることができるのです。
「紛議調停」とは、税理士業務に起因する納税者とのトラブルを、裁判によらずに当事者同士の話し合いにより解決を目指す制度で、民法上の「和解」の効果があります。つまり、調停が成立した場合には、その内容に従う義務が生じます。税理士には出頭義務がありますから、トラブルの解決に非常に有効です。訴えが正当なものであれば、「では、税理士会に話をします」と言えば、多くの場合、税理士側が「折れる」のではないでしょうか。なお、調停は非公開で、費用もかかりません。
まとめ
顧問税理士を変えたいな…と思ったら、まず契約書で契約期間などを確認しましょう。解約に際しては、できるだけ穏便に話をして、必要な書類などは確実に返却してもらうことが重要です。
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