仕事量が増えてきて、自分で確定申告をするのが難しくなった。会社をつくるので、顧問税理士を頼みたい。あるいは、親がなくなって相続になったけれど、遺産分割や相続税をどうしたらいいのか、わからない――。そんなとき、どうやって税理士を探したらいいのでしょうか?それぞれのメリット・デメリットも併せて、9つの方法を紹介します。
目 次
【特集】初めての税理士探しに役立つ記事まとめ!費用や失敗しないためのコツなど丸ごと解説
【特集】税理士の変更に役立つ記事まとめ!費用や探し方のポイントなど丸ごと解説
【特集】税理士探しに役立つ豆知識のまとめ!
安易な税理士選びは危険
自分では手に負えない税務を、その道のプロである税理士に頼みたい。そう思ってネットで検索すれば、数多くの税理士事務所がヒットするでしょう。でも、「資格を持っているのなら、スキルは似たり寄ったりだろう。だったら、できるだけ安く頼める先生にしよう」といった姿勢で税理士選びをすると、とんだ失敗を招きかねません。
例えば、「自分で申告していた時に比べて、節税になっている実感がない」「経費のことを質問しても、明確な答えが返ってこない」「相談料の名目で、高いお金を取られる」「態度が高飛車で、話も合わない」……。こういった失敗談も少なくありません。
だからこそ、税理士を選ぶならば「税理士を探す方法」から慎重に考えることが重要なのです。
得意・不得意な分野は事前に確認しよう
そもそも、税理士の肩書があるからと言って、すべての税務に精通しているわけではないことに、注意が必要です。法人税の申告業務が滞りなくこなせるからといって、事業承継に向けた的確なプランを提案できるとは限りません。相続には相続税、資産税の知識が不可欠ですが、その部分をあまり学んでこなかった税理士も、たくさんいるのです。
「にせ税理士」もいる!
さらに言えば、世の中には、そもそも資格を持たないのに税理士を名乗る「にせ者」も存在します。「まさか」と思うかもしれませんが、時々被害が発生するため、国税庁がホームページでわざわざ「にせ税理士にご注意」という“お触れ”を出しているほど。税理士資格を持たない人間が税務書類の作成といった税理士業務を行うのは、もちろん違法です。彼らに頼んだ場合には、作成した書類が「無効」になる、満足な税務相談が受けられないといった問題のほか、知らないうちに脱税などの違法行為が行われる危険もあります。税理士料金が「法外な安い」場合などは、一度疑ってみる必要があるでしょう。
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税理士選び、9つのメソッド。そのメリット・デメリット
では、具体的にどのようにして税理士を探したらいいのか、9つの方法を見ていくことにしましょう。
2.インターネットで探す
3.知り合いの税理士に依頼する
4.税理士紹介会社を利用する
5.知人に紹介してもらう
6.商工会議所や税理士会を通じて探す
7.セミナーに参加して探す
8.異業種交流会に参加して探す
9.使っている会計ソフトの公認税理士から探す
1.とにかく自力で探す
自宅や仕事場の近くにある税理士事務所に頼む。電話帳を繰って、事務所を見つける。最近では少数派ですが、少し前まではこの方法が主流でした。
自力で探すメリット
- 近場の事務所に頼むことができる
- 選ぶのに時間やコストがかからない
自力で探すデメリット
- どんな事務所、先生なのか(得意分野、料金設定など)が、会うまでわからない。結果的に、自分のニーズと合わない税理士に、高い費用を支払うことになる可能性がある
- 他の事務所と比較しないまま、選ぶことになる
2.インターネットで探す
お手持ちのパソコンやスマートフォンで、地元の税理士を検索する。インターネットの普及により一般的な方法となりました。
ネットで探すメリット
- 手軽に、誰に気兼ねすることもなく探せる
- 事務所の概要やアピールポイント、費用などの情報が得られる
- 近場の税理士事務所に絞った検索が可能
ネットで探すデメリット
- ネット情報がどこまで正確か(例えば、アピールポイントに「嘘」はないか? ホームページに記載のない料金はかからないのか?)は、会ってみないとわからない
- 親身になって相談に乗ってくれるのか、「先生」の人間性まではわからない
- 「1.とにかく自力で探す」と同様、他者の視点が入らず、選び方が「主観100%」になる
3.知り合いの税理士に依頼する
たまたま知人に税理士がいた場合、その方に依頼することも可能です。もちろん、税理士資格の有無は依頼前に必ず確認しましょう!
知り合いの税理士に依頼するメリット
- 気軽に、時間をかけずに税理士が決まる
- 知り合いなので、価格交渉がしやすい
- 本音の相談がしやすい
知り合いの税理士に依頼するデメリット
- 自分の欲しいスキルを持っていない可能性がある
- 知り合いだけに、逆に相談しづらいことがある
- 問題があっても、他の税理士への切り替えがしにくくなる
4.税理士紹介会社を利用する
自分で税理士を選ぶのに不安がある場合は、税理士紹介会社の無料紹介サービスを使うことでぴったりな税理士を探すことができます。
税理士紹介会社を利用するメリット
- 無料で、多くの事務所の中から税理士を紹介してもらえる
- 自分のニーズ、条件に合致した税理士を複数ピックアップしてもらい、検討することができる
- 自分で探す手間が省ける
- 税理士選びのプロの客観的な視点をもって探してもらえる
- 料金交渉や、依頼を断るような場合にも、税理士には紹介会社が対応してくれる
税理士紹介会社を利用するデメリット
- どこまで信頼できるかに不安が残る
- 紹介会社も複数あって、どれを選ぶべきかは実際に使ってみないとわからない
5.知人に紹介してもらう
すでに税理士を使っている人や税務に詳しい知人がいる場合、その人を介して税理士を紹介してもらうこともできます。
知人に紹介してもらうメリット
- 他者の具体的な評価を聞いたうえで、選ぶことができる
- 税理士選びに、時間やコストがかからない
知人に紹介してもらうデメリット
- 頼んでみたら自分のフォローしてもらいたい分野の知識がなかった…ということも
- 知人の紹介だけに、やはり他の税理士への切り替えはしにくい
6.商工会議所や税理士会を通じて探す
商工会議所や税理士会を通じて探す方法もあります。商工会議所では、定期的に無料の税務相談会を開催しています。相談会で知り合う税理士と気が合うようであれば、依頼するのも良いでしょう。
税理士会とは、全国で活動する税理士を監督するための組織です。税理士法で定められた特別法人で、全国の国税局の管轄地域に合わせて存在しています。日本の全ての税理士が入会していますから、良い税理士に出会える可能性があります。
商工会議所や税理士会を通じて探すメリット
- 無料相談を兼ねて税理士を探せる
- 直接会って人間性を見ることができる
商工会議所や税理士会を通じて探すデメリット
- 複数人と比較することができない場合もある
- 営業目的でないため断られる可能性がある
7.セミナーに参加して探す
例えば確定申告セミナーなど、税理士が行っているセミナーがあります。とくに確定申告の時期にはセミナーが頻繁に開催されています。こうしたセミナーで税理士を探すのも良いでしょう。良い講師に出会ったら、仕事を依頼します。セミナーで顧問契約を結ぶ人は少なくありません。
セミナーで税理士を探す場合、商工会議所や税理士会を通じて探すのとメリット・デメリットが似ています。セミナーの講師は営業目的が多いため、断られる可能性があまりないのが違いでしょう。ただし、必ずしも講師本人に業務を担当してもらえるわけではないという点は、セミナーに参加して税理士を探す際のデメリットといえるでしょう。
セミナーに参加して探すメリット
- 断られる可能性がほぼない
- 勉強を兼ねて税理士を探せる
- 直接会って人間性を見ることができる
セミナーに参加して探すデメリット
- 複数人と比較することができない
- セミナーを開催した本人に担当してもらえないこともある
8.異業種交流会に参加して探す
事業拡大のために、普段から積極的に異業種交流会に参加している人もいるでしょう。異業種交流会には税理士が参加している場合もありますので、そこで出会うのも方法です。ただし、必ずしも税理士がいるとは限りません。あくまでメインは知り合いづくり、というスタンスで探すのがポイントです。探すのにどうしても時間がかかってしまいます。
異業種交流会に参加して探すメリット
- 知り合いづくりを兼ねて税理士を探せる
異業種交流会に参加して探すデメリット
- 税理士が参加しているとは限らない
- 税理士探しに時間がかかる
9.使っている会計ソフトの公認税理士から探す
普段から会計ソフトを使用して管理しているという人が多いのではないでしょうか。使っている会計ソフトの公認税理士から探す方法もあります。公認税理士は研修を受けている場合が多いため、使用する会計ソフトへの対応面や能力面も安心です。
使っている会計ソフトの公認税理士から探すメリット
- ソフトへの対応面や能力面で安心できる
使っている会計ソフトの公認税理士から探すデメリット
- 複数人と比較することができない場合もある
失敗しない税理士の選び方 おさえるべき5つのポイント
税理士にもさまざまなタイプの人がいます。そのためよく考えずに税理士を選んでしまうと、失敗するケースも見られます。ここでは税理士を選ぶ際のポイントについて解説します。
ポイント①自分の考え方と合うかどうか
失敗しない税理士を選ぶための第一のポイントは、自分の考え方と合うかどうかです。税理士とは、あなたの財務管理や税金申告などの重要な業務を担当するパートナーです。
そのため、あなたと税理士の考え方や価値観が合わないと、円滑なコミュニケーションや効果的なアドバイスが得られない可能性があります。
自分の考え方や目標に合った税理士を選ぶためには、まずは自分自身の価値観や目標を明確にすることが重要です。そして税理士との面談や相談を通じて、彼らの考え方やアプローチが自分に合っているかどうかを判断しましょう。
ポイント②費用が適切か
費用が適切かどうかも、税理士を選ぶ際に重要なポイントです。税理士には、依頼した業務に応じて費用が発生します。しかし料金体系は事務所によって異なります。そのため事前に費用について明確に確認しておくことが大切です。
まずは税理士の基本料金や初回相談料など、サービスごとの料金を把握しましょう。また追加料金が発生する場合や、業務の進行に応じて費用が変動する場合もあるので、その点も確認しておきましょう。
さらに他の税理士事務所と比較して、料金が適正なのかどうかもチェックしましょう。料金が高すぎる場合は、他の事務所を検討することも考えられます。
ただし料金だけで税理士を選ぶのは危険です。料金が安いからといって、十分なサービスが受けられない場合もあります。料金とサービスのバランスを考えながら、適切な税理士を選ぶようにしましょう。
ポイント③迅速に対応してくれるか
税務申告や相談など、税理士には様々な業務がありますが、その中でも迅速に対応してくれる税理士を選ぶことは非常に重要です。
なぜなら税務申告の期限や相談事項には時間的な制約があります。もし税理士が対応に時間をかけてしまうと、申告期限を過ぎてしまったり、問題が深刻化してしまう可能性があります。
また迅速な対応は、お客様の信頼を得る上でも大切です。お客様が何か問題や質問を抱えている時に、迅速に対応してくれる税理士は、安心感を与えることができます。
具体的な例を挙げると、税理士が電話やメールに迅速に返信してくれるかどうかが重要です。また急な相談にも柔軟に対応してくれる税理士は、信頼度が高くなります。
迅速な対応力を持つ税理士を選ぶことで、税務申告や相談などの業務をスムーズに進めることができます。また万が一のトラブルにも迅速に対応してくれるため、安心して税理士を任せることができます。
ポイント④自社の業界や業種に関する知識があるか
税理士が自社の業界や業種に関する知識を持っているかどうかは重要です。なぜなら税理士は企業の財務状況や税金に関するアドバイスをする役割を担っており、業界や業種によっては特定の知識や経験が求められるからです。
また業界や業種に関する知識がある税理士は、その分野のトレンドや法律の変更にも敏感であり、最新の情報を提供してくれるでしょう。これにより企業は税金に関するリスクを最小限に抑えることができます。
自社の業界や業種に関する知識がある税理士を選ぶことは、企業の成長や競争力を高めるために非常に重要な要素です。税理士を選ぶ際には、自社の業界や業種に精通しているかどうかを確認することをおすすめします。
ポイント⑤経営相談ができるかどうか
経営相談とは、自分のビジネスに関する悩みや問題を税理士に相談し、アドバイスを受けることです。税理士は、会計や税務の専門家ですが、経営に関する知識も持っています。
そのため経営相談を通じて、経営戦略の立案や財務管理の改善など、ビジネスの成長に役立つアドバイスを受けることができます。
経営相談ができる税理士を選ぶことで、自分のビジネスをより効果的に運営することができます。たとえば新しい事業の立ち上げや事業拡大の際には、税理士に相談しながら計画を進めることで、リスクを最小限に抑えながら成功への道筋を描けます。
また経営相談ができる税理士は、ビジネスの将来についての見通しについても相談できます。経営状況や市場の動向を分析し、将来のリスクやチャンスを予測することで、的確な経営戦略を立てることが可能です。
経営相談ができる税理士を選ぶことは、ビジネスの成長や持続可能性を考える上で非常に重要です。税理士を選ぶ際には、経営相談の実績や経験、コミュニケーション能力などをチェックすることをオススメします。
専門家に聞く - 税理士選びのアドバイス
税理士選びに失敗しないために、どうしたらよいでしょうか?
伴洋太郎先生
税理士選びで失敗しないための最も重要なアドバイスは、コミュニケーションの質を重視することです。
弊所では、お客さまに対して「弊所をお選びいただいた決め手」を必ずお聞きしています。
すると「相談しやすそうだったから」「人柄が良さそうだったから」「オンラインでのやりとりが得意そうだったから」とお声いただくことが多いです。
サービスご利用後のクチコミでも、そうした点を評価いただいています。
一方で、他の税理士へ依頼しなかった理由や顧問税理士を変更した理由をお聞きすると、「会計や税務の専門用語を多用され、理解できなかった」「高圧的で怖かった」「連絡や資料の受け渡し方法にストレスを感じていた」などのお声を聞きます。
これらは、お客様がコミュニケーションの質を特に重視しており、それこそが税理士選びを失敗しないための重要なポイントとなっていることを示しています。
そこで税理士を選ぶ際には、まずは初回相談などを通じてコミュニケーションの取りやすさを確認することをお勧めします。
スムーズにやりとりできる税理士であれば、その後も良好な信頼関係を築いていただけるのではないかと思います。
税理士への依頼を検討中の方へ
税理士探しには、このようにいくつかのやり方があります。依頼の中身や方法、例えばスポットで頼みたいのか、顧問契約をするのか、あるいはコストはどれくらいを見込むのか、といった事情に合わせて、記事も参考に自分に最適のやり方を選んでください。