経営規模の拡大によって会計処理が煩雑になるのは必然と言っていいでしょう。そんなときに税理士と契約することで解決を図るのは有効な選択肢です。顧問税理士を雇うことや税理士とスポット契約を結ぶことなどが一般的ですが、初めて契約を結ぶ場合わからないことも多いのではないでしょうか。今回は税理士を検討する際に必要なことを徹底解説します。
目 次
そもそも、税理士に依頼するメリットとは?
税理士に依頼する主なメリットは、経営状況を改善しやすくなることです。
税理士は税金関係の専門家であり、日ごろの会計業務から年に1度の決算、および確定申告までを総合的に任せられる存在です。税理士に依頼することによって、自社内で税務を行うよりも手早く適切な形で節税対策を実施できます。
例えば、確定申告において「青色申告」を行うと、最大で65万円の特別控除を受けられます。 青色申告を行うには簿記の専門知識が必要ですが、税理士に依頼することで問題が解決します。場合によっては大きな額を節税できるので、節税対策として税理士を頼るのは有効な手段です。
税理士との契約や依頼時に揃える必要のある書類
税理士と契約するときには、会社の定款や基本的な経理記録を用意する必要があります。その後、実際に仕事を依頼するときには、試算表をはじめとした個別具体の書類も用意する必要があります。
なお、以下でご紹介するのはあくまでも一般的な必要書類です。依頼内容や税理士事務所によって必要な書類は異なるので、税理士との初回面談前や依頼前には、用意するべき書類を必ず聞いておきましょう。
契約時に必要な書類
- 顧問契約書
- 定款
- 商業登記簿謄本
- 直近3期分の税務申告書
- 総勘定元帳の写し
- 契約金額分の印紙(顧問契約の場合のみ)
税理士への依頼を行う際に必要な書類
- 試算表
- 推移表
- 給与台帳
- 現金出納帳
- 仕訳帳
- 決算書
- 領収書や請求書
- 実地棚卸表
- 賃貸借契約書の写し
- 通帳の写し
必要書類を全て揃えることが難しい場合は?
会社を設立して日が浅い場合、必要書類のうち何種類かは揃えることが難しいかもしれません。書類によっては手元にある分だけで十分なケースや、依頼内容によってはなくても契約できるケースもあります。
どういうときにどういった書類が必要かは税理士事務所によって異なるので、基本的には税理士に直接問い合わせるようにしましょう。
見積もり時に確認しておくべきこととは
実際に税理士へ見積もりを依頼する際には、相手の税理士がどういった業務に対応しているか、どれくらいの価格で請け負ってくれるかなどを確認する必要があります。
以下は最低限確認しておきたいポイントです。
- 依頼できる業務内容
- 依頼者側が用意する書類
- 料金体系
- 打ち合わせの有無、ある場合は頻度
- 契約期間
- 依頼担当者は誰か
- 解約に関する規定
- 税理士の得意分野
- 税理士の性格・考え方、税理士との相性
税理士の信用性
近年は格安料金で依頼できる税理士が増えていますが、依頼する税理士によっては追加費用が高額だったり、電話やメールのみで対応されたりするケースもあるようです。場合によっては、税理士本人ではなく事務所スタッフが依頼担当になることもあります。なるべく税理士本人が対応してくれる事務所を探して依頼すると良いでしょう。
直接問い合わせても料金体系が良くわからない、もしくは対面での打ち合わせを避けたがる、などの場合も別の税理士事務所を探すことをおすすめします。
料金体系
契約を結ぶ前には料金体系を確認し、実際に1年間仕事をしてもらったときに費用がいくら発生するのかを見積もりましょう。具体的には、月額顧問料の中に訪問が含まれるのか、含まれるとすればどのくらいの頻度の訪問となるのか、訪問を追加する場合はいくらかかるのか、記帳代行や給与計算などのオプション料金はいくらなのかを確認すると良いでしょう。
また、年に1度行う業務として、決算申告・確定申告・年末調整・消費税申告にいくらかかるのか、税務調査に立ち会ってもらうときにいくらかかるのかについても確認する必要があります。月額費用と申告などの年1回発生する費用、そしてオプションの費用がわかれば、税理士に対する1年間の支払額をおおまかに把握できます。
依頼できる業務・得意分野
税理士の得意分野は、依頼する内容や時期に関わってくる要素です。得意分野に関しては税理士事務所のホームページに書いてあることがほとんどですが、実際に税理士事務所まで問い合わせるのが最も確実な方法です。
特に経営相談や給与計算の代行など、税理士の独占業務ではない作業を依頼する場合は、依頼内容に対応できそうな税理士を探すことをおすすめします。
税理士の性格・考え方、税理士との相性
顧問税理士を探す場合、依頼者自身と性格が合いそうか、依頼目的に共感してくれるかなどの要素も重要です。あまりに性格が合わないと些細なことでトラブルになりやすく、税務に対する考え方が大きく違うと、期待したメリットを得られない可能性が高まります。
月額顧問料の安さだけで判断せず、初回問い合わせや見積もりを行うタイミングで、税理士の人柄や考え方を把握してから選ぶようにしましょう。
スポット契約とは?顧問契約との違いとは?
ビジネス用語の一つとして、単発案件で契約を結ぶことを「スポット契約」といいます。
依頼者側の状況によっては、顧問税理士を雇うよりもスポット契約の方が、メリットが大きくなるケースもあります。
スポット契約を行うメリット
スポット契約では依頼した案件が解決すると契約満了になるので、顧問税理士を雇う場合と異なり、月額顧問料や訪問費用などの固定費が発生しません。自社内で日常的な税務を処理できることが前提ですが、決算や確定申告の時期だけ税理士とスポット契約する形で税務を行うと、契約費用を大幅に節約できます。
会社を設立した直後で顧問税理士を雇う金銭的な余裕がない場合、経営が軌道に乗るまでの間は基本的な税務を自計化して、税理士が必要な業務のみスポット契約で対応するという手法が考えられます。
確定申告に関しても、税理士に丸投げするよりは自社内で必要書類を用意しておいた方が依頼費用を安く抑えられます。
特に中小企業であれば会計業務を自計化しやすいので、税理士に頼るべき業務以外は自社スタッフで対応した方が経費を削減できるでしょう。
顧問契約とスポット契約の違い
税理士とスポット契約を結ぶ場合、税理士にしかできない業務を依頼することが主な目的でしょう。税理士法では、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」の3つは税理士資格を持っている人しか実施できない「独占業務」として定義されています。
自社内に税理士資格を持つ人がいれば、スポット契約を選ぶメリットはあまりないかもしれません。しかし、会社の売上が少ない時期や、決算や確定申告などで一時的に人手が足りないのであれば、税理士とスポット契約を結ぶことは有効な手段になり得ます。
売上が増えた場合は税理士との顧問契約を検討しよう
一方、顧問契約は、会社の規模が大きくなり、税務が複雑化して専門家のサポートが必要となったり、売上が増大して本格的に節税を考える必要が出てきたりしたときに適した契約方法です。顧問契約に付随して、給与計算や資金調達をアウトソースできることもあります。
顧問税理士を探す時期としては、自社内で行う会計業務が増えてきた、もしくは税務関連に詳しい従業員が退職予定である、といったタイミングがおすすめです。実際には、年商1,000万円を超えて消費税の納税義務が生じたタイミングで、顧問税理士を探し始める企業が多いようです。
まとめ
税理士との契約に必要な書類や、契約を検討するうえで知っておきたいことについて解説しました。今回ご紹介した契約価格の相場やスポット契約のメリットなどを参考にして、自社に見合った税理士を探してみてください。