医療法人・クリニックの税務調査の実態は?傾向と対策を税理士が解説

医療法人・クリニックの税務調査の実態は?傾向と対策を税理士が解説
最終更新日:
2026/01/26
この記事の監修者
Vmaster税理士事務所
所長 松田 光弘(税理士)
 
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「病院に税務調査が入ると聞いて不安を感じている」「クリニックの税務調査ではどこを指摘されやすいのか」という疑問を抱える医院経営者は少なくありません。税務調査の対象となるのは開業から3年程度が経過したタイミングが多く、自費診療収入の計上漏れや棚卸資産の管理不備などが指摘されやすいポイントです。適切な管理と正確な記帳を日頃から行っていれば、税務調査を過度に恐れる必要はありません。本記事では、医療法人特有の税務調査の実態について、監修税理士への質問形式で詳しく解説します。

医療法人やクリニックで税務調査が実施される背景

医療法人は保険診療と自費診療が混在し、現金収入も多いという業種特性から、税務調査が定期的に実施されています。国税庁の調査実績によれば、医療・福祉業は他業種と比較して申告漏れ所得金額が高い傾向にあり、適正な申告を促すため税務当局も重点的に調査を行っています。
医療法人の場合、一般的に5年に1回程度の頻度で税務調査が実施され、個人開業医と比較して法人税・消費税・源泉所得税など調査対象税目も多くなる傾向があります。調査は原則として事前通知があり、過去3事業年度分の帳簿書類を数日かけて確認するのが一般的です。

医療法人の税務調査でよくある質問

医療法人の税務調査は一般企業とは異なる特徴があり、経営者が知っておくべきポイントが数多くあります。ここからは、実際に寄せられた質問をもとに、医療法人の税務調査の実態について監修税理士の松田先生に詳しく伺っていきましょう。

医療法人はどのようなタイミングで税務調査の対象になりますか?

質問: 開業して3年目の医療法人ですが、税務調査はいつ頃入る可能性が高いでしょうか?

松田光弘先生

税務調査の対象になりやすいのは開業から3~5年程度が経過したタイミングです。
開業直後は利益が少なく調査の優先度が低い一方、3年目以降は事業が軌道に乗り利益が増加する時期であり、自費診療の収益額にもよりますが消費税の課税事業者になるタイミングとも重なります。
また、前回の税務調査から5年以上経過している場合も対象になりやすいでしょう。機械的な周期に加え、売上規模に対して利益率が極端に低い、前年と比較して売上が大きく増加していたり、特定の経費が大きく増減していたり、といった申告内容の特徴からも調査対象に選定されます。

税務調査の事前通知から実地調査までの期間はどれくらいですか?

質問: 税務署から連絡があった場合、いつまでに準備をすればよいですか?

松田光弘先生

事前通知から実地調査までは通常1ヶ月程度の期間があります。
税務署から納税者又は顧問税理士に電話で連絡があり、調査日時・対象税目・対象期間・準備書類などが伝えられます。提示された日程で都合がつかない場合は、診療に支障がない日への変更を依頼できます。
準備期間中に、総勘定元帳・預金通帳・窓口現金出納帳・請求書・領収書・契約書・賃金台帳などの過去3年分(場合によっては5~7年分)を整理し、調査実施日までに顧問税理士と指摘されやすいポイントについて事前確認しておきましょう。

医療法人の税務調査で特に指摘されやすいのはどのような点ですか?

質問: 税務調査官が重点的にチェックするポイントを教えてください。

松田光弘先生

最も指摘されやすいのは自費診療収入の計上漏れと売上計上時期のずれです。
保険診療はレセプトを通じて収入が把握されますが、自費診療は医院と患者の直接取引のため計上漏れが発生しやすくなります。
特に自賠責収入は入金までの期間が長く、入金先口座を個別指定できるため、収入隠しの手段として使われるケースもあり厳しくチェックされます。
また、クレジットカード決済の売上を入金日に計上している誤りも多く見られます。正しくは診療を行った日に売上計上すべきであり、決算期をまたぐ場合は未収入金として計上が必要です。

棚卸資産について税務調査ではどこを見られますか?

質問: 医薬品や医療材料の在庫管理で注意すべき点は何ですか?

松田光弘先生

期末棚卸資産の計上額が正確か、期限切れ在庫の処理が適切かを厳しくチェックされます。
医療法人では医薬品・医療材料など多品目の在庫を抱えるため、期末棚卸の計上漏れによる利益操作が行われやすい面があります。実地棚卸と帳簿残高に差異がある場合の原因究明が不十分だったり、使用期限切れの医薬品を廃棄した際の証拠資料に不備があると指摘を受けます。
在庫は品名・単価・数量を正確に記録し、定期的な実地棚卸と帳簿との照合を行い、差異が生じた場合は原因を記録として残し、適正な会計処理を行うことが重要です。
また、使用期限切れの在庫を廃棄する際には、廃棄した品名と単価・数量・廃棄日のリスト、廃棄前後の写真、薬剤師の管理記録などを証拠として残しておく必要があります。

交際費として計上している支出で問題になるのはどのようなケースですか?

質問: 理事長のプライベートな支出との区分が曖昧なのですが、どう判断すればよいでしょうか?

松田光弘先生

事業に関連しない支出を交際費として計上している場合は否認されます。
例えば、医療機器メーカーの担当者との打ち合わせを兼ねた食事代は交際費として認められますが、理事長が家族と行った飲食や個人的な知人へのプレゼントは経費として認められません。
税務調査では領収書と照合しながら、支出の相手方・目的・金額の合理性を確認されます。医療法人の規模に比べて交際費が過大な場合、交際費に計上されている各支出について詳細な説明を求められるでしょう。
事業用とプライベートの支出は明確に区分し、事業関連性が説明できる支出のみを計上してください。

親族への給与について税務調査で質問されることはありますか?

質問: 理事長の配偶者に役員報酬を支払っていますが、問題になりますか?

松田光弘先生

親族への給与が業務実態に見合った適正額かを厳しくチェックされます。
個人開業医の青色事業専従者給与や医療法人理事の親族への役員報酬は、実際に従事している業務内容と支給額の妥当性が調査されます。週に数日しか出勤していないのに月額50万円の役員報酬を支給しているケースや、実務に従事していない親族に給与を支払っているケースは否認される可能性があります。
親族への給与を支給する場合は、職務内容を明確にし、勤務実態を示すタイムカードや出勤簿、業務記録及び業務体制を説明できる従業員名簿や組織図などを整備し、同規模の医療法人における同職種・同業務の給与水準から逸脱しない範囲であることを説明できるようにしておきましょう。

税務調査で修正申告を求められた場合、どのような税金がかかりますか?

質問: 過少申告が認められた場合のペナルティについて教えてください。

松田光弘先生

修正申告では本税に加えて過少申告加算税(10%、一定額超は15%)と延滞税が課されます。
過少申告加算税は期限内に申告したものの金額が不足していた場合に課される罰金で、税務調査の事前通知後、更正を予知せず自分から修正申告した場合は5%(一定額超は10%)に軽減されます。
悪質な所得隠しと認定された場合は重加算税(35%)が課され、無申告の場合は無申告加算税(15%~30%)が加算されます。延滞税は納期限から修正申告までの期間に応じて年率約3~9%で計算されます。
意図的でない計算ミスであれば修正申告のみで済みますが、悪質と判断されると追徴税額が大幅に増加するため注意してください。

まとめ

医療法人の税務調査は、自費診療収入の計上漏れや棚卸資産の管理不備、院長や理事長の交際費及び親族への給与の額の妥当性などが重点的にチェックされます。過少申告が認められると修正申告では本税に加えて過少申告加算税(10%、一定額超は15%)と延滞税が課されるなどペナルティが発生します。
日頃から売上を診療日に計上し、在庫を適切に管理し、事業用とプライベートの支出を明確に区分しておくことが重要です。
税理士紹介センタービスカスでは、医療法人の税務に精通した税理士を無料でご紹介しています。創業30年で培った40万件以上の相談実績をもとに、税務調査への対応から日常的な記帳指導まで、貴院の状況に最適な税理士をご案内します。医療法人特有の会計処理や税務調査への不安がある方は、まずはお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
Vmaster税理士事務所
所長 松田 光弘(税理士)
私は税理士法人兼コンサルティング会社で10年間、税務顧問、融資支援、補助金申請支援、管理会計導入及び業務効率化支援業務に携わってまいりました。開業後は創業検討中の個人さまから事業拡大を目指す中小企業さままで、経営の道を親身に支援しております。小売、卸売、建設、不動産、製造、運送など経営管理が特に重要となる業種の顧問及びコンサルティング・プロジェクト実績があり、事業の流れや経営思考の理解、経営者とのコミュニケーション力に長けています。何ごともただ結果をご説明するのではなく、なぜそうなるのかという原因・仕組み及び経営者視点の判断ポイントを整理して分かりやすくお伝えすることが弊所のモットーです。

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この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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