新リース会計基準で借手は原則オンバランスへ。2027年適用までの準備と対応手順
- 最終更新日:
- 2026/02/25

- この記事の監修者
- おだね税理士事務所
代表 小田根 大輔(税理士)
新リース会計基準とは(何が変わる?)
借手の会計処理において、ファイナンスリースとオペレーティングリースの区分を廃止し、原則すべてのリース取引をオンバランス処理する単一モデルを採用します。これにより、従来オフバランスだったオペレーティングリースも貸借対照表に計上され、総資産・総負債が増加し、損益計算書の表示も変わります。
典型的な影響先は、店舗賃貸を多く持つ小売業、車両リースを多用する運送業、データセンター契約のあるIT企業などです。
※貸手は区分(ファイナンス/オペレーティング)を基本維持する一方、オペレーティング・リース収益の定額計上の明確化など、実務影響が出る論点があります。
2024年9月公表の新リース会計基準は、IFRS第16号との整合性を図るため、2023年5月の公開草案を経て正式公表されました。
新リース会計基準の適用時期と対象企業(いつから・誰が)
2027年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用されます(早期適用は2025年4月1日以後可能)。3月決算企業であれば、2028年3月期から適用、早期適用なら2026年3月期から可能です。
適用が原則となる企業(開示・監査実務上、準拠が求められる企業)
金融商品取引法に基づく開示財務諸表を作成する企業(上場企業等)および会社法監査の対象となる会計監査人設置会社では、実務上、新基準への準拠が前提になります。会計監査人設置会社も、会計監査の前提として準拠が必要になります。
会計監査人設置会社には、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の大会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社、会計監査人を任意設置した企業が含まれます。中小企業は、会社の会計方針(中小指針・中小要領等)次第で任意適用となりますが、親会社が上場企業の場合は連結対象として影響を受けます。
適用範囲から除外される取引
以下の取引は新リース会計基準の適用範囲から除外されます。
- 公共施設等運営権(実務対応報告の範囲)
- 収益認識会計基準の範囲に含まれる知的財産ライセンス(貸手)
- 鉱物・石油・天然ガス等の非再生資源を探索・使用する権利
- 無形固定資産のリース(適用しない選択も可能)
新リース会計基準の主な変更点(借手のオンバランス)
借手の会計処理におけるポイントは3つです。原則オンバランス処理への統一により貸借対照表の規模が拡大し、損益計算書では営業利益の表示区分が変わり、さらに従来リースと認識していなかった契約も対象となります。
原則オンバランス+短期・少額の例外
借手は、リース開始日に使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上します。使用権資産はリース期間中に原資産を使用する権利、リース負債はリース料の支払義務を表します。ただし、以下の例外については簡便処理(費用処理)が認められています。
短期リース: リース期間12カ月以内かつ購入オプションなし
少額リース: 会社の方針で以下の基準から選択適用
- ①重要性が乏しい減価償却資産の費用処理基準額以下
- ②企業の事業内容に照らして重要性が乏しく、契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース
(リース料総額は、維持管理費用相当額を合理的に見積もって控除した金額で判定できます) - ③新品時の原資産価値が5千米ドル程度以下
少額リースは②と③のいずれかを会計方針として選択します。これにより、複合機や小型車両など、個別に重要性の低い契約は従来どおり費用処理が可能です。
少額リースの300万円基準(何を基準に判定する?)
300万円基準は、契約1件当たりのリース料総額で判定します。対象期間は原則としてリース期間ですが、契約期間でも判定できます。また、維持管理費用相当額の合理的見積額を控除して判定することも認められています。税込・税抜の区分は、取得価額の管理方針(税抜・税込)に合わせて継続適用することが重要です。判断に迷う場合は、監査法人と事前に協議してください。
損益計算書・財務指標への影響
現行基準でオペレーティングリースのリース料は「賃借料」として販売費及び一般管理費に計上されていました。新基準では「減価償却費」と「支払利息」に分解されます。
減価償却費は販売費及び一般管理費、支払利息は営業外費用に計上されるため、営業利益は改善し得ます。ただし、これは表示区分の変更によるもので、費用総額の期間配分が変わります。リース開始当初は支払利息が大きく費用が前倒しになりやすい傾向があります。
貸借対照表では総資産・総負債が増加するため、自己資本比率やROAは低下する可能性があります。金融機関との借入契約で財務制限条項(コベナンツ)が設定されている場合、事前協議が必要です。
リースの識別(隠れリース)と判断の難所
新基準では、契約がリースを含むかを以下の3基準で判定します。
- 資産が特定されているか
- 特定資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有しているか
- 資産の使用を指図する権利(支配)を有しているか
契約書に「リース」の記載がなくても、これらを満たせばリースと判定されます。不動産賃貸借契約、複合機レンタル、サーバーホスティングなどが該当する可能性があります。
判断で迷いやすいのは、サプライヤーの入替権(契約期間中に資産を入れ替える実質的な権利があるか)や、非リース要素の按分(保守サービスとリース部分をどう分けるか)です。これらは個別契約ごとに詳細な検討が必要となります。
実務で「リースかどうか」の判定に最も迷いやすい契約は何ですか?

小田根 大輔
税理士からのワンポイントアドバイス
実務上、「リースかどうか」の判定(リースの識別)で最も迷いやすいのは、ITインフラ契約(専用サーバー利用等)や物流・業務委託契約に潜む「隠れリース」です。
特に企業が見落としやすい典型例は、「倉庫や店舗の一部スペースの継続的な占有」です。例えば、「業務委託契約」や「倉庫寄託契約」という名目であっても、特定の区画を自社専用で使用し、実質的な支配権(使用を指図する権利)を持っていれば、リースに該当する可能性が高くなります。
契約書に「リース」「賃貸借」の記載がなくても、資産が特定され自社がコントロールできる契約は、早めに棚卸しをして詳細を検討することをお勧めします。
期中の契約変更・延長と再測定
契約変更があると再計算が必要となり、運用負荷が増えます。代表的なケースは、契約の更新・解約による条件変更と、指数やレートに連動する変動リース料の変動です。これらが生じた場合、リース負債と使用権資産の再測定を行います。
このため、契約変更を経理部門に通知するフローの構築が必須です。さらに、使用権資産は減損会計の対象となるため、減損の兆候判定と減損処理の検討も必要となります。
新リース会計基準への対応手順(準備・スケジュール)
対応の流れは、まず契約の棚卸しで「契約の所在」を確定し、次に「論点が出る契約」から優先的に影響額を試算します。その後、方針(割引率・期間・例外)を監査法人と合意し、最後にシステム・運用(契約締結フロー)を整備します。この順序を守ることで、適用初年度の混乱を最小限に抑えられます。
リース契約の棚卸しと影響分析
現在締結しているすべての契約について、新基準のリース該当性を判定します。対象は、従来のリース契約だけでなく、不動産賃貸借、機器レンタル、複合機契約、車両リースなど多岐にわたります。
契約の洗い出しは経理部門だけでは完結しません。総務が管理する不動産契約、情報システム部門が管理するサーバー契約、各拠点が個別に締結している複合機契約など、全社的な協力体制が必要です。子会社の契約把握も難航しやすく、連結での苦労ポイントとなります。
経理部門、総務部門、情報システム部門、購買部門から契約情報を収集し、上記3基準でリース該当性を判定します。該当する契約は、使用権資産とリース負債の金額を試算し、財務諸表への影響を把握します。この作業に最も時間を要するため、早期着手が重要です。
新リース会計基準への対応で、企業が最初につまずくポイントとは?

小田根 大輔
税理士からのワンポイントアドバイス
新基準への対応で企業様が最初につまずくのは、「全社的な契約の洗い出し(棚卸し)」と考えられます。
対象となる契約は経理部門だけで把握できるとは限らず、総務の不動産賃貸、情報システムのサーバー契約、各拠点が独自契約した複合機など社内中に散らばっており、網羅的な把握は想像以上に難航します。そのため、実際の支援現場で「もっと早くやればよかった」と必ず言われるのが、他部署を巻き込んだ体制づくりです。
さらに、期中に契約が延長・解約された際、その情報が経理へ即座に通知される「社内伝達フローの構築」も後回しにされがちですが、適用後の再計算の負荷を減らすためにも、影響額の試算より先に着手すべき最重要タスクと言えます。
会計方針の策定と監査法人との協議
リース期間の決定方法、割引率の算定方法、使用権資産の償却方法、短期・少額リースの判定基準などを会計方針として定めます。
リース期間の決定では、延長オプションを行使することが「合理的に確実」かを判断します。判断要素には、過去の更新実績、原資産の重要性、解約コスト、代替資産の入手可能性などが含まれます。割引率は、リースの計算利子率が容易に算定できる場合はその利率を、算定できない場合は借手の追加借入利子率を使用します。
会計方針の検討では、監査法人との事前協議が不可欠です。適用時の修正や追加作業を最小限に抑えるため、早期に相談してください。
システム・業務フロー・規程の整備
リース負債の現在価値計算、使用権資産の償却計算、支払利息の計算を毎月継続的に行う必要があります。リース契約が10件以上ある企業では、専用システムまたは会計システムのリース管理機能の導入を検討してください。
契約締結時に経理部門へ速やかに情報が伝達される業務フローを構築し、契約条件の変更についても適時に把握できる体制を整えます。社内規程では、リース該当性の判定フロー、短期・少額リースの判定基準、契約締結時の承認プロセスを明文化します。
関係者への説明
グループ会社がある場合、子会社へ会計方針を示し、適用スケジュールを調整します。投資家や金融機関には、決算説明資料で新基準適用による財務諸表への影響額を事前開示してください。
経過措置と遡及適用
新基準の適用初年度は、完全遡及アプローチまたは修正遡及アプローチを選択できます。
完全遡及アプローチ:過去のすべての期間について新基準を適用したかのように財務諸表を修正再表示。比較可能性は確保されるが実務負担が大きい。
修正遡及アプローチ:適用初年度期首の利益剰余金に累積的影響額を加減し、期首残高から新基準を適用。過去の財務諸表の修正再表示は不要。
修正遡及アプローチでは、以下の実務上の便法が認められています。
- 現行基準でファイナンスリースだった契約は、前年度末の帳簿価額を引き継ぐ
- オペレーティングリースだった契約は、適用初年度期首の残リース料の割引現在価値でリース負債を計上し、使用権資産を同額とできる
- リースの識別について、適用初年度期首時点の事実・状況に基づいて判断できる
新リース会計基準と税務(会計との差・申告調整)
会計処理の変更は税務に自動で反映されません。税務上のリース取引判定は法人税法の基準で行うため、会計と税務で処理が異なる場合は申告調整が必要です。
会計と税務の判定軸は別(申告調整が発生)
税務上のリース取引は、リース期間が資産の法定耐用年数の70%以上である場合などに判定されます(詳細は国税庁タックスアンサー参照)。会計上オンバランスされた契約が税務上はリース取引の要件を満たさない場合、会計と税務で処理が異なるため、会計利益を税務所得に修正する「別表四」や、税務上の純資産を管理する「別表五(一)」での申告調整(利益積立金額の管理を含む)が必要です。
会計上は減価償却費と支払利息を計上しますが、税務上は賃借料を損金算入します。この差額を法人税申告書で調整します。
リース譲渡の特例廃止(貸手側の税務)
税法上、リース譲渡に係る収益・費用の帰属事業年度の特例が2025年4月1日以後開始する事業年度から廃止されます(令和7年度法人税関係法令の改正)。2025年4月1日より前にリース譲渡を行った法人は、経過措置として引き続き処理できます。
よくある質問
自社は新基準の対象ですか?
会計監査人を設置していない非上場企業は任意適用です。ただし、親会社が上場企業の場合は連結対象として影響を受けます。将来IPOを検討している場合は早期対応が望ましいでしょう。
不動産賃貸借契約もリースですか?
特定の建物・区画を使用し、賃借人が使用方法を決定できる契約は原則リースに該当します。短期リース(12カ月以内)は簡便処理が可能です。
リース期間はどう決めますか?
延長オプションを行使することが合理的に確実なら延長期間を含めて判定します。判断要素は、過去の更新実績、機器の重要性、解約コスト、代替機器の入手可能性です。
システム改修は必須ですか?
契約件数が少なければExcelも可能ですが、契約変更時の再測定で作業負荷が増加します。10件以上あれば専用システムの導入を検討してください。
税務申告は変わりますか?
税務上のリース取引判定は法人税法の基準で行うため、会計と税務で処理が異なる場合は申告調整が必要です。会計利益を税務所得に修正する「別表四」や、税務上の純資産を管理する「別表五(一)」での調整について、顧問税理士に確認してください。
まとめ
新リース会計基準は、借手の会計処理を原則オンバランスに統一する重要な改正です。2027年4月以降開始する事業年度からの適用に向けて、リース契約の棚卸し、会計方針の策定、システム対応を早期に進めてください。特に、契約の洗い出しは経理部門だけでは完結せず、全社的な協力体制が必要です。
新リース会計基準への対応では、会計処理と税務処理のズレ、契約変更時の再測定、減損会計など、専門的な判断が求められます。税理士紹介センタービスカスでは、新リース会計基準に精通した税理士を無料でご紹介しています。創業30年、累計40万件以上の相談実績に基づき、貴社に最適な税理士をご案内いたします。
出典・参考
【会計(ASBJ)】
企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(PDF)
https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/lease_20240913_02.pdf
企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(PDF)
https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/lease_20240913_04.pdf
【税務(国税庁・制度改正の根拠確認用)】
(タックスアンサー)リース取引(法人税)※判定の考え方の入口
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5703.htm
【税制改正(公式PDF:財務省)】
令和7年度税制改正の概要(PDF)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/explanation/PDF/p0011-0076.pdf

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