今話題の所得税減税の定額減税とは?定率減税の違いも踏まえて解説 | MONEYIZM
 

今話題の所得税減税の定額減税とは?定率減税の違いも踏まえて解説

所得税減税の話が話題になっています。所得税の減税ですが、定額減税で行われる予定です。ではそもそも定額減税とはどのようなものなのでしょうか。ここでは定率減税との違いも踏まえて解説します。
 

※記事の内容は2023年10月末時点の情報を元に作成したものであり、現在の内容と異なる場合があります。

なぜ所得税減税なのか

現在、所得税減税の話が話題となっていますが、そもそも所得税減税をなぜ行うのでしょうか。ここでは所得税減税の概要だけでなく、所得税減税を行う理由について解説します。

所得税減税とは

所得税減税は、個人が所得税を支払う際に、税金の額を軽減する制度です。所得税は、個人の所得に対して課税される税金であり、経済活動に応じた負担をするためのものです。
 

所得税は所得から所得控除を差し引いた額に税率をかけて求められます。所得税は所得の額によって税率がかわる累進課税となっています。
 

所得税減税の目的は、経済活動を促進し、国内経済の成長を支援することです。所得税の軽減により、個人はより多くの資金を手元に残せます。そのため消費や投資などの経済活動が活発化し、経済全体の活性化が期待されるでしょう。
 

所得税減税の具体的な方法には、所得の一部を非課税とする特例措置や、所得税率を引き下げる制度があります。所得税減税は、個人や法人の経済活動に直接的な影響を与えるため、経済政策の重要な要素です。
 

所得税減税は、経済の活性化や投資の促進に寄与する一方で、税収の減少という財政的な課題も抱えています。そのため、所得税減税の実施には、経済効果と財政健全性のバランスを考慮する必要があります。

所得税減税を行う理由

岸田政権が今回の所得税減税を行う理由としては、物価高の影響で国民生活が苦しいためです。たしかに近年物価高が続いています。総務省が発表した消費者物価指数によれば、生鮮食品をのぞく総合指数は、前年同月比で2.8%の上昇となっています。
 

また生鮮食品をのぞく食料に関しては8.8%の上昇です。とくに乳卵類は21.4%の上昇、菓子類は11.7%と物価上昇が続いています。電気代とガス代はそれぞれ-20.9%と-9.5%で電気代と都市ガス代の負担軽減策の効果が出ています。
 

このように物価上昇は継続的に続いており、原油価格の上昇による一時的なものではありません。食料品は今後も継続的に上昇していく可能性が高いでしょう。
 

物価上昇は価格転嫁できない飲食店に大きな影響をもたらしており、値段を上げられない飲食店は売上を削って価格の上昇を抑える必要が出てきています。一方、賃金上昇は想定通り進んでいません。
 

物価上昇を上回る速度で賃金が上昇していれば問題ありませんが、実際には賃金上昇はしているものの、物価上昇に追いついていません。こうした現状を考えたうえで、政府としては所得税減税を物価高対策として実施するに至ったわけです。
 

しかし野党は減税よりも給付を要求しており、自民党内からも減税を選択する政権に疑問を抱く声が出ています。消費税減税の声が高まっている中で、同じ減税である所得税減税を選んだという考え方もあるようです。
 

たしかに消費税の税率を下げてしまうと、元に戻すのが大変だという事情もあるでしょう。ここまで10%に上げるのも難しかった状況で、再び消費税を一時的に下げてから、元に戻すのは大変だというわけです。

定額減税とは

今回、所得税減税において、定額減税を実施することになりました。そもそも定額減税とはどのような制度なのでしょうか。また定率減税との違いはどのようなところでしょうか。

定額減税は一定額を納税額から差し引く方法

定額減税は、一定額を納税額から差し引く方法です。これは、政府が国民の所得を支援するために導入されます。たとえばある人が年間で10,000円の定額減税を受ける場合、その人は納税時に10,000円少ない金額を支払うことになるわけです。
 

定額減税は、国民の所得支援や経済活性化の手段として重要な役割を果たしています。日本では橋本龍太郎政権下の1998年に実施されています。

定率減税との違い

定額減税と定率減税は、日本の税制においてよく使われる減税の方法ですが、その違いを理解することは重要です。
 

まず定額減税は、前述したように所得や経費に応じて一定の金額が差し引かれる減税方法です。具体的な金額が定められており、個人の収入や支出に応じてその金額が適用されます。
 

一方、定率減税は、所得に応じて一定の割合が差し引かれる減税方法です。具体的な割合が定められており、収入や支出の一定の割合が減税されます。
 

定額減税と定率減税は、減税の方法が異なるため、どちらが適用されるかは税制の規定や条件によります。両方の減税方法は、税制改革や経済政策の一環として使用されているわけです。

橋本龍太郎政権を引き継いだ小渕政権は定額減税を定率減税に変更しました。その後、小泉政権になって定率減税は廃止されています。

今回の定額減税のメリット・デメリット

今回の定額減税にはメリットとデメリットがあります。ここでは定額減税のメリットとデメリットについて解説します。

今回の定額減税のメリット

定額減税のメリットとしては、所得に関係なく一定額を差し引くため、収入の少ない人々や中所得者層にとって非常に有益です。
 

所得に応じた割合で減税される従来の制度とは異なり、定額減税では一定の金額が減税されるため、低所得者や中所得者層は恩恵が受けられます。そのため与党内で支持が高くなっているのが現状です。
 

実際に公明党の高木政調会長も、「党として定額減税がふさわしいという認識を持っている」と述べています。
 

定額減税は経済の活性化にも寄与します。税金の負担が軽減されることで、人々の消費意欲が高まるはずです。消費が活発化すれば、企業の売上や雇用も増えるため、経済全体の活気が生まれます。
 

定額減税は国や地方自治体の税収減少による財政への影響を緩和する効果もあります。税金の減額分は一時的に財政に影響を与えますが、経済の活性化によって税収が増えることが期待されるわけです。このように定額減税にはさまざまなメリットがあるといえるでしょう。

今回の定額減税のデメリット

定額減税は、所得税を減らすための一つの手段ですが、デメリットも存在します。
 
まず、所得税を支払っていない所得税非課税層は恩恵を受けることができません。これは定率減税も同様です。そのため減税よりも給付の方を望む声もあり、所得税非課税層には給付をするという案が出ています。ただし増税の実施予定もあり、減税との整合性がとれません。
 

また、定額減税は一時的な効果しかもたらさない可能性があります。減税によって一時的に経済が活性化することはあるかもしれませんが、持続的な経済成長には他の政策が必要です。定額減税だけに頼ることは、経済のバランスを崩す可能性があります。

所得税減税の中身と実施予定

今回の所得税減税の中身と実施予定の内容は、どのようになっているのでしょうか。ここでは2023年10月末時点での情報を掲載します。

1人4万円の減税

今回の減税は1人4万円ですが、扶養家族がいる場合、その人数分の減税となります。所得税非課税層は減税にならないので、給付を検討中です。現在は7万円という案が出ています。
 

ただし減税の規模が少ないという意見が自民党内で出てきており、金額に関しては変動する可能性が残されています。

2024年夏頃に1回だけ実施

具体的な制度設計は、2023年末までに与党税制調査会で検討して決める予定です。税制改正の法案は、2024年の通常国会で提出される予定で、その後、減税が実施されます。
 

予定では2024年夏頃に1回だけの予定です。この1回だけの実施でどれくらいの効果があるのか疑問も出ています。

まとめ

ここまで今話題となっている所得税減税の定額減税について解説してきました。定額減税はメリットとデメリットがありますし、規模によってもどれくらいの経済効果があるかは変わってくるでしょう。
 

まだ最終決定しているわけではありませんので、今後の動きに注視していく必要があるでしょう。

福井俊保
渋谷区で一から立ち上げたプログラミング教室スモールトレインで代表として、小学生に対するプログラミングと中学受験の指導に従事。またフリーランスのライターとしても活躍。教育関係から副業までさまざまな分野の記事を執筆している。 著書に『AI時代に幸せになる子のすごいプログラミング教育』(自由国民社)、共著で『#学校ってなんだろう』(学事出版)がある。
「トピックス」カテゴリの最新記事