国際税務に強い税理士を探そうとすると、多くの事務所が「対応可能」と答えます。しかし実際に相談してみると、移転価格の話になった途端に歯切れが悪くなる、租税条約の適用可否を即答できない。そういった経験をした経営者は少なくありません。国際税務は税理士試験にほぼ出ない分野であり、実務経験のない税理士が「できる」と言っても中身は千差万別です。「得意分野の具体的な確認方法」と「よくある選び間違いのパターン」を、税理士実務の視点から整理しました。
国際税務に強い税理士が少ない理由と、専門家に頼むべき根拠
国際税務は「税理士試験に出ない分野」です。税理士試験の科目は法人税・所得税・消費税・相続税・固定資産税などですが、国際税務、外国税額控除、移転価格税制、タックスヘイブン対策税制(CFC税制)、租税条約の適用判断、は試験科目として体系的に問われません。つまり、税理士資格を持っていても、国際税務の実務経験がなければ対応できないのが現実です。
日本全国の登録税理士は約8万人(日本税理士会連合会)ですが、「国際税務の実務を継続的に扱っている」税理士はその中で一握りにとどまります。対応できる税理士が少ない一方、海外展開・越境取引をおこなう企業は増え続けており、ミスマッチが起きやすい分野です。
さらに、国際税務には複数の「専門領域」があり、同じ「国際税務が得意」でも担当できる範囲がまったく異なります。移転価格税制を日常的に扱う税理士と、海外子会社設立の支援実績がある税理士、外資系企業の決算対応に慣れた税理士では、それぞれ得意なフェーズが違います。依頼内容と税理士の専門領域がずれると、「頼んだのに的外れなアドバイスしか出てこなかった」という事態になりかねません。
国際税務・海外税務に強い税理士、特徴や見分け方のポイント
国際税務は他の税務分野と異なる特徴があり、経営者が知っておくべきポイントが多くあります。ここからは、実際に寄せられた質問をもとに、国際税務に強い税理士の選び方について監修税理士の先生に詳しく伺っていきましょう。
「国際税務が得意」と言う税理士の中身はどう違う?
質問: 複数の税理士に相談するとだいたい「国際税務は対応できます」と言います。どう見分ければよいですか?

小田根大輔先生
「国際税務が得意」という言葉は、実務上ほぼ意味をなしません。移転価格文書化を年間数件こなしている税理士と、海外送金の源泉徴収を数回処理したことがある税理士では、専門性がまったく異なります。確認すべきは「どの論点を、どの国との取引で、何件経験してきたか」という具体的な実績です。初回相談で「御社の取引では○○と○○の論点が生じます」と指摘できるかどうかが、実務経験の有無を測るリトマス試験紙になります。
海外取引を始める前から税理士に相談すべき?
質問: 海外取引はこれから始める予定です。契約が決まってから相談しても間に合いますか?

小田根大輔先生
契約後・支払後では手遅れになる論点が複数あります。特に租税条約の適用は、支払前に相手国との条約内容を確認し、必要な届出書(「租税条約に関する届出書」など)を事前に提出しなければ適用を受けられません。また、源泉徴収の要否も取引内容・契約形態・相手国によって変わるため、契約書の段階から確認することで後から処理し直す手間とリスクを大幅に減らせます。「取引が決まってから」ではなく、「検討段階から」が正解です。
移転価格税制への対応は、なぜ特別な準備が必要?
質問: 海外子会社との取引は少額です。移転価格税制は大企業だけの話では?

小田根大輔先生
移転価格税制は取引規模の大小にかかわらず適用されます。税務調査で「なぜこの価格で取引しているのか」を説明できなければ、課税調整のリスクが生じます。特に問題になるのは文書化義務(独立企業間価格の根拠資料の整備)で、対応できる税理士が限られる領域です。一の国外関連者(海外子会社1社)との前事業年度の取引合計額が50億円以上(または3億円以上の無形資産取引)である場合は同時文書化義務の対象ですが、それ以下でも税務調査で独立企業間価格の説明を求められる場面は少なくありません。もしその価格の合理的な説明が出来なければ、税務署の裁量で利益を計算される「推定課税」を受けるリスクがあるため、取引規模が小さくても専門経験がある税理士に、取引開始前に相談することをお勧めします。
国内の顧問税理士に国際税務を頼むとどうなる?
質問: 現在の顧問税理士は信頼できますが、国際税務は「なんとかなる」と言います。そのまま依頼してよいですか?

小田根大輔先生
「なんとかなる」という言葉は要注意です。国際税務は国内税務のルールがそのまま適用されず、個別論点の判断を誤ると二重課税や申告漏れに直結します。顧問税理士が国際税務の実務経験を持っている場合は問題ありませんが、そうでない場合は「国際税務は専門家に任せ、国内部分は引き続き顧問税理士が担当する」という役割分担が現実的な解決策です。国際税務のみをスポット契約やセカンドオピニオンとして依頼し、両者が連携できる体制が整えられるかを確認してください。
国際税務に強い税理士に語学力は必須?
質問: 取引先が英語圏です。税理士本人が英語を話せなければ対応できませんか?

小田根大輔先生
税理士本人の語学力より、事務所として英語対応の体制と海外ネットワークがあるかどうかを確認するのが実用的です。外資系企業の決算対応や海外本社へのレポーティングが発生する場合は、英語での書類作成・コミュニケーションが必要になります。一方、日本企業が海外取引をおこなうケースでは、日本語でのアドバイスで十分なことが多く、必要な書類のやり取りは事務所スタッフが対応できれば問題ありません。ただし、国際税務は相手国の税制も絡むため、必要に応じて「現地の会計事務所や専門家と連携できるネットワークを持っているか」は、重要な選定基準になります。依頼内容に応じて「英語対応が何のために必要か」「海外ネットワークがあるか」を整理してから確認しましょう。
国際税務の税理士報酬は通常より高くなる?
質問: 国際税務の費用感がわかりません。どれくらい余分に見ておけばよいですか?

小田根大輔先生
国内税務の顧問料に加え、国際税務対応のオプション費用として月額5〜15万円程度が目安(参考値)になることが多いようです。移転価格文書化や海外子会社設立の税務ストラクチャー検討など、スポット案件は数十万円〜数百万円と幅があります。費用が変わる要因は対象国数・取引の複雑さ・業務種別です。依頼前に業務範囲と費用を書面で明示してもらうことが、後のトラブル防止につながります。なお、費用相場の詳細は以下の記事も参考にしてください。
まとめ
国際税務に強い税理士は絶対数が少なく、「得意な論点」も税理士ごとに大きく異なります。海外取引の開始前・契約前から相談することが、源泉徴収漏れや租税条約の適用失敗を防ぐ最善策です。現在の顧問税理士との役割分担も含め、自社の取引内容に合った専門家を選ぶことが重要です。税理士紹介センタービスカスでは、30年・40万件以上の紹介実績をもとに、国際税務に強い税理士を無料でご紹介しています。まずはお気軽にご相談ください。
