飲食店を経営していると、「経理作業に追われて本業に集中できない」「原価率や売上管理が十分にできていない」など、さまざまな悩みが尽きません。
結論から言えば、飲食店経営において税理士のサポートは“必要”です。本記事では、飲食店経営者が税理士を活用するメリット・デメリットや、依頼すべきタイミング、さらには飲食業に強い税理士の選び方まで網羅的に解説します。
目 次
飲食店では税理士は必要ないのでは?
飲食店の開業を考えているものの、「別に税理士は必要ないのでは?」と迷っている方は少なくありません。
同じ飲食業でも、個人事業で営む場合と法人をつくる場合(会社設立・法人化)があります。
法人化を選ぶ最大の理由は、所得が一定の水準(目安として年間所得が800万円前後)を超えた場合、法人化した方が節税できるからです。このような事業規模では、顧問税理士との契約が一般的です。
しかし、個人事業で飲食店を営む場合でも、税理士のサポートは経営の安定性に大きく貢献します。特に開業初期は、適切な経理体制の構築が将来の成長の鍵となります。
個人事業でも、青色申告にするのであれば税理士との契約は必須
開業時の資金は限られているため、できるだけ経費を抑えたいという思いは当然です。しかし、税務関係を自己処理することで失うものも少なくありません。以下に具体的なメリットを見ていきましょう。
青色申告と白色申告、それぞれに税理士をつけるメリットがある
個人事業主の確定申告方式には、青色申告と白色申告があり、それぞれの特徴を理解することが重要です。
青色申告では最大65万円の特別控除が適用可能です。これは年間で見れば大きな節税効果となりますが、申告にあたっては以下の要件を満たす必要があります。
- 複式簿記による日々の記帳
- 決算書類の作成
- 期限内の確定申告書の提出
- 事業用の資産と個人用の資産の区分管理
一方、白色申告は比較的シンプルですが、以下の業務は必須となります。
- 日々の売上・経費の記録
- 領収書等の証憑書類の保管
- 月次での売上集計
- 確定申告書の作成と提出
これらの業務を全て自身で行うとなると、1日あたり30分から1時間程度の作業時間が必要となります。この時間を接客や店舗運営、メニュー開発といった本業に充てることで、売上向上や顧客満足度の改善につながる可能性が高くなります。
税理士に依頼することは、単なる「経費」ではなく、経営を支える重要な「投資」と考えることができます。
飲食店経営者が税理士を検討するきっかけとなる課題
飲食店を経営していると、日々の店舗運営に加えて次のような悩みに直面することが少なくありません。
- 利益率や売上が思うように伸びない
- 原材料費や人件費の高騰に経営が圧迫されている
- 複雑な経理や帳簿付けに追われ、本業に集中できない
- 税務調査のリスクが不安で、帳簿管理に自信が持てない
- 資金繰りや融資に関する知識が不足し、金融機関との交渉に不安がある
- 補助金・助成金の制度は多いが、最新情報や申請方法が分からない
- 店舗ごとの収支や損益を正確に把握できず、戦略的な経営判断が難しい
これらの課題は一つひとつは小さく見えても、積み重なることで経営者の大きな負担となります。実際に、「経理や税務に時間を割かれるより、本業に集中したい」と考え、税理士のサポートを検討する飲食店オーナーは増えています。税理士に依頼することは、単なる税務処理の外注ではなく、こうした悩みを根本から解決し、経営を安定させるための一歩となるのです。
飲食店が税理士と顧問契約をする価値とは?
中川 麻未
監修税理士からのワンポイントアドバイス
実は、飲食店は、税務調査リスクの高い業種でもあります。現金売り上げがあることや、売上除外をしている事例が多いこともあり、比較的税務調査の対象となりやすいと言われています。
税務調査に強い税理士と顧問契約をし、売上伝票や領収書の管理について指導をうけたうえで、普段から適切に帳簿をつけていくことが大切です。万が一税務調査の調査が入った場合も、税理士と顧問契約をしておくことで、税理士が窓口となりスムーズに対応できます。
また、税理士と顧問契約していることで、金融機関からの信用力もあがります。税理士との顧問契約は、単なる「コスト」ではなく、「投資」として考えるべきです。 店舗の成長と経営の安定に寄与する重要なパートナーとなることで、長期的な利益を生み出すサポートを受けることができます。
飲食店が税理士に依頼するメリット

中川 麻未
監修税理士からのワンポイントアドバイス
実は、飲食店は、税務調査リスクの高い業種でもあります。現金売り上げがあることや、売上除外をしている事例が多いこともあり、比較的税務調査の対象となりやすいと言われています。
税務調査に強い税理士と顧問契約をし、売上伝票や領収書の管理について指導をうけたうえで、普段から適切に帳簿をつけていくことが大切です。万が一税務調査の調査が入った場合も、税理士と顧問契約をしておくことで、税理士が窓口となりスムーズに対応できます。
また、税理士と顧問契約していることで、金融機関からの信用力もあがります。税理士との顧問契約は、単なる「コスト」ではなく、「投資」として考えるべきです。 店舗の成長と経営の安定に寄与する重要なパートナーとなることで、長期的な利益を生み出すサポートを受けることができます。
飲食店経営において、税理士に依頼することの価値は、単なる事務作業の外注以上のものがあります。特に飲食業特有の会計処理や経営判断において、税理士の専門知識は大きな資産となります。
税務処理の時間をなくして本業に専念できる
飲食店経営者にとって最も貴重な資源は「時間」です。先にも述べたように日々の会計処理や税務関連業務を自分で行うと、毎日30分から1時間程度の作業時間が必要となります。これらの業務を税理士に委託することで、以下のような本業への集中が可能になります。
- メニュー開発と品質向上に集中できる: 創造性を発揮し、顧客を魅了する新メニューの開発や既存メニューの品質向上に時間を投資できます。
- 接客サービスの質を高められる: お客様との対話や細やかなサービス提供に注力することで、リピーター獲得につながります。
- マーケティング活動の強化: SNSの運用や販促活動など、集客につながる活動に時間を割くことができます。
- スタッフ教育の充実: 従業員のスキルアップや教育に時間をかけることで、店舗全体のサービス品質が向上します。
- 市場調査と競合分析: 業界トレンドや競合店の動向を把握し、自店の強みを活かした戦略立案に時間を投資できます。
実際に、税理士に依頼している飲食店オーナーの多くは「本業に集中できるようになった結果、売上が10〜15%向上した」という声も少なくありません。税理士費用は単なる「経費」ではなく、時間創出と売上向上をもたらす「投資」と考えることができるでしょう。
確実な申告と税務リスクの軽減
税務申告の誤りは、事業継続に大きな影響を与える可能性があります。特に飲食業では、現金取引が多いことから税務署の注目度も高く、申告内容の正確性が重要です。
申告内容に誤りがあった場合、追徴課税として以下のようなペナルティが課される可能性があります。
- 過少申告加算税(通常10%、重加算税の場合35%)
- 延滞税(年間約8.8%)
- 修正申告のための追加事務作業
- 税務調査の可能性増加
飲食店経営に特化した節税対策
確かに会計ソフトの進化により、基本的な経理処理は効率化されています。しかし、飲食店特有の経費処理や節税方法については、専門家のアドバイスが不可欠です。例えば、
- 食材や消耗品の仕入れ時期の調整による節税
- 設備投資の適切なタイミングと減価償却の活用
- 従業員の給与体系の最適化
- 家賃や光熱費の按分方法の検討
- 在庫管理と経費計上のタイミング
これらの対策を適切に組み合わせることで、法令に則った効果的な節税が実現できます。さらに、事業の成長段階に応じて、これらの戦略を柔軟に調整していくことも可能となります。
経営改善につながる財務アドバイス
税理士は毎月の会計数値を分析することで、あなたの店舗の経営状態を詳細に把握しています。このため、以下のような具体的なアドバイスが期待できます。
- 売上高に対する原価率の適正化
- 人件費の効率的な配分
- 収益性の高いメニューの分析
- 季節変動への対応策
- 新規出店や設備投資の判断材料提供
これらの分析に基づくアドバイスは、単なる数字の管理を超えて、店舗の収益性向上と持続的な成長につながる具体的な施策となります。定期的な経営相談を通じて、より戦略的な事業運営が可能になるのです。
税務調査への専門的な対応
飲食業は税務調査の対象となりやすい業種の一つです。実地調査では以下のような点が重点的にチェックされます。
- 現金売上の計上漏れがないか
- 従業員の給与支払い状況
- 在庫の管理状況
- 個人経費との区分
- 日々の売上記録と申告内容の整合性
税理士がいれば、調査官との専門的なやり取りを任せられるだけでなく、調査対応の準備から実施まで一貫したサポートを受けることができます。また、予め税務調査に備えた帳簿の整理や、指摘を受けやすいポイントの事前確認なども行ってもらえます。
このように、税理士との契約は、単なる税務申告の代行以上に、飲食店経営の安定性と成長性を支える重要な経営判断といえます。
税理士にかかる費用はどれくらい?
上記の通り、税理士に依頼すると様々なメリットがありますが、一方で実際に税理士と契約するとなると、税理士に支払う費用(報酬)が発生します。
税理士報酬の金額は、
- 年商・年間売上高
- 税理士の訪問回数
- 依頼したい内容
の3つの要素により異なります。例えば、個人事業主の飲食業経営者の場合、具体的な費用の目安は以下の通りです。
年商・年間売上高 | 訪問回数 | 税理士に支払う料金の目安 |
---|---|---|
年商500万円未満 | 確定申告のみ | 70,000~80,000円/年 |
年商500万円以上1,000万円未満 | 確定申告のみ | 100,000円~/年 |
年商1,000万円以上3,000万円未満 | 確定申告のみ | 150,000円~/年 |
年商3,000万円以上5,000万円未満 | 3-4ヶ月に1回 | 15,000円~/月?+?決算申告料 |
年商5,000万円以上1億円未満 | 3-4ヶ月に1回 | 20,000円~/月?+?決算申告料 |
年商1億円以上 | 要相談 | 30,000円~/月?+?決算申告料 |
もちろん、上記の表はあくまで目安ですので、実際にはこれより安い料金で依頼できる税理士もいます。
ただし。安すぎる税理士には要注意
税理士選びで「できるだけ安いところにお願いしたい」と考えるのは自然なことです。しかし、報酬の安さだけで判断すると、思わぬリスクを抱えることになりかねません。
例えば、相場よりも極端に安い料金を提示する税理士の場合、次のような問題が起こる可能性があります。
- 多数の顧問先を抱えており、1件あたりの対応時間が短くなる
- 飲食業特有の原価管理や税務知識が不足しており、誤りや見落としが発生する
- 必要なときに十分な相談時間が取れず、コミュニケーション不足に陥る
- 最初は安く見えても、後からオプション料金が追加され結果的に高額になる
- 対応が形式的になり、経営改善につながる提案が得られない
税理士報酬は「単なるコスト」ではなく、経営を守るための投資です。実際に、安さだけで契約した結果、帳簿の誤りから追徴課税を受けてしまったり、資金繰りの悪化に気づけなかったというケースも少なくありません。
もちろん高額であれば必ず安心というわけではありませんが、「適正な報酬で、飲食業に精通したサポートを受けられるか」が最も重要です。安さだけにとらわれず、実績・専門性・対応力を総合的に見極めることが、長期的な経営の安定と成長につながります。
税理士紹介センタービスカスでは、飲食業に詳しい税理士を無料でご紹介しています。
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実際に飲食店が税理士に依頼できる業務
税理士に依頼できる業務は「決算や申告」だけではありません。日々の記帳や経理から、融資・補助金のサポート、税務調査対応まで、飲食店経営のあらゆる場面で役立ちます。ここでは実際にどんなサポートが受けられるのかを整理しました。
月次損益を把握するための巡回監査・定期報告
「今月は本当に黒字なのか?」「どのメニューが利益を生んでいるのか?」──経営者の感覚だけでは見えにくい数字を、税理士が毎月まとめて報告してくれます。正確な損益を知ることで、原価率の見直しや人件費配分の改善といった具体的な経営判断が可能になります。
- 例:原価率が高すぎるメニューを特定し、仕入れや価格設定を見直す
- 例:繁忙期・閑散期の売上推移を分析し、戦略を立てやすくなる
記帳代行で事務負担を軽減
仕入れや仕込み、接客に追われるなかで帳簿付けを続けるのは大変です。請求書や領収書、レジデータをまとめて渡せば、税理士が伝票入力から帳簿作成まで代行。経営者は本業に専念しながら、正確な会計データを維持できます。
- 入力ミスや申告漏れのリスクを回避
- 会計ソフトやPOSレジとの連携もサポート可能
資金繰り表や事業計画書の作成
金融機関への融資申請時には、資金繰り表や事業計画書が求められます。税理士は売上予測やキャッシュフローを踏まえた実現性のある資料を作成し、審査を突破しやすい形に仕上げてくれるのが強みです。
- 例:開業資金調達のための創業計画書を一緒に作成
- 例:2号店出店に向けた投資回収のシミュレーション
税務調査への対応
飲食業は現金売上が多く、税務調査が入りやすい業種です。税理士がいれば、事前準備から当日の立ち会い、調査官とのやり取りまで一括対応。指摘されやすいポイントをあらかじめ整理しておけるので、余計な追徴課税を防ぎ、経営者の不安を和らげます。
補助金・助成金の申請サポート
「補助金があるのは知っているけれど、情報が多すぎてよく分からない」という声もよく聞きます。税理士は最新の制度に精通しており、採択率を高める事業計画書の作成や申請手続きの代行も可能です。
- 事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など飲食業向け制度に対応
- 受給後の報告義務や経理処理もアドバイス
融資・資金調達の具体的サポート
開業資金や運転資金の調達においては、数字の裏付けが何より大切です。税理士は金融機関が重視する指標を熟知しており、通りやすい申請書類の作成や制度融資の活用を後押しします。日本政策金融公庫や自治体の制度融資なども活用しやすくなります。
このように、税理士のサポートは単なる「経理の外注」ではなく、課題解決と経営の安定を支えるパートナーシップです。実際に依頼した飲食店からは「売上と利益の見える化が進み、次の一手を打ちやすくなった」という声も多く聞かれます。
飲食業に詳しい税理士とは?選ぶポイントを解説
税理士に依頼することで様々なメリットが得られますが、その効果を最大限に引き出すためには、適切な税理士選びが重要になります。特に飲食業界特有の会計処理や経営課題に精通した飲食業の専門税理士を選ぶことで、より実践的なサポートを得ることができます。
飲食業に強い税理士の特徴
飲食業に強い税理士には、以下のような特徴があります。
- 複数の飲食店の顧問実績がある
- 食材原価の管理方法に詳しい
- 従業員の労務管理や社会保険についても知見がある
- 飲食店特有の設備投資の減価償却に精通している
- 現金取引の多い業態での売上管理のノウハウを持っている
これらの要素を備えた税理士は、飲食業界特有の課題に対して、具体的で実効性の高い解決策を提案することができます。
飲食業に強い税理士の選び方
上記のような専門性を持つ税理士を見つけるためには、以下のポイントを意識して選定することをおすすめします。
飲食業界の実績と専門知識
専門知識だけでなく、実際の飲食店サポート実績を確認しましょう。初回面談では「これまでに何件の飲食店を担当してきたか」「飲食業特有の税務上の注意点は何か」といった質問を通じて、業界への理解度を確認することが重要です。
コミュニケーション力と相性
継続的な関係となる税理士とのコミュニケーションの取りやすさは非常に重要です。質問や相談への対応の丁寧さ、経営者の考えや事業ビジョンへの理解度、月次報告や経営アドバイスの分かりやすさなどをチェックしましょう。特に繁忙期の緊急対応力も重要なポイントです。
記帳代行のサポート体制
飲食店は日々の取引が多く、記帳業務が大きな負担となります。質の高い記帳代行サービスを提供しているか、データ連携の方法は明確か、入力ミスが発生した場合の対応体制などを確認しましょう。POSレジやクラウド会計との連携経験があると、より効率的な記帳代行が期待できます。
助成金・補助金への知見
飲食業向けの各種助成金・補助金制度に精通しているかどうかも重要なポイントです。定期的に最新の補助金情報を提供してくれるか、申請書類の作成支援を行ってくれるか、過去の採択実績はどうかなどを確認しましょう。特に事業再構築補助金や持続化補助金など、飲食業が活用しやすい制度への知見は重要です。
料金体系の明確さ
税理士報酬の内訳と範囲が明確であることも重要です。月額顧問料に含まれるサービス内容、別途費用が発生する業務、年度更新時の料金変更の有無などを事前に確認しましょう。「安すぎる」料金設定には注意が必要です。明確な料金体系を提示し、サービス内容とのバランスが取れた報酬を提案する税理士を選ぶことが大切です。
初回面談では、これらのポイントを意識して質問することで、自分の経営スタイルに合った税理士を見つけることができます。長期的なパートナーとなる税理士選びは、価格だけでなく総合的な視点から判断することをおすすめします。
創業期の飲食店に必要なサポート体制
新規開業を考えている場合は、以下のような支援体制が整っているかどうかも重要な選定ポイントとなります。
- 事業計画書の作成支援
- 開業資金の調達アドバイス
- 設備投資の適正規模の判断
- 各種許認可申請のサポート
- 販売管理システムの選定アドバイス
- 従業員雇用に関する労務相談
特に創業期は、経営の土台を作る重要な時期です。この時期に適切なアドバイスを受けることで、将来的な経営リスクを大きく軽減することができます。
適切な税理士を見つける具体的な方法
飲食業に強い税理士を探す方法として、以下のような選択肢があります:
1. 税理士紹介サービスの活用
- 専門のコーディネーターによる細かなマッチング
- 複数の候補から比較検討が可能
- 紹介後のフォローアップ体制がある
- 紹介料が無料
2. 同業者からの紹介
- 実績が確認しやすい
- 業界特有の課題への対応力が期待できる
- ただし、相性が合わない場合の契約解除がしづらい
3. インターネット検索
- 多くの選択肢から検討できる
- 事務所の特徴や強みを比較しやすい
- ただし、実績や専門性の確認が必要
これらの方法を組み合わせながら、複数の候補と面談することで、最適な税理士との出会いにつながります。特に当社のような税理士紹介サービスは、経験豊富なコーディネーターが間に入ることで、より的確なマッチングが期待できます。
税理士選びは、事業の将来を左右する重要な経営判断の一つです。単に近いから、知人の紹介だからという理由だけでなく、上記のポイントを意識して慎重に選定することをお勧めします。
飲食店に強い税理士を見つけられないときは?

中川 麻未
監修税理士からのワンポイントアドバイス
飲食業に強い税理士を探すのは理想的ですが、必ずしも「飲食業専門」である必要はありません。
税理士を選ぶうえで大切なのは【コミュニケーション力】と【相性】だと思います。業種特化の経験が多少浅くても、コミュニケーションがスムーズであれば、経営の状況を深く理解し、適切なサポートが期待できます。一度面談してみて、相手に聞きたいことを聞ける雰囲気か、すぐにレスポンスが返ってくるか、という点を重視されるのが良いと思います。
税理士は税務・会計のプロフェッショナルであり、基本的な仕組みはどの業種にも共通しています。もちろん、製造業や農業など特殊な原価計算を扱う業種は専門知識が必要ですが、一般的に飲食業であれば大半の税理士が対応できるかと思います。飲食業の知識にこだわるより、コミュニケーション力や相性を優先して、信頼できる税理士を選ぶとよいでしょう。
飲食店が税理士に依頼すべきタイミング
飲食店経営において、税理士に依頼するタイミングは経営状況や事業フェーズによって異なります。適切なタイミングで専門家のサポートを受けることで、経営の安定と成長を効率的に実現できます。
開業前の準備段階
飲食店を開業する前から税理士に相談しておくと、経営の立ち上げが格段にスムーズになります。事業計画の策定、資金計画の立案、法人化すべきかどうかの判断、設備投資の適正規模の検討など、開業前の重要な意思決定を専門家の視点でサポートしてもらえるからです。
特に初めて飲食店を始める場合、許認可の申請や融資の準備など見落としやすい手続きが多く、税理士のサポートは大きな安心材料になります。
ただし、小規模店舗や開業初期で「経費をなるべく抑えたい」という場合には、会計ソフトを活用して自分で記帳・申告する方法も選択肢の一つです。最近のクラウド会計ソフトは操作性も高く、基本的な経理処理であれば自力で対応できるケースもあります。
とはいえ、店舗の成長に伴って取引が増え、経理内容が複雑になってくると、次のような課題が出てきます。
- 融資や補助金申請のために精度の高い事業計画が必要になる
- 仕入れや人件費の管理が複雑になり、数字の整合性を保つのが難しくなる
- 税務調査リスクが高まり、専門的な対応が欠かせなくなる
そのため、「開業準備段階で基本的な体制を整え、成長フェーズに入ったら早めに税理士に依頼する」のが理想的です。最初から税理士に相談しておくことで、ムダな失敗や余計なコストを避け、安心して店舗経営に専念できるでしょう。
売上が安定してきたとき
開業後、売上が安定してきた時期は、今後の経営戦略を見直すタイミングです。月商が100万円を超えるようになると、日々の経理処理の負担も増加します。この段階で税理士に依頼することで、経理業務の効率化と同時に、適切な節税対策や資金繰り改善のアドバイスを受けることができます。特に繁忙期を前に税理士と契約することで、売上増加に集中できる体制を整えられます。
事業拡大を検討する段階
2号店の出店や事業規模の拡大を検討する段階では、資金調達や採算計画の精緻な分析が必要になります。年間所得が800万円前後になってくると、法人成りの検討も視野に入れるべきタイミングです。事業拡大には資金繰りの計画や投資回収計画が重要ですが、これらは税理士の専門知識を活かした支援が大きな助けになります。
経営に不安を感じ始めたとき
売上の低迷や収益性の悪化など、経営に不安を感じ始めたときこそ、税理士に相談すべきタイミングです。問題が深刻化する前に、専門家の視点から経営状況を分析してもらうことで、原因の特定と改善策の立案が可能になります。特に資金繰りに窮する前の早期相談が重要で、金融機関との交渉や経営改善計画の策定など、事業継続のための具体的なサポートを受けることができます。
税務調査の連絡を受けたとき
税務署から税務調査の連絡を受けた場合は、できるだけ早く税理士に依頼すべきです。すでに顧問契約をしている場合は問題ありませんが、まだ税理士がいない場合でも、調査対応に強い税理士を探して依頼することは可能です。調査直前でも、事前準備のアドバイスや立会い対応を依頼することで、追徴課税のリスクを最小限に抑えることができます。
いずれのタイミングでも、早めの相談と依頼が経営リスクの軽減につながります。飲食店経営は多くの専門知識が求められる業種だからこそ、タイミングを逃さず税理士のサポートを受けることが成功への近道といえるでしょう。
まとめ
飲食店経営において税理士の存在は、単なる税務処理の代行以上の価値があります。税理士に依頼することで、本業への集中、確実な申告による税務リスクの軽減、飲食店特有の節税対策、経営改善につながる財務アドバイス、そして税務調査への専門的な対応など、経営を多角的にサポートしてもらえます。
また、補助金・助成金の申請サポートや資金調達の具体化など、資金面でのバックアップも期待できます。税理士選びでは、飲食業界の知識と経験はもちろん、コミュニケーション力や相性、サポート体制、料金体系の明確さなどを総合的に判断しましょう。
開業前の準備段階から事業拡大、経営不安時、税務調査時など、様々なタイミングで税理士のサポートを受けることで、飲食店経営の安定と成長につながります。単なるコストではなく「投資」として税理士との関係を構築し、共に事業の発展を目指すことをおすすめします。
よくある質問
飲食店の個人事業主でも税理士は必要ですか?
個人事業主の飲食店でも税理士は有効です。特に青色申告を選択する場合、複式簿記による記帳や決算書類の作成が必要となるため、税理士のサポートが重要です。また、税務処理の時間を本業に充てることで、売上向上につながります。
飲食店の税理士選びで最も重視すべきポイントは何ですか?
飲食業の経験と知識、そしてコミュニケーション力が重要です。複数の飲食店顧問実績があり、食材原価管理や現金取引の管理に精通していることが理想的です。しかし最終的には、コミュニケーション力と相性が良好な税理士を選ぶことが長期的な関係構築には欠かせません。
税務調査が入る可能性がある飲食店は、どのように対応すべきですか?
飲食店は現金取引が多く税務調査の対象になりやすい業種です。普段から税務調査に強い税理士と顧問契約し、売上伝票や領収書の管理について適切に指導を受けておくことが重要です。万が一調査が入った場合も、税理士が窓口となってスムーズに対応できます。
飲食店の補助金・助成金申請でも税理士は役立ちますか?
はい、大いに役立ちます。飲食店向けの補助金や助成金は種類が多く複雑ですが、税理士は最新情報に精通しています。特に事業再構築補助金や持続化補助金など、飲食業向け制度の申請サポートや、採択率を高める事業計画書作成を支援してくれます。
飲食店が税理士に依頼する最適なタイミングはいつですか?
開業前の準備段階が最も効果的です。事業計画や資金計画の立案、個人事業と法人のどちらが有利かなど、重要な意思決定をサポートしてもらえます。他にも、売上が安定してきた時期、2号店出店などの事業拡大時、経営に不安を感じ始めた時も、早めに税理士に相談することで問題解決につながります。
記帳代行を税理士に依頼するメリットは何ですか?
飲食店は日々の取引が多く、調理から接客まで忙しい中で記帳業務は大きな負担になります。税理士に記帳代行を依頼することで、請求書や領収書、レジペーパーといった証憑書類を整理するだけで済み、伝票入力や会計帳票作成はプロに任せられます。専門家による会計処理で正確な損益把握ができ、経営判断の質も向上します。