自計化とは?メリット・デメリット、丸投げとの違い、注意点、成功事例を解説

自計化とは?メリット・デメリット、丸投げとの違い、注意点、成功事例を解説
公開日:
2019/03/26
最終更新日:
2022/08/23
 
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税理士事務所や会計事務所から「自計化」を勧められた経営者の方もいるのではないでしょうか。自計化とは、自社で経営処理に必要となるデータを会計ソフトなどに入力し、運用していく方針のことを指します。
今回は、自計化について、メリット・デメリットを紹介しながら、自計化するべき会社とそうでない会社を見極めていこうと思います。

税理士との付き合い方の変化

税理士事務所や会計事務所が顧問先で自計化を推し進めるようになってきている背景には、入力負担の少ない会計ソフトや、入力データを一元管理できるクラウド型会計ソフトなどの登場があります。

従来の税理士との付き合い方

現在のようにパソコンが普及し、会計ソフトが発達する前は、1台あたり100万円を超える高価な会計用コンピュータを使う必要があり、記帳代行を税理士に委託せざるを得ないのが実情でした。
そのため当時の中小企業にとって、経理処理の手順は、

  • ①手書きの伝票、帳簿など必要な資料を税理士に渡す。
  • ②預かった資料を基に、税理士が手入力で記帳業務、仕訳入力などの経理事務を行う。
  • ③税理士が、入力したデータを基に試算表を出力し、顧問先へ返却する。

というのが一般的でした。

自計化とは

一方で自計化とは、上で示した②の部分を、自社で行うことを言います。つまり、領収書や請求書などの伝票の整理から記帳業務、仕訳入力といった経理事務まで全て自社で行うことを指します
最近では会計ソフトが充実し、使いやすく改善されてきたこともあり、全てを税理士に任せなくても、経理知識を一通り学習すれば、このような経理業務もやりやすくなりました。

自計化を行うメリット

自計化を行うことによって、従来の税理士との付き合い方が変わり、経理業務は次のような手順になります。

  1. 自社で領収書や請求書を整理し、会計ソフトに直接入力する。
  2. 入力したデータを税理士に送り、それを税理士がチェックし、必要に応じて訂正を行う。
  3. 訂正したデータをもとに試算表を出力し返却する。

このように自計化することによって、税理士の業務工数が減るので、記帳代行手数料を削減することが可能になります。他にも次のようなメリットが挙げられます。

“今の経営状況”を把握できる

コンピュータを使ってスピーディーに表計算や分析ができるため、現在の経営状態や業績をタイムリーに把握することができます。
従来の方法ですと、税理士から試算表が送られてくるのが2,3ヶ月後になるなど、タイムラグが生じてしまうことが多々ありました。このことによって、銀行融資を受けたいと考えているときに、直近の試算表を準備できないなどの不都合がありましたが、自計化をすることによってこのような課題を解決することが可能になります。

資金繰りや経営方針の決定がしやすくなる

例えば「今月新しい設備を導入しようと考えているが、資金繰りは大丈夫だろうか」などと考えたとき、今の経営状況を正確に把握できているので、税理士に資金繰りなど、専門的な内容の相談もしやすくなります。
更に、先々の業績や経営状況を見立てやすくなり、経営方針の変更に伴う判断や対策が見えやすくなります。

経理状況の把握・整理がしやすくなる

自社で経理処理を行っているため、心当たりのない取引や入出金がある場合、それを見つけやすくなり、原因を探ることができます。

自計化を行うデメリット

自計化を行うと様々なメリットがあるのは確かですが、全ての会社が自計化を行うべきかといえば、一概にはそのようには言えません。ここでは自計化を行うとどのようなデメリットが想定されるのかを解説します。

自社の経理の負担が増えてしまう

当然、自社で会計ソフトに打ち込む工数がかかるので、経理の負担が増えてしまいます。慣れてしまえば1週間に2、3時間もかからない作業で済むのですが、自計化のノウハウがなかったり、会計ソフトの使い方が分からなかったりすると予想以上に時間や手間がかかってしまい、経理に大きな負担がかかってしまいます。
また、中には経営者自身が経理の業務もやっている人もいるでしょうから、そのような人はなかなか経理に時間を割くことは難しく、自分の負担を増やしてしまうデメリットとなってしまいます。

専門的な知識の習得に時間を要してしまう

経理業務を行う上で、ある程度の知識は習得しなければなりません。普段数字を扱っていない人がやろうとすると、負担が増え、本業に集中できなくなってしまうという可能性が考えられます。

会計事務所の顧問料の削減・サービスのクオリティ向上に繋がらない場合がある

会計事務所にとって、顧問先の企業に自計化を導入してもらうことは、事務所の工数が削減されるというメリットがあります。会計事務所の都合ばかりを押し付けて、自計化を導入させたのにもかかわらず顧問料を削減しなかったり、空いた工数分がサービスの付加価値の向上に繋がらなかったり、というケースもあります。

自計化に向けて設備費用がかかってしまう

会計ソフトを導入する上で、パソコンと会計ソフトを購入しなければなりません。一方で、Money Forwardやfreeeなどの無料から始められるクラウド型会計ソフトや、弥生会計など数万円で購入可能なインストール型の会計ソフトなど様々出回っています。

自計化をする前に考えるべきこと

自計化する目的を考える

これまで自計化のメリットとデメリットを見てきましたが、どのような会社が自計化をするべきなのでしょうか。そのためには、自計化をする目的をしっかり把握する必要があります。
自計化をする最大の目的は、「会計処理したデータを経営に活かす」ということです。当然、経理処理を行ってアウトプットされる試算表や決算書が読めなければ経営方針に活かすこともできませんし、自計化によって増える自社の負担が、メリットよりも大きく感じられるようならば今は導入するべきではありません。

つまり、ある程度事業が波に乗って経営者や経理担当者に余裕が出てきて、事業をさらに伸ばす際の経営方針を練るための材料が必要になったとき、自計化を導入するかを検討するべきだろうと考えます
特に事業をはじめて間もないスタートアップの会社の経営者は、本業に集中して取り組んだほうが良いでしょうから、余裕がないうちは税理士に丸投げで経理を任せたほうが良いということも考えられます。

自計化を導入する上で必要なポイント

自計化を導入する際に、気をつけるポイントを紹介します。まずは経理担当者や経営者の作業量や負担がなるべく増えないような体制構築を視野に入れながら進める必要があります。税理士に決算書の読み方を教えてもらったり、自計化導入支援を受けたりしながら進めて行くと良いでしょう。
次に、資金繰りや節税対策など、より専門的で高度な提案を行ってもらえるような体制づくりを行いましょう。決算書類等の分析、経営指導・助言など、せっかく税理士から良い提案を受けても、それを実行に移せるような体制がなければ宝の持ち腐れになってしまいます。

自計化を導入するべき会社と経理を丸投げするべき会社

本項では、自計化を導入して成功した事例と、税理士に経理を丸投げして事業が波に乗った事例を紹介します。

自計化成功例(建設業)

事業内容:土木
新規会社設立
顧問料:年間25万円

Aさんは土木業の会社を設立しましたが、設立から半年後、4名の従業員のうち2名が辞めてしまうことになり、月220万円あった売上が月100万ほどまで下がってしまう見込みになってしまいました。当時はまだ顧問税理士はいなかったので、当社から新規で税理士を紹介させていただきました。苦しい経営状況だったので、売上に専念するために、税理士に記帳代行からお願いしました。
経理に関しては税理士が全てフォローし、Aさんは本業に打ち込むことができました。その結果、徐々に売上を伸ばし、事業が波に乗ってきて、半年後には月300万円の売上を出すことができました。Aさんは税理士から決算書の読み方などを少しずつ教えてもらい、自計化できるような体制を構築し始めました。
さらに半年後、Aさんは自計化を導入し、「ボーナスを与えて節税対策をする」など、税理士からこれまでより専門的で高度なアドバイスを受けられるようになりました。

丸投げ成功例(医療業)

事業:訪問診療専門クリニック
創立:2年
顧問料:月8万円/決算料15万円

Bさんはクリニック創立当初から顧問税理士を雇っていたのですが、訪問すると言ったのにもかかわらず来なかったことが何度かあり、コミュニケーション不足を感じていました。そのため、法人化の手続きを進めていたので、このタイミングで税理士を変更しようと検討していました。
法人化の手続きに加え、半年後に分院の開業も予定していたため、本業が忙しくなると考え、経理は丸投げを希望していました。以上のような条件を踏まえた上で、当社から広域医療法人に理解がある会計事務所の税理士を紹介させていただきました。
当時課題であったコミュニケーション不足も解消され、税理士に経理を丸投げできた分、Bさんは本業に専念することができ、法人化や分院の予定もスムーズに進み、クリニックは順調に利益を出すことができました。

まとめ

自計化を導入することのメリットは十分大きいですが、会社の状況によっては丸投げのほうが、事業が成功することもあります。自計化導入を検討する際は、導入するメリットとデメリットを比べて、十分なメリットが得られるかどうかを考えましょう。

この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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