税理士と顧問契約を結ぶってどういうこと?
そのメリット・デメリットを解説

税理士と顧問契約を結ぶってどういうこと?  そのメリット・デメリットを解説
公開日:
2019/07/16
最終更新日:
2024/03/19
 
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税理士にサポートを頼む場合には、事業や資産、相続に関する税務申告などをスポットでお願いする場合と、顧問契約を結ぶ場合があります。
後者がいわゆる顧問税理士なのですが、顧問契約はどうやって結べばいいのでしょうか?そのメリット・デメリットは?わかりやすく解説します。

あらためて「顧問税理士」とは?何をしてくれるのか?

顧問税理士が必要なのは、普通、個人や会社で事業をしている人です。会社を起こした場合には、多くの人が税理士と顧問契約を結ぶことになります。
では、彼らは何をしてもらっているのでしょう? 実は「みんな同じ」ではありません。会社の状況や社長の求めるものなどによって、それぞれ税理士の仕事は違います。何をどれだけやるのかで、支払う料金(税理士顧問料)も違ってきます。

税理士の仕事内容とは

そもそも税理士法には、その「独占業務」として、次の3つが定められています。

  • 税務代理
  • 税務書類の作成
  • 税務相談

税理士資格を持たない限り、これらを他人に対して行うことはできません。

1.税務代理

税務代理とは、税理士が納税者に代わって所得税や法人税・相続税の申告等、税に関するあらゆる手続きを行う業務のことです。以下のようなものが税務代理業務にあたります。

  • ・確定申告
  • ・青色申告の承認申請
  • ・税務調査の立会い
  • ・税務署の更生・決定に対する不服申し立て

2.税務書類の作成

税務署等へ申告・提出するための書類の作成も税理士の仕事です。税務署類とは例えば以下のようなものを指します。

  • ・各種確定申告書
  • ・青色申告の税務書類
  • ・決算書・中間決算書
  • ・相続税申告書
  • ・源泉所得の納付書
  • ・年末調整
  • ・法定調書

3.税務相談

税理士法によると「税務官公署に対する申告や主張、陳述、申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずること」とされています。具体的には節税対策や納税に関する相談を受けて、適切なアドバイスを行うことです。
税理士の仕事は、当然、「税務」が中心になります。ただ、ひとくちに「税務相談」と言っても、その中身は多岐にわたります。
顧問税理士は、会社の状況を客観的にとらえたうえで、他の顧問先の経験なども踏まえた経営面でのアドバイスを提供することもできるわけです。

この他、経理代行・記帳代行業務や給与計算業務、税務や経営に関するコンサルティング業務等も税理士に依頼することが可能です。これらは税理士の独占業務ではありませんが、専門知識を持つ顧問税理士にあわせて依頼することが多いです。

税理士と公認会計士の役割の違いは

税理士と同様に税務・会計業務を中心として行う職業に公認会計士があります。どちらも日本の国家資格で混同されやすいですが、いったい何が違うのでしょうか?税理士と公認会計士の役割の違いについて説明します。

社会的役割の違い

税理士と公認会計士の大きな違いは、それぞれの独占業務の内容です。税理士の3つの独占業務については先述しましたが、これに対して公認会計士法で定められる公認会計士の独占業務には「会計監査」があります。税務のエキスパートである税理士に対し、公認会計士は会計監査のエキスパートであるといえます。

「会計監査」とは、企業の成績表といわれる財務諸表が適正に作成されているかどうかを第三者の立場からチェックする業務のことです。金融機関や投資家が融資・投資の判断を行うために必要な指標となります。監査を受ける義務があるのは大会社(資本金5億円以上、または負債が200億以上の会社)等のため、主なクライアントは上場企業を中心とした大企業となるという点も、法人・個人を問わず税金を納める必要のある方すべてがクライアントとなる税理士と異なるところです。

どちらに依頼するのがよいか?

公認会計士は、税理士登録をすることで税務業務を行うことも認められていますので、税理士として税務業務を行うことが可能です。では、顧問契約をする際はどちらに依頼するのがよいのでしょうか?

税理士は監査業務を行うことができないため、上場企業や上場を目指している場合には公認会計士へ監査を依頼する必要があります。ただし、中小企業の場合は公認会計士による監査を受ける必要がほとんどないので、あまり意識する必要はないでしょう。
一般的に税理士の方が税務に関する経験や知識が豊富であるといわれています。中小企業や個人事業主が節税相談や税務処理を依頼したい場合には、税務のエキスパートである税理士が強い味方になってくれるかもしれません。
もちろん、税理士も公認会計士も個人によって得意分野に違いがありますので、事前に確認しておくことをおすすめします。

税理士と顧問契約を結ぶ4つのメリット

顧問税理士をつけると様々なメリットが考えられますが、ここでは下記の4点にまとめて解説していきます。

  • ・「会社のお金」についての適切なアドバイスが受けられて、節税も実現できる
  • ・煩雑な経理・税務申告業務などから解放されて、経営に専念できる
  • ・対外的な信用度が高まる
  • ・税務調査にも安心して臨むことができる

「会社のお金」についての適切なアドバイスが受けられて、節税も実現できる

事業を安定的に進めていくためには、毎年確実に手元に資金を残し、増やしていくことが大事です。「お金のプロ」である税理士からそのためのサポートを受けられるのは、大きなメリットです。税理士に決算書を見てもらい、収益性や安定性を客観的な目線からアドバイスをもらい、一緒に組み立てていくことができます。

また、節税できたはずなのに見逃した、反対に「やりすぎ」て追徴課税(※1)を課せられた、といったリスクを回避できるのも、大きなメリットと言えます。

※1 追徴課税:申告漏れや、脱税の目的で本来支払うべき税金よりも納税した金額が少なかった場合に、追加で税金を支払うこと。

煩雑な経理・税務申告業務などから解放されて、経営に専念できる

特に個人事業や小規模の会社の場合、帳簿付けなども含めて税務に関する作業を税理士に「丸投げ」すれば、そのために費やしていた時間やエネルギーを100%仕事に振ることができるでしょう。経理担当者を置かずに済み、その分のコストを削減することも可能になります。

対外的な信用度が高まる

顧問税理士が付いていれば、財務状況についての金融機関や取引先の信用度は高まります。個人が税務申告した書類と税理士の判が押されているものとでは、税務署の印象も変わるでしょう。

税務調査にも安心して臨むことができる

申告に疑問がある場合、税務署は任意で調査に入ることがあります。顧問税理士がいる場合、調査の連絡はまずその税理士に入ります。事前の書類の準備や調査当日の立ち合いなども頼めるため、心理的負担から解放され、税務署の言いなりで税金を取られ過ぎるといった事態も回避できます。
税務調査にスポットで対応してくれる事務所もありますが、「自分のことをよく知ってくれている」税理士ならば、より心強いのではないでしょうか。

 

税理士と顧問契約を結ぶデメリットはコスト(顧問料)

一方、デメリットもあります。ズバリ、コストがかかることです。
顧問契約を結ぶ場合、税務申告に関わる報酬とは別に、月額の顧問料を支払わなくてはなりません。顧問料は売上規模や事業所への訪問回数、作業量、事務所の定めるオプションの利用などによって違ってきますが、おおむね法人で月額30,000円~、個人の場合は15,000~30,000円程度が相場となっています。年間にすればけっこうな出費になります。顧問契約を行うか、契約した場合にどこまで頼むのかは、今説明したメリットとの見合いで考えていく必要があるでしょう。

また、顧問契約を結ぶ際の注意点としては、しっかりと税理士を選ぶ必要があるということです。顧問契約のメリットを説明してきましたが、これらは顧問税理士に依頼主の要望に応えられるだけの資質が備わっていることが前提です。あれこれ質問しにくい先生だったり、十分な業界知識などを備えていない税理士だったりすると、逆に事業の足かせになる危険性がゼロではないのです。

顧問契約に必要な費用感

税理士と顧問契約を結ぶ場合は、顧問料が発生します。税理士顧問料は、法人か個人事業主か、また事業規模、業種・業態、依頼する業務の範囲や訪問の回数、相談の頻度等によって決定・変動します。

一般的な税理士顧問料の相場としては法人で月額30,000円~が目安とされています。加えて、「記帳代行」や「給与計算」「年末調整」業務は、通常の顧問業務とは別にオプションとして提供されることが多く、基本の顧問料にこれらのオプション費用を追加した金額が、税理士へ月々支払う顧問料の金額になります。また、決算時には別途決算料が発生します。決算料は月額顧問料の約4~6ヶ月分が一般的といわれており、年額100,000円~が相場といわれています。

事業の売上が大きくなれば取引数も多くなり、税理士の業務量や責任も大きくなるため顧問料も高くなる傾向がありますし、さまざまなオプションを追加すればその分顧問料も高額になります。料金設定は事務所によって異なりますので、比較・検討してみることをおすすめします。

個人事業主は税理士と顧問契約をすべき?

個人事業主の場合、経費処理もシンプルなケースも多く、顧問税理士が必要かどうか迷う方も多いでしょう。決して安くはない顧問料が財務を圧迫してしまうのでは本末転倒ですから、そこは慎重に検討しなければなりません。

頼む必要の無いケース・必要のあるケース

あえて顧問税理士が必要の無いケースから述べれば、それは「売上規模がまだ小さく、事業主に会計、経理に関するスキルが、ある程度はある」状況と言えるでしょうか。売上が小さければ、申告に必要な作業の一定部分は自分で対応出来るからです。
しかし、事業規模が大きくなって、そうした作業に手足を取られるような段階になった場合には、思い切って顧問契約に踏み切ったほうがいいかもしれません。

顧問税理士をつける売上の目安は1,000万円

もちろん業種や事業の状態などによって異なりますが、顧問税理士を頼む売上規模の1つの目安は、1,000万円と言われています。ちなみにこれは、個人から法人に切り替えるべきタイミングでもあるのです(※2)。

※2 個人=所得税、法人=法人税の税率の関係上、後者の方が有利になるため。

税理士事務所と税理士法人の違いとは

税理士法人と税理士事務所は何が違うの?と疑問を持たれる方も多いかと思いますが、業務内容に違いはありません。税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つの独占業務がメインになります。

税理士事務所 税理士法人
形態 個人事業主 法人
有資格者数 代表が税理士なら開業可能 2名以上の税理士の所属が必要
支店 支店展開できない 支店展開できる
代表が業務を行えなくなった場合 事務所を閉鎖(サービス停止) 組織運営は継続できる

税理士事務所と税理士法人の違いは、「個人事業主」か「法人」か、という点です。
税理士事務所は、税理士が「個人事業主」として運営しています。一方、税理士法人は税理士法に基づき2名以上の税理士を社員として共同で設立した「法人」です。税理士法人は会社として組織化されており、支店を展開することが可能です。そのため、一般的に事務所としての規模が大きくなる傾向にあります。

ちなみに税理士事務所と会計事務所の違いに関しては、名称(呼び方)の違いのみで、この両社について組織形態や仕事内容に特別な違いはありません。税理士事務所の通称が会計事務所であると考えてよいでしょう。

税理士事務所と税理士法人、どちらに顧問を依頼すべきか?

前述したように、税理士事務所と税理士法人も税理士の行う業務内容に大きな違いはありません。

税理士事務所は税理士が1人で運営しているため、所長である税理士に直接対応してもらえます。同じ「経営者」としての目線からアドバイスがもらえたり、意思決定が早いというメリットがあります。また、比較的料金に柔軟性がある場合も多いといえます。その一方で、税理士が事故や病気・高齢になった等の理由で業務が行えなくなった場合にサービスが停止してしまうという点や、税理士が1人で対応できるサービスの範囲には限界がある、という点はデメリットとして考慮しておくとよいでしょう。

税理士法人に依頼する際のメリットとしては、税理士が複数名在籍しているため、不測の事態が発生しても組織としてカバーできる体制が整っているという安心感があります。また、税理士法人にはさまざまなスキル・経験を持った税理士・スタッフが在籍しているので、複雑な案件等多様なケースに対応することが可能です。一方で、税理士に直接対応してもらえない可能性がある点や、個人で運営する税理士事務所に比べて意思決定に時間がかかる点はデメリットとなる場合があります。

どちらもメリット・デメリットがあり、各事務所によっても得意分野が異なるので、自社の状況やニーズにあった事務所を選ぶことが一番大切です

税理士と顧問契約を結ぶまでの流れ

では、実際に税理士と顧問契約を結ぶ場合はどのような手順で進めるのでしょうか?せっかく顧問契約を結ぶのであれば、能力はもちろん人柄なども含めて、それにふさわしい税理士に出会いたいものです。チェックしておくべきポイントもあわせてご紹介します。

1.要望を整理して税理士を探す

税理士と顧問契約を結ぶ前にまず、税理士にどんな業務を依頼したいのか、その目的と内容を明確にしておきましょう。「帳簿付けから丸ごとすべてをお任せしたい」「節税対策のアドバイスが欲しい」「法人化を検討している」…など事業の規模や状況によってそれぞれ異なります。税理士にサポートを頼みたいポイントをまとめておくと探しやすくなります。

税理士によって、経験や得意分野は異なるので、自社の規模や業種・要望にマッチする税理士を探す必要があります。インターネットで検索する・知り合いに紹介してもらう・近所の税理士に問い合わせる…など探し方もいくつか方法がありますが、自社にとっての「いい税理士」とはどのような税理士なのか…迷ったら、税理士紹介サイトを活用するのも1つの方法です。

2.税理士と面談をする

顧問契約したい税理士が見つかったら面談を行います。この面談の際に疑問点などをクリアにしておくことが大切です。以下のようなポイントを抑えておきましょう。

  • ●依頼できる業務内容・範囲
  • ●打ち合わせ・訪問頻度
  • ●顧問料が適正かどうか
  • ●オプション業務の内容や価格
  • ●自社の業界への理解があるか
  • ●コミュニケーションツール(手段)
  • ●人柄や相性面 など

 
基本契約でどこまでフォローしてもらえるのか?オプション業務の料金はどのくらいか?もし年度の途中で解約したら、違約金は発生するのか?なども含めて、きちんと詰めておきましょう。もちろん、条件面だけではなく相性がいいかどうかも面談で見極めましょう。経営のパートナーとしてコミュニケーションがとりやすかったり、相談がしやすい相手かどうかも顧問税理士を選ぶ際のひとつの指標となります。

3.税理士報酬の見積書を取る

面談が終わったら、見積もりや具体的な業務内容を提示してもらうことができます。面談時に相談した内容が反映されているか見積書を確認し、業務内容を追加・変更したい場合や、税理士報酬が高いと感じる場合などは交渉をしましょう。双方が納得出来たら契約へ進みます。

4.顧問契約を交わす

いよいよ顧問契約を結びます。顧問契約書を交わしましょう。

顧問契約書の書式に特に決まりはありませんが、おもに以下のような内容を記載します。

  • ●税理士へ依頼できる業務内容
  • ●税理士顧問料と支払方法
  • ●オプション業務の料金
  • ●契約期間と解除方法 など

 
税理士に顧問業務を依頼する際、契約書を交わさず口頭で依頼を行うケースも存在します。しかし、契約内容が曖昧になることで後々トラブルに結びつく可能性があります。トラブルを回避するためにも顧問契約書を交わすことをおすすめします。

まとめ

事業展開を、数字の面でフォローしてくれる顧問税理ですが、「誰でもいい」というものではありません。自分のニーズを明確にして、それに応えられる人を選ぶことが、なにより大事になります。

この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
税理士紹介センタービスカスは、 株式会社ビスカスが運営する、日本初の「税理士紹介サービス」サイトです。 税理士をお探しの個人事業主や法人のお客様に対して、ご要望の税理士を無料でご紹介しています。
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