世の中にはこれだけ税理士がいるのだし、いつでも仕事を頼めるだろう。お金を払うのだから、無理を聞いてもらって当然――。あなたは、そう考えてはいませんか?
しかし、そのように思い込んでいると、意に反して仕事を受けてもらえなかったりして、慌てることになるかもしれません。今回は、依頼する側が気づきにくい「税理士に断わられる理由」を考えます。
目 次
税理士業務は「ビジネス」、税理士も「人間」です
あなたは、どんな相手、取引先と仕事をしたいでしょうか?例えば…
- 仕事に見合った対価を間違いなく支払ってくれる
- 仕事上の依頼に快く応じてもらえる
- 約束、期限をきちんと守る
- 話が明快で、対応がしやすい
- 相性が合っていて楽しく仕事ができる
こんな人と仕事ができるのが理想ではないでしょうか。裏を返すと、そうでない人との仕事には、なかなか辛いものがあるはずです。
税理士も、同じ感覚でクライアントに対しています。税務申告も税務相談も、税理士にとってはビジネスであり、同時に先生1人ひとりは感情を持った人間です。考えてみれば当たり前のこの事実を、まずはしっかり認識しておく必要があるでしょう。そうした基準に合致しない場合には、仕事を受けてもらえない、あるいは契約を解除されてしまった、といったこともあり得るわけです。
解約を防ぐために避けたいNG行動
では、具体的にどんな行動、対応が問題になるのでしょうか?
報酬をきちんと払ってもらえない、値切る
従業員の賃金や取引先への支払いに比べ、税理士の顧問料は「後回し」になりがちです。しかし、労力を提供している税理士の側からすれば、「ちょっと待ってください」というお話。顧問料を長く滞納するような甘えは禁物です。
仕事を依頼する際に、あまりにも安い報酬を提示したりすれば、そもそも受けてもらえない公算大。高すぎる報酬を支払う必要はありませんが、大まかな相場を踏まえたうえで、交渉するようにすべきです。税理士への適正な報酬は、必要な出費と考えてください。
「とにかく、税金は払いたくない」という姿勢に終始
税理士が節税のために働くのは、当然のこと。でも、それには「法律の範囲内で」という但し書きが付きます。にもかかわらず、「プロなのだから、そこをうまくやって税金を安くできるだろう」と度を越した要求をすれば、税理士に嫌がられるのは必至。「今まで税務署にバレなかった」「みんな同じようなことをやっている」といった態度で迫るのは論外です。
万が一、不正に加担したことが発覚すれば、彼らは仕事を失いますから、まともな税理士がそうした要望に従って行動することはありません。
頼んでも資料、データをなかなか出してくれない
申告書の作成も税務相談も、決算データの資料が税理士の手元に届かない限りは始まりません。催促してもなかなかもらえずに、申告が近づいてから未整理のまま送られてくるということが続けば、「このお客さまは今年限りにしたい」ということになるかもしれません。
連絡が取りにくい、対応が遅い
顧客からもらった資料に不備があったり、あらためて質問したい項目が発見されたりするのは、珍しいことではありません。そういうときに、電話やメールで連絡を取ろうとしても、なかなかつかまらない・返信をお願いしているのに一向にレスポンスがない…というのも困ってしまいます。
申告期限が迫っている場合には、なおさら。しっかり節税してもらうためにも、最低限のビジネスのマナーを守る必要があるでしょう。
「急に頼まれても無理」というケースもある
税理士に新たに仕事を頼もうと思ったのに、断られてしまった…。それには、先述の理由の他に、そもそも物理的に困難だ、という場合があります。
確定申告シーズンの依頼には要注意!
典型的なのが、個人事業主などが所得税の確定申告が近づいてから、申告作業などを依頼するケースです。確定申告では、通常2月16日~3月15日の間に、前年分の所得を申告することになっています(※)。
ただし、これは、あくまでも「税務署が申告書を受け付ける期間」つまり、「納税者が申告書を提出する期間」です。申告に向けた会計事務所の作業は、すでに前年の末頃からピークを迎えているのです。
多くの税理士は複数の顧問先を抱えていますから、ピークに入ってから新規の方の申告を請け負うのは、ハードルが高い。受けてもらえても、割増の報酬を支払わなくてはならないこともあります。
まとめ
いい税理士を選ぶのは、大事なこと。ただし、同時に税理士も「いいお客さん」を求めています。WinWinの関係を築いて存分に力を発揮してもらうためにも、相手の身になって考える姿勢が大事になるでしょう。