保険外交員・生保レディの税金と確定申告
ポイントと注意点を解説

保険外交員・生保レディの税金と確定申告  ポイントと注意点を解説
最終更新日:
2025/12/18
この記事の監修者
樽澤岳一郎税理士事務所
代表 樽澤岳一郎(税理士)
 
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保険会社と業務委託契約を結び、保険への加入の勧誘などに従事する保険外交員・生保レディの方は、原則として所得税などの「確定申告」をする必要があります。この確定申告は、やり方によって納税額(節税額)に大きな差が出るばかりでなく、怠ったり間違ったりするとペナルティの対象になることもありますので、注意しなくてはなりません。確定申告のポイントを解説します。

所得税の確定申告とは?

業務委託契約で働く保険外交員は確定申告が必要です。雇用契約(正社員・契約社員)の場合は会社が年末調整をしてくれますが、個人事業主は自分で所得を申告し納税します。2025年分(1月1日~12月31日)の所得は、2026年3月16日(月)までに申告。無申告や過少申告には無申告加算税・延滞税などのペナルティが課されます。所得税は「収入-必要経費-所得控除」で計算される課税所得に税率を掛けて算出するため、経費計上が節税の鍵です。

個人事業主は確定申告が必要

保険外交員の働き方には、

  • ①雇用契約を結んだ「正社員」「契約社員」
  • ②業務委託契約を結んだ個人事業主

の2つがあります。
収入は、①は「固定給(給与)+歩合(報酬)」の形態が基本です。一方で②は「完全歩合制」であることが多いですが、固定給+歩合の形態もあります。

①の場合は、所得税、住民税が毎月の給与から源泉徴収(天引き)され、毎年、年末調整で払い過ぎや不足分が調整(還付、徴収)されます。いずれにしても、社員(従業員)に関しては、これらの納税を本人に代わって会社がしてくれますから、原則として確定申告は不要です。
②の場合は、源泉徴収はされますが、年末調整はしてもらえません。個人事業主の場合には、税務署に自分で申告し、納税する必要があるのです。

正社員・契約社員の場合 個人事業主の場合
契約形態 雇用契約 業務委託契約
収入 固定給+歩合給が基本 完全歩合制
または固定給+歩合給
源泉徴収 あり あり
年末調整 あり なし
確定申告 不要 必要
※上記はあくまで一般的な保険会社の場合です。

確定申告では、期限までに所得を申告する

確定申告は毎年1月1日~12月31日の所得と税額を確定し、翌年3月15日までに申告する制度(3月15日が土日祝日の場合は翌営業日)。2025年分の所得は、2026年3月16日(月)が申告期限です。申告書は税務署窓口への持参、郵送、またはe-Tax(電子申告)で提出できます。期限内に申告できない場合、延滞税や無申告加算税が課されるため、余裕を持った準備が必要です。

確定申告をしないとどうなる?

確定申告の必要があるのに行わなかったり、申告した税額が少なかったり、意図的に所得を隠したりしたことが発覚すると、未納付分を支払うだけでは済みません。状況に応じて「無申告加算税」「過少申告加算税」「重加算税」さらには「延滞税」といったペナルティが課せられることになります。
無申告のペナルティについては「脱税とは?節税とどう違う?バレたらどうなる?脱税についてわかりやすく解説 」でより詳しく解説しています。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
反対に税金の払い過ぎが分かった場合には、税務署に対して「更正の請求」という手続きを行うことで、原則として5年間は還付してもらうことができます。
樽澤岳一郎税理士事務所
代表 樽澤岳一郎(税理士)

所得税計算の基本を知ろう

所得税がかかる「所得」は、「収入(売上)」とは異なります。収入から「必要経費(仕事に必要なコスト)」を差し引いたものが所得(利益)です。さらにここから各種の「所得控除」を引いたものが「課税所得」で、これに一定の税率を掛けて所得税の税額を計算します。住民税の計算も、これがベースになります。
整理すると、

収入-必要経費=所得
所得-所得控除=課税所得

となります。

所得控除には、「基礎控除」があります。令和7年税制改正により、令和7年分(2025年分)以後は所得金額に応じて基礎控除額が変動します。例えば合計所得金額が132万円以下(給与収入のみの場合は約200万円以下)の場合、基礎控除額は95万円です。132万円超336万円以下なら88万円、336万円超489万円以下なら68万円、489万円超655万円以下なら63万円、655万円超2,350万円以下なら58万円となります。所得が基礎控除額以下ならば、課税所得がマイナスになるため、所得税はゼロになります。

個人事業主の保険外交員が経費にできるのは?

節税の鍵は必要経費の確実な計上です。保険外交員が経費にできる主な費目は、顧客との商談に伴う飲食代、外回りの交通費(タクシー・電車・ガソリン代)、贈答品代、自宅事務所の家賃・水光熱費、通信費、パソコン購入費、セミナー参加費、書籍代、業務用スーツなど。プライベートと兼用の費用は「家事按分」で事業分のみ計上します。家内労働者等の必要経費の特例により、実際の経費が少なくても最大65万円まで経費計上が可能(令和7年分以後)。ただし、経費の根拠が不明瞭だと過少申告を指摘されるリスクがあるため、領収書と使途の記録を残してください。

節税の鍵を握る必要経費

所得税は所得が増えるほど税率も上がる累進課税制度のため、課税所得をできるだけ抑えることが節税のポイントです。キーになるのは「必要経費」で、申告の際に支払った金額を確実に計上することが大事になります。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
何を経費にできるのかは判断が難しいことも多く、「とりあえず経費にしておこう」という姿勢で申告すると、税務署に「過少申告」を指摘される可能性もあります。
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代表 樽澤岳一郎(税理士)

飲食代

顧客との商談や打ち合わせの飲食代は経費になります。ただし、喫茶店に入って1人で仕事をしたといった場合には、原則として経費計上はできません。

交通費

外回りをしているので、交通費の出費も多いはずです。タクシー代、電車賃、バス代など仕事で使った費用は経費にできます。
車で移動する場合には、ガソリン代も経費で落ちます。ただし、プライベートと兼用の場合には、仕事で使った分のみが経費として認められることに注意してください。使用した日時などの証拠を残したうえで、割合を計算します。
このように、ある費用のうち事業に関連する部分だけを経費計上することを「家事按分」といいます。

贈答品代

自己負担で顧客に贈答品を渡した場合にも、経費になります。誰に渡したのかなど、仕事上の贈答であることを証明できるようにしておきましょう。

家賃、水光熱費

自宅を事務所として使用する場合の家賃については、家事按分して経費計上することができます。按分の基準は、事務所スペースの割合や使用時間などがベースになります。水光熱費も同様に考えます。

通信費

保険外交員の方は、他の職種に比べ顧客との連絡などに電話代がかさみます。これらも、当然経費にできます。インターネットの通信費やプロバイダ料金なども、プライベートと共用の場合には、やはり按分して計上します。

仕事用のパソコン購入費

顧客管理用などにパソコンを購入した場合にも、経費にすることができます。ただし、購入費用が10万円を超えた場合は一括で経費にすることはできず、4年間に分けて計上していきます(減価償却と呼びます)。

セミナー参加費、書籍代

保険外交員としてのスキルアップのために参加したセミナーの費用や、購入した書籍の代金も、「収入を得るために必要なもの」として、経費にすることができます。

スーツ、衣装代

一般的には、スーツなどを経費で落とすことは困難です。作業着や制服と違い、仕事以外でも着ることがあると考えられるからです。しかし、保険外交員や住宅営業マン、弁護士など業務上スーツの着用が不可欠な人の場合は、「仕事着」として購入したものは、経費にすることが認められる可能性があります。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
ただし、「業務に使用している」と明確に主張できることが条件で、例えば「仕事に似つかわしくない」と判断されれば、経費にはできませんので、慎重な判断が必要です。
樽澤岳一郎税理士事務所
代表 樽澤岳一郎(税理士)

最大65万円までは経費として控除される

個人事業主の事業所得には、最大65万円までは経費にできる「家内労働者等の必要経費の特例」があります(令和7年分以後。令和6年分以前は55万円)。例えば、計算した必要経費が合計40万円だったとしても、65万円を経費計上することができるのです。

インボイス制度への対策はどうする?

保険外交員の歩合給(報酬)は消費税の課税対象のため、保険代理店から登録を求められる可能性があります。ただし2026年9月末までは経過措置により代理店側が80%控除可能なため、慌てて登録する必要はありません。登録する場合は「2割特例」(2026年9月末まで)や「簡易課税制度」を活用すれば事務負担を軽減できます。固定給のみの外交員や、保険料収入自体が非課税のため、インボイス制度は基本的に無関係です。

保険外交員にインボイス登録は必要?

年間の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者でも、インボイス登録事業者になると消費税納税義務が発生します。取引先の課税事業者は、免税事業者(インボイス登録番号がない事業者)との取引だと仕入税額控除を受けられないため、「消費税分を差し引いて支払う」「登録しなければ取引を控える」と言われる恐れがあり、フリーランスの間で問題になっていました。

保険外交員の場合、以下の点を理解してください。

保険会社の収入源である「保険料収入」は消費税非課税です。また、給与所得は消費税の課税対象外であるため、固定給のみを受け取っている外交員はインボイス制度と無関係です。登録の必要はありません。

固定給+歩合給、または完全歩合給の場合、歩合給の部分が「報酬」(事業所得)となるため消費税の課税対象です。保険代理店側から制度登録を求められる可能性があります。

インボイス登録を求められたらどうする?

インボイスに登録すると、これまで納めずに済んだ消費税を納税するため、同じ売上額でも実質収入が減ります。また、確定申告に加え消費税申告も必要となり、会計処理の時間や費用が嵩むデメリットがあります。

しかし、慌てて登録する必要はありません。課税事業者(保険代理店)は、免税事業者と取引する際の負担軽減のための経過措置を受けることができます。

期間 仕入税額控除の割合
2023年10月1日~2026年9月30日 80%控除可能
2026年10月1日~2029年9月30日 50%控除可能
2029年10月1日以降 控除不可

つまり、2026年9月末までは保険代理店側が80%の仕入税額控除を受けられるため、保険代理店がまるまる消費税分を負担することにはなりません。慎重に検討したいと答えてもよいのです。

登録業者になることを選んだ場合は、以下の制度を活用してください。

2割特例(2026年9月末まで)
2023年10月1日から2026年9月30日までの間に免税事業者からインボイス発行事業者になった場合、納税額を売上税額の2割に軽減できる特例があります。この期間に登録した場合は、まず2割特例の適用を検討してください。

消費税の納税額=売上税額×20%

簡易課税制度
簡易課税制度は、「経費にかかる消費税額」の部分を、「収入にかかる消費税額」に「みなし仕入れ率」という一定の割合を掛けた金額で代替できる制度です。保険外交員の場合は、みなし仕入れ率が50%と決められています。

収入にかかる消費税額-(収入にかかる消費税額×50%)=消費税の税額

簡易課税制度は経費にかかる消費税額をいちいち計算しなくて済むというメリットがありますが、原則課税のほうが有利なケースもあります。インボイス登録をする場合は、2割特例と簡易課税のどちらが有利か、また原則課税との比較も含め、税理士に相談してください。

保険外交員は所得の区分に注意が必要

固定給は「給与所得」、歩合給は「事業所得」として確定申告で分けて申告します。必要経費は事業所得のみ計上可能で、給与所得には必要経費の代わりに「給与所得控除」(令和7年分以後は最低65万円)があります。消費税は事業所得のみ課税対象、給与所得は非課税。例えば給与所得200万円+事業所得900万円の場合、年収は1,100万円ですが、事業所得が1,000万円未満のため免税事業者となります。

給与所得か事業所得か

個人事業主として働く保険外交員の報酬は、税法上「固定給→給与所得」「歩合給→事業所得」に区分されます(保険会社から固定給と歩合給が明確に区分されて支払われている場合など)。確定申告のときには、それぞれを分けて申告しなくてはなりません。

  • 固定給の部分→「給与所得」
  • 歩合の部分→「事業所得」

必要経費は事業所得に認められますが、給与所得には認められません。一方で給与所得には、必要経費に代わるものとして、所得により一定額を控除できる「給与所得控除」があります。令和7年分(2025年分)以後は、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。

また、消費税は事業所得が対象で、給与所得については非課税です。

例えば、給与所得が200万円・事業所得が900万円だった場合、年収は1,100万円ですが、事業所得単体では1,000万円を超えていないため、消費税の免税事業者となります。

確定申告をするなら青色申告がおすすめ

青色申告は最大65万円の所得控除(青色申告特別控除)を受けられるため、白色申告より節税効果が高くなります。65万円控除にはe-Tax申告または電子帳簿保存が必要で、それ以外は55万円控除です。複式簿記での帳簿付けが必要なため作業負担は増えますが、赤字の繰越(3年間)、家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)など、メリットは大きいです。青色申告をする場合は、開業から2ヶ月以内または適用を受けたい年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出してください。

青色申告・白色申告とは?

確定申告には、帳簿付けを複式簿記で行うなどの条件で認められる「青色申告」と、それ以外の「白色申告」があります。青色申告のほうが作業は大変ですが、最大65万円の所得控除(青色申告特別控除)が受けられるなどの大きなメリットがあります。

青色申告特別控除の種類

控除額 要件
65万円 複式簿記で記帳し、e-Tax申告または電子帳簿保存を行う
55万円 複式簿記で記帳するが、e-Tax申告も電子帳簿保存もしない
10万円 簡易な帳簿付けのみ

青色申告のその他のメリット

  • 赤字を3年間繰り越せる(純損失の繰越控除)
  • 家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)
  • 30万円未満の固定資産を一括経費計上できる(少額減価償却資産の特例)

青色申告をする場合は、開業から2ヶ月以内または適用を受けたい年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出してください。

確定申告の流れ

  • 確定申告書の準備(国税庁のホームページからダウンロードできます)
  • 所得の計算(保険会社から「支払調書」を受け取ります)
  • 経費の集計(領収書の金額を集計します)
  • 控除の集計(基礎控除、医療費控除、生命保険料控除などを集計します)
  • 確定申告書への記入
  • 申告期限までに税務署に提出

確定申告は、パソコンやスマートフォンを使った電子申告(e-Tax)が可能です。

まとめ

業務委託契約で働く保険外交員は、自分で確定申告を行う必要があります。節税の鍵は必要経費の確実な計上と青色申告の活用です。飲食代、交通費、通信費など業務に関連する支出は漏れなく経費計上し、家内労働者等の特例により最大65万円まで経費として認められます(令和7年分以後)。青色申告なら最大65万円の特別控除を受けられ、e-Tax申告を併用すればさらに有利です。

令和7年税制改正により、基礎控除額が所得に応じて変動し、給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に引き上げられました。所得区分も重要で、固定給は給与所得、歩合給は事業所得として分けて申告してください。消費税は事業所得のみ課税対象のため、給与所得と事業所得の合計が1,000万円を超えても、事業所得単体で1,000万円未満なら免税事業者となります。

インボイス制度については、2026年9月末までは経過措置により保険代理店側が80%控除可能なため、慌てて登録する必要はありません。登録する場合は2割特例や簡易課税制度を活用し、税理士に相談して最適な方法を選んでください。経費の判断や所得区分など判断に迷う場合は、専門家のサポートを受けることで申告ミスを防ぎ、本業に専念できます。

記事監修者 樽澤税理士からのワンポイントアドバイス

個人事業主として働く保険外交員の方は、原則として確定申告が必要です。経費の扱いや所得区分の問題など、判断に迷う場合には、税理士などの専門家に相談しましょう。税理士には申告書の作成や税務署への提出などを依頼することもできますので、本業に専念したいときなどには、依頼を検討してみてください。

この記事の監修者
樽澤岳一郎税理士事務所
代表 樽澤岳一郎(税理士)
TKC自計化システムの活用と、経営改善計画策定により、中小企業の黒字決算を支援する税理士事務所。税務・会計だけではなく、創業支援、書面添付、贈与・相続の事前対策、事業承継対策、税務調査の立会い、保険指導、経営相談等、経営者のお悩みに応じて幅広いサービスを提供。

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この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
税理士紹介センタービスカスは、 株式会社ビスカスが運営する、日本初の「税理士紹介サービス」サイトです。 税理士をお探しの個人事業主や法人のお客様に対して、ご要望の税理士を無料でご紹介しています。
創業から30年、税理士紹介で培った知識とノウハウから、確定申告・決算・会社設立・融資・節税のご相談や、税理士料金の相場情報など、「初めて税理士に依頼したい」「顧問税理士を変更したい」という経営者・事業主の皆様に役立つ情報をお届けします。

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