会社の売上ゼロでもかかる税金がある!?
会社を「休眠」させるときの注意点などを解説

会社の売上ゼロでもかかる税金がある!?  会社を「休眠」させるときの注意点などを解説
公開日:
2023/05/10
 
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会社の利益(所得)に法人税などの税金が課税されることは、誰でも知っています。しかし、たとえ売上がゼロであっても、かかる税金があるのをご存知でしょうか。あえて売上ゼロから起業する場合、あるいはいったん会社を「休眠」させる場合などには、注意が必要です。今回は売上のない会社にどんな税金が発生するのか、解説します。

売上ゼロの会社とは

事業を行っていれば、売上があっても経費などがそれを上回り、赤字になることがあります(※)。一方で、会社の中には、売上自体がゼロの場合もあります。
想定されるのは、主として次のようなケースでしょう。

※会社の決算が赤字の場合にも、基本的にこれから説明するような税金がかかってきます。

売上ゼロでも会社の設立はできる

事業の開始時に売上がゼロであっても、会社を設立することは可能です。例えば「スタート時から個人事業とは違う知名度や社会的信用を確保しておきたい」というケースなどには、この選択肢も考えられます。当面は、資本金や役員借入金(役員個人から会社への貸付)などから資金調達して、事業を運営することになります。

会社が「休眠状態」にある

反対に、さまざまな事情から、廃業はしていないが、活動を一時停止させている状態の会社(休眠会社)もあります。こうした休眠会社の場合も、税金の扱いについては、原則として「活動はしているが売上ゼロ」の会社と同じです。

そもそも法人にはどんな税金がかかるのか

通常、会社(法人)には、主として次のような税金が課税されます。

法人税

法人の所得に対して課せられる国税です。法人の種類や資本金額、年間所得金額で税率が変動します。資本金1億円以下の普通法人の場合、年800万円以下の部分は15%、それを超える部分には23.20%が課税されます。

地方法人税

国から各自治体に配分する地方交付税の財源となる税金です。税額は、法人税の10.3%となっています。

法人住民税

法人にも、会社を登記している都道府県、市町村区に対して納める「住民税」があります。この法人住民税は、法人税額をベースにした「法人税割」と、資本金と従業員数によって定額で決められた「均等割」から構成されており、税率などは自治体で異なります。

法人事業税

事業所などを有する都道府県に支払う地方税です。法人の種類や資本金額、所得額などで税率が変動します。

消費税

原則として、資本金が1,000万円以上の会社は消費税の課税対象となります。資本金1,000万円未満の会社でも、売上高が1,000万円を超えたら翌々年度から課税対象となります。

固定資産税

会社が事業のための不動産を持っている場合に、毎年課税される税金です。東京23区の場合は東京都、それ以外は市町村によって徴収されます。

償却資産税

固定資産税の一種で、土地・建物(不動産)以外の資産に課税される税金です。製造設備や事務机、パソコンといった備品などが対象で、設備などの種類によって決まる課税標準額が150万円以上の場合に課税されます。

自動車税(軽自動車税)

会社が自動車を保有している場合に、毎年課税されます。

印紙税

税法で定められた課税対象の文書作成者に課税される税金です。課税対象になる文書には、契約書や約束手形など20種類があり、規定の金額の収入印紙を貼付しなくてはなりません。
最新(2023年4月1日以降適用分)の印紙税額一覧は印紙税額一覧表(令和5年4月1日以降適用分)(令和5年4月)で確認できます。

社員から源泉徴収した所得税、住民税

法人は、従業員の給与から所得税、住民税を源泉徴収(天引き)し、従業員に代わって納税することが義務づけられています。徴収額の過不足については、「年末調整」を行います。

売上ゼロでもかかる税金

では、先ほど挙げた税金のうち、売上がなくても課税される税金とは具体的に何なのでしょうか。

法人住民税の「均等割」

会社が支払う代表的な税金である法人税は、さきほどの説明したように、利益(所得:売上から経費などを指し引いた金額)に対して課税されます。会社の売上がゼロならば、当然所得もゼロですから、課税はされません。売上があっても、所得がマイナス(赤字)であれば、やはり所得税は0円です。

一方、法人住民税には法人税割と均等割がある、という話をしました。このうち法人税割は、法人税をベースに計算されますから、所得がなければやはり0円です。しかし、均等割については、売上・所得にかかわらず、納めなくてはならないことになっているのです。これは、「法人の事業所などを置いていれば、事業の状況に関わらず、自治体による住民サービスの恩恵を受けている」という考え方に基づくものだとされます。
これも説明したように、均等割の税額は、自治体によって異なります。例えば東京都の場合、主たる事業所が23区内にある会社の均等割は、年7万円(資本金1,000万円以下、従業員50人以下)です。

資産に関する税金

また、会社の資産には、事業活動に関わりなく(売上ゼロでも)、「持っているだけ」で課税されることになります。具体的には、次のような税金です。

  • 固定資産税
  • 償却資産税
  • 自動車税

印紙税

会社に売上がない状態でも、各種の契約を取り交わすといったことは考えられます。そうした際に印紙税が発生する場合には、納付の必要があります。

消費税についての注意点

消費税は、原則として商品やサービスを提供した際に消費者から受け取った「仮受消費税」から、自分が仕入れや経費を使った際に支払った「仮払消費税」を差し引いた金額を納税します。ですから、売上ゼロであれば、消費税が発生することはありません。

ただし、消費税には「中間申告・納税」制度があり、前事業年度の消費税の年税額(地方消費税は含まず)が48万円を超える場合には、期の半ばで「予定納税」が求められます。この場合、「中間申告対象期間」を一課税期間とみなして仮決算を行い、消費税額をゼロにすることが可能ですが、仮決算を行わないと予納分が延滞税の対象となることがありますから、注意してください。なお、この中間申告・納税の制度は法人税などにも適用され、やはり仮決算を行うことができます。

ちなみに、売上ではなく所得がゼロ(売上は生じている)の場合には、「仮受消費税」が「仮払消費税」を上回っていれば、差し引き分の消費税を納める必要があります。反対に「仮払」が「仮受」を上回った場合には、消費税の還付(払い戻し)を受けることができます。

会社を「休眠」させるとき注意すべきこと

最後に、特に会社を「休眠」させる場合の注意点について述べておきたいと思います。
「休眠会社」とは、法的に存在しているものの、事業活動を一切行っていない企業をいいます。法的に「生きて」いる以上、たとえ売上ゼロであっても、税務署への決算申告は必要です。申告を怠ることのデメリットには、次のようなことが挙げられます。

均等割の免除が受けられない

売上がなくても、法人住民税の均等割は納付義務があるといいました。この申告・納税を「無視」していると、税に延滞金が課せられる可能性があります。年に7万円程度の税金が、膨らんでいくことになるわけです。
他方、活動の実態のない会社に対する均等割については、自治体によっては支払いを免除してくれる場合があります。きちんと申告を行ったうえで、相談するというのが条件になります。

赤字の繰越ができなくなる

廃業(清算)しないで休眠状態にしておくというのは、将来的な再開の可能性をにらんでのことではないでしょうか。そうであれば、とりわけ休眠前に赤字を抱えていた場合には、毎年きちんと申告することが大事になります。
青色申告していれば、過去の赤字を10年間繰り越して、利益の出た年度の利益と相殺する(納税額を減らす)ことができます。しかし、2年連続で申告期限を守らないと、青色申告が取り消されてしまうのです。休眠中も、繰越欠損金を正確に申告書に記載して、申告を行うことが重要です。

まとめ

会社を設立する場合には、たとえ売上がゼロであっても発生する税金があることを理解しておきましょう。「休眠」させる場合には、無申告にするデメリットを知っておく必要があります。

この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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