起業しようとしたら、どんな税金がかかるの?個人事業主と法人の税金をわかりやすく解説します。

起業しようとしたら、どんな税金がかかるの?個人事業主と法人の税金をわかりやすく解説します。
最終更新日:
2025/05/14
この記事の監修者
河鍋公認会計士・税理士事務所
代表 河鍋 優寛(税理士・公認会計士)
 
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「脱サラして起業したい」。そう考えたときに、忘れてならないのが税金のこと。源泉徴収-年末調整によって、基本的に会社任せにしておいてOKだったサラリーマンと違い、独立したら申告・納税はもとより、節税などについても自ら考え、実行していく必要があるのです。さらに、個人事業か法人にするかによって、税の種類も変わります。起業後の税金について、まとめてみました。

個人事業主として起業すると課税される税金とは?

「フリーランスって税金はどうなるの?」「開業したら何の税金を払えばいいの?」
個人事業主に課されるメインの税金は「所得税」です。サラリーマンの「給与所得」と違い、個人事業主は「事業所得」として課税されます。この違いが税金計算の大きなポイントになります。

また、法人と大きく異なるのが会計期間。法人は自由に決算月を設定できますが、個人事業主は1月1日~12月31日の暦年と法律で固定されています。この期間の所得に対する税金を、翌年の2月16日~3月15日に確定申告する必要があります。

個人事業主に課税される税金には、次のようなものがあります。

  • 所得税:収入から経費を引いた利益に対して5%~45%の累進課税
  • 住民税:前年の所得に基づいて計算される地方税(所得割と均等割)
  • 個人事業税:年間所得が290万円を超える一定の業種に課される都道府県税
  • 源泉所得税:従業員を雇っている場合、給与から天引きして納める税金
  • 消費税:基準期間の売上が1,000万円を超える場合に課税(税率10%)
  • 固定資産税:事業用の土地・建物・設備などに対する税金

これらの税金をしっかり理解して、計画的に納税準備をしておくことが経営の安定につながります。

所得税

事業で得た収入(売上高)から、必要経費(事業のために使ったお金。例えば、事務所の家賃、光熱費など)を差し引いたのが、「事業所得」です。そこから、さらに基礎控除(※)のほか、扶養控除、生命保険控除などの所得控除を差し引いた「課税所得」に、税率を掛けて算出します。税率は、5%から45%まで7段階設定されていて、所得が増えるほど税率が高くなっていく累進課税となっています。

※所得税の基礎控除:原則として、所得から無条件で差し引くことができる。2025年現在、基礎控除額は48万円。所得が2,400万円を超えると控除額が段階的に少なくなり、2,500万円を超えると適用されない。

申告・納付時期:毎年2月16日〜3月15日に前年分の確定申告を行い、同時に納税します。納付期限は3月15日です。

納付方法:確定申告時に納付書を使って銀行やコンビニで支払うほか、口座振替、クレジットカードやe-Taxによる電子納税も利用できます。

予定納税:前年の所得税額が15万円以上だった場合、当年の7月(第1期)と11月(第2期)に前払いが必要です。これは確定申告の際に精算されます。

個人住民税

個人住民税は「市区町村民税」と「都道府県民税」の2種類があり、以下の2つの部分から構成されています。

  • 所得割:前年の所得に応じて計算(税率は市区町村民税6%、都道府県民税4%の合計10%が標準)
  • 均等割:所得に関わらず一律の金額(標準で市区町村民税3,500円、都道府県民税1,500円)

納税方法は主に2通りです。

  1. 普通徴収:6月から翌年3月までの4回に分けて、市区町村から送られてくる納付書で支払う
  2. 特別徴収:事業専従者(家族従業員)や従業員がいる場合、毎月の給与から天引き

住民税は前年の所得に対して課税されるため、開業初年度は翌年6月から支払いが始まります。住民税は1月1日時点で住所のある市区町村へ納付します。

個人事業税

事業を行う都道府県に納める税金で、事業所得から290万円の「事業主控除」を差し引いた金額に税率をかけて計算します。

  • 税率:業種によって第一種事業(5%)、第二種事業(4%)、第三種事業(3%)と分類
  • 納付時期:8月と11月の年2回(都道府県によって異なる場合あり)
  • 納付方法:都道府県から送付される納付書で支払い

注目ポイントは以下の通りです。

  • 事業所得から290万円の控除を引いた額が課税対象になるため、年間の事業所得が290万円以下なら納税不要
  • すべての職業が課税対象ではなく、法定業種(製造業、小売業、飲食業など)のみが対象
  • ITエンジニア、ライター、コンサルタントなど法定業種以外は課税対象外
  • 確定申告をすれば、別途個人事業税の申告は不要(税務署から都道府県に情報が連携)

源泉所得税(従業員がいる場合)

個人事業主でも従業員を雇用している場合は、会社と同様に従業員の給与から所得税を天引き(源泉徴収)し、納税する義務があります。この源泉徴収した税金を「源泉所得税」と言います。

  • 納付時期
    原則:毎月10日までに前月分を納付
    「源泉所得税の納期の特例」の承認を受けた場合:7月10日と翌年1月20日の年2回に分けて納付可能(従業員が10人未満の場合に適用できます)
  • 納付方法:e-Tax(電子納税)または納付書での納付
  • 計算方法:国税庁ホームページで公開されている「源泉徴収税額表」を使用して計算します。従業員の給与額と扶養親族の数などによって税額が決まります。
  • 源泉所得税の手続きをスムーズに行うには、開業届と同時に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出し、従業員が少ない場合は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も提出すると事務負担が軽減できます。

    記事監修者からのワンポイントアドバイス
    源泉所得税は原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日が納期です。ただし、給与の支給人員が常時10人未満であれば、半年分をまとめて納めることができる「納期の特例」を申請することができます。
    河鍋公認会計士・税理士事務所
    代表 河鍋 優寛

    消費税(課税売上が1,000万円を超える場合)

    商品やサービスを提供すると、顧客からはその対価と同時に、消費税も受け取ります。一方、商品や原材料を仕入れた場合などには、取引先に対してその代金とともに、消費税を支払います。前者から後者を差し引いた金額を、税務署に納めることになります。

    2023年10月からインボイス制度が始まったことで、消費税の取り扱いが大きく変わりました。

    • 適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)に登録している場合:課税売上高に関わらず消費税の納税義務が発生します。
    • 適格請求書発行事業者に登録していない場合:免税事業者となり、基準期間(原則として前々年)の課税売上高が1,000万円以下の場合は消費税の納税義務がありません。

    消費税の課税・免税判定には「基準期間」という考え方が重要です。

    • 基準期間:個人事業主の場合、前々年(2年前)の1月1日から12月31日までの期間
    • 判定方法:基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば、当年は課税事業者となります
    • 納付時期:確定申告と同時に申告・納付(3月15日まで)

    例えば、2023年の売上が1,000万円を超えても、課税事業者になるのは2025年からです。ただし、事業開始から2年以内の場合は、特定期間(前年の1月1日から6月30日までの期間)の課税売上高が1,000万円を超えると、翌年から課税事業者となる場合があります。

    ※ インボイス制度に登録するかどうかは重要な経営判断です。取引先が事業者の場合、インボイスを発行できないと取引に影響する可能性がありますが、登録すると売上高に関わらず消費税の納税義務が生じます。自身の事業状況に応じて検討しましょう。
    記事監修者からのワンポイントアドバイス
    インボイス制度が令和5年10月から開始されましたが、令和5年分の個人事業者の消費税申告件数は197万2千件で、インボイス制度がなかった令和4年分の105万5千件に比べて86.9%も増加しました。
    河鍋公認会計士・税理士事務所
    代表 河鍋 優寛

    固定資産税

    個人事業主が事業用に土地・建物・設備などの固定資産を所有している場合、毎年1月1日時点の所有者に対して固定資産税が課税されます。

    • 課税対象:事業用の土地、建物、償却資産(機械装置、工具、器具、備品など)
    • 税率:固定資産の評価額に対して標準税率は1.4%(市町村によって若干異なる場合あり)
    • 納付時期:市区町村から送られてくる納付書で年4回に分けて納付(市区町村によって異なる場合あり)

    特に注意が必要なのは、事業用の機械装置や器具備品などの「償却資産」です。これらは自分で申告する必要があります。

    • 償却資産の申告:毎年1月31日までに、所在地の市区町村に「償却資産申告書」を提出
    • 対象となる資産:取得価額が10万円以上の減価償却資産(ただし市区町村によって取扱いが異なる場合あり)

    固定資産税は事業に関係する場合、「租税公課」として必要経費に計上できます。なお、自宅兼事業所の場合、事業使用部分の割合に応じて経費計上が可能です。

    ※ 償却資産の申告を忘れると、後日市区町村から連絡が来ることがあります。また、固定資産税の評価額に疑問がある場合は、市区町村の固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができます。

    法人として起業すると課税される税金とは?

    独立の際に初めから法人を設立することもあれば、個人事業主から「法人成り」することもあるでしょう。いずれの場合にも、法人に課されるメインの税金は「法人税」です。

    法人は個人事業主とは異なる税金体系で課税されます。法人が支払う主な税金は以下の通りです:

    • 法人税:法人の利益に対して課される国税(税率15%~23.2%)
    • 法人住民税:法人の所在地に課される地方税(均等割と法人税割)
    • 地方法人税:法人税額に対して課される国税(税率10.3%)
    • 法人事業税:事業を行う都道府県に課される税金
    • 源泉所得税:従業員や役員への給与から天引きして納める税金
    • 消費税:商品・サービスの提供に対して課される税金(税率10%)
    • 固定資産税:法人が所有する土地・建物・設備などに課される税金

    法人の場合、事業年度(決算期)を自由に設定できます。例えば1月〜12月、4月〜翌3月など、事業に合わせた期間を選べるのが特徴です。法人税などの申告・納付は、原則として事業年度終了後2ヶ月以内に行います。

    個人事業主と比較すると、法人は経費として認められる範囲が広く、税率構造も異なります。所得の金額によっては、法人の方が税負担が軽くなる場合もあります。

    法人に課税される税金には、次のようなものがあります。

    法人税

    株式会社などの法人が、事業によって得た収益(法人税法上の所得=「法人所得」)に課税されます。個人事業主の所得税と異なり、法人税は高度な累進課税ではありませんが、所得水準によって税率が変わります。

    資本金1億円以下の中小法人の場合:

    • 年間所得800万円以下の部分:15%
    • 年間所得800万円を超える部分:23.2%

    資本金1億円超の大法人の場合:

    • 所得金額に関わらず一律23.2%

    この税率構造により、特に中小法人では所得の低い部分に軽減税率が適用されるため税負担が抑えられます。一方、個人事業主の場合は所得税率が5%~45%の7段階で上昇する累進構造のため、ある一定の所得水準を超えると法人の方が税負担が軽くなる傾向があります。

    • 納付先:国税(所轄の税務署)
    • 申告・納付時期:事業年度終了後2ヶ月以内(決算期から2ヶ月以内)
    • 中間申告:事業年度開始から6ヶ月経過時点で、前年度の税額の半分を中間納付

    なお、資本金1億円以下の法人であっても、大法人(資本金5億円以上など)の子会社である場合などは、軽減税率の適用対象外となる場合があるので注意が必要です。

    法人住民税

    法人の所在地となる都道府県や市区町村に納める地方税です。以下の2つの部分から構成されています。

    • 法人税割:法人税額に一定の税率を掛けて計算(税率は地域によって異なる)
    • 均等割:資本金の金額と従業員数に応じて課税される定額部分(赤字でも最低7万円程度が課税)
    • 納付先:地方税(都道府県と市区町村)
    • 申告・納付時期:法人税と同時に申告・納付

    個人事業主と大きく異なる点として、法人は赤字でも均等割部分の住民税は必ず課税される点に注意が必要です。

    地方法人税

    地方の税収格差を縮小する目的で2014年10月から導入された国税です。

    • 税率:法人税額に対して10.3%
    • 納付先:国税(所轄の税務署)
    • 申告・納付時期:法人税と同時に申告・納付

    地方法人税は法人税と一体的に計算・納付するため、納税者の事務負担はそれほど増加しません。

    法人事業税

    法人が事業を行う都道府県に納める地方税です。

    • 計算方法:法人所得に法人事業税率を掛けて算出
    • 税率:法人の種類や資本金の額、所得金額などによって異なる(3.5%~9.6%程度)
    • 納付先:地方税(法人の事業所等がある都道府県税事務所)
    • 申告・納付時期:事業年度終了後2ヶ月以内(法人税の申告書の写しを添付)

    法人事業税は、法人の規模や業種によって税率が細かく区分されています。資本金1億円超の法人には、所得割に加えて付加価値割や資本割も課税される「外形標準課税」が適用されます。

    源泉所得税

    法人は、従業員を雇うのが一般的ですので、源泉徴収を行う義務があります。従業員の給与から所得税を差し引き(源泉徴収)、国に納める必要があります。

    • 計算方法:給与から社会保険料を控除した後の金額に、「源泉徴収税額表」を適用して計算
    • 納付先:国税(所轄の税務署)
    • 納付時期
      • 原則:給与支払月の翌月10日まで
      • 納期の特例(従業員10人未満の場合):7月10日と翌年1月20日の年2回

    重要:法人の場合、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務となっています。個人事業主の場合は任意加入の国民健康保険や国民年金と異なり、法人化すると社会保険料の事業主負担も発生するため、コスト増加要因として考慮する必要があります。

    記事監修者からのワンポイントアドバイス
    法人の場合も、給与の支給人員が常時10人未満であれば、半年分をまとめて納めることができる「納期の特例」を申請することができます。7月と翌年1月の年2回の納付で済むため、実務上も効率的で納付漏れを防ぐことができます。
    河鍋公認会計士・税理士事務所
    代表 河鍋 優寛

    消費税

    個人事業と同様、法人も「顧客から預かった消費税-仕入れなどで支払った消費税」を納付します。

    • 税率:10%(うち、消費税7.8%、地方消費税2.2%)
    • 納付先:国税(所轄の税務署)
    • 申告・納付時期:事業年度終了後2ヶ月以内(法人税と同時)

    消費税の課税事業者となるケースは以下の通りです:

    • 基準期間(原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超える場合
    • 設立1期目・2期目であっても、資本金が1,000万円以上の場合は設立1期目から
    • 設立1期目は免税でも、設立1期目の上半期の課税売上高が1,000万円を超えると2期目から
    • 適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)として登録している場合

    注意点:法人設立時に資本金を1,000万円以上に設定すると、設立1期目から消費税の納税義務が生じます。創業時の資金繰りを考慮し、資本金設定には注意が必要です。また、インボイス制度開始に伴い、適格請求書発行事業者として登録すると課税売上高に関わらず消費税の納税義務が発生します。

    固定資産税

    法人が事業用に土地・建物・設備などの固定資産を所有している場合、毎年1月1日時点での所有に対して固定資産税が課税されます。

    • 課税対象:事業用の土地、建物、償却資産(機械装置、工具、器具、備品など)
    • 税率:固定資産の評価額に対して標準税率は1.4%
    • 納付先:地方税(市区町村)
    • 納付時期:市区町村から送られてくる納付書で年4回に分けて納付

    法人が所有する減価償却資産(償却資産)については、毎年1月31日までに資産の所在地の市区町村に「償却資産申告書」を提出する必要があります。この申告を忘れると、後日追加課税される可能性があります。

    法人の場合も、土地・建物の評価額が一定額以下である場合や、小規模な償却資産については、軽減措置が設けられている場合があります。詳細は所在地の市区町村にお問い合わせください。

    個人事業主と法人で税制上の優遇措置は違う?

    個人事業主と法人では、適用される税制優遇措置にも違いがあります。それぞれの事業形態に応じた特典を活用することで、税負担を適正に抑えることができます。ここでは、個人事業主と法人それぞれが利用できる主な税制優遇措置を解説します。

    どちらが有利かは一概には言えず、事業の規模や内容、利益の状況などによって異なります。税制優遇措置を含めて総合的に判断し、自分の事業に適した形態を選ぶことが大切です。

    個人事業主が利用できる主な税制優遇措置

    個人事業主には、所得税の負担を軽減するための様々な優遇措置があります。最も代表的なものは青色申告特別控除です。

    • 青色申告特別控除:複式簿記で帳簿をつけ、e-Taxなどを利用して申告すると最大65万円の所得控除を受けられます(e-Taxを利用しない場合は55万円、簡易簿記では10万円)
    • 小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済や中小企業退職金共済などの掛金は全額所得控除の対象になります
    • 事業専従者控除:配偶者や親族が事業に従事している場合、一定額を必要経費として計上できます
    • 青色事業専従者給与:青色申告の場合、家族従業員に支払う給与を経費として計上できます
    • 少額減価償却資産の特例:取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産を、一括で経費計上できます(年間合計300万円まで)
    • 赤字の繰越控除:青色申告の場合、赤字を3年間繰り越して翌年以降の黒字と相殺できます

    個人事業主の場合、青色申告をすることで多くの税制上のメリットが得られます。開業後すぐに「青色申告承認申請書」を提出し、日頃から帳簿をしっかりと記帳することが重要です。

    法人が利用できる主な税制優遇措置

    法人には、事業の成長を促進するための様々な税制優遇措置が用意されています。特に中小企業向けの優遇措置が充実しています。

    • 中小企業向け軽減税率:資本金1億円以下の中小法人は、年800万円以下の所得部分に15%の軽減税率が適用されます
    • 役員給与の経費計上:役員(社長など)に支払う給与を経費として計上できます(個人事業主の場合は自分の給与は経費になりません)
    • 交際費の損金算入特例:資本金1億円以下の中小法人は、年間800万円までの交際費を損金(経費)に算入できます
    • 赤字の繰越控除:青色申告法人は、赤字を最長10年間繰り越して、将来の黒字と相殺できます(個人事業主は3年間)
    • 欠損金の繰戻し還付:中小法人は、黒字の翌期に赤字となった場合、前期に納付した法人税の還付を受けられます
    • 中小企業投資促進税制:特定の設備を購入した場合、一定割合の税額控除または特別償却が認められます
    • 少額減価償却資産の特例:取得価額30万円未満の減価償却資産を、一括で経費計上できます(年間合計300万円まで)
    • 給与等支給額が増加した場合の税額控除:従業員の給与を一定割合以上増加させた場合、法人税から一定額を控除できます

    法人の場合、役員報酬や交際費の取扱い、赤字の繰越期間など、個人事業主より有利な点が多くあります。特に事業規模が大きくなり利益が増えてくると、法人化によるメリットが大きくなる傾向があります。ただし、赤字でも住民税の均等割は発生しますので、創業初期の赤字が見込まれる時期は個人事業主のままでいる選択肢もあります。

    個人事業主よりも法人の方が節税できる?

    個人事業主と法人では税金がかわります。では法人と個人ではどちらが節税できるのでしょうか。ここでは法人と個人事業主の経費の違いと、個人事業主か法人かで選ぶ基準について解説します。

    法人の方が経費にできる範囲が広い

    法人は個人事業主に比べて節税の選択肢が多いと言われています。これは、法人の方が経費として計上できる項目が多いからです。経費とは、事業を運営するために必要な費用のことを指します。例えば、生命保険料や出張費、自分や従業員の給与などが経費に該当します。
    個人事業主の場合、給与という概念がないため、売上から経費を引いた金額(事業所得)が収入になります。一方、法人の場合、自身の給与に正社員と同じように給与所得控除が適用されます。これにより、大きな節税効果が期待できます。

    売上(利益)次第で個人か法人かを決める

    売上(利益)次第で、個人事業主か法人かを選ぶことが重要です。節税の観点から見ると、売上や利益の規模によって個人事業主と法人では税金の扱いが異なります。

    例えば、売上や利益があまり大きくない場合、個人事業主の方が税金の負担が軽くなります。しかし、売上や利益が一定の規模を超えると、法人の方が税金の負担が軽くなることがあります。

    所得税は累進課税のため、所得が増えると税率が上がりますが、法人税はほぼ20%で定率だからです。

    要するに、売上や利益の規模によって個人事業主か法人かを選ぶことが重要です。税金の負担を軽くしたい場合は、売上や利益が少ないときは個人事業主を、一定の規模を超えるときは法人を選ぶと良いでしょう。

    記事監修者からのワンポイントアドバイス
    売上規模で選ぶことは重要なセオリーですが、集客や従業員の確保を考えると法人の方が有利な場合があったり、業種によっては法人でなければ許認可が下りなかったりすることがあります。その場合は初めから法人でスタートしましょう。
    河鍋公認会計士・税理士事務所
    代表 河鍋 優寛

    必要なのは税のプロのサポート

    個人であれ法人であれ、事業を営むうえでは、このようにさまざまな税金の支払いを避けて通れません。利益を上げていくためには、適切な節税も必要になるでしょう。起業に際しては、税のプロである税理士のサポートも考えましょう。

    よくある質問

    個人事業主と法人のどちらが税制上有利ですか?

    年間所得が800万円以下であれば個人事業主が有利な傾向があります。所得が増えるにつれて個人事業主は最大45%の累進課税が適用されますが、法人は一律15%~23.2%の税率です。また法人では赤字の10年繰越(個人は3年)、役員報酬の経費計上など様々な節税手段があります。事業計画に合わせて選択しましょう。

    法人設立時にかかる税金は何ですか?

    法人設立時には登録免許税(資本金の0.7%・最低15万円)、定款認証費用(電子定款なら不要)、各種印鑑代などが必要です。設立後は法人税・法人住民税・法人事業税・消費税などが発生します。特に注意すべきは、赤字でも法人住民税の均等割(約7万円~)は必ず発生すること、また資本金1,000万円以上だと初年度から消費税課税事業者になることです。

    個人事業主が支払う主要な税金は何ですか?

    個人事業主の主な税金は、所得税(5%~45%の累進課税)、住民税(所得の約10%+均等割)、事業税(事業所得290万円超で3%~5%)、消費税(前々年売上1,000万円超またはインボイス登録者)です。青色申告を選択すれば最大65万円の特別控除が受けられ、事業用の固定資産を所有していれば固定資産税も必要です。開業初年度は住民税や事業税の負担が軽い点もメリットです。

    法人化するメリットは何ですか?

    法人化の最大のメリットは税制面です。比例税率の採用、役員報酬の経費化、10年間の赤字繰越、各種投資減税などが活用できます。また、社会的信用向上による融資・取引条件の改善、社会保険加入による福利厚生の充実、事業承継の円滑化なども重要です。ただし、社会保険料の事業主負担増加や法人運営の手続き負担も考慮すべきです。

    法人住民税と法人事業税の違いは何ですか?

    法人住民税は都道府県と市区町村に納める税金で、「法人税割」(法人税額×税率)と「均等割」(資本金・従業員数で決定)があります。法人事業税は都道府県のみに納める税金で、所得に応じた「所得割」が基本です。大きな違いは、赤字でも住民税の均等割は必ず発生すること、また資本金1億円超の法人には事業税に「外形標準課税」が適用される点です。

    個人事業主から法人成りする最適なタイミングはいつですか?

    年間所得が800万円前後を超え始めたとき、税負担の差が顕著になります。また、事業の安定・拡大期、従業員の増加時、取引先からの信用向上が必要な時期も検討すべきです。逆に創業間もない赤字予想期間は個人事業主のままが有利な場合が多いです。節税効果だけでなく、事業全体の成長戦略と照らし合わせて判断しましょう。

    まとめ

    起業という大きな決断をされる方は、誰もが事業を成功させたいと考えるでしょう。個人事業主か法人か、それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分の事業に最適な形態を選ぶことが重要です。
    個人事業主は開業手続きが簡単で、小規模な事業や起業初期に適しています。一方、法人は社会的信用や税制上の優遇など、事業拡大期に強みを発揮します。
    どちらを選ぶにせよ、税金の納付は事業継続の基本です。資金繰りが厳しくなって税金が払えず、結果的に廃業するようなことは避けたいものです。計画的な資金管理と節税対策で、持続可能な経営を目指しましょう。
    起業は人生において重要な転機です。不明点や迷いがある場合は、早い段階で税理士などの専門家に相談されることをお勧めします。適切なアドバイスを受けることで、より確実に夢の実現へと近づくことができるでしょう。

    この記事の監修者
    河鍋公認会計士・税理士事務所
    代表 河鍋 優寛(税理士・公認会計士)
    大手監査法人、税理士法人で会計監査、相続税申告を数多く担当し、独立。物腰が柔らかく、真面目な30代の若手代表が運営しており、"気軽に"そして"気楽に"相談できる事務所を目指す。個人・法人の税務顧問はもちろん、資産税や株式上場支援まで幅広くサービス提供しており、顧客のベストパートナーとしてあり続ける会計事務所。

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    税理士紹介センタービスカス編集部
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