「脱サラして起業したい」。そう考えたときに、忘れてならないのが税金のこと。源泉徴収-年末調整によって、基本的に会社任せにしておいてOKだったサラリーマンと違い、独立したら申告・納税はもとより、節税などについても自ら考え、実行していく必要があるのです。さらに、個人事業か法人にするかによって、税の種類も変わります。起業後の税金について、まとめてみました。
目 次
個人事業主に課税される税金
個人事業主に課されるメインの税金は「所得税」です。ちなみにサラリーマンも所得税を払いますが、それは「給与所得」に課税されるもの。個人事業の場合は「事業所得」になります。
法人が「事業年度」(例えば4月~翌年3月=3月決算)を自由に設定できるのに対し、個人事業主の場合は、1月1日~12月31日が会計期間と定められていて、その期間に対応する所得税などを、原則として翌年2月16日~3月15日の間に、税務署に確定申告しなくてはなりません。
個人事業主に課税される税金には、次のようなものがあります。
所得税
事業で得た収入(売上高)から、必要経費(事業のために使ったお金。例えば、事務所の家賃、光熱費など)を差し引いたのが、「事業所得」です。そこから、さらに基礎控除(※)のほか、扶養控除、生命保険控除などの所得控除を差し引いた「課税所得」に、税率を掛けて算出します。税率は、5%から45%まで7段階設定されていて、所得が増えるほど税率が高くなっていく累進課税となっています。
個人住民税
「区市町民税」と「都道府県民税」があり、前年の課税所得に基づいて計算される「所得割」と、所得に関わらず定額の「均等割」があります。いずれも1月1日時点で住所のある市区町村役場に、まとめて納付します。
個人事業税
住んでいる都道府県に収める税金です。事業所得から各種控除を差し引き、業種ごとに決められた税率(3~5%)を掛けて計算されます。必ず差し引ける290万円の事業主控除があるので、事業所得から他の控除を差し引いた金額が290万円以下であれば、課税されません。また、法定業種に含まれないプログラマーやライターなどは、課税対象外です。
源泉所得税(従業員がいる場合)
個人事業主であっても、従業員を雇っている場合には、会社と同様に源泉所得税(従業員に支払う給与から差し引いた所得税など)を税務署に納めなくてはなりません。計算には、国税庁ホームページにある「源泉徴収税額表」が便利です。
消費税(課税売上が1,000万円を超える場合)
商品やサービスを提供すると、顧客からはその対価と同時に、消費税も受け取ります。一方、商品や原材料を仕入れた場合などには、取引先に対してその代金とともに、消費税を支払います。前者から後者を差し引いた金額を、税務署に納めることになります。
ただし、前々年の課税売上(消費税抜きの売上)が1,000万円以下の場合には、支払いが免除されます。「前々年」が基準になるので、売上が1,000万円を超えても、課税業者になるのは、基本的にその2年後からです。
法人に課税される税金
独立の際に初めから法人を設立することもあれば、個人事業主から「法人成り」することもあるでしょう。いずれの場合にも、法人に課されるメインの税金は「法人税」です。
法人に課税される税金には、次のようなものがあります。
法人税
株式会社などが、事業によって得た収益(法人税法上の所得=「法人所得」)に課税されます。資本金や収益によって税率が異なりますが、原則として23.2%となっており、所得税のような細かな所得区分(累進性)はありません。ざっくり言えば、「所得が一定水準を超えたら、個人事業よりも法人のほうが、支払う税金が少なくてすむ」ことになります。
法人住民税
「法人税割」(法人税額に住民税の税率を掛けて計算)と、赤字でも最低7万円が課税される「均等割」(資本金の金額と従業員数によって決まる)があります。
地方法人税
法人税に対して10.3%が課税されます。
法人事業税
法人所得に、法人事業税率を掛けて算出する地方税です。税率は、都道府県によって異なります。
源泉所得税
法人は、従業員を雇うのが普通ですから、源泉徴収を行う必要があります。従業員の給与から社会保険料を差し引いて、課税対象額を算出します。なお、法人は、社会保険への加入が義務となっていることに注意しましょう。
消費税
個人事業と同様、「顧客から預かった消費税-仕入れなどで支払った消費税」を納付します。納税の義務が生じるのは、基本的に課税売上高が1,000万円を超えた2年(2期)後からですが、資本金を1,000万円以上に設定すると、その期から課税業者になりますから、その点にも注意してください。
まとめ
個人であれ法人であれ、事業を営むうえでは、このようにさまざまな税金の支払いを避けて通れません。利益を上げていくためには、適切な節税も必要になるでしょう。起業に際しては、税のプロである税理士のサポートも考えましょう。