会社設立や起業後にかかる税金は?節税のポイントもまとめて解説

会社設立や起業後にかかる税金は?節税のポイントもまとめて解説
最終更新日:
2024/12/10
この記事の監修者
税理士法人資産経営パートナーズ 代表 加瀬 直樹(税理士・公認会計士)
 
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脱サラして会社をつくって事業を始める。あるいは、個人事業を法人化する。いずれの場合にも、それまでとは違う税金を払う必要が生じることを頭に入れておきましょう。最も大きく変わるのは、主な税金が所得税から法人税に変わることですが、他にはどんな違いがあるのでしょうか? 注意すべき点も含めて、解説します。

会社をつくるときに必要な税金は?

会社設立の際に必要な税金は、次の2つです。

定款の印紙税

「定款」とは、事業の目的などを定めた、いわば「会社のルールブック」です。会社をつくるときには、その作成が必須になりますが、それには4万円の印紙税がかかります。
ただし、紙ではなくPDFによる電子定款にした場合には、課税されません。

登録免許税

設立登記も、会社設立の必要条件です。その際に課税されるのが「登録免許税」で、株式会社は15万円(資本金の0.7%が15万円を超える場合には、その金額)、株式会社より設立が容易な合同会社は6万円(同)となっています。

会社設立後に課税されるのは?

会社設立以降に支払う必要があるのは、次のような税金になります。

法人税

「法人税」は、個人事業主の「所得税」に当たる税金で、事業年度(設立月から決算月)の利益=法人税法が定める「課税所得」に課税されます。事業年度終了の翌日から2ヵ月以内に申告・納税を済ませる必要があります。
税率は、資本金1億円以下の中小企業の場合、課税所得金額が800万円以下は15%、それを超える金額は23.2%となっています。起業促進の"国是"もあって、法人税率は引き下げのトレンドにあります。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
法人税の申告・納付期限は、事業年度が終了した日の翌日から2か月以内と決まっています。個人事業の「所得税」の確定申告とは異なるため、注意しましょう。
税理士法人資産経営パートナーズ 代表 加瀬 直樹

法人住民税

個人と同様、法人も「住民税(法人住民税)」を支払わなくてはなりません。
会社の規模に関わりなく課税され、法人税額にリンクする「法人税割」と、所得に関わらず(たとえ赤字であっても)納める必要のある「均等割」の“2本建て”となっています。

法人事業税

さまざまな公共サービスの経費の一部を徴収する目的で、法人の事業所得に対して地方自治体(都道府県)が課す税金が「法人事業税」です。税率などは各都道府県によって異なるため、事前に確認しておくのがいいでしょう。

消費税

やはり個人事業と同様に、法人の消費活動にも「消費税」がかかってきます。実際には、顧客から支払われた消費税から、仕入れなどで自らが支払った消費税を差し引いた金額を納付することになります。

納税の義務が生じるのは、基本的に課税売上高が1,000万円を超えた2年(2期)後から。ただし、注意すべき点は、資本金を1,000万円以上に設定するとその期から課税業者になることです。
特別な理由がない場合には、会社設立時の資本金は、1,000万円未満にするのが得策と言えるでしょう。

源泉所得税

従業員を雇う場合には、源泉徴収を行う必要があります。
源泉徴収とは、「給与・報酬などの特定の所得の支払者が、その所得の支払をする際に、所定の方法により所得税(源泉所得税)の金額を計算し、支払金額からその所得税額を差し引いて国に納付すること」を言います(これは個人事業主の場合も同じです)。

社会保険料

常時従業員を使用する法人事業所は、「社会保険」(健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用医保険)に加入しなくてはなりません。会社の設立に当たっては、そのための出費も織り込んでおく必要があります。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
給料が出ていない場合や、非常勤の従業員しかいない場合には社会保険適用の対象にはなりません。

    
 

税理士法人資産経営パートナーズ 代表 加瀬 直樹

設立時の税務手続きと必要な書類

設立の具体的な手続きや注意点を詳しく述べていきます。

法人設立届出書の提出先と提出手順

法人を設立したときは、設立日より2カ月以内に納税地を管轄する税務署へ法人設立届出書を提出する必要があります。届出書は税務署に置いてありますが、国税庁のサイトからダウンロードもできます。
届出は、必要事項を記載した届出書と設立法人の定款の写し一部を提出して行います。郵送での届出も可能です。

青色申告承認申請書を提出することで得られるメリット

確定申告を青色で行いたいときは、税務署に設立届出書を提出する際になるべく青色申告承認申請書も提出しましょう。
青色申告にしておくと、通常の基礎控除48万円に加え、最大65万円の特別控除が受けられるというメリットがあります。
また、起業時には費用がかさむものですが、青色申告であれば当年度の赤字を翌年以降、法人なら最長9年間繰り越せるため、繰り越した赤字分を差し引いた所得のみ税金を支払えばよい「純損失の繰越控除」制度が使えるのも大きなメリットです。
会計処理の方法が白色に比べると手間になりますが、会社の会計をしっかり記帳することは大切なことなので、青色申告をためらう理由にはならないでしょう。

定款の作成とそれに伴う登録免許税の納付

法人の設立には定款の作成が必要です。会社経営における決まりを記載する定款は、会社をその会社たらしめる重要な書類であり、内容については法律で規定されています。
定款は設立会社の発起人が作成し、公証役場で認証を受けます。認証のための手数料は資本金の額により1万5千円~5万円となります。

設立時に陥りやすい税務リスクとその回避方法

会社設立後は非常にすることが多く大変ですが、税務関連手続きも忘れず行いましょう。

税金の未納や申告漏れによる罰金のリスク

経営者が会計も担当しなければならない場合、設立直後はどうしても事業展開と経営に追われ、記帳が後回しになったり、申告を忘れてしまったりするおそれがあります。
しかし、申告忘れによる税の未納やいい加減な記帳による申告漏れはさまざまなリスクを生みます。
まず未納分につき延滞税が課されます。期限翌日~2カ月までで年7.3%、それを超えると年14.6%と倍になります。延滞税に加え無申告加算税や、悪質な申告漏れには重加算税が課されるケースもあります。
さらに支払いがないと督促状が届き、最悪会社財産が差押えとなってしまいます。

消費税の課税業者となるタイミングとその対応策

消費税は新たに設立した会社は課税対象となる前々事業年度の売り上げがないため、資本金が1,000万円未満の会社であれば、原則設立2期目まで消費税は免除となります。
しかし、2023年10月から始まったインボイス制度により、売上高に関係なく、会社が自身で課税事業者になることを選択できるようになりました。
取引先との関係で、インボイスの発行が求められることが予測される会社であれば、資本金の多寡にかかわらず、設立時に課税業者となっておく必要があるかもしれません。
その場合、事業開始日の属する課税期間の末日まで(3月決算なら3月中)に「課税選択届出書」と「適格請求書発行事業者の登録申請」を税務署に提出すれば、課税期間初日に遡って登録したとみなされます。
決算時期の会社は大変忙しいことが多いので、設立時手続きの一環として上記提出も行っておくことをお勧めします。

会社設立後も所得税がかかることに要注意

個人事業を法人にする大きな理由が、「節税」です。
個人の所得税は、所得が増えるほど税率も高くなる「累進課税」という仕組みになっています。法人税のほうは、税率が一定で、さきほど説明したように「減税」の方向にもあります。
そのため、事業が拡大して所得が一定の水準を超えた場合には、会社にして、支払う税を所得税から法人税に切り替えた方が有利になるというわけです。

ただし、法人化をすると社会保険の負担が生じます。
さらに盲点になりやすいのが、自らの報酬に課税される税金です。

個人事業の場合には、生活も事業も、会計上は混然一体で済みました。しかし、会社をつくるとそうはいきません。生活費を含めた「自分のお金」は、会社から報酬のかたちで受け取ることになるのです。従業員がもらう給与と同じように、その金額には所得税がかかってきます。当然、都道府県民税や市町村民税などの地方税も課税されます。

つまり、会社経営者には、「会社の法人税など」と「個人の所得税など」を両にらみにした節税プランが求められることになるわけです。「自分の会社なのだから」と報酬を多くもらいすぎたりするとトータルの納税額が膨らむことになりますので、注意が必要です。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
「自分の会社だから」と報酬を多くもらいすぎてしまうと、トータルの納税額が膨らむことになりますので、注意が必要です。

    
 

税理士法人資産経営パートナーズ 代表 加瀬 直樹

会社設立で節税する方法

会社を設立することで節税することが可能です。ここでは会社設立で節税する方法を3つ紹介します。

退職金を支給する

退職金の節税対策として、会社を設立して退職金を支払う方法が注目されています。退職金は、個人が受け取ると所得税や住民税の対象となりますが、会社が支給する場合は法人の経費として処理されるため、税金の負担を軽減することができます。

また退職金は、会社の財務状況に合わせて支給額や支払い方法を決めることができます。さらに退職金は税法上、退職所得となり、退職所得控除が差し引かれ、退職金にかかる所得も他の所得と分離されて課税されるため、節税になります。

ただし、個人事業主も小規模企業共済制度とiDeCoの税制優遇を活用できるので、会社設立が有利かどうかの判断は簡単にできません。また退職金が支給できるのは、5年以上勤務した役員や従業員のみになります。

家族を役員にする

会社を設立して家族を役員にすることは、節税の手段として注目されています。これは、家族経営の会社を設立して、所得を分散させることで、税金の負担を軽減する方法です。

具体的には、例えば親が会社を設立し、子供を役員に任命することが考えられます。親が会社の経営に関与しながら、子供に給与を支払うことで、所得を分散させることができます。このようにすることで、親の個人の所得税や法人税の負担を軽減することができます。

保険に加入する

個人で保険に加入しても保険料は経費になりません。生命保険控除は活用できますが、年間12万円までなので節税効果は低いです。一方、会社を設立して法人保険に加入すれば保険商品の貯蓄性に応じて、資産計上となるものもありますが、支払った保険料の一定の割合から全額を経費に計上できるものもあります。

保険料を経費にすることで、所得が減りますから法人税が抑えられるわけです。ただし解約返戻金がある保険を解約したり、満期で受け取ったりすると、課税されます。また死亡保険金も同様です。

こうしたケースでは、法人税が増えてしまうため、退職金や設備投資にするなどの節税対策が必要になります。

会社設立で税理士への依頼を検討中の方へ

会社をつくるときにも、設立後にも、個人の場合とは異なる税金がかかってきます。設立後の個人の報酬には、所得税が課税されることにも要注意です。必要に応じて、会社設立に詳しい税理士などの専門家にサポートを依頼するのもいいでしょう。

よくある質問

会社設立時に必要な税金にはどのようなものがありますか?

会社設立時に必要な税金には、定款の印紙税と登録免許税があります。定款の印紙税は4万円、登録免許税は会社の形態により異なり、株式会社で15万円、合同会社で6万円です。

会社設立後に課税される税金は何ですか?

会社設立後に課税される税金には、法人税、法人住民税、法人事業税、消費税、源泉所得税があります。これらは会社の利益や事業所得に基づいて計算されます。

会社設立で節税する方法はありますか?

節税方法としては、退職金を支給すること、家族を役員にすること、保険に加入することが挙げられます。これらは法人税負担を軽減する効果があります。

起業後も所得税がかかることはありますか?

個人として受け取る給与や報酬には所得税が課税されます。会社設立後も個人の所得に対して所得税がかかるため、節税計画を検討する必要があります。

法人化することのメリットは何ですか?

法人化する最大のメリットは税負担の軽減です。法人税率は一定であり、所得が増えても税率の上昇が少ないため、大きな利益を上げる事業において有利になります。

記事監修者 加瀬税理士からのワンポイントアドバイス

会社をつくるときにも、設立後にも、個人の場合とは異なる税金がかかってきます。設立後の個人の報酬には、所得税が課税されることにも要注意です。
また、会社設立時から税理士などの専門家にサポートを依頼しておくことで、事業に集中することもできます。ご自身の状況に照らし合わせて検討してみてください。

この記事の監修者
税理士法人資産経営パートナーズ 代表 加瀬 直樹(税理士・公認会計士)
不動産オーナーのお客様、海外への投資、国際的にビジネスを行っているお客様を中心に、税務顧問、確定申告~経理業務のアウトソーシングだけではなく、経営管理、投資意思決定の支援まで対応。一人一人のお客様のご状況にもっとも適した形で、柔軟にサービスを提供。

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この記事の執筆者
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