株価算定は税理士に依頼できる?公認会計士との使い分けと費用・期間の目安
- 最終更新日:
- 2026/08/27

- この記事の監修者
- おだね税理士事務所
代表 小田根 大輔(税理士)
税理士の株価算定は「税務上の時価」を出す業務で、手順が通達で固定されている
税理士が行う株価算定は、国税庁の財産評価基本通達「取引相場のない株式等の評価」に沿って進みます。手順は3段階で、まず株主の判定(同族株主かどうか、議決権割合はいくつか)を行い、次に会社規模の判定(従業員数70人以上は大会社、70人未満は総資産価額・取引金額との組み合わせで中会社・小会社に区分)、最後に区分に応じた評価方式を適用します。
評価方式は原則的評価方式と特例的評価方式に分かれます。原則的評価方式は、類似業種比準価額方式(類似業種の上場会社の株価に、配当・利益・純資産の3要素を比準させ、大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5の斟酌率を乗じる)と純資産価額方式(相続税評価額ベースの純資産から、含み益に37%を乗じた法人税額等相当額を控除する)、およびその併用です。特例的評価方式である配当還元方式は、同族株主以外の少数株主が取得する場合に適用され、原則的評価方式より大幅に低い評価額になります。
さらに、株式等保有特定会社(総資産に占める株式等が50%以上)や土地保有特定会社などに該当すると類似業種比準方式の適用が制限され、純資産価額方式が原則となります。この判定を誤ると評価額が跳ね上がるため、株価算定の精度は税理士の実務経験に左右されます。
税理士への株価算定依頼で判断に迷いやすい6つの論点
依頼前に発注側が把握しておくべきなのは、算定の中身そのものより「誰に・いくらで・いつまでに」の3点です。ここからは、経営者から実際に寄せられる質問をもとに、監修税理士に実務の考え方を伺いました。
税理士が行う株価算定とはどんな業務?
質問:税理士に株価算定を依頼すると、具体的にどのような作業をして、何が成果物として手元に残るのでしょうか。

小田根大輔先生
財産評価基本通達に基づいて非上場株式の1株当たり評価額を算出し、計算過程を「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」にまとめる業務です。明細書は会社の規模や資産状況、株主関係に応じて第1表から第7表の3までの様式から必要なものを選択・作成します。これは相続税・贈与税申告の添付書類となるほか、自社株の現状把握や事業承継のシミュレーション、親族間での売買価格の基準としても活用されます。
株価算定は税理士と公認会計士でどう違う?
質問:株価算定は公認会計士にも依頼できると聞きました。税理士に頼む場合と何が変わりますか。

小田根大輔先生
税理士は『税務上の時価(財産評価基本通達)』を、公認会計士は『企業価値としての取引価格』を算定します。税理士が相続税や贈与税、同族間売買のために税法で定められた画一的なルール(類似業種比準や純資産価額等)で計算するのに対し、公認会計士はM&Aの交渉や資金調達、組織再編などのために将来の収益力(DCF法等)を織り込んで算定します。目的によってアプローチが全く異なるため、使い分けが極めて重要です。
株価算定の費用相場はどれくらい?
質問:非上場株式の株価算定を税理士に依頼した場合、費用はいくらぐらいかかりますか。

小田根大輔先生
極めてシンプルな小規模企業の相場例として10万〜30万円程度が最低ラインの目安です。会社規模、子会社や関連会社の有無、不動産や有価証券の保有量で大きく変動し、土地の個別評価が必要な場合は加算され、難易度や企業規模に応じて数十万円~数百万円に上るケースもございます。また、相続税申告の一環として行うときは申告報酬に含まれることもあります。見積時は「評価明細書の作成まで含むか」「第三者に提出できる株価算定書の体裁にするか」も必ず確認してください。この2点で金額が変わります。
株価算定にかかる期間と必要書類は?
質問:依頼してから評価額が出るまでどれくらいかかりますか。事前に用意しておく資料も知りたいです。

小田根大輔先生
資料が揃っていれば1〜2週間が目安です。必要書類は直近3期分の決算書と法人税申告書の別表、総勘定元帳、株主名簿、不動産の登記事項証明書と固定資産税評価証明書、有価証券の残高証明書や保険積立金の解約返戻金相当額の資料など多岐にわたるため準備が必要です。子会社株式の評価や土地の個別評価が絡むと1か月以上かかる場合もあります。株主名簿が現状と一致していないケースが多いため、事前に確認するようにしましょう。
顧問税理士にそのまま任せて問題ない?
質問:顧問税理士がいるのですが、株価算定もそのまま依頼して大丈夫でしょうか。

小田根大輔先生
法人税の申告を主業務とする税理士は、非上場株式評価の経験が乏しい場合があります。判断材料は、年間の相続・事業承継案件の取扱件数、特定の評価会社の判定経験、そして個人から法人へ譲渡する場合のルール(所得税基本通達59-6)や、法人間で移動する場合のルール(法人税基本通達9-1-14)を踏まえた税務リスクを的確に助言ができるかどうかです。相続税評価額のまま個人から法人(または法人から個人)への譲渡や法人間で売買すると、課税上の時価と乖離して追徴を受けることがあります。評価だけを別の税理士にスポット依頼する方法もあります。
事業承継税制を使うなら株価算定はいつ始める?
質問:事業承継税制の適用を検討しています。株価算定はいつから動けばよいですか。

小田根大輔先生
遅くとも今すぐ、今年中に着手してください。法人版事業承継税制の特例措置は、令和8年度税制改正で特例承継計画の提出期限が令和9年(2027年)9月30日まで延長されましたが、贈与・相続そのものの適用期限は令和9年12月31日のまま据え置かれています。両者の差はわずか3か月です。株価算定、代表権の移転、贈与契約、都道府県知事への認定申請を逆算すると準備期間はほとんど残りません。早急な自社株式評価と承継パターンのシミュレーションが不可欠です。
まとめ
税理士の株価算定は財産評価基本通達に基づく税務上の時価を出す業務であり、DCF法などで事業価値を測る公認会計士の算定とは目的も金額も異なります。費用の目安は中小企業で10万〜30万円前後、期間は資料が揃って1〜2週間。特定の評価会社の判定や同族間売買の時価判断は経験差が出る領域のため、依頼先は「顧問だから」ではなく非上場株式評価の実績で選んでください。
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