一人親方に税理士はいらない?費用相場と依頼すべきかの判断ラインを税理士が解説

一人親方に税理士はいらない?費用相場と依頼すべきかの判断ラインを税理士が解説
最終更新日:
2026/09/28
この記事の監修者
Vmaster税理士事務所
所長 松田 光弘(税理士)
 
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一人親方が税理士に依頼すべきかどうかは、売上規模だけでは決まりません。特に判断を分けるのは、消費税の申告方式、材料を自分で仕入れるか手間請けか、そして2026年分で終わる2割特例への備えの3点です。個人事業者の2割特例は令和8年分の申告が最後で、一定の要件を満たす場合、令和9年分・令和10年分は納付税額を売上税額の3割とできる特例が利用できます。費用相場から簡易課税の事業区分、外注費と給与の判定まで、一人親方がつまずきやすい論点を監修税理士への質問形式で整理しました。

一人親方の税金は所得税・消費税・個人事業税が別々の基準で動く

一人親方が負担する主な税金には、所得税、住民税、個人事業税、消費税などがあります。ここでは、特に判断を誤りやすい所得税・消費税・個人事業税の3つを整理します。

所得税は毎年の確定申告で計算し、青色申告特別控除の最大65万円を使うために、e-Taxによる申告または優良な電子帳簿の保存など一定の要件を満たす必要があります。

消費税は原則として基準期間(前々年)の課税売上高1,000万円が一つの基準ですが、前々年が1,000万円以下でも、前年1月から6月までの「特定期間」の課税売上高等によって課税事業者になる場合があります。また、インボイス発行事業者として登録すれば、売上規模にかかわらず原則として消費税の申告・納税が必要になります。

個人事業税についても、建設業は請負業として税率5%の対象となり、原則として事業主控除290万円を超えた部分に課税されます。

見落とされやすいのが、個人事業税では青色申告特別控除を差し引かずに所得を計算する点です。たとえば青色申告特別控除65万円を適用して所得税上の所得が250万円になっていても、個人事業税では控除前の315万円をもとに計算し、事業主控除290万円を差し引いた25万円が課税対象になります。

所得税・消費税・個人事業税では、それぞれ所得や売上、控除の考え方が異なるため、一つの税金だけを見て判断しないことが重要です。

費用相場から簡易課税の区分まで、一人親方が迷う6つの論点

一人親方の税務は、同じ個人事業主でも建設業に固有の判断が多く、区分を一つ誤るだけで数万円から数十万円の差が生まれることがあります。ここからは、実際に寄せられる相談をもとに、監修税理士の松田先生に詳しく伺っていきましょう。

一人親方が税理士に払う費用の相場はいくらか?

質問:確定申告だけを頼む場合と、顧問契約を結ぶ場合とで費用はどれくらい違いますか。

松田光弘

松田光弘先生

確定申告のみのスポット依頼で3万〜15万円、毎月の顧問契約で月額1万〜3万円が相場例です。顧問料に確定申告報酬を加えると、年間25万〜50万円が目安になります。金額の幅を決めるのは売上規模だけではなく、記帳を自分で行うか税理士に依頼するか、消費税の申告が必要かといった条件です。また、税務調査への対応は顧問料とは別料金になるケースが多く、立ち会いが1日数万円、事前準備や修正申告などまで含めると十数万円以上になることもあります。見積もりを取る際は、記帳代行、消費税申告、税務調査対応などが基本料金に含まれているかを確認してください。

売上がいくらになったら税理士に頼むべきか?

質問:まだ売上が1,000万円に届きません。それでも依頼する意味はありますか。

松田光弘

松田光弘先生

税理士に依頼すべき売上高に、一律の基準はありません。売上規模よりも、消費税の申告が必要か、記帳や申告にどれだけ時間を取られているか、出来高請求や材料の有償/無償支給など税務上の判断に注意が必要な取引が増えているかで考える方が実務的です。インボイス発行事業者として登録していれば、売上規模にかかわらず原則として消費税の申告義務があり、計算方法によって納税額も変わります。また、原則として前々年の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になるため、売上が1,000万円を超えた段階で早めに税理士に相談しておくと、その後の消費税申告や簡易課税の選択を検討しやすくなります。前々年が1,000万円以下でも、特定期間の課税売上高等によって課税事業者になる場合があるため注意が必要です。

2割特例が終わると納税額はどれくらい増えるのか?

質問:インボイス登録をしてから2割特例で申告してきました。いつまで使えますか。

松田光弘

松田光弘先生

2割特例を適用できる期間は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日が属する各課税期間までで、暦年で区切る個人事業者は2026年分が最後です。令和9年分と令和10年分については、令和8年度税制改正で、一定の要件を満たす個人事業者を対象に、納付税額を売上げにかかる消費税額の3割とできる措置(3割特例)が設けられました。売上げにかかる消費税額が100万円であれば、2割特例では20万円、3割特例では30万円となる計算です。ただし、3割特例はすべての個人事業者が利用できるわけではありません。基準期間や特定期間の課税売上高などによって対象外となる場合があります。また、2割特例や3割特例を適用した事業者が、その翌課税期間から簡易課税制度を選択する場合には、一定の要件のもと、簡易課税制度選択届出書の提出期限に特例があります。今後どの計算方法を選ぶかは、2割特例の終了前から検討しておくとよいでしょう。

手間請けなら簡易課税は第4種でよいのか?

質問:元請から材料を支給されて工事をしています。事業区分はどう判断しますか。

松田光弘

松田光弘先生

材料の支給を受けて手間だけを提供する手間請けは、原則として第4種事業(みなし仕入率60%)、自分で材料を調達して施工する場合は第3種事業(70%)に該当します。課税売上げにかかる消費税額が80万円なら、第3種では24万円、第4種では32万円となり、納付税額には8万円の差が生じます。判断が難しくなるのは、材料を有償支給で買い取る形にしている場合や、自社での材料製作と現場での取付けを一式で請け負っている場合です。事業区分は請求書の書き方だけで決まるものではなく、実際の取引内容によって判断されます。契約書や注文書、請求書などを確認し、材料を誰が負担しているのか、どのような契約で仕事を請け負っているのかを整理しておきましょう。

元請からもらっている報酬が外注費ではなく給与だと見なされたらどうなるのか?

質問:税務調査で外注費が給与と判定されると、一人親方の側にも影響がありますか。

松田光弘

松田光弘先生

あります。元請からもらう報酬が給与所得と判定されれば、その収入について事業所得として必要経費を差し引いたり、青色申告特別控除の対象にしたりすることはできません。判定は契約書に「業務委託」「外注」と書かれているかだけではなく、実際の働き方をもとに行われます。国税庁の法令解釈通達(平成21年12月17日付 課個5-5)では、他人に仕事を代わってもらえるか、勤務時間などの拘束を受けるか、作業内容や方法について指揮監督を受けるか、引渡し前に完成品が滅失した場合でも報酬を請求できるか、材料や用具を支払者から供与されているかなどを総合的に勘案するとされています。たとえば、自分の判断で代わりの人を手配できるか、仕事の進め方を自分で決めているか、報酬が時間単位で計算されているかなど、契約書上の文言だけでなく実際の仕事の仕方を確認しておくことが重要です。

労災保険の特別加入の保険料は経費にできるのか?

質問:一人親方労災の保険料と組合費は、確定申告でどう処理しますか。

松田光弘

松田光弘先生

特別加入した労災保険の保険料は事業の必要経費にはなりませんが、所得税の社会保険料控除の対象になります。事業用の口座から支払った場合は事業主貸で仕訳し、確定申告で社会保険料控除として申告します。一方、一人親方団体などに支払う通常の会費や組合費は、事業に必要なものであれば必要経費にできる場合があります。ただし、入会金は金額や性質によって繰延資産として扱う場合があり、会費と同じ処理になるとは限りません。同じ団体への支払いでも税務上の扱いが分かれるため、年間の納入証明書や領収書で、労災保険料と会費などの内訳を確認してください。

まとめ

一人親方の税務では、所得税・消費税・個人事業税がそれぞれ異なる基準で動きます。特に押さえておきたいのは、青色申告特別控除を差し引かずに計算する個人事業税、手間請けか材料自前かで変わる簡易課税の事業区分、2026年分で終わる2割特例と一定の個人事業者を対象とした令和9年分からの3割特例、そして実態で判定される外注費と給与の区分です。

いずれも判断を誤れば納税額が変わり、場合によっては修正申告などが必要になることもあります。とくに消費税や外注費の判定は実際の取引内容によって結論が変わるため、迷う場合は早めに税理士へ確認しておくとよいでしょう。

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この記事の監修者
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所長 松田 光弘(税理士)
私は税理士法人兼コンサルティング会社で10年間、税務顧問、融資支援、補助金申請支援、管理会計導入及び業務効率化支援業務に携わってまいりました。開業後は創業検討中の個人さまから事業拡大を目指す中小企業さままで、経営の道を親身に支援しております。小売、卸売、建設、不動産、製造、運送など経営管理が特に重要となる業種の顧問及びコンサルティング・プロジェクト実績があり、事業の流れや経営思考の理解、経営者とのコミュニケーション力に長けています。何ごともただ結果をご説明するのではなく、なぜそうなるのかという原因・仕組み及び経営者視点の判断ポイントを整理して分かりやすくお伝えすることが弊所のモットーです。

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この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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