【節税できる?】個人事業主から法人化・会社設立する方法とメリット・デメリットを徹底解説

【節税できる?】個人事業主から法人化・会社設立する方法とメリット・デメリットを徹底解説
公開日:
2020/09/01
最終更新日:
2022/08/04
 
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個人事業主の中には、いつかは法人化(会社設立/法人成り)したい、という夢を持つ人も少なくないでしょう。とはいえ、やみくもに会社をつくっても、コストや事務量ばかりが増えて事業が思うに任せない…といった事態を招くことになるかもしれません。では、法人化のタイミングや基準はどう考えたらいいのでしょうか?さらに、法人化するとしたら、どんな手続きが必要で、いくらかかるのかも気になるところです。今回は、法人化の方法や、「法人だからこそできる節税」も含めたメリット・デメリットを中心に解説します。

まずは、法人化のメリット・デメリットから解説

個人事業と比較した場合、法人化すると次のようなメリットが期待できます。

【メリット】利益が大きい場合には、節税になる

個人事業主が支払う所得税は、課税所得金額195万円以下は5%、195万円超~330万円以下は10%、330万円超~695万円以下は20%と所得が大きくなるほど税率も上がり(累進課税)、最高税率は4000万円超の45%に上ります。これに対して、法人税の税率は、15%ないし19%(年800万円を超える部分は23.2%)に固定。利益が一定額を超えたら、法人化して法人税を払った方が得、ということになるのです。ただし、法人になると後で述べるような社会保険料の負担などが生じてくるため、「損益分岐点」を単純に設定することはできません。

【メリット】信用力が高まる

個人に比べ、法人は社会的信用度が高く、そもそも取引先を法人に限定している企業もあります。金融機関から融資を受ける際にも、断然有利です(個人が事業用の融資を受けるのは、事実上難しい)。

【メリット】無限責任→有限責任にできる

個人事業の場合、万が一事業が傾いたような場合には、その経済的な責任(仕入先への未払金、借入金など)をすべて背負わなければなりません(無限責任)。しかし、法人化している場合には、個人保証している借入金以外は、「負うべき責任は出資の範囲内」ということになります(有限責任)。

【メリット】事業承継がしやすい

個人事業のまま後継者に引き継ごうとすると、経営権(現経営者が廃業し、後継者が開業する)、従業員(新規で雇用契約を締結する)、資産(無償譲渡か有償譲渡か)に関して、それぞれ別の移転手続きが必要になります。一方、法人は経営者からは独立した存在であるため、経営者が引退してもそのまま営業を継続でき、後継者への引き継ぎも個人事業に比べればスムーズに行えます。

他方、考えられるデメリットとしては、次のようなことが挙げられるでしょう。

【デメリット】赤字でも負担しなければならない税金がある

個人事業は、赤字になれば所得税や住民税の支払い義務はありません。しかし、法人の場合は、法人住民税の均等割部分の負担(小規模法人で7万円くらい)が、たとえ赤字になっても発生します。

【デメリット】社会保険への加入(社会保険料の負担)が必要になる

法人化すると、健康保険や厚生年金に強制加入となり、その保険料を従業員と折半しなくてはなりません。ただし、補償の手厚い社会保険への加入は従業員にとってはメリットであり、採用面で有利になるという側面もあります。

【デメリット】交際費を全額経費にすることができなくなる

個人事業では、交際費は全額損金として計上する(所得から差し引ける=税金が安くなる)ことができましたが、法人になると原則として「交際費のうちの飲食代に限って、50%の費用を損金にできる」と限定されます(資本金1億円以下の企業は、年間800万円までは全額経費にできます)。

【デメリット】会計処理が複雑化、事務作業も増加する

個人事業主には、自分で確定申告を済ませる人も少なくありません。しかし、法人化すると、会計処理が複雑になるため、税理士に頼むことになります。事務作業も増えるため、そのためのスタッフが必要になるかもしれません。

個人事業主と法人の違い 早見表

個人事業主 法人
社会的信用 低い 高い
手続き 開業届を出す 定款の作成や登記が必要
経費
税金
経費計上の範囲が狭い 経費計上の範囲が広い
会計
経理
確定申告

自力でも可能だが、
場合によっては税理士に依頼するのがおすすめ
法人決算書・申告

会計処理が複雑なため、
税理士に依頼するケースがほとんど
赤字の場合 所得税や住民税の負担が無くなる 法人税均等割で7万円ほど支払う必要あり
社会保険 従業員数に応じて加入保険が変わる 加入が必須
生命保険 所得控除 全額経費
責任範囲 無限責任 有限責任
事業承継 移転手続きが面倒 個人事業主より手間は少ない
廃業 届出を出す 解散登記や公告が必要

法人と個人で支払う税金の違いとは

個人が支払うのは所得税

個人事業主には、毎年1月1日~12月31日の間に稼いだ所得に対して「所得税」が課税されます。
所得税の税率は、所得の金額に応じて段階的に高くなる累進課税制度を採用しています。

課税される所得金額 所得税率 所得税の控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

法人が支払うのは法人税

上記の通り、個人事業主のときは「所得税」を支払わなければなりませんが、会社設立以降は所得税に代わって「法人税」を支払う必要があります。
法人税は、「事業年度(設立月から1年間)の利益」、つまり法人税法が定める「課税所得」に課税されます。そのため、事業年度終了の翌日から2か月以内に申告および納税を行います。
法人税の税率は会社の規模により税率が決まります。
もし個人事業主としてある程度利益が出て、所得が800万~900万円程度になれば、法人化してしまった方が税金を抑えることが可能です(資本金1億円以下の中小企業の場合は、所得金額が年800万円以下場合の税率は15%、所得金額が年800万円超の場合の税率は23.2%)。

法人では法人税以外にも支払わなければならない税金・費用が複数ある

会社設立を行った場合には、上記の法人税以外にも、以下のような出費も織り込んでおかなければなりません。

社会保険料

法人化をした場合は、会社の従業員数に関わらず社会保険(健康保険や厚生年金保険など)への加入が義務付けられます。
社会保険料の半数は会社負担となり、たとえ会社が赤字になったとしても社会保険料の負担は免除されませんので、注意が必要です。
一方で、個人事業主の場合は、常時雇用の従業員が5人以上いる場合は社会保険への加入が必要ですが、5人未満の場合は任意です。ただし、従業員が1名以上いれば労災保険は必ず加入、雇用保険は条件を満たすならば加入しなければならないので、注意してください。

法人住民税

個人事業主の時と同様、法人も住民税(法人住民税)を支払う必要があります。

法人事業税

法人が行う事業活動に対して、会社・事業所が所在している都道府県・地方自治体が課す税金のことを指します。

消費税

個人事業主の時と同様、法人も消費税を支払う必要があります。

源泉所得税

源泉徴収とは、従業員の給与を支払う会社が、社員の代わりに所得税(源泉所得税)を徴収して、まとめて納税する制度です。従業員を雇う場合には必ず源泉徴収を行わなければなりません。

法人としてできる節税対策は?

法人化による節税メリット

個人事業の利益が一定水準を超えた場合には、法人化して支払う主な税金を所得税→法人税とすることで節税になる、という話をしました。
同時に、法人化することで、次のような節税メリットも生まれます。

(1)事業所得者→給与所得者に

個人事業主は、利益(事業所得)から自分の生活費などを捻出します。この分は、経費にはなりません。
一方で、法人化して社長になると、会社から役員報酬(給与)をもらう形になります。この役員報酬は、会社の経費になりますので、その利益から差し引く=法人税を減額することができます。さらに、受け取る報酬には所得税がかかるのですが、これも「給与所得控除(所得税の計算の際に差し引ける金額)」があるため、個人ベースでも節税になるのです。

(2)従業員への退職金が損金になる

個人事業でも、要件を満たせば、従業員に対する給与を経費扱いにすることは可能ですが、退職金はNGです。
逆に、法人になると、退職金も経費(損金)にすることができ、節税効果があります。

(3)「欠損金の繰越控除」が3年→10年に

欠損(赤字)が出た場合、それを翌年以降に黒字と相殺して所得を減らす(またはゼロにする)ことができる「繰越控除」という仕組みがあります。個人事業の場合、繰越せるのは3年ですが、法人では10年認められます。大きな赤字が出た場合には、法人のほうがメリット大と言えるでしょう。

(4)消費税の免除期間を利用できる

消費税は、原則として前々年(法人は前々事業年度)の課税売上高(※)が1,000万円を超えた場合に課税されます。要するに、2年(年度)前の売上高が、課税事業者になるかどうかの判定対象期間になります。言い方を変えると、この2年間については、消費税が免除されるのです。

個人と法人は別人格なので、仮に個人事業主として課税事業者であったとしても、法人化するとやはり2年間は消費税の支払いは免除されます。ただし、資本金が1,000万円を超えた場合は、会社設立1年目から課税事業者になります。
また、1年目に、前半6ヵ月の課税売上高が1,000万円を超えた場合などには、翌年から課税事業者(免税は1年間)です。

※課税売上高:消費税が課税される取引の売上金額(輸出含む)。

法人ができる節税対策

法人としてできる節税対策としては、たとえば次のようなものがあります。

役員報酬の最適化を図る

先述のように、社長になると会社から役員報酬を受け取ることになります。多ければ多いほど、会社の経費が増えて、法人税を減額することができます。一方で、報酬が高額になるほど、個人として支払う所得税は増えていきます。つまり、このバランスを調整することで、節税が可能になるわけです。

自家用車を社用車にする

個人所有の自家用車がある場合、社用車とすることで、自動車の取得費用を経費計上できるほか、燃料費や自動車保険料、高速料金なども経費にできます。

社員旅行の実施

社員旅行は、旅行期間や参加人数の割合などの条件を満たせば、費用を福利厚生費として経費計上できます。会社の出費になりますが、節税しながら社員のコミュニケーション強化などが図れるでしょう。

健康診断の実施

人間ドックや健康診断の費用も、福利厚生費になります。ただし全社員を対象とする必要があります。

団体定期保険への加入

企業が契約者となり従業員も加入できる団体定期保険に加入すると、保険料を損金計上できます。

共済制度への加入

廃業した際などに退職金を受け取れる「小規模企業共済」に加入すれば、掛け金を支払った分だけ節税できます。

社宅を用意する

会社が住宅を借り、社長や従業員に社宅として貸し付けた場合、支払った賃料と受け取った賃料の差額を、会社の損金とすることができます。

法人成り・会社設立の手順は?

では、法人化するためにはどんな手続きが必要になるのか、順を追ってみていきましょう。

(1)会社設立前に

発起人を決める

会社を設立する際に、資本金の出資、定款作成などの手続きを行うのが発起人です。

商号を決める

商号とは「会社名」のこと。基本的に自由に決められますが、「同一住所に同一の商号がある場合は、登記できない」といった決まりがあります。

印鑑を作成する

登記手続きを行う際に提出する申請書には、会社の代表印の押印が必要になります。

資本金額を決める

資本金とは、株式を発行することで集めた資金のことです。会社が業務を行うための資金であり、基本的にはその金額が多いほど、「体力のある会社」とみなされます。

本店所在地を決める

(2)定款の作成と認証

会社の法律ともいえるのが定款です。ここには、必ず次の事項を記載します。

  • 事業目的
  • 商号
  • 本店所在地
  • 資本金額
  • 発起人の氏名または名称及び住所
  • 発行可能株式総数

定款を作成したら、会社の本店所在地を管轄する法務局に所属する公証役場で、定款の認証を受けます。紙ではなく、PDFの電子定款も可能で、この場合は収入印紙代4万円が不要になります。

(3)資本金払込

会社設立時の資本金を、発起人名義の口座に振り込みます。登記前には、会社専用の法人口座を開設することができないため、発起人の口座に入金するわけです。

「会社は1円でもつくることができる」というフレーズを耳にしたことがあるかもしれません。資本金1円でも、会社設立は可能です。ただし、さきほども説明したように、資本金は企業の信用力の証でもあります。現実には、100万円以上の資本金を用意するのが一般的と言えるでしょう。

逆に、資本金が1000万円を超えると、設立初年度から消費税が課税されることになりますから、注意しましょう(通常は、設立初年度の会社の消費税は免除される)。

(4)登記書類の作成

次に、法人登記申請に向けて、書類を準備します。主に必要となるのは、次の書類です。

  • 登記申請書
  • 定款
  • 資本金の払込証明書及び通帳のコピー
  • 代表取締役及び取締役の就任承諾書・印鑑証明書など
  • 監査役の就任承諾書及び本人確認書類
  • 印鑑届書

(5)会社設立登記申請

資本金払込後2週間以内に、会社の本店所在地を管轄する法務局に登記申請を行います。会社設立日は、手続き完了日ではなく、この「申請を行った日」になりますから、間違えないようにしましょう。

「商業登記」という窓口で、用意した書類一式を専用のボックスに入れる(あるいは窓口で手渡す)だけでいいのですが、申請書に間違いがないか、職員にチェックしてもらうのがベター。この登記は、郵送で行うこともできます。

(6)会社設立後の手続き

設立登記が終わっても、やるべき仕事は残っています。

税務署への届け出

会社の所在地を管轄する税務署に、次の届け出を行います。

  • 法人設立届
  • 青色申告の承認申請書
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉徴収の納期の特例の承認に関する申請書
  • 棚卸資産の評価方法の届出書
  • 減価償却資産の償却方法の届出書

通常は①~④の提出でOKです。わからない点は、税務署の窓口などで確認するようにしてください。

各地方自治体への開業届

都道府県税事務所、市町村役場に、税務署に出した①と同じものを提出します。

社会保険への加入

前にも述べたように、法人には法律で義務付けられています。「健康保険」「厚生年金」は必須。従業員を雇う場合には、加えて「雇用保険」「労災保険」に加入しなくてはなりません。

法人用口座の開設

取引先とのお金のやり取り、融資や助成金などを受ける際に必要になります。

会社設立にいくらかかる?

法人化するためには、資本金とは別に、最低いくらのお金がかかるのでしょうか? 以下にまとめました。

〈公証役場〉

  • 定款認証手数料 50,000円
  • 定款印紙代 40,000円(ただし、電子定款の場合は不要)
  • 定款謄本代 約2,000円
  • 登録免許税 150,000円

〈法務局〉

  • 登録事項証明書代 600円(1通)
  • 印鑑証明書代 450円(1通)

電子定款にする場合は、合計203,050円が必要になる計算です。なお、これは株式会社の場合。設立方法がより簡易な合同会社は、公証役場関連は登録免許税60,000円のみ(電子定款)となるため、61,050円で設立することができます。ただし、こちらには、株式会社に比べて信用度が低い、株式の上場ができない、といったデメリットがあります。

申告は確定申告→決算申告に

個人事業では、毎年原則として2月15日~3月15日の間に、前の年の所得を確定申告しますが、法人になると、「法人税」「法人住民税」「法人事業税」「消費税」などを、決算日の翌日から2ヵ月以内に申告することになります。

帳簿を整理し、必要書類を作成し、申告・納税――という大まかな流れは確定申告と変わりないのですが、「総勘定元帳」「領収書綴り」「決算報告書」「法人税申告書」といった多くの書類を作成し、提出する必要があります。

会社設立で税理士への依頼を検討中の方へ

節税や信用度のアップなど、メリットの多い法人化ですが、必要な手続きなどは多岐にわたります。失敗しないために、会社設立に詳しい税理士など、専門家のアドバイスを受けるのもいいでしょう。

この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
税理士紹介センタービスカスは、 株式会社ビスカスが運営する、日本初の「税理士紹介サービス」サイトです。 税理士をお探しの個人事業主や法人のお客様に対して、ご要望の税理士を無料でご紹介しています。
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